1-25 1t
塩づくりをしてから数日経った。
そろそろ米の様子を見に行こうかな~
ということで~
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「母上~」
「米ね?」
「うん!」
「じゃ、行きましょうか」
「はーい」
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母上と一緒に、散歩しながら水田に来た。
なんか葉物畑やリネン畑が増えてる……
あ、リサが魔法を使えるようになったんだもんね。リサが増やしてくれたんだろう。
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「あら、リサ。精が出るわね」
「あ、マリア様、ミチイル様」
「リサ~、畑が増えてるね~ それに、何だか男の人たちが働いているけど……」
「はい! 畑魔法を使えるようになりましたので、少しずつ増やしています。それで私だけでは手が回らなくなってきたので、手隙の希望者に畑を手伝ってもらっているのです」
「すごーい! 男の人達も魔法が使えるようになってから、時間が余ってたもんね~」
「はい、ミチイル様のご指導のたまものです。あと、トムも少し」
「ハハ あっ、米もすっかり収穫時期になってる~」
「私には判断できませんが、黄金色になって、穂が垂れ下がっています」
「うんうん、じゃ、収穫、行ってみよう!」
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『収穫』 ピカッ シャキーンザラザラザラパササッ
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「うおっ、稲穂が、稲わらと玄米と籾殻に分かれてる……しかも、すでに乾燥済みとか……都合良すぎない?」
『はい、救い主様ですので』
『ハハ 僕もいい加減、ご都合主義に慣れないとね~ アイちゃん』
『御心のままに』
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「あらミチイル、米がなんだか色々バラバラになっちゃっているけれど、これで大丈夫なのかしら?」
「うん、大丈夫……なんだけど、大丈夫じゃないよね……どうやって貯蔵したり運んだりすればいいんだろう……えっと、稲わらがあるから、まず、わら仕事でムシロを作って」
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――ピロン わら仕事魔法が使えるようになりました。わらでムシロ、米俵、わら縄などが思いのままに作れます
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「……うん、問題なくなったよ、母上……さて、じゃあ、もういっちょう『わら仕事』 」 ピカッ ドサドサドサ
「あら? 山のようにあった枯れ茎?がなくなっちゃったわ。それで……これは何かしら? なんだか樽のようなものと、紐と茎の布みたいなものがたくさんあるけれど」
「これはね、米俵と言って、収穫した米をいれて貯蔵したり、運んだりする袋なの。ムシロっていう布状のものと、紐…わら縄っていうんだけど、これで出来ているんだよ。それで、こっちにある丸い蓋とわら縄で米俵を綴じるの。ここにあるのは全部、さっきの枯れ茎、稲わらっていうんだけど、それからできているんだよ」
「あら~ とっても便利なのね、米って」
「ハハ、そうだね~ あーー僕、ものすごくご飯が食べたいの! 米! 米、ここで炊いてもいい?」
「ええ、もちろんいいわよ。何をどうするのかわからないけれど、何でもミチイルの好きにしたらいいわ!」
「はーい えっと、まず玄米を白米に精白する必要があるよね」
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――ピロン 精白魔法が使えるようになりました。お好みのものをお好みに精白できます
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「……っと、精白はいいとして、鍋も要るでしょ、火を使うから竈も要るけど、こんなところに竈つくってもねぇ、移動できないし、七輪なら」
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――ピロン 七輪魔法が使えるようになりました。お好みの七輪が作れます
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「……竈の問題はなくなったから、まあいいけどさ、でも熱源が必要だよね。あ、コンポストの茎燃料もあったね! でも、七輪じゃ薪とか使えないし……この大量の籾殻は燃やせるだろうけど、おがくずと一緒で煙ばっかりでて熱源には使えないし……あ、オガ炭作ったけど、そういえば籾殻で薪を作ってる会社あったっけ。何だっけなあ……モミガライ……何かの権利に引っかかったら面倒だから、籾殻炭って名前にしよ」
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――ピロン 籾殻炭魔法が使えるようになりました。籾殻を薪に作り変えます
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(……いつものことだけど、ミチイルってば独り言が多いわね……何を言っているのかさっぱりわからないから、きっと神の世界の話なのね!)
「…………うん、色々問題が無くなったよ。後は、火をつけられるかどうかだけど」
「ミチイル様、私が火を点けます。草ゴミを燃やすために特別に火打石を持っていますので」
「あ、そう? じゃ、リサに頼むとして、後は、塩があれば良かったけど、ま、なくてもいいか~ 米はそれだけでもおいしいしね!」
「おおおーい! 坊ちゃーん! わしを除けもんにしてからに~」
「あ、塩が来た! じゃなかった、トム爺~ いいところに! トム爺ってば、ほんとにいつも頼りになるよね~」
「カッカッカ! そうじゃろそうじゃろ~」
「トム爺、申し訳ないんだけど、ちょっと塩浜までひとっ走りして、塩を持ってきて欲しいんだ~ いい?」
「おう! お易いご用じゃ! カッカッ~カ~~~」
「あ、もう見えなくなっちゃった。ま、いいか。んじゃ、やるよ!」
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『アルミカップ』 ピカッ
『七輪』 ピカッ
『籾殻炭』 ピカッ
「最後に『アルミカップ』ダブル! ピカッ ピカッ 」
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アルミカップ魔法で、銅の羽釜を、七輪魔法で羽釜が置けるサイズの大きめ七輪を、籾殻炭魔法で籾殻炭を、そして再度アルミカップ魔法で羽釜の蓋としゃもじを作成した。蓋は厚めにしてすこし重めなの。重い蓋の方が美味しく炊けるはず。
そして、玄米を羽釜の三分の一くらいの高さまで入れ、解禁されたばかりの精白魔法で玄米を無洗米レベルまで精白した。糠はどこに行っちゃったんだろう……ま、いいや。
そして、アタシーノ川の水を、米から5cmくらい上まで注ぐ。ぱっと見な感じ、二升分くらいの米だ。たくさん炊いた方がおいしいし、ここに10人くらい人がいるからね、みんなで食べよう。
さあ、ご飯を炊くぞ!
七輪の中に、出来たばかりの籾殻炭を入れ、さらに羽釜をセット。かまどじゃなくて七輪だし、本当は釜に羽はつけなくてもいいんだけど、羽があると気分が上がるからつけてみた。
って、全部自分でやっているかのように言ってるけど、魔法以外の作業をしたのは、リサなんだ。僕、まだ4歳だからね、何もできないの。
で、リサに七輪の下の方から火を点けてもらった。煙がでてきて、ちょろちょろ火が燃え始めたけど、始めちょろちょろでちょうどいいよね。湯気が吹き上がるまで、とりあえずこのまま放置ね。
その間に、お手伝いに来ていた男の人達に、玄米を米俵に詰めてもらい、蓋を被せて縄で縛ってもらう。米俵は一俵60kg入るからね、頑張って~
そして僕は、籾殻炭魔法で、残りの大量の籾殻を炭にした。一部は、リサにも挑戦してもらったら、一回にできる量は少ないけど、問題なく魔法が発動。時間はかかるかも知れないけど、籾殻も処理できるだろう。多分、いま玄米を詰めてくれている人たちの中にも、籾殻炭魔法を使える人がいると思う。オガ炭が使える木工職人なら、すぐにできるだろうしね。
大量の藁は、さっき全部、米俵と稲わらとムシロにしたし、籾殻も全部、薪になった。山のように地面に直接降り積もっちゃってた玄米は、少し取り切れなかったけど、ほとんど米俵に収まった。
もともと玄米一合分の水田だから、100坪くらいでいいかなーの感覚で栽培したけど、出来た玄米は十五俵だから1トンくらいあるね。1坪あたり10kgの米なら、地球じゃ考えられないくらい高収量だよね……しかも、1か月くらいで出来そうだし、季節もない世界だから、もしかしたら5回くらいは米を栽培できるかも。五期作ってすごい。
そうこうしているうちに、羽釜から激しく湯気が吹き上がって来た。
***
「ミチイル、鍋が大変なことになっているわよ~」
「あ、ほんとだ。リサ~、このしゃもじで七輪の下の空気穴をスライドさせて閉じてくれる~?」
「はい。ここの金属をずらせばいいのですね?」
「うん、そう。これで空気が行かなくなってね、だんだん火が弱くなってくるから~」
「とても便利なものですね、シチリンとは」
「そうだね~ これもたくさん作ってもらおう。石工職人なら作れると思うし、空気穴は金工職人にしてもらえば、七輪もみんなに行きわたるかな~」
「ミチイル、なんだかとても美味しそうな香りがしてきたわ」
「うん、あともう少しかかるの~ 蒸らさないといけないし」
「それにしてもミチイル、米っていうのは、とてもお利口さんなものねぇ」
「なんで~?」
「だって、何も捨てるところが無いじゃないの~ 実った実はもちろん食べられるでしょう? 実を取った後の殻は薪になるでしょう? 枯れ茎は入れ物と紐と布になるでしょう? 少しの種でたくさん増えて、自分で勝手に育って、自分が入る袋の材料も自分で用意して、自分を食べてもらうための燃料も自分でしょう? 全部自分で済んでしまうじゃないの」
「あ、ほんとだ。米って、優秀だよね~ 糠がどこに消えちゃったかわからないけど、糠も本当は使えるしね」
「おおーい、坊ちゃん! 塩を持ってきたぞーい! カッカッカ!」
「あ、トム爺、おかえり~って、塩、壺ごともってきたのね」
「おうよ! どんくらい要るのかわからんかったからの!」
「う、うん。さすがトム爺、気が利いて力持ち~」
「カッカッカ! で、坊ちゃん、これは何に使うのかの?」
「うん、おにぎりにするの~」
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――ピロン おにぎり魔法が使えるようになりました。にぎれます
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「えっと……何をにぎるんだろう……ああ、もちろんご飯だろうけどさ……ま、いいか」
「良くわからんが、なにやら美味しそうな感じがするの! カッカッカ!」
「うん、塩おにぎりになっちゃうけど、それでもおいしいと思う~」
「ミチイル様、これはいつ完成するのでしょう?」
「あ、羽釜からね、湯気がほとんど出なくなったら炊きあがりかな」
「ほんとう、いい匂いだわ~ 米?ご飯? 屋敷の皆がくやしがるわね、うふふ」
「ハハ うまく行ったら、屋敷でも炊こう! じゃ、そろそろ炊けたと思うから、悪いけどリサ、羽釜の蓋をとってみてくれる? 熱いから、服の裾とかで掴んでとってね」
「かしこまりました。では――――――――」
「 !!! 」




