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1-24 今度は塩

とりあえず葉物畑が完成して、リサに管理を丸投げしてきた。


これで、葉物野菜が食べられるようになるはず。難しい手間も暇もいらないしね、放置で育つから。後は、様子をみて収穫して、種ができたら種を取って、そしてまた撒いて、を繰り返すだけ。


リサが畑魔法を使えるようになったら、畑を作るものお任せしよう。


もう少ししたら、米が収穫できる。異常に成長が速いけど、メリットしかないからいいよね~


楽しみ~


楽しみなんだけど、葉物野菜は生で食べられるし、ま、平民は生がメインにならざるを得ないんだけどさ、いくら美味しくても塩くらいは振って食べないとね、塩は必要でしょ。


それにそれに、米ができるようになったらさ、塩はもっともっと必要。


今、食べてる主食の乾燥マッツァは、ビタミン以外完全栄養食だから塩が入っているけど、米はね、塩、入ってないもん。塩が必要だけど、今の状態だと塩が不足する。


塩づくりの浜に行って、塩の増産の目途をつけよう!


ということで~




***




「トム爺、久しぶり~ ごめんね、わざわざ迎えにきてもらって」


「カッカッカ! なんのなんの坊ちゃん! わしはいつでも暇じゃぞ! 遠慮せんと、もっともっと呼んでくれてもええんじゃぞ! 何ならわしと一緒に住ん」


「う! うん、ありがと。今日はね、塩を作っているところに行きたいの~ お願いね」


「おしきた! ほんじゃ坊ちゃん、しっかり捕まっとってくれの!」


「はーい」




***




「あ! あの海から出ている流しそうめんは、トム爺が作ったんだよね?」


「カッカッカ! そうじゃそうじゃ! わしが作ったんじゃ!」


「すごいすごい~」


「カッカッカ! じゃがのう……アタシーノ川の流しそうめんよりも、流れる水の量が少ないんじゃ……」


「ああ、確かに、低い海面から水を上げるのは難しいのかも」


「よくわからんがの、何回も試してみて、ようやくギリギリちょろちょろ海の水が出てくるようになったんじゃが、水の出口が地面の近くにあるからの、小さな鍋で海の水を受けて、砂に撒いてを何回も繰り返さないとならんのじゃ……」


「それでも、海から汲んできて運んで、ってするよりは、ずっと速くて、何よりもみんなが楽でしょ? すごいよ! トム爺」


「カッカッカ! やさしいのう、さすがわしの坊ちゃんじゃ!」


「でね、今日は、もっとたくさん塩を作れるようにしたいの」


「おう、坊ちゃんがすれば、埋もれて死んでしまうほどの塩が一瞬でできそうじゃ! カッカッカ!」


「うん、それは多分そうなんだろうけど、僕がずっと作る訳にも行かないんだよね、塩に限らず、なんだけど」


「もちろんじゃ! 坊ちゃんに手間を取らせて民が生きて行くような事ではイカン!」


「うん、だからね、僕以外でも作れるようにしていかないとならないの。塩も他のものも」


「そうじゃな! して、どんな方法で塩を増やすんじゃ?」


「うんとね、石で高さ違いのプールをいくつか作ってね、中に綺麗な砂をいれてね、まず一番上のプールに海水をいれて海水が濃くなったら、砂をいれた一段下のプールに濃くなったのを移してね、それをもう一回くらい同じことして、とても濃くなった海水を作るの。それで、今度は砂をいれないプールに移してね、塩の結晶ができたら、底のにがりを捨ててね、後は天日で乾かす」


「カッカッカ! わしには良くわからんがの! 坊ちゃんがやることに間違いはないからの!」


「ハハ じゃ、この辺りに色々作っちゃってもいい?」


「坊ちゃんは、どこで何をどうしても何も構わん! じゃが、一応、塩の者どもに声かけるでの、ちいと待っての!」


「はーい」


「おーーい、ジョン! 久しぶりじゃの! カッカッカ!」


「おう! トム、まだ生きとったか! しぶといな! ガッハッハ!」


「おうよ! わしゃ、まだまだ死なん! 長生きするからの! カッカッカ! いや、そんなことはどうでもええんじゃ、ジョン。今日はの、坊ちゃんがここで好きなようになさるからの、おぬし、黙ってみとけよ!」


「お? ミチイルの坊ちゃん、初めましてじゃな! ジョンじゃ! ガッハッハ!」


「う、うん。今日はよろしくね、ジョン爺」


「ガッハッハ! 聞いたか、トム。ミチイルの坊ちゃんは、わしのこと、ジョン爺と親しげに」


「カッカッカ! 坊ちゃんは、わしのこともトム爺と、ずっと昔から呼んでくれおるわい!」


「えっとー、そろそろ始めてもいい? トム爺もジョン爺も」


「おう! おい、おまえらも黙ってみとけよ!」


「じゃー、行くね」




***




『漬物石』 ピカッ ピカッ ピカッ ピカッ


『漬物石』 ピカッ ピカッ ピカッ


『流しそうめん』 ピカッ


そして『漬物石』 ピカッ




***



浅めの石のプールが四段、ひな壇状に上から下へと繋がって並んでいて、それぞれゆるーく下方向に微妙な傾斜がついている。プールの一番低い部分には隣のプールへ海水が抜ける穴を開けていて、石で蓋をしておける構造にしておいた。


そして、石のプールの上から三段分にだけ、漬物石で作った砂を厚めに一面ずつ敷き詰めてある。


一番下のプールだけは、砂は無し。ここで塩の結晶化をさせるからね。第一プールと呼んでおこう。下から順に、第一から一番上が第四ね。


一番高い所にある第四プールに接続させるように、そうめん水道管を設置。海水面からはかなり高くなってしまったが、僕の想像通りなら、たぶんいける。




***




「カッカッカ! さすが坊ちゃんじゃ! どう使うのかわからんが、すごいの! じゃが、ナガシソウメンが動いてないのう……」


「ちょっと待ってね。先に、プールとプールをつないでいる穴に、石蓋をしちゃうから。そんで、この水道管の先をこうして……やった!」


「おおお! ナガシソウメンから水が出てきおった! さすが坊ちゃんじゃ、カッカッカ!」


「この水道管の先にね、魔力を流すと、魔力を流している間だけ海水が汲みあげられるの。あとは第四プールの砂が全面湿るくらい海水をいれてね、汲み上げをストップ」


「第四? 四番目っちゅーことじゃの! 上から順々に第四、第三、第二、第一、じゃの!」


「まだ説明してないのにわかるなんて、トム爺って、すごい!」


「カッカッカ! そうじゃろそうじゃろ~ カッカッカ! もっとわしに頼ってくれても、ええんじゃぞ、坊ちゃん!」


「ミチイル坊ちゃん、これは! 要するにわしらが今まで手作業でやっとったんが、上のプール?に海水を入れて、後は順々に石蓋を開け閉めするだけで塩ができるって寸法の道具じゃな! これはものすごいな! ガッハッハ!」


「さすがジョン爺だね、見ただけで理解するなんて!」


「ガッハッハ!」


「後は、ジョン爺たちが魔力を流せるかどうか、だけど……多分できると思うの。ジョン爺、この水道管の先に、魔力を流してみてくれない?」


「ジョン、魔力っちゅーもんはじゃな、気合じゃ! そこに気合をいれるんじゃ! 考えるな、気合じゃ!」


「わーっとるわい! ふんす! おお! 海水が流れてきたな! ガッハッハ!」


「うん、すごい、ジョン爺! これで問題なく塩が作れるね。じゃ、後はこれをもっといっぱい作ろう。トム爺も、漬物石魔法でやってみて! 海岸線は岩壁だらけだから、問題ないでしょ?」


「おうさ! わしに任せろ! カッカッカ!」


「それとジョン爺、一番下の第一プールで塩の結晶ができ始めたらね、蓋を取って底にたまった海水は捨てちゃってね。捨てないでそのまま蒸発させちゃったら、塩が苦くなっちゃうから」


「おうさ! わかっとるでな! ガッハッハ!」




***




この手動入浜式ミニ塩田施設を、合計30か所ほど作って、後は、ジョン爺たちに塩づくりを任せることにした。


あ、そうそう、塩が大量にできるから、収納のために、漬物石魔法で石壺も大量につくって置いてきたよ。


さて、トム爺と公都へ戻ろう。




***




「そういえばの、坊ちゃん」


「うん、なあに?」


「リサがわしんとこに来ての、魔法を教えてくれっちゅうんでの、わしが編み出した魔法のコツを教えてやったんじゃ!」


「ああ、考えるな、気合じゃ!ってやつね、さっきも言ってたけど」


「そうじゃ! それでの、そのコツを教えたらの、リサも魔法が使えるようになったんじゃ! カッカッカ!」


「すごーい! トム爺って、ほんとにすごいね! 最初に魔法を使えるようになったのもすごいのに、みんなに魔法を教えるのもすごいなんて!」


「カッカッカ! そうじゃろ~ カッカッカ!」




***




――リサも、魔法が使えるようになった、らしい


――そして、この世界で初めての魔道具を作った事に、ミチイルは気が付いていなかった




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