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1-22 雑草が有用

カンナから雑草を少し分けてもらい、部屋で品種改良をすることにした。


とりあえず、スキルを使って種にしてみると、何となく3種類かな? みたいな感じになったから、1種類ずつスキルで葉っぱの状態にしてみた。


うん、カブ系統とキク系統とセリ系統かな。ざっくりな感じとしては、小松菜と春菊とセリだね。どれも丈が短くて細くて、緑色が濃くて、繊維もニオイもアクも強そう。


とりあえず、大きくなるのを選んでいこう。


ピッカリンコ ピッカリンコ ピッカリンコ………………


ふう。大きくなるのを選り分け続けて、20cmくらいの丈しかなかった草が、どれも1m弱くらいに大きくなったし、葉も大きくなった。いや、小松菜とかさ、1mとかどうなの? しかも茎も直径5cmくらいあるし……それに茎は草っていうより、木って言った方がいいくらいに色まで薄茶色になってるし……木みたいに硬くはないけど、鋸じゃないと切れないレベルだと思う。絶対に食べれないわ。葉っぱなんて、服になりそうな大きさ。春菊もセリも同じ感じの茎になっちゃったし……春菊とセリの葉っぱは、小枝はついてるけど顔くらいの大きさで留まった。


うーん、もう少し小さめの方がいいかなぁ……




***




「ミチイル様、お待たせいたしました」


「あ、カンナ、リネン草もってきてくれたんだね~ ありがと~」


「ふふ、お部屋の中がにぎやかですね……私の布仕事については、もう少しお時間をいただければ、と思います」


「う、うん、もちろん。また知らせて~」


「かしこまりました」




***




カンナのスルー(りょく)って高いよね……リネン草って、これだったんだ。ブッシュ地帯に生えてるって話だったけど、雑草と紛れて生えてたから明確には意識してなかったよ……なんか他の草よりも丈が長めな草がちらほらあるな、とは思っていたけど、それがリネン草だったのね。


って、そうそう、葉物の品種改良してたんだった。


ま、大は小を兼ねるっていうしね、とりあえず1mのまま、ニオイが薄いのを選り分けて行こう。ハーブとしての機能は求めてないからね。美味しく量を食べられるようにしないと。


ピッカリンコ ピッカリンコ ピッカリンコ………………


なるべく柔らかそうなの、ニオイが少ないもので選り分けて行った結果、サラダとして食べれるレベルの巨大な小松菜と春菊とセリができた。特にセリは力作! 地球のセリは、美味しいけど、生で食べるのにはアクもあるしキツイ。でも、このセリは、生のままかじってみると、サクサクしてさわやかな香りと味なの!……葉はでっかいけど。春菊も、地球でいうところの大葉春菊っぽくなったから、生のまま行けるし……葉はでっかいけど。小松菜はもともと生で食べられるもんだからね。って、葉がでかすぎるし、小松菜じゃないかも知れないけど……


でも、僕が名前を付けたら、この世界ではそのままになると思うから、今日できた雑草出身の葉物野菜は、小松菜・春菊・セリと名付けます! 異論は認めません! いいよね?


『はい、ご主人様。全く毛ほどの問題もございません』


「あ、アイちゃん、僕、声に出してたっけ?」


『問題ございません』


「 ? ま、いいか。とりあえず、この3種類を種にしておこう」


ピッカリンコ ピッカリンコ ピッカリンコ


「……この研究残骸どうしよ……せっかくだから美味しそうな葉っぱはキッチンで使ってもらおう……でっかいけど。後はゴミだね。コンポストとか作ったらいけるかな」




***




ピロン コンポスト魔法が使えるようになりました。 ゴミがお好みに裁断されカラカラに乾きます




***




「ねえアイちゃん」


『はい、救い主様』


「ゴミが処分しやすくなるのはいいんだけどさ、コンポストって普通、肥料になるよね? なんで乾くだけなの?」


『この世界では、有機物を肥料に変えるような菌がいませんでしたので、堆肥ではなく、乾燥タイプの処理機が採用されました』


「さいようされました…………でも有機物が腐らない?のなら便利じゃない」


『ものを腐らせる、というか分解する菌はおりますが、肥料にはなりません。分解して星に還らせるだけとなります。この星では畑作は存在していませんでしたので、肥料も不必要でした』


「うわお! そういえば、アブラハムさんが頑張っても無理だったんだっけね……」


『地球から、有益な微生物も預言者様と共に導入されたようですが、エサがなく、死に絶えたようです』


「へぇ。 よくわかんないけど、乾燥でも便利だから良しとしよう~ 今のところ、肥料も必要ないしね~ 米がどうなるか次第だけど、どうしても必要なら微生物召喚しちゃえばいいよね!」


『はい、全く持って、何も問題ございません。救い主様の御心のままに』


「ハハ とりあえず『コンポスト』 」


ピカッ


「ほえー、何か太い茎もろとも5cmくらいになってカラカラになった~ つか茎も5cmだから、キューブ状? 良く燃えそうだね……つか、燃えるんじゃ?……これも葉っぱと一緒にキッチンで試してもらおう!」




***




――その日の夕食には、大公家史上初のサラダが出た




***




キッチンに持って行ってもらった葉っぱは、試食したカンナがびっくりしてた。そのまま食べられると教えてサラダにすることに。平民は火が使えないから、硬くて臭くてエグイ雑草を丸かじりしていたけど、サラダとは言えないよね。でも、昨日の夕食は、まぎれもなく、サラダだったよ! 塩をかけただけだけどサクサクさわやか味だった。そのうちドレッシングも作りたいな~


そしてコンポスト魔法で5cm角のカラカラになった茎は、ちゃんと燃料として使えたって。さすがにオガ炭よりは劣るけど、薪と変わらなかった、もしくは薪よりも煙が少なくて、火持ちも少しアップしたくらいだったみたい。なによりゴミが原料だし、薪よりも軽くて扱いやすいから、とっても有用でしょ!


さて、今日はリネン草だね。


リネン草は、僕にとっては未知の植物。名前からすれば地球の麻みたいな感じだし、見た目も何となく? そんな感じ……と思うけど、実物みたことないもん。なんか、しょっ引かれそうな雰囲気も社会にただよってたしね……


葉っぱはスジスジしていて細く、とても食べれそうにない。ま、地球のイメージだと、食べたり燃やしたりしない方がいいのかも。繊維になるのは茎の周りの皮?らしく、皮を取ったあとの細く頼りない芯は、屋根を葺いたり箒にしたりしてるみたい。


リネン草を集めてくるときは、嵩を減らすためにブッシュ地帯で葉っぱとか花とか落として茎だけ集めるのが基本らしいんだけど、今回は、僕が種付きをお願いしたから、カンナが手配して、丸のまま採ってきたものを僕に届けてくれた。ありがとう、カンナと届けてくれた人。


さ、リネン草の品種改良をしよっと。とりあえず、味とかニオイとかは気にしなくてもいいと思うし、大きく育つものだけ選り分けて行く。


ピッカリンコ ピッカリンコ ピッカリンコ………………


ふー もう1.5mくらいだし、これでいいかな。あまり背が高くなっても取り回ししづらいだろうしね。なにせ、リネン草を集める人たちは、女性と年寄りがメインって言ってたし。


とりあえず、土に撒いてみるのは、もう少し後にしようと思う。


どうせなら、米の様子もみたいしね。今、米を見たって変化がある訳ないもん。


これで、小松菜と春菊とセリとリネン草の種がそろった。


楽しみ~



***




――それから、しばらく時が過ぎた




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