表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
227/237

3-50 ダンゴ革命

さて、憂いも無くなったしね、今日は久々にジョーンを読んで、レシピ講座だ!




***




「ご無沙汰しております! ミチイル様!」


「ほんと、久しぶりだね~ 皆は元気? シェイマスとかは?」


「はい! ミチイル様のおかげで、つつがなく! シェイマスは、貴族学校で色々教えたりしています!」


「ああ、伯母上の作った学校ね。もう校舎は完成したの?」


「はい! 貴族区の中の空き地に完成しました! 平民学校ほど大きくはありませんけど」


「そりゃ、人数も少ないだろうしね~ ま、元気そうで良かったよ」


「ミチイル~ 今日は何を作るのかしら」


「うん。ずっとほったらかしにしちゃってたけどさ、もち米を使ったレシピ」


「もち米は偉大です! ジャガイモに続く、世紀の大発明です!」


「ハハ 世紀とかの概念なんてあったかな~ ま、発明でも無いけどね。じゃあ、まずは……今は餅を搗いているのと、おこわ程度の利用方法なの? もち米」


「はい! それで充分です!」


「ジョーンは、お団子とかモチモチしたのが好きだものね」


「はい! それ以上のお菓子はありません!」


「ハハ ジョーンには申し訳ないけどね、今日はまず、モチモチしていないお菓子から~ はい、では取り敢えず、お餅を搗きまーす。そしてそれを平らに伸ばしまーす。そうしたらそれを少し乾燥させまーす。乾燥させて硬くなったら、スライサー魔法で薄切りにしまーす。それを干物魔法で完全に乾燥させまーす。カラッカラに乾いたら、それをオーブンで焼きまーす。だんだん膨れてきて、キレイな焼き色が付いたら、取り出してパウダーにした塩を振りまーす。塩がなじんだら、おかきの、完成です!」


「まあ、これは地味ね」


「そうですね! でも、お餅ですから、おいしいに決まってます!」


「ハハ 取り敢えず進もう。はい、餅を乾燥させるまでは同じで、後はそれを1cm位の角切りにしまーす。そして、干物魔法をかけまくって、表面がひび割れてくるまでカラカラに乾かしまーす。後は、油で揚げまーす。これも少し膨れて、ひび割れまでキレイな茶色になったら、揚げおかきの、完成です! 熱いうちに塩を振っておいてくださーい。さ、これはバリエーションが豊富でーす。まず、餅の段階で細かくした昆布を混ぜたら昆布おかきに、細かくしたエビの殻を混ぜたらエビおかきに、細かくした梅干しを混ぜたら梅おかきに、砂糖を振ったら甘いおかきに、醤油を塗って乾かしたら醤油おかきに、それぞれなりまーす。塩も、完成してから振るだけではなくて、餅に混ぜて置いてもいいでーす。餅をもっと小さくして作れば、あられになりまーす。同じものですが、あられは小さいので、上品な感じでーす」


「少し味見してもいいかしら」


「はい、では、いただきまーす」


カリッ ポリッ ガリッ


「まあ、これは……とてもカリカリしているわね。お番茶などが欲しいわ」


「ほんとうれす」


「さ、同じ作り方で、もち米の代わりに普通の米で作って焼いたら、煎餅の、完成です! 味も似たような味にできまーす。味付けは、本当に色々できまーす。ですが、煎餅の場合は、砂糖醤油や味醂で味付けするのがおススメでーす。さて、次はモチモチ系に移りたいと思いまーす」


「パチパチパチ!」


「さ、まずはもち米を研いで充分水に浸けてから、硬めに蒸しまーす。蒸しあがったもち米を広げて、干物魔法で乾燥させまーす。完全に乾いたら、これをスライサー魔法で少しだけ細かくしまーす。石臼魔法でもいいですが、細かくし過ぎないようにしてくださーい。細かくしたら、道明寺粉の、完成です! これは、水を足して少し圧力鍋魔法で加熱すれば、すぐに食べられまーす。もち米よりも手軽なのでーす。では、この道明寺粉に水をひたひたひ加え、食紅魔法で薄いピンク色にしまーす。そして、ここにリンゴの若い葉っぱを塩漬けにしたものがありまーす。リンゴの葉っぱは大きいので、このように小さな木の葉型に型抜き魔法をして塩漬けにしておいてくださーい。さて、薄ピンクにした道明寺粉を軽く圧力鍋魔法をしてモチモチにしたら、用意して置いた餡子を小さくまるめたものを中に入れて、包みまーす。そうしたら、塩漬けリンゴの葉で包みまーす。はい、桜餅の、完成です!」


「はい! ミチイル様!」


「どうぞ、ジョーン」


「はい! リンゴの葉は、何か意味があるのでしょうか」


「はい。本来は桜という木の葉を利用するのですが、手に入りませんので代わりにリンゴの葉を使いました。これは、葉っぱごと食べますので、若葉を使用します。普通の葉だと硬くて食べにくいので。そしてリンゴの葉の香りと塩気が、包んだ餅と餡子との相性が良いのです。見た目もキレイですしね」


「ほんとうに、キレイね。葉っぱから見えているピンク色がキレイ」


「はい、ありがとうございました!」


「では、続いて、この桜餅を色付けしないで作りまーす。そして、茶の木の若葉で包んだら、椿餅の、完成です! これは、生の葉を使用し、葉っぱは香りづけと見た目だけで、食べませーん。さ、道明寺粉を加熱し、小さく丸めて錦玉に入れたら、道明寺錦玉の、完成です! さ、道明寺粉を加熱し小さく丸めて外側を全部、餡子で包んだら、おはぎの、完成です! おはぎは、もち米と普通の米を半々にして炊いて、少し潰したものを使用しても作れますが、道明寺粉だと、思いついて直ぐに作れるので、便利でーす。餡子で包む代わりに、ずんだあんを包めば、ウグイスおはぎに、そして、加熱した道明寺粉の中へ小さな餡子を入れたものに、砂糖入りのキナコをまぶしたら、キナコおはぎの、完成です!」


「まあ! このウグイスおはぎは、とってもキレイね」


「うん。この薄緑色はね、ウグイス色って言う色なの」


「何か、上品な雰囲気ね」


「ほんとうです!」


「ささ、ここでお菓子では無く、料理も一つ、ご紹介しまーす。まず、肉まんの中身を用意しまーす。それを小さく丸めて、外側全部に、乾燥したままの道明寺粉をくっつけまーす。しばらく置いてから蒸し器で蒸せば、もち米シュウマイの、完成です! また、おかゆに道明寺粉を少しいれて煮込んでも、濃厚なおかゆになりますし、スープの中に少しだけ入れても、とろみがついておいしいでーす」


「もち米は、お水に浸して置く時間がかかりますけど、これなら手軽です!」


「うん、使いやすいでしょ。非常時なんて無いけどさ、非常時には加熱しないで水でふやかすだけでも食べられるしね。さ、続いては、普通に餅を使いまーす。まず、餅から大福を作るのは大丈夫ですね?」


「はい! 得意です!」


「ジョーンは、もち米が無い時から大福が好きだものね」


「はい! 大福は無限の可能性がありますので!」


「ハハ それで、大福の餅と同じ作り方をしますが、その際に砂糖をたっぷりと入れまーす。その後、パスタマシーン魔法で薄く薄く延ばし、くっつかないように片栗粉をまぶしてから小さい四角にスライサー魔法で切り分けまーす。軽く折りたたんだら、羽二重餅の、完成です! これは求肥とも言って、色々な、あんこを包んでも和菓子が作れまーす。試しにひとつ、求肥を作る時にオールスパイスを入れて薄茶色にし、羽二重餅の形にしまーす。その中に小さな餡子を入れて半分に畳み、キナコ砂糖を振りかけたら、八つ橋の、完成です! そして求肥は、たっぷりの砂糖の効果で時間が経っても硬くなりにくいので、他の和菓子にも使いまーす。例えば、どら焼きに入れたら、餅どら焼きに、和菓子のまんじゅうに入れたら餅まんじゅうに、そして薄くした求肥にバニラアイスを入れたら、アイス大福ができまーす。さらに、求肥は食紅魔法で色々な色が付けられまーす。ちょっとだけご紹介。まず、色を着けない求肥と、ウグイス色の求肥、そしてピンク色の求肥を作りまーす。それぞれ1cmの厚みに延ばしてから、水を塗って重ねて、しばらく置いておきまーす。その後、これをこのように切ったら、菱餅の、完成です!」


「まあ! これは独特な色ね。三つの色が重なっているものも、初めてじゃないかしら」


「うん。これはね、桃の節句と言ってね、お祝いの日のお菓子なの。高貴な貴婦人がね、最高級の衣装を着て結婚をするお祝いみたいな人形とかを飾ってね、その時に食べる古式ゆかしいお菓子なんだ」


「えっと……知らない言葉と、聞き捨てならない言葉のオンパレードなのだけれど」


「ハハ ま、女性が幸せになれるように願って、お祝いする日に食べるお菓子って言った方がいいかも~」


「そ、それは、大変に素晴らしいです! ミチイル様! そのお祝いの日は決まっているのでしょうか!」


「うん、一応ね、3月3日って決まっているけどさ、ひな人形も無いしねえ」


「そもそも、にんぎょうとは何なのかしら」


「うーん、あ、そうだ。クーちゃん達はね、人形の形なんだよ。ビスクドールって言うの。人の形をしているって意味でね、人形なの」


「あら、人形って、とってもステキじゃない! でも、お部屋に飾るのには、クーちゃんだと少し大きいのでは無いかしら」


「うん、だからね、小さくして作って飾ったりするんだけど」


「救い主様! わたくし、その人形を作りたいと存じザマス!」


「え? うん、自由にしていいよ」


「まあ! クーちゃんが作ったら、さぞやステキな人形になるでしょうね! 楽しみだわ!」


「お任せくださいザマス! 必ずや素晴らしいものを作って御覧に入れるザマス!」


「まあ、でも、スカートの中は……リアルにクーちゃん達にすると、色々と大変かも知れないよ」


「救い主様、淑女のスカートの中に、お心をくだくのは、どうかと思いザマス」


「ほんとうよ!」


「い、いや、そういう意味では」


「ではミチイル様! その……3月3日のお祝いの日を導入するように夫のセバスに申し伝えます!」


「いや……ま、いいか。娯楽になれば。その日はね、ひな祭りっていう名前だからね。小さい小さいあられを作ってね、ひなあられって言うんだけど、それを食べたり菱餅食べたり、ま、最近じゃ普通にケーキも食べるけどね、何でか知らないけど、白と緑とピンク色がね、ひな祭りの色だから、その色のお菓子を食べるの。そう言えば、三色ダンゴも、それと同じ色かも。あ、桜餅もひな祭りで食べるね」


「そ、それは! 大変に重要な情報です! ありがとうございます! ミチイル様!」


「ハハ えっと、じゃあ……どこまでやったんだっけ……」


「ひな祭りでしょう?」


「いやいや、それは予定に無かったもん。えっと、求肥か! それじゃあ、後は……餅料理かな。餅の使い方を少しだけ紹介して、終わりにしよう。餅はね、おかきにする時に薄くするでしょ? その薄くスライスした餅をね、鍋物の時に入れて、さっと煮て食べても美味しいし、小さい餅は、茶わん蒸しの具にしても美味しいの。あ、そうそう、思い出した! んもう、すっかりペースが乱れちゃったよ」


「自分で色々言うからでは無いのかしら」


「うん、まあ、そうだけどね。えっとね、最後に重要な材料の作り方を教えまーす。まず、もち米を洗いまーす。きれいな水と共に、石臼魔法で限界まで細かくしまーす。そして、そのまましばらく時間を置きまーす。すると、下に白い粉部分が沈殿するので、上澄みの水を捨てまーす。残った白い粉部分に干物魔法をかけてカラカラに乾燥させまーす。そしたら、再度、石臼魔法で粉にしたら、白玉粉の、完成です! もち粉と呼んでもいいでーす。これも、道明寺粉と同じく、水を加えて練って茹でたり蒸したりするだけで、柔らかいお餅が食べられる材料でーす。これで作った餅は冷たくしても硬くなりにくいので、冷やして餡子をかけて食べたりもしまーす。そしてそして、イモダンゴやカボチャダンゴを作る時に、片栗粉の半分を、この白玉粉に代えると、とってもとってもモチモチした、美味しいダンゴができまーす。勿論、ダンゴそのものにも加工ができまーす。道明寺粉よりも使い勝手が良いので、これは工場で生産して流通させるのが良いでしょう」


「な! な! な! な! なんと」


「ジョーン、しっかりしてちょうだい! んもう、ジョーンが変になったわよ」


「まあね……だから言ったでしょ、もち米はジョーン注意なんだってば」


「おダンゴに! 革命が!」


「うん、まあね。じゃあさ、取り敢えず色々を試食しよう。お供えもしてさ。じゃ、ダイニングへ~」


「楽しみね! さ、ジョーン、行くわよ」


「おダンゴ革命!」




***




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ