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3-45 エレベーター?

何日経ったかな……僕はずっと、考えているけどさ、色々難しくてさ……


やっぱりエレベーターみたいに、箱を吊り下げて上げ下げするのがさ、構造としては単純なんだよね。でもさ、100mくらいの縦穴を掘る……のはいいけどさ、そこを点検とか? 考えただけで怖いんだけど……


いや、地球でも普通にやっているんだよね、多分。時々、事故のニュースとか見た気もするけどさ、それでもやってるんだ。エレベーターじゃなくても、鉄塔とかさ、そういう点検をしている人も居るんだから、この世界でもできない事は無いよね。僕には無理だけど。


浮遊魔法とかあればいいのに……


ま、縦穴は置いておくとして……動力だよ、動力。


とても作れる気がしないけどさ、蒸気機関が仮に有ったとしても、それを回転運動にしないといけない訳なんだから……SLみたいな構造にするんだよね、多分。


いやいや、どっちも1ミリも出来る気がしない……


エレベーターの箱は作ったとして、吊り下げるロープも作ったとして、それを巻き上げるんだよね……それで箱が上下するんだろうから……それとも、ロープウエーにした方がいいかな……


うーん……




***




ま、何にせよ、モーターが必要だよ。うん。


随分と考えちゃったけどさ、取り敢えずモーターね、モーター。


えっと……回転するんだから……何かを回転する魔法……あったかな……回転……あ、混ぜるとか?


『混ぜる魔法なら、ございますね』


「ああ、アイちゃん、そうだよね、例えば石臼魔法とか! 僕が石臼魔法を使っても、材料が回らずに一瞬で結果が出ちゃうけどさ、他の人が石臼魔法を使ったら、材料が回ってるもんね!」


『左様にございます』


「うんうん、そもそも石臼って臼を回して使うもんね~ じゃ、石臼魔法でモーターが作れるんじゃない?」


『可能性はございますね』


「ハハ ヨシ! えっと、取り敢えず車輪を……いや、車輪ってさ、職人じゃないと作れなくない? 僕、車輪とか軸とかさ、全然わかんないもん」


『救い主様でいらっしゃったら、何でも可能でございますが』


「そうなんだけどさ、イメージがね……モーターとか分解した事も無いし……車輪車輪……いやいや、車輪だってまじまじとは見たことも無いもん。僕が細かいところまで見た車輪っぽいものなんてさ、子供の頃に連れていかれた里山で、水車を作る様子をみ」




***




――ピロン 水車魔法が使えるようになりました。回転運動設備が思いのままです。粉引きや米搗きに




***




「えっと、回転運動……設備?」


『はい、救い主様。そのままの意味ではと思料致します』


「えっと……ま、取り敢えず水車は作れるんだろうね……ちょっと中庭で試してみよう」




***




「さ、確認確認~ 『水車魔法で水車!』ほどほどの大きさでお願い!」


ピカッ デーン


「お、本当に水車そのものだけど……人が一人、何とか入れる空間が横に……お?これは餅を搗くような機械……あ、違う、玄米を搗いて精白する道具だ!」


「すくいぬし様~ これは、どうやってつかうのですかー?」


「うん、水を上から車部分に流せば……動くとは思うけど……でも、これって動力は水だけ?」


『全て魔法で作成された設備ですし、魔力で作動するのではと思料致します』


「あ、そうなの? 電球みたいなもの? あ、魔道具だね! と言うことは……スイッチスイッチ……お?これだな。ポチっとな」


ゴインゴインゴイン……


「おお、動いた動いた~ このゴインゴインって音がうるさい……」


『切り替えスイッチがあるのではと愚考致します』


「そうなの? えっと、これか……ああ、この切り替えで動力を上下運動にするのか。ま、餅つきも精米も魔法があるから、この水車は必要ないけどさ。ま、作れるのは分かったから、取り敢えず車輪を作ってみよう。えっと、台座と軸と回転盤……」


ピカッ ドン


「おお! モーターに回転盤が付いた感じのができた! 後はこれに石臼魔法を仕込めばいいかな。では、魔法陣を記入して……高トルクで低回転もプラスだな……よし!」




***




これで、モーターはできた訳なんだけど……


これをエレベーターにしないと……


いや、やっぱりエレベーターは危ないし、点検も管理も危険だよ。


えっと、確か急勾配を上り下りできる鉄道があったはず。これで行き来するようにすれば、エレベーターじゃなくても大丈夫だと思う。


一回乗ったよね、昔。車輪だけだと滑って進めないから、歯車を咬ませて走るんだっけ。だから、坂道を作って……歯車を設置して……車両には歯車が回転する動力をつけて……これで急勾配も行ける!


えっと、今のコーチに、歯車式のモーターをつけて、石臼魔法を仕込んで、魔石を取り付ければ……うん、行ける! 大丈夫!


でも、歯車か……ん? 水車の中身に歯車付いているよね、じゃ、水車魔法で作れるはず!


はい! イメージはバッチリ!


「ねえマーちゃん」


「はい!すくいぬし様!」


「僕の全然使ってないコーチは、この離宮にあったよね?」


「はい! しゃこにありまーす!」


「それをね、ちょっと改造するからさ、悪いんだけど眷属たちにひいてもらって……そうだな……エレベーターまで連れていってくれる?」


「だいじょうぶでーす!」


「ありがと。それで帰りはね、コーチは置いて帰るから、僕だけ運んで戻って欲しいんだ」


「もんだいありませーん!」


「じゃお願いね」




***



エレベーター前に到着!


さて、このカナンのカルデラが100mくらいの高さだとして、10%の勾配にすれば1kmで100m上がるよね。


ラック式だったか、アプト式だったか、そんな名前だったはずだけど、要するに歯車を咬ませておけば、登れるし降りれるはず。


降りるときには、重力だけでも降りそうだけど、そうするとブレーキがね……


「ねえアイちゃん」


『はい、救い主様』


「魔法のモーターでさ、回転数とかも低くするじゃない? そうするとさ、余所から力を別に加えてもさ、回転数とかは変わらないかな?」


『魔法の理が優先されますので、魔法陣で指定した回転数よりも速くは回らないと愚考致します』


「そっか。アイちゃんってば、全部言わなくても僕の言いたいことがわかるもんね~ 相変わらずすごいよ! じゃ、下りでも速くなり過ぎたりしないよね?」


『その心配は必要無いと存じます』


「うん、わかった。ありがと。じゃ取り敢えず、コーチに歯車モーターを取り付けよう。さっきのモーターの回転盤を、ごつい鉄の歯車にすればいいもんね。さ、ピカッと。これをコーチの下に取り付けて……」


「うおーい! 坊ちゃーん!」


「ん? んん? あれ? もしかして、と言うかもしかしなくてもトム爺とドン爺とピーター爺じゃない!」


「ふう、久しぶりに急いだからの、疲れてしもうたわい! カッカッカ!」


「おぬしは体力だけが取り柄じゃったのにのう、ほっほっほ」


「なにおう!」


「ミチイル坊ちゃま、ほんにお久しぶりですな、ヘヘヘ」


「ほんとだよ! ごめんね、僕、すっかり御無沙汰しちゃってさ! みんな、元気……そうだね! 全然見た目も変わらないよ!」


「カッカッカ! わしらは元気じゃ! の! クソ爺ども」


「ほっほっほ。元気は元気じゃがのう、さすがに昔の様にはいかんでのう」


「ですな、ヘヘヘ」


「そりゃまあ、歳も歳だしさ、当然だろうけど……でも、こうやって急いで歩いても?小走り?とにかく、体力も問題ないみたいだし、僕、本当に安心したよ……」


「して、坊ちゃん! 今日はなにをしよるんかの! カッカッカ!」


「そうそう、なんでトム爺たちはここに? 何か用なの? 仕事はもうしてないよね?」


「ほっほっほ。わしら仕事もしとらんでのう、暇なんじゃ」


「坊ちゃんのコーチが街道を行くんが見えたからの! 誰もおらんようじゃったしの! 邪魔にもなるまいと思うての! 後をつけて来たんじゃー! カッカッカ!」


「ミチイル坊ちゃまのお邪魔をしてはいかんのですがな、爺どもが走り出してしまってですな、ヘヘヘ」


「ほっほっほ。おぬしも着いて来たじゃろうが、まったくのう、ねっとりしとるんは昔からかわっとりゃせんのう、ピーターは」


「ドンの言う通りじゃ! 結局坊ちゃんの事が気になっておったくせに、素直じゃ無いの! カッカッカ!」


「そっか、シルバーセンターから街道は丸見えだもんね。いつもは抱えてもらって飛んでいるからさ、僕、今日は久しぶりにコーチだったからね~ 思いがけずみんなに会えて、うれしいよ。今日はね、ちょっと色々と細工をね、しようと思ってさ」


「なにやらコーチに細工をしよるんかの! カッカッカ!」


「うん。これをね、コーチに取り付けるところだったんだ」


「ほう、これは何やら……魔道具の様じゃのう」


「そうなんだ、ドン爺。これをコーチの下に取り付けてね、動かすの」


「それならお役にたてますな、ヘヘヘ」


「そうじゃの! 引退したとは言えの、こんくらいはわしらにかかったら、朝飯前じゃの! カッカッカ!」


「ほっほっほ。坊ちゃん、これはわしらにやらせてもらえんかのう」


「え? 僕はとっても助かるよ。じゃあ、お願いしちゃおうかな」


「おしきた! おい! じじいども! やるぞ~」


「相変わらずうるさいのう、トムは」


「ハハハ じゃあさ、悪いけどお願いね。僕は少しやる事があるからさ、ちょっと海岸へ行ってくるから。少ししたら戻るからさ、そうだね……ここから1kmくらい首都寄りの、あの岩壁辺りに戻るから、そこで作業しながら待っててもらえる?」


「合点承知じゃ! さ! やるとするかの! カッカッカ!」




***




「さて、この海岸の漁業拠点の近くに出口がある方がいいよね……この辺りでいいかな。駅になるし、岩壁も厚いから……100mくらいは奥へ掘って、大きな空間を作ろう。この岩は広く掘ったら崩れちゃう?」


『いえ、救い主様。無次元の力、と言いますか、魔力そのもので纏まっておりますので、魔力を使用して切り取っても崩れません』


「えっと、何か楔でも入れて衝撃を与えたり、地震が起きたりすると、崩れるの?」


『左様でございます。以前のように、道具を用いて強力に叩けば石を切り取ることは可能でございます。ですが、それ以外では崩れませんし、そもそも地震はこの星にはございません』


「と言うことは、普通に使う分には安全?」


『左様にございます』


「じゃ、駅のホームと物流拠点として、広くくり抜こう。ピカっとね。これくらいでいいかな~ さ、一番奥から、上にトンネルを掘ろうかな。えっと、10%勾配で直線の四角いトンネルを、カナンの地面まで! はい、ピカっとね。おおお? 真っ暗で何も見えない……ま、電球でも点けるか。ああ、この坂道を計算上は1kmも登らないと……」


「すくいぬし様! ぼくがはこびまーす!」


「あ、そうだった。このトンネルの空間も飛べるの? マーちゃん」


「もちろんでーす! では、いきまーす」


「あ、途中さ、50m置き位に止まってもらえる? 空気穴にする横穴掘るからさ」


「かしこまりましたー!」




***




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