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3-44 魔石の魔力

「今日はどうしたの、伯父上」


「はい。一つご報告がありまして」


「なあに?」


「はい。魔石の事なのですが、魔力が減ってしまっても、魔石を持っていると魔法が使えるようなのです」


「え? マジ?」


「はい。魔道具が国民に普及しましたので、魔石を扱う民も多くなりました。以前は電球とか一部だけでしたが、今ではオーブンなどもありますし、魔道具は魔石を魔法陣に付けると発動しますので、魔道具を使い終わったら魔石を取り出します。その時に、魔法を使った者が居たのでしょう、魔石の魔力を使用して魔法が使えると広まったようです」


「そうなんだ! それじゃあ、仕事が捗るんじゃない?」


「そうですね。魔法の威力には、相変わらず個人差がありますが、魔力が無くなってしまっても、回復を待たずに魔石を握って魔法が使えるようですよ」


「それは、大変な発見じゃない!」


「ええ。ですが、特に何かが変わる訳では無いんですよね、なにせ魔力が枯渇してしまっても、しばらくすれば回復しますし、そもそも昔と違って、魔力が無くなったのに製品の納期が迫って来るような事は起こっておりませんので」


「ま、そうだね。民の生産能力は相変わらず余っているんだもんね、そこまで逼迫した状況も無いもんね」


「はい。ですが、魔法の事ですし、ミチイル様に報告をと思いまして」


「うん、ありがと、伯父上。このカナンは魔力が潤沢だし、魔石も枯渇の心配は無いからさ、そんなに使える事象では無いけど、例えば海で魚を獲る時とか? 海はこのカナンよりも魔力が薄いだろうしさ、そういう時には役に立つかも知れないしね」


「そうですね、今まで何も問題は起こっておりませんが、万が一の事も考えて、水産部には魔石を持たせておくようにします」


「うん。エレベーターだって魔力が必要だからね……って、そう言えばエレベーターは僕のスキルじゃないと作れ無いんだった……何か、エレベーター以外にも海へ降りる手段を用意しないとダメだね。それこそ、万が一の事があったら、行き来できないもん」


「そうですね、その際はマーちゃん達にお願いする事になりそうですけど」


「そうだけどさ、マーちゃん達だって、いつまでこの国に手を貸してくれるか、わからないでしょ? それこそ何百年後とかはさ、わからないんだもん。だから、別な手段は用意しておかないと。取り敢えず、やっぱり石壁を切り取って階段を作るくらいかな」


「それなら、石工職人にさせましょう。石を切り出す仕事も全く無くなりましたし」


「そうなの?」


「はい。首都の建築材料も、そもそもミチイル様が用意してくださった分すら使い切れておりませんので、カナンに来てから石を切り出しては無いと思います」


「そっか、そう言えばそうかもね。道路とかも僕が敷いちゃったし、新たな道路とかも現状では必要が無いもんね」


「はい。ですから、石工職人に指示を出し、このカナンから海岸へ降りる道を作らせましょう」


「うん、わかった。ただ、それは非常階段と言ってね、普段は使わない方が良いと思う。時々点検は必要だけどさ、普段は使わない方が、無用な事故も無くなるしね」


「そうですね、なにせこのカナンは、海岸からかなり高いですし」


「うん。だから非常階段は広めに作ってさ、手すりと言って、階段の石壁側は良いけど、海岸側ね、そこが切りっぱなしだと万が一落ちたら死んじゃうからさ、そっち側に柵をつけて。金属だと錆びちゃうかも知れないし、どうせ石を切り取って作るんだから、手すり、と言うか壁かな、壁も石で残すようにすればいいかな」


「岩壁をくり抜いて道路、というか階段にする感じでしょうか」


「うん、それはいいね、その方が安全かな。くり抜くなら、トンネルといって、穴を掘って階段を作って行ってもいいかも知れない。途中途中に空気穴の窓を切らないとだめだけどね」


「かしこまりました。その様に手配します」


「うん、お願いね」


「それとミチイル様、一つ要望が上がっています」


「ん? 何?」


「はい。炊飯器の魔道具はできないだろうか、という声がありまして」


「うん、出来るけど」


「では、それも売り出してはどうでしょうか。炊飯器魔法は、調理魔法の中でも魔力を多く消費しますし、時間もそれなりにかかります。ですから、その魔法を使ってご飯を炊いている間、ずっと傍に付いていなければなりませんので……」


「ああ、そうか! 薪とか魔石コンロなら、ある程度の時間は目を離したりできるけど、魔法を使用中なら離れられないんだ! 僕さ、自分で魔法を使うと何でも一瞬だからさ、そういう民の事とか全然分かんないんだよね……知らせてもらって良かったよ。炊飯器魔道具ならさ、米をセットして後は魔道具に任せればいいんだからさ、その間に洗濯でも何でもできるもんね! じゃ、作ろう」


「ありがとうございます。民の仕事は減っているので、炊飯に時間を多少取られても何も問題は無いのですが、せっかく、余暇を楽しむ選択肢が増えて来ていますので、日々の暮らしで取られる時間が減れば、その分、民の時間も増えると思いますので」


「うんうん、そうだよね~ じゃあ、工業地帯に手配しなくちゃね」


「ミチイル様にお願いするのも申し訳ないので、魔法陣を作成する著作権メダルだけ頂ければ、後はこちらで手配します」


「そっか。炊飯器は漢字が難しいから魔法陣にするのが大変そうだけど、頑張ってもらおうかな!」


「では、後日にメダルを取りに伺います」


「いやいや、直ぐに作るよ。ピッカリンコと。はい、これが炊飯器魔法用著作権金メダルで10枚、そして、オーブン魔法用の著作権金メダルも5枚追加したよ。これで、オーブン用のメダルは合計15枚になったと思う。オーブン用メダルでさ、オーブンと給湯器とフライヤーも作ってるからね、足りないかも知れないからさ」


「ありがとうございます。これを工業地帯へ渡して、製造の指示をします」


「うん。それとさ、魔道具が増えて来たじゃない? 今は区役所で子爵が販売して管理もしているだろうけどさ、魔道具のお店を独立させた方がいいかも知れないね」


「魔道具店舗を開くと言う事でしょうか」


「うん。そうすればさ、買わなくても見たい人だけでも見れるしね、まあ、今も見れるかも知れないけどさ、いちいち子爵に申し込んだりするのは、ハードルが高いって言うか、民がしり込みするかも知れないでしょ」


「そうですね……わかりました。魔道具店を作らせます」


「うん。もちろん、店の管理とかはさ、子爵に任せてね。割と高額商品だからね……」


「はい。その点は大丈夫です。では、各区の一丁目の空き地に店を建てさせます」


「うん、よろしくね」




***




「ねえマーちゃん」


「はい! すくいぬし様!」


「マーちゃんたちはさ、いつまで色々手伝ってくれるの?」


「はい……ぼくとクーちゃんはてんしなので……やくめがおわったら、いなくなります……」


「そうだよね……いつ、その役目が終わるかとかは分かるの?」


「ぜんぜんわかりません……めがみ様がきめるとおもいます」


「そっか。それじゃ全然予想も付かないよね……神の決める事なんて。それじゃあさ、眷属くん達は?どうなるの?」


「はい……ふつうのまじゅうにもどるとおもいます」


「えっと……人間を襲ったりするようになるの?」


「いいえ、それはないとおもいます! ここのきたのねぐらでくらしていくだけです! みつもあつめないとなりませんから!」


「あ、そっか。受粉しないと作物が実らないもんね、ミツバチ達は必要だ。……でも、どっちにしても僕が死んだら、やっぱりエレベーターは使えなくなっちゃうだろうしね……マーちゃんの役目が終わった後は、今みたいにミツバチ君たちに色々運んでもらえなくなるのか……」


「もうしわけありません……」


「いやいや、マーちゃんが悪い訳では無いから、ごめんね。でも、何か海岸と行き来できる方法を考えないと……」




***




「ねえアイちゃん」


『はい、救い主様』


「スキルってさ、もちろん僕しか使えないけど、スキルで作ったものも、僕が死ぬと使えなくなるよね?」


『はい、残念ながら』


「と言うことは、魔法で解決する必要があるのか……魔石は枯渇しないんだから、燃料は潤沢でしょ……蒸気機関とかつくれば、エレベーターを動かせるかも知れない……このカナンの土地はさ、標高何メートルくらいあるの?」


『はい、約100mくらいかと』


「だよね……かなり高いもんね……それをエレベーターで……それにさ、今のエレベーターはさ、こっちから入って向こう側に出るけどさ、岩壁の厚みがどのくらいかは分からないけど、かなり厚みがあるじゃない? でもエレベーターは普通の箱なのにさ、ただ上下で移動していたら本来の出口は岩の中だよね?」


『左様でございますね』


「でもこっち側と向こう側は繋がっているかのようになってるけど、スキルだし、魔法以外の何かが使われている?」


『はい。エレベーターには無次元の力が使われておりますので』


「ああ、そっか、スキルだもんね。と言うことは……あああ! お取り寄せと同じか!」


『左様にございます』


「と言うことは、次元魔法で、転移魔法だ……いや、転移魔法は存在してないけどさ……いや、転移スキルだって存在してないけどさ……でも仕組みはあるんだもんね……僕は怖いから構築はしないけど、そりゃ転移魔法というか……あるんだもんね。だから、次元魔法だ……そりゃ、僕が死んだら使えなくなるよね……」


『…………』


「どうしよう。……ま、実際に困る事と言ったら、海産物が取れなくなるくらい……って待って! 塩が無くなるじゃん! 生きていけないよ!」


『非常階段を使えば、海岸には下りられるのではと愚考致します』


「あ、そっか。さすがに鰹とかはデカいし人力で運ぶのは大変だろうけど、塩なら何とかなるか……昔は塩も担いで運んでいたもんね。ちょっと階段を上るのは大変だけど……いやいや、大変だけど~なレベルじゃ無くない? 100mも階段で上るなんて。高層ビルを階段で行くのと同じでしょ、した事は無いけどさ」


『救い主様の民であれば、可能ではと思料致します』


「あ、そうだよね、身体強化魔法を使えるんだった。じゃ、最悪はそれで頑張ってもらうとして、でも違う方法も考えよう。最低でも、荷物を引き上げる道具が必要だもん。ありがと、アイちゃん」


『救い主様の、御心のままに』




***




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