3-34 服飾の飾
もち米は、母上が大量生産を指示したみたい。
ま、農業部はプロフェッショナルばかりだからね、大丈夫だろう。
それよりも、餅は小さめに作るようにしないとね、幼児とか年寄りとか危険だからさ……お菓子とかならいいけど、雑煮とかは特に危険だからね。白玉ダンゴ程度の大きさにしないとね……
そしてね、服飾部でも、お店を出したいって要望がすごいらしい。
ま、食べ物は販売しているしさ、商店街にも店があるからね、工業地帯でも魔道具を作っているし、自分たちも売りたい、そして買いたいみたい。ま、平民用の服は支給だしね、母上みたいなドレスは平民は着れないし、ま、ドレスじゃなくてもさ、少し贅沢仕様の服とかさ、色々な色の服とかさ、作りたいし売りたいし、買いたいし着たいって気持ちはわかるような気がするからさ、もちろん、服飾店を設置する事にした。
商店街は、今の商店街の所に、職人が建物を建てるんだって。
ま、公営住宅よりはシンプルだしね、キッチンも要らないんだったら、もっと簡単に建てられるだろう。
魔道具もあるしさ、服も売るんだったら月に10000円じゃ、少し足りない気もしたから、毎月支給するベーシックインカムを、月に一人当たり3万円に増額することにした。そうすれば、男の人達が居酒屋を我慢するのが減るでしょ。
こうやって考えるとさ、娯楽に相当する部分は、紙幣をやりくりして買う、っていうスタイルがいいかも知れない。生きていくのに必要な衣食住は支給するけど、それ以上のものについては、ベーシックインカムで選択しながら購入してもらおう。
うん、資本主義では無いけどさ、娯楽としての買い物は、暮らしを豊かにしてくれるはず。まあ、百年とか何百年とか過ぎたら、働かない人とか、お金をたくさん儲けたい人とかが出て来るかも知れないし、そうなったら社会の構造も変わっちゃうかもしれないけど、今はこれでいいかな、と思う。
それでさ、キッチンカーでも揚げ物を売るようにもなったし、天ぷら鍋にオーブン魔法を170℃に設定した魔法陣を取り付けたフライヤー魔道具を新たに開発。これは、各工場やキッチンで使うし、もちろん少し小型な物はキッチンカーでも使うし、もっと小型の家庭用魔道具も売り出す事に。
家庭用小型フライヤー魔道具は、一つ6万円ね。
今は魔道具、区役所で子爵が販売しているけどさ、魔道具店とかも作った方がいいかも知れないね。家電量販店みたいな感じで。ま、魔道具が増えて行ったら考えないとね。
さて、服飾店もできる事だし、ここらでちょっと、装飾品を……
***
「空になった魔石ってね、全部では無いんだけど、とっても透明でキラキラしたガラス石になるのが、ごく一部あるの。だいたい、かなり小さめの石がなるみたいなんだけどね、どういう風にそうなるかは分からないんだけど……ま、それでね、マーちゃんたちは資源場から魔石を採取して区役所に届けているでしょ? そして空になった魔石のガラス石を工業地帯へ運んでくれていると思うけどさ、その時に、特に透明で綺麗なガラス石は離宮に集めておいて欲しいの。どんなに小さくなった石でも。お願いできる?」
「はい! もちろんです! とってもきれいなキラキラの石を、すくいぬし様におとどけしまーす!」
「うん、ありがとう、よろしくね。じゃあ早速、昔に作って仕舞ったままの宝石を出して……これはなんて呼ぼうかな……その前に、これって食紅魔法で色が着けられるよね?」
『はい、救い主様。お好みの色が着くと思料致します』
「そっか、やっぱりね。じゃあ、素材は全部同じだけど、透明なのはダイヤモンドで、赤い色のはルビーで、紫のはアメジストでいいかな~ 黄色はシトリンで、緑色はエメラルド、青色のはサファイヤ、オレンジ色のはトパーズにしよう。ま、まだ出来て無いけどね。取り敢えず、特にキレイなガラス石を、皮むき器魔法で少しずつ削って行って~ いや、ダイヤモンドカットとかは全然分からないけどさ、取り敢えず多面体にすればいいんじゃね?」
『左様でございますね。それに、救い主様なら、少しずつではなく、一度に思い通りに加工なされると愚考致しますが』
「あ、そうだった……何となくね、いつもチートだって事が頭から抜けちゃうんだよね……じゃ、皮むき器魔法でダイヤモンドカット!」
ピカッ ギラギラギラ
「うお! これは間違いなく宝石だよね……そう言えばさ、この空になった魔石には、魔力は入れられないの?」
『はい、救い主様。こちらの媒体にある魔力は、取り出す事は可能なのですが、再充填は不可能仕様でございます』
「ああ、そうか。ま、魔石が枯渇しないならいいけどさ、ある意味スライムフィルムみたいなものなのね?」
『左様にございます』
「じゃ、逆に安心~ せっかく宝石に加工したのにさ、魔力とかが入ったら、黒くなって石炭みたいになっちゃうもんね、それじゃ、詐欺じゃんね~ 高価な宝石を購入したのに、しばらく経ったら石炭に変っていたなんてさ、やばいよね?」
『そのご心配は無用にございます』
「わかった~ じゃ、取り敢えず、キレイな魔石、じゃなかったガラス石を、色々それっぽくカットしよう。そして~『食紅魔法で透明度は維持したまま、薄い色を着色!』 さあさあ!」
ピカッ キラキラキラーン
「おおお! これは、宝石じゃん! うん、鑑定眼とかは無いけどさ、紛れもなく宝石だね! うん、僕が宝石って言えば、それは宝石!」
『左様でございます』
「すくいぬし様! とってもキラキラしてきれいでーす!」
「さ、これで宝石は良いとして……後は、どう加工するかだよね……えっと、指輪と、ネックレスと、ブローチ?」
『救い主様の、御心のままに』
「もう、アイちゃんは興味の無い事にはつれないよね~」
『その様な事はございません』
「アハハ 既に棒読みだけど~ ま、正直言えば僕も興味は無いけどさ、服飾店も出来るしさ、装飾品とかアクセサリーとか増えたら、女性が喜ぶかなと思ってね。ま、男性も喜ぶかも知れないけどさ~ ま、いいや~ 食文化では無いけどさ、こういうのも文化が発展していっている証拠だしね! さ、取り敢えず……銀でいいかな。じゃ、銀を……アイシング魔法でクネクネ……はい、これでシルバーアクセサリーで宝石付きのブローチの、完成です! ちゃんとピンもつけたからね~」
「すくいぬし様! これはどのようにつかうのですかー?」
「うん、ここにね、ピンって言って、針が付いているでしょ? この針をね、こうやって……服に刺して止めるの。そうするとアクセサリーになるんだよ」
「うわー! とってもきれいでーす!」
「うん。主に女性用だけどね、男性用のシンプルなものも有ってもいいかも。あ、男性用はシルバーだけで宝石が無くてもかっこいいかな~ じゃ、次はネックレスを……って、どうしよう。鎖とかチェーンとかさ、作り方が……っていうか、鎖は極小の輪っかを作って、切込みを入れて……密閉シーラーで接着……うわ、これ、とっても面倒くさい……無理無理無理! ケルビーンの男には無理だね。ま、先にペンダントトップを作ろう。ブローチみたいなのを作って、紐を通す輪っかを付ければいいよね……って、そうか、紐でもいいじゃん! 革紐でチョーカーみたいにするとかさ、なんなら銀とか金で……あ、そうだ! じゃ、取り敢えず銀で『タコ糸!』 さあ、どうだ!」
ピカッ ジャラリン
「お! 出来た出来た! 銀で紐ができたよ!」
「すごいでーす! きんぞくがいとのようにほそくなって! そしてなんぼんもからまってまーす!」
「うん、マーちゃん、これはね、ロープチェーンとかっていうの。これだけでアクセサリーにもなるんだよ。さ、このシルバーロープチェーンの端っこに、輪っかをつけて、もう一方にはT字型の金属を取り付けて……はい、これでシルバーネックレスの、完成です!」
「これは、どうやってつかうのですかー?」
「うん、これはね、この輪っかに、こっちのT字の金属を入れると引っかかってね、それで首にぶらさげるの」
「とってもじゃまな、きがします!」
「うん、そうだよね~ でも、これが飾りなの。このチェーンにね、色々なものをプラスしておしゃれを楽しむんだよ」
「……よくわかりませーん……」
「ま、マーちゃんたちにはわからないかもね」
「でも、クーちゃんがすきそうな、きがします!」
「あ、そうかも。クーちゃんは服飾関係に造詣が深いからね。でもなんで、クーちゃんたちは、ドレスを着ているんだろう?」
『はい、救い主様。それはもちろん、あの女神の慈悲に因るものにございます』
「慈悲? ああ、そうか。何百年もこの外界から隔絶されたカナンに住んでいたんだもんね、おしゃれくらいの楽しみが必要だったのかも知れないね」
『……左様にございましょうね』
「何で棒読み? ま、いいか~ さ、適当に指輪も作って~ あ、指輪は型抜き魔法の方がキレイかな~ あ、型押し魔法で模様なんかつけちゃったり~ そして、宝石を取り付けて~ はい、各種宝石のリングの、完成です! サイズとかは分からないけど、何なら少し切り取って密閉シーラー魔法でくっつけても調整できるだろうしね、これは見本だから、いいや」
***
「はう! なんか気が付いたら、結構な時間が過ぎていない?」
『はい、救い主様。もう昼食の時間になるかと思料致します』
「うわ、そろそろご飯の支度をしないと! 僕って、結構忙しいよね?」
『民どもを使役なされば宜しいのでは無いでしょうか』
「いやいや、言い方! ま、料理はね、僕のライフワークだからね。その代わり、掃除とか洗濯とか仕入れとかさ、畑とかもそうだし、そういうのはマーちゃんたちとクーちゃんたちにしてもらっているからさ、充分だから! さ、料理料理~」
***
「さて、これでいいかな。何とか間に合った」
「ミチイル~ お昼ご飯はできたのかしら~ わたしも何かお手伝いするわ~」
「うん、もう準備は終わったから大丈夫。じゃ、ダイニングでご飯にしよう」
「ええ!」
…………
「ミチイル、これは、サンドイッチなのよね? でも、ずいぶん焦げているわよ。サンドイッチを燃やしちゃったのかしら」
「いやいや、これはね、ホットサンドって言う料理なの。こういう昼食とかね、ま、朝食でもいいけどさ、軽めに食事をしたいけど、栄養もそれなりに欲しいときなんかに便利なの。具を色々使えるしね、味のバリエーションも多いしね、普通のサンドイッチよりも、しっかり食べられるんだよ」
「そうなの……では、サンドイッチを焼いたものなのね。失敗したトーストみたい……それに見た目が茶色になってしまって、サンドイッチのオシャレ感が減ってしまっているけれど」
「いやいや、まだ切ってないけどね、これから切るから。断面を楽しむ料理なの! じゃ、最初はこれ! はい、どうぞ」
「んまあ! これは、チーズとトマトとベーコンと……お漬物かしら」
「うん、ピクルスも少し入れてあるけどね、これは、レタスじゃ無いけどベーコンレタストマトサンド、BLTサンドって言う、とってもおしゃれな食べ物なんだよ。意識高い系って言うね、必要以上に敏感な人たちの御用達なんだから!」
「良くわからないけれど、これはサンドイッチの中にサラダを詰めた感じなのね。では、いただきましょう……パクッ……あら! あらあら! ピザとは違って、あっさりしているけれど、とても風味がいいわ。サラダの味とチーズ、ベーコンの味だけなのね!」
「うん、マヨネーズと極薄のピクルスもあるけどね、基本的には具材の味だけ。でもね、こういう具だくさんのものはサンドイッチにしても零れちゃって食べにくいんだけど、こうやってホットサンドにするとね、しっかり一体化するからね、食べやすいしスマートでおしゃれなの」
「そう言われてみれば、こんなに色々挟んだサンドイッチなら、普通は食べにくいものね」
「でしょ~ そして、こっちはポテトサラダのホットサンドね。そしてこれは、ソーセージとオニオンにマヨネーズ、そしてこれは、カスタードクリームとイチゴジャムだよ」
「んまあ! いろいろな種類が……あら、ポテトサラダのホットサンドは、これはとてもいいわね。食べ応えもあるし、ジャガイモがホクホクしているわ!」
「うん。今日はね、オーブンの天板と天板の間に挟んで、重石を乗せながら焼いたけどね、これは薄切りトーストをサンドイッチにしてもね、おしゃれなの。ホットサンドは無理だけど、薄切りトーストのサンドイッチはね、一口サイズとかに切って綺麗に並べたらね、貴婦人の食べ物になるんだよ。アフタヌーンティーって言ってね、貴婦人のお茶会には小さいサンドイッチが必要だからね、その時に、普通のサンドイッチ以外にもバリエーションがあるとさ、それは身分が高い人のステータスだからね」
「な! なんですって! 今、聞き捨てならないワードが」
「うん、ま、それよりさ母上、母上にプレゼントがあるからね、後でサロンでお茶しようよ」
「な! なんで……え? サロンでプレゼントですって?」
「うん。楽しみにしておいて~」
「まあ! 何かしら……楽しみね!」
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