3-33 もち米
さて、ダンゴ好きのジョーンのために、もち米を作ってみよう、と言うか、米を品種改良してみよう……
できるんだろうか……
えっと、確か…… 一番最初の三粒で玄米にした、北海道のブランド米の残りがあったはず……あ、これか~
僕のアイテムボックスはさ、アイテムボックスであってアイテムボックスじゃ無いからね……次元の無い所にあるだけだから。ファンタジー世界とかゲームみたいに、一覧があったり検索ができたりしないしさ……探さなくても意識を持っていけば、すぐに見つかるけど、逆を言えば意識を持っていかないとね、何が入っているんだか自分でも良くわかんないよ。
無くなっても、この世界とか国には影響が無い物しか入れて無いけどさ、金属とかは、死ぬ前に出しておいた方がいいかな。
あ、そうそう、お米お米。
さ、この世界における原種の米を……そう考えるとやっぱり貴重品だよね。ま、そもそも地球から米3粒しか届いてないんだもんね、それが玄米になってるものだからさ、やっぱり貴重品じゃん。この玄米の後は選別して品種改良を繰り返したからね、これは選別する前の玄米だから……
ま、何か貴重な気分になっちゃったから、一粒だけ使おう。後は、記念に残しておくよ。残りは何千粒かありそうだけどね!
いやいや、そんな事はどうでも良かったんだった。取り敢えず、原種の玄米一粒を、品種改良スキルで玄米にピッカリンコ。そして、取り敢えず30粒くらいでいいかな、それを品種改良スキルで、稲穂の状態へピッカリンコ。
えっと、収量が多いやつの前に、アミロースが少ない米を選別していかないとね。抽出魔法でアミロース!
正直、良くわからないけどさ、アミロースなんて見た事ないもんね。見た目は白い粉だよ。でも、魔法が取り出してくれたんだから、間違いは無いはず。さ、アミロースが少なかった稲穂の玄米の残り分を、品種改良でピッカリンコ…………
うん、だんだん、もち米っぽくなってきた感じ。でも、まだ低アミロース米かな~ これも一応取って置こう。
さて、アミロースがゼロになるまで品種改良を繰り返そう。
***
「ふう、ちょっと今までに無いほど時間がかかっちゃってるよね?」
『左様でございますね、救い主様』
「やっぱりさ、何かがゼロになるのって難しいんだろうね……」
『左様にございましょうね。ですが、ほとんど完成しているのでは無いでしょうか』
「うん、そうなんだけどさ、せっかくなら、ちゃんとしたやつにしたいじゃない。ま、そもそも何かがゼロになるって、突然変異だろうからね、回数をこなすしか無いか~ 取り敢えずお昼ご飯を食べてから、続きをやる事にしようかな」
***
「さて、お昼は何にしようかな~ そうだ、久しぶりにスパゲティにしよう。今じゃスパゲティの乾麺も流通してるもんね。前みたいに、生めんから作らなくてもいいから、便利~ さ、取り敢えず麺を茹でて~」
「あらミチイル、今日のお昼はスパゲティなのね」
「うん。今日はね、魚介類のパスタ。さ、エビの殻を剥いて食べやすく切って~ イカも切って~ カニの殻も剥いて切って~ 先に殻をオリーブオイルで炒めちゃって~ トマトペーストを入れて煮込もう。さ、その間に、魚介類の身をニンニクとオリーブオイルで炒めて~ あ、サラダくらいは必要だよね」
「サラダのお野菜は、わたしが用意するわ」
「うん、お願いね。じゃ、ドレッシング作ろう。オリーブオイルとレモン汁と塩と砂糖と、おろしニンニク少しにオレガノ少々を石臼魔法でガーっと混ぜて、はい、イタリアンドレッシングの、完成です! さてさて、そろそろスパゲティの麺は茹で上がったから、いったんザルにあげておいて、えっと、魚介も火が通ったね。ここに、殻の出汁が出たトマトソースと、塩と味醂とオレガノ少々を入れて、軽くひと混ぜして~ 茹で上がったスパゲティを入れて混ぜたら~ はい、ペスカトーレパスタの、完成です!」
「まあ! 美味しそうなトマトのソースね」
「うん。いつもはベーコンとかコンソメの出汁だけどさ、これは魚介の出汁だからね、濃厚だよ! さ、パスタ皿に盛って、お供え分も……マーちゃんとクーちゃんの分も……はい、クーちゃんは部屋で食べてね~ 母上、サラダの準備はできた?」
「ダイニングに用意してあるわよ~」
「じゃ、お昼にしよう! 粉チーズも運んで~」
「赤くてとても見た目がキレイね!」
「うん、じゃあ、いただきまーす」
「いただきます……パク……まあ! これはほんとうに濃厚ね……魚介って、トマトの味にも合うのね」
「うん、そう言えば作って無かったかも……このソースはペスカトーレっていうソースだけどさ、もう少し水分を多くして、そのまま魚介のスープにもできるんだよ。貝が無いから残念だけど、エビイカカニだけでも、っていうか、逆に贅沢だった!」
「確かに、少し野菜を足してスープにしたら、とても美味しそうだわ!」
「うん。半分くらい食べたらね、粉チーズをプラスしたら、味変になって、最後まで美味しく食べれるよ」
「あら、じゃあ粉チーズをかけてみようかしら。……んん! これはさらに濃厚で美味しいわね」
「うん、トマトとチーズの相性もいいもんね」
「トマトって、色々なものと相性がいいのね。見た目が全部、赤色になってはしまうけれど」
「そう言えばそうだよね、白トマトとか、聞いたこと無いもんね。青いトマトなら早く収穫すればいいけど」
「でも、青いトマトなんて美味しいのかしら」
「うん、ちょっと癖があるけど、トマトの漬物とかピクルスとかはね、青いトマトで作ると違った感じで美味しいよ」
「あら、こんなに柔らかいトマトが、お漬物に?」
「うん、青いうちは硬いからさ、漬物、って言うかピクルスとかマリネって言った方が近いけどね。今度、離宮の菜園で青いトマトを作って試してみよう」
「楽しみね~」
「じゃ、僕は仕事があるからね、研究室に戻るから、母上はゆっくり食事しててよ。マーちゃんも、ここでゆっくりしててね」
「ありがとうございまーす!」
「あら、何かわからないけれど、頑張ってちょうだいね」
「うん」
***
さて、品種改良の続き……
ピッカリンコピッカリンコピッカリンコ……
***
という事で、もち米の、完成です!
いやー、随分と時間がかかったよ……ま、できたからいいか!
さて、離宮の裏の水産物試験場の、さらに裏に田んぼを作ろうかな。僕たちの分だけだし、10アール300坪でいいや。
では、久々の~ 『稲作文化スキル』
ピッカリンコ
おお! 当たり前になっちゃってたけど、やっぱりスキルはすごいね!
さて、一度収穫して、もち米も再度、種もみを蒔いておこう。あ、農業部にも種もみを渡しておかないとね。
あれ、でも普通のコメの近くに植えない方が良かった気がするな……花粉が混ざると、もち米にならないんだったかな……品質が悪くなるんだっけ……ま、普通の米の田んぼから、一番遠い所で栽培してもらおう。
さあ、餅を作るぞ!
***
「すくいぬし様~! さっきのたんぼも、ぼくたちにおまかせください!」
「うん、いつも悪いね、マーちゃん。よろしくね」
「はい!」
「じゃ、取り敢えずもち米を精白して、研いで、水に晒して数時間ピッカリンコと。まずは普通の餅だね。蒸すだけなら圧力鍋魔法でいいか。んじゃ、ピカッ、そんで、キッチンロイドで捏ねるかな~ でも、キッチンロイドで餅を作ると、腰のある餅は難しいんだよね……柔らかい餅なら問題ないんだけど、やっぱり杵つき餅みたいには」
――ピロン 杵つき餅魔法が使えるようになりました。餅などを思いのまま叩けます
「いや、叩けるって……ま、いいか。じゃ新魔法『杵つき餅!』 」
ピカッ ボッテリ
おお! まごうこと無き餅! ささ、スライサー魔法で切り分けて、片栗粉をまぶさないとね、そんで、おにぎり魔法で丸餅に!
「いや~ 見た目は完璧に餅だよ。さて、おひとつ味見をば……んー! もちもちもち! これはすごい! うん、餅だよ! あ、マーちゃんも食べてみて~ 味はつけて無いけど」
「はい! いただきまーす! モニョモニョ……これはとてもやわらかいでーす! ごはんのような……」
「うん、同じ系統っていうか、米だからね~ さて、取り敢えず餅を大量生産だ!」
***
「ミチイル~ 今日の晩御飯は、なに……えっと、なにかしら? おダンゴづくし?なのかしら」
「うん、これはね、ダンゴに見えるけど、餅って言うの。ダンゴみたいなものだけど、ダンゴとは別物だよ! モチモチして美味しいの!」
「そうなのね……それと……炊き込みご飯ね!」
「ううん、同じ系統だけどね、これはおこわ。今日はね、中華風のおこわなの。ま、オイスターソースとか無いからさ、全く同じとは行かなかったけどね」
「よくわからないけれど、おこわ、と炊き込みご飯は別なのね?」
「うん。これはね、もち米っていう新しい米なの。このもち米を使ったご飯は、おこわって言うんだよ。それで、これは中華おこわ。豚バラ肉とね、タケノコとニンジンを細かくしてね、甘辛く醤油味にしてあるの。ほんの少しだけ隠し味にウスターソースも入れてね、それで、本当は蒸すんだけど今日は炊飯器魔法で炊いたんだ。別に蒸さなくてもできるからね。大量だとうまく炊けないんだけど、ご家庭で作る量なら、蒸さなくても大丈夫なの」
「ますます良くわからないわね……それで、このスープ?にもお餅が入っているのね?」
「うん、これはね、雑煮って言うの。和風のスープを醤油味とかで作ってね、鶏もも肉と野菜を入れて煮込んで、そこに餅を入れてあるんだよ。これはね、
1月1日とかに食べたりする料理なんだ。ま、別にいつ作って食べてもいいんだけどね」
「まあ! では建国祭で食べるべきお料理なのね……」
「食べなきゃいけないって事はないんだけど」
「いいえ、そんなピンポイントな日付まで指定されているお料理なんて、初めてですもの。これはすぐさま、お兄様に知らせないと!」
「いや、まだ、もち米の栽培すら始まって無いけど」
「いいえ、直ぐに取り掛かるわ。来年の建国祭には国中で食べるべきよ!」
「まあ、母上に任せるよ。それで、こっちは揚げ餅ね。バター醤油で食べよう。そしてこっちは、からみ餅。ダイコンおろしと麺つゆ味だよ」
「あら、そうなの。何だか全体的に地味な見た目なのね……茶色ばかりだもの」
「まあ、今日はたまたまね。食事にするとね、どうしてもそうなっちゃうけどさ、そんな母上には、これ! 餅ピザでーす」
「あら、これはピザだけれど……パンの部分が」
「うん、ピザ生地の代わりに餅になっているんだよ。ちょっと手では食べられないけどね。食後のデザートも用意してあるからさ、取り敢えず晩御飯にしよう。じゃ、いただきまーす」
「いただきます……モニョモニョ……あら、これは、なにか、とてもデロンとして……とてもやわらかいのね。それに、まったりとして……甘みもあるわ。モニョモニョ……あら、だんだん美味しく感じて来たわ!」
「うん、パンチのある食べ物じゃ無いけどね、時々無性に食べたくなる感じかな~」
「この、おこわ! これはとてもはっきりしたお味ね! 普通の炊き込みご飯よりも食べ応えがあって、しっかりした食感ね。モニョモニョしないもの」
「うん。強いって意味で、おこわ、なんだよ。米よりも弾力があるでしょ」
「ええ、これは美味しいわ!」
「餅はバリエーションが普通の米よりも多いからね。お菓子にもなるし……和菓子なんてさ、革命が起きるんだよ」
「んま! 革命は大好物よ!」
「またそんな事を言って……皆様に勘違いされちゃうじゃん。ただでさえ、姫育ちが隠れてないのにさ、母上」
「あら、ミチイルったら~ もう姫なんて呼ばれる歳でもないのに~ うふふ」
「……お世辞ってね、母上、事実じゃ無いからお世辞なんだよ。事実を言われてもさ、事実なんだから当然の事だしさ、事実を言われても嬉しくならないの。事実じゃない事を褒められるから、嬉しくなるし、お世辞なの。わかる?」
「あら、わたしは24歳なだけで充分なのよ。姫属性は必要ないの!」
「んもう。ま、とにかく、もち米で食べ物の種類が増えるよ。ジョーンなんて……いや、どうなっちゃうんだろう……ちょっと危険かも」
「ジョーンは大丈夫よ。ちょっとダンゴが好きなだけの、ステキな女性だもの」
「うん、そっか。じゃ、食事の続き~ 僕はこれを食べよう! 母上は無理だから食べなくていいよ」
「うっ……なんなのかしら、この臭い……匂いでは無いわ。臭いよ! ミチイル、それってゴミじゃないの!」
「ゴミじゃないの。これはね、納豆って言うんだよ。北海道の米だしさ、稲わらに納豆菌は居るんじゃないかと思って試したら、納豆がちゃんとできたの! ひきわり納豆だけどね」
「いいえ、それはゴミよ! だって、ゴミの雰囲気な臭いがするのですもの! ミチイル、そんなの食べちゃダメよ! その豆?はもう星に還る寸前よ! いいえ、寸前では無いわね、もう星に還っている途中よ! そんなの食べたら、大変よ! ダメ!」
「いやいや、大丈夫なんだってば! これはね、発酵しているの。ま、母上は無理だから食べないでね。さて、ズルズル……うん、ちゃんと納豆餅!」
「いやーー!」
「ハハ ま、後で食べるよ。じゃ、食事はもういい感じ?」
「ええ、何だか急にお腹がいっぱいよ」
「じゃあ、デザート!」
「あら、デザートもお餅なの……」
「うん。取り敢えず食べてみて」
「そう。わかったわ。じゃあ……ハム……まあ!イチゴが入っているわ!」
「うん、イチゴ大福って言うの。美味しいでしょ?」
「ええ! とっても爽やかだわ! 餡子とイチゴって、合うのね!」
「ハハ 今度、ジョーンにも食べてもらおう!」
「ジョーン、倒れるんじゃないかしらね、うふふ」
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