1-20 初スキル
教会ができて、充分な期間をぽやっと過ごした後、公都と南の村も道路で繋ぐことにした。せっかくだしね、遠回りして海岸歩かなくても、まっすぐ向かえば速いと思うし。
公都より南側は、北と違って大きな岩とか無いから、トム爺たちに任せるわけにはいかないので、ほとんど僕が独りで作業した。もちろん、連れて行って貰わないと僕だけじゃ行けないから、常にトム爺は一緒だったけどね。トム爺は時々勝手に魔法使ったりしてたけど。
ブッシュ地帯に作った流しそうめん水道管に沿って、どんどん漬物石道路を作っていったら、道路が完成する頃にはブッシュ地帯から小石が全部消え失せちゃって、乾燥気味で草が生えるだけの広大な地域になっちゃった。ま、僕は材料が無くても魔法が使えるから、石が無くなっても問題ない……と思う。
僕の魔法は材料が要らないって言っても、無の状態から生み出しているんじゃなくて、この世界に存在する材料を、いわばお取り寄せして使えるっていう事みたい。なので、目の前に無くても魔法は使えるんだけど、材料が近くにあって、誰の所有物でもなかったら、それが魔法に使われるらしいよ。
これで、北の石切り場から公都を経て南の村まで、道路で一直線。北極以外は基本的に平らな大陸だから、アップダウンも無し。ま、ブッシュ地帯あたりからエデン方面に南下する時は、だんだん標高が下がっていくから少しだけ下り坂なんだけど、大したこと無いし。
人の移動にかかる労力と時間が、大幅に減ったのは間違いない。年寄や女性子供も移動できるようになったんだって。僕はまだできないけど……
そうそう、漬物石をただひたすら連発する日々を送っていたら、魔法が無詠唱で発動するようになったよ! ま、僕だけの能力なんだけどさ……
改めて考えてみると、木工、金工、石工、そして、これらが複合した建築関係? 本当は全部食文化関係なんだけど、これらの魔法が誕生してから、公国の世界が変わってきた。
税を納めるためにしている今までの仕事が、完全に片手間状態でこなせるようになって、さらに職人たちは魔法の研鑚に明け暮れるようになって、それでますます仕事が速くなったんだよね。
毎日多くの人が大変な労力を伴いながら行っていた、南の村への水運びも、塩づくりのための海水汲み上げも、する必要が無くなったし。
重労働だった石切りも魔法で行えるようになって、さらに重労働だった石運びも道路を使ってスピードアップ。足を取られる危険性も減って、前と比較すれば結構楽に運べるようになったらしいよ。
そうそう、石切り場の北で金属石を拾う仕事も、切れ味するどい刃物が作れるようになったから、魔獣もさっくり処理できるようになって、安全性が高くなったんだって。
こうやって公国の社会インフラ?が整って来たんだけどさ、肝心な食文化の方はイマイチなんだよねぇ。大公家に限って言えばオガ炭が使えるようになったから、熱源が安定供給されるようにはなったんだけど、社会的にみてみれば、マッツァが細かくしやすくなって、マッツァナンが食べられるようになった程度。しかもマッツァナンは、南の村では普通に食べられるようになったけど、公都じゃ全然なんだしね……
抜本的、根本的に食生活が改善できないと、このままじゃ、結局大した変わらない。
どうしたものか……
***
「ねえアイちゃん」
『はい、救い主様』
「食べ物を手に入れるための方法、何かないかな?」
『はい、現在ひとつだけございます』
「え? あるの? あるならもっと早く教えてよ~」
『私めは、救い主様に問われない限り、何かをお伝えすることはできない事になっておりますので』
「あ、そうだよね、AIだもんね、ごめんね」
『滅相もございません。すべてはあの女神の設計ですので』
「それで、そのひとつだけあるっていう方法はなんなの?」
『地球から任意の食物を召喚する事です』
「え? そんなことできるの??」
『星神力を使えば、異世界食文化召喚スキルで行えます。スペシャル魔法ですがスキルですので救い主様にしか使えません』
「でも、星神力ってさ、女神に貯まる?っていうのかな、この星に必要で、女神様が貯めないといけない力なんでしょ? そんな力は僕に使えないんじゃない?」
『救い主様なら、全く問題なくお使いになれます』
「そうなんだ……でも、そんな力を僕が勝手に使っちゃったら、女神様が困るんじゃないの?」
『全く問題はございません。女神が連絡が取れない間の事は、全て私めに全権がございます。今なら一度くらい異世界食文化召喚スキルを使ったとしても、不都合な事はございませんので、心配無用です』
『それに、使われて不都合な力なら、最初から救い主様に使えるようにしないでしょう。救い主様が使えるように力を与えたのなら、救い主様が使うのに何も障りなどございません』
***
――本来、神本人しか扱えない力が星神力なのであるが、女神が「お姉様の星の美味しいものが手に入らないんだったら、イエスキリストを貰った意味ないじゃない!」と、ミチイルに女神の星神力の使用許可を設定したのである。なお、本人はそのことをすっかり忘れている
***
「そっか……じゃ、使ってみようかな!」
『はい。救い主様の魔力器官が私めの想定以上に大きくなり、倍に成長なさいましたので、問題なく発動すると思います』
「ケシツブが2つになったんだね! んじゃあ、何がいいかなあ……」
『一度に出力可能な魔力の量と、使われる星神力によって召喚量の過多が決定されます。発動すれば、召喚量は今の救い主様の魔力器官と、使われる星神力に見合う量に自動調整されます。力を使いすぎて救い主様に危険が及ぶ可能性はございません。もし、魔力が足りなければ魔法は発動しませんので何のご心配も無用です』
「難しくてよくわかんないけど、やりたいようにやっても大丈夫なんだね」
『左様にございます』
「なるべくみんなが食べられるように、作物にしよう。地球の作物がうまく育つかわからないけど、頑張って品種改良して」
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――ピロン 品種改良スキルが使えるようになりました。一瞬で世代交代させられます
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「……うん、それは問題なくなったみたいだから、いっぱい実る作物がいいよね……とりあえず主食の穀物として……やっぱり米かな!」
「米は麦より多く収穫できるし、連作障害も無いしね、粉にしなくても粒のまま炊いて食べれるし! 粉にするのは大変だからね……マッツァでも大変だったのに、小麦となるとおろし金じゃ役に立たないもん。最低限、石臼くらいじゃないと」
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――ピロン 石臼魔法が使えるようになりました。粉ひきができます
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「……うん、石臼……も問題なくなったみたいだけど……なんで以前は使えるようにならなかったんだろう? あ、漬物石が使えるから石の加工能力がアップしたもんね! って、そうじゃなくて、米! 米にしよう!」
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「さあ、出でよ! 『異世界食文化召喚スキルで北海道のおいしい米!』 」
ピッカリンコ パラパラリン
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――こうしてミチイルは、初めてのスキルで作物を手に入れた
――そして、星神力が少し減ったせいで、女神の目覚めが少々遠のいた




