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3-24 遊び道具

さて、余暇を楽しく過ごすために、遊び道具を増やすことにした。


まずは、定番のリバーシとトランプね。これは鉄板だから、さっくり製造指示。トランプは数字だけで絵柄は無し。面倒臭かったからね……ジョーカーだけは作ったけどさ。そして、トランプの遊び方は適当。ババ抜きと神経衰弱と七並べとポーカー程度で充分かな。


そして、あやとりと尻取りと、鬼ごっこ、かくれんぼ、ゴム飛びならぬヒモ飛び、竹馬、竹とんぼ、紙ヒコーキ、石けり……思いつくままに教えて、平民学校で導入してもらう。


後は、お手玉ね。これは布で袋を作って、中に小豆を入れておしまい。これは年寄りなんかにもいいよね、頭と体を使うから。


そして、ガットもある事だし、ラケットを作った。製造自体は簡単だからね。でも、ボールとかは無理な気がするからさ、取り敢えずガットを小さく丸めて、鶏の羽を数本、密閉シーラー魔法で接着してさ、バドミントン風のものを作成。


ま、コートも無いしさ、バドミントンというよりは、羽根つきなんだけど、これもゲームとスポーツが融合しているでしょ、まともなスポーツは世界初だからさ、学校でやってもらおう。今までは、仕事でも無いのに体を使うなんて、そんな余裕は無かったけど、今はね、体を動かして楽しむ余裕があると思うから。


本当はボールが作れればいいんだけどさ、腸詰では球体がね……ま、ボールは無くてもいいんじゃないかな、僕、球技とか興味もないし。


後はさ、お祭りがあったら良いかなと思ってさ、収穫祭とかも考えたんだけど、年中何回も収穫できちゃうからさ、なんか収穫祭の意味がね……


それでさ、建国祭をやることにしよう。




***




「伯父上、ごめんね、呼びつけちゃって」


「とんでもありません」


「でさ、学校の方は順調かな?」


「はい。8歳になる学年は、これから3年間のカリキュラムを普通に進めていくだけですからいいとして、9歳になる学年は一年間で二年分を学習しますが、それが間に合わなくても10歳からの職業学校も一年間ありますからね、こちらも問題ないでしょう。それに、カタカナは家でも既に教えてもらっている子供も多かったようですね。そして、現在10歳の子が一番大変なのではないでしょうか。この制度を始めたのも年の途中ですし」


「うん、でもさ、その学年は今まで通りのカリキュラムじゃない? ひらがなは見習いが始まってから仕事で覚えればいいんだし」


「そうなのですが、どうせならと、最低でもひらがなも並行して勉強をしているようです。美術……と言うか、お絵描きは明確な目標が定められているわけでは無いので、必死にはなっていないようですね」


「そうなんだ。何でも途中から変えると、その時の人たちが大変なんだよね……」


「ですが、いつ始めても必ず発生する事ですので、仕方がありません。平民は、そもそも昔は学校すらありませんでした。今は全員が学校に通えるのですから、喜びこそすれ、文句を言うような民は誰も居ません」


「そっか。それにさ、全員が学校に通うとさ、周知徹底したい事とかもね、学校で知らせることが出来るしさ、この前いろいろ作った遊び道具とかスポーツ道具とか、そういうのも学校で教えたり使ったりしていけば、自然に国中に広がるからね」


「言われてみれば、そうですね、年数はかかりますが、確実に民に浸透させる機関としての役割も……」


「うん。それを利用してね、悪い施政者とかが自分に都合よく使ったりもするんだけど、そういうのはやめてね」


「もちろんです。そもそも、私に都合が良い事なんて……何かあるんですかねえ。一日も早く引退して、森の中で静かに暮らすのが、私にとって都合よい事なのですが」


「ハハ そういえばケルビーン一族は権力欲がゼロで面倒くさがりなんだった。ま、王を崇めるように教育したりとかさ、それこそ、エデンの学園みたいな教育はしないでね、って事ね」


「ああ……あの学園みたいには、もちろんしませんよ、無駄ですしね。ま、今はカナン国民は全員、救い主の民ですから、変に敵対するような事は起こりませんけどね」


「いやいや、それを言うなら女神様の民でしょ……ま、国の制度も少しは変えたいけどさ、それはちょっと置いておこう。それでね、伯父上、お祭りをやったらどうかと思うんだ」


「お祭り……なにか賑やかな感じが思い浮かびますが……」


「うん。要はね、その日は仕事はしないで、一日中、食べたり飲んだり遊んだり、家族と過ごしたりゆっくりしたり、ま、今は無いんだけど、出店で買い物したりするんだ」


「それは、一日国民全員でダラダラする日と言うことでしょうか。とても魅力的ですね」


「ハハ ダラダラって言えばそうだけどさ、たとえばね、建国祭って言うのを考えてるの。今はカナン2年だけど、毎年1月1日にはね、神聖カナン王国が誕生したのをお祝いする、誕生日みたいな感じ。毎年やるの」


「ああ、なるほど……それは良いと思います。今は誰もが覚えていますが、時間が過ぎると忘れたりしますしね、紙に記録はできるようになって数年過ぎましたが、記録だけでは無くて、年に一度、建国に思いを馳せるというのは、素晴らしいと思います。女神様や救い主様の偉業を、再度確認できますしね」


「ま、僕の事はどうでもいいんだけど、女神様に感謝を捧げる日、でいいかも知れないね。その日はね、前もって御馳走を用意しておいてさ、みんなで食べたりするんだ。それにさ、この国は核家族ばかりなんだけどさ、建国祭の日にはね、親と会ったり兄弟と会ったり、子供と会ったりさ、家族とか一族とかで、顔を合わせる機会にするの」


「それは……とても良いですね。国の誕生に思いを馳せ、女神様と救い主様に感謝を捧げ、普段離れている家族と一緒に、前もって用意しておいた料理を食べる……とても心温まる、良い一日になりそうです」


「うん。その日はね、国民全員が休み。ただ、家畜関係とかは全員が休めないとは思うけどさ。普段の週休日は基本的には休みだけど、シフトで休んでいない人もいるでしょ? でもお祭りの日は、本当に国中が休みなの。家畜関係の人は、本当にごめんなさい……あ、何なら牧場地帯に広めの家でも作って、そこで暮らす従業員とかを作ってもいいかな。そうすれば、家族はその家に集まってもらえばさ、家畜の餌やりとかの時間以外は、みんなと一緒に居られるでしょ」


「そうですね、それでしたら、牧場地帯にも数十軒、広めの公営住宅を建設するように手配します」


「うん。そこで一族とかが集まる事を考えると、普通の公営住宅の二戸分くらいの広さがいいかもね。水は牧場の井戸から引けるもんね、僕がやらなくても大丈夫か」


「はい、職人に建築させます」


「次の1月1日からお祭りを始めたいけどさ、それまでに間に合う? 牧場の住宅」


「はい、他の工事はいったん休止して、そちらを優先させますので、何も問題は無いと思います」


「そっか。じゃあそれでお願いね」


「かしこまりました」


「それとさ、紙幣制度を少しだけ、導入したいんだ」


「それは、かのエデンの王国のように、でしょうか」


「ううん、あれとは違うの。紙幣制度と言ってもね、お金が無ければどうにもならない制度じゃなくて、どっちかと言うと、クーポン制度みたいな感じ」


「……わかるような、わからないような……」


「うん、そうだよね。例えばさ、国民全員に、毎月一人当たり一万円を支給するの。そしてそのお金は自由に使える。でも、現状ではお金を使うところが無いでしょ? だから、お金を使える場所を用意するんだ。今考えているのはね、取り敢えず居酒屋と移動販売屋台だね」


「移動販売も、エデンの王国でしていましたね」


「うん。物を販売するんじゃなくてね、キッチンカーで食べ物を売るの。今はさ、レストランで給食を出しているでしょ? それしか外食の手段は無いんだけどさ、キッチンカーで単品の食べ物を売るんだ。スーパーで配給していない食べ物とかね、料理とかをキッチンカーで売る。本当はね、店舗を作って営業してもいいんだけど、まだそこまでは必要ないと思うんだ。それはゆくゆく、もっと紙幣経済が進んでからにしよう。それでね、キッチンカーとかで物を売るんだけど、従業員は普通に国民だからね、他の人と一緒。給料は出さないし、売り上げは国のもの。だから、商売って感じよりはさ、キッチンカーとかで好きなものに引き換えることができる、クーポンみたいなのが紙幣って事なの」


「少し難しいですが、要は、紙幣を少し支給して、その紙幣の範囲内で、普段はスーパーに並んでいない物を買うことができる、と言う事ですね? 売り上げ競争や給料などは発生しない」


「うん。国民のね、レジャーとして選択肢を増やしたいの。色々考えて選んで、好きなものを買ってもいいし、お金を貯めて置いてもいいしね、楽しみの一つとして、娯楽としての紙幣制度なの。だからね、勝手に自由に商売をするのは認めない。ゆくゆくは、完全に紙幣経済というか、資本主義というか、そういうのにも進むかも知れないけど、今はしない。争いの種にしたくないから」


「わかりました。確かに、食事を選ぶと言うことはありませんからね、レストランの給食は日替わりで決まった料理が出ますから」


「うん、それを選ぶ楽しみを提供したい。キッチンカーはさ、お好み焼きとか、中華まんとか、クレープとかさ、そういうのを一種類だけ売るキッチンカーをたくさん作って、希望者に製造と販売を任せるの。給料は払わないからね、純粋にやってみたい人を募集して、やってもらう。居酒屋はね、その名の通り、お酒がメインのレストランかな。おつまみとかとお酒を出す。メニュー表を作ってね、そこから選んでもらう。そしてお金を払わないとダメだからね、お酒を飲みすぎたりもできないの。居酒屋が開店したら、レストランでお酒を出しているのは止める」


「それはいいですね、飲酒量の管理を紙幣で行うという事ですから。今は何も問題は起きていませんが、支給される紙幣の範囲内で、お酒を飲んでもいいし、食べ物を買ってもいいと」


「うん。なんとなく解ってもらえた? エデンでやった紙幣・貨幣制度とは違うでしょ?」


「そうですね、民へ娯楽を提供するのが一番の目的という点が、違いますね」


「うん、わかってもらえてホッとしたよ。それでさ、今はまだ何も動いていないんだけど、魔道具を作る予定なの」


「魔道具というと……冷蔵庫とかの魔道具ですか?」


「うん、そうなんだ。今の魔道具は電球とかもさ、配給でしょ。でも、これから作るつもりの魔道具はね、生活に絶対に必要なものじゃ無いの。でも、あると便利かも?みたいな感じなのね。だから、その魔道具も、必要な人と、要らない人が出てくる。それで、その魔道具も紙幣で販売するつもりなの」


「ああ、それで紙幣制度なのですね。魔道具は、電球の時もそうでしたが、全員に行き渡るまでに時間がかかりますからね、欲しい人はお金を貯めて早く購入して、そうでもない人はお金を違うことに使うんですね」


「うん、本当に伯父上は理解が速くて助かるよ。だから、魔道具が出来てくるまでには少し時間がかかるかも知れないからね、今のうちに紙幣制度を少しだけ、導入しようと思って」


「わかりました。それで、紙幣はエデンで使っていたのと同じで良いのですか?」


「うん、同じでもいいし変えてもいいけどさ、エデンで使っていたのは止めにしちゃって、新たに作った方がいいかも知れないね。今度は数字だけで10000円と1000円にしたらいいんじゃないかな。簡単だしさ。それでナンバリングも新たに開始してもらって。そうそう、銅貨は作ろう。100円ね。小さくて薄くて軽い銅コインを作ってさ。それで最小販売価格は100円って感じだけど、実際は100円で売るものは当面は無さそう」


「かしこまりました」


「それで、前も話したけど、紙幣とコインの製造と管理は、王家でやってね。紙幣の用の紙と、銅コイン用の銅板、もしくは型抜きだけしたコインの元は納入させて、後の焼き印とナンバリングとコインの型押しは王家でやってもらえる? まあさ、本気になればいくらでも偽造はできちゃうんだけどね」


「そのような事をする民は、居りませんので大丈夫です」


「うん、じゃ、取り敢えず、それでお願いね。キッチンカーの方は、ジョーンにでも詳細を伝えておくからさ」


「かしこまりました」




***




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