1-19 4歳になった
あれから時間が経って、僕は4歳になった。
北の石切り場から公都への道路は無事に完成した。僕も時々連れて行ってもらって、トム爺や他の石切り職人に混じって、石を切ったり、道路づくりの手伝いをしたり。
そうそう、石工職人の現親方も、漬物石魔法が使えるようになった。これから魔法を使える石切り職人も増えていくだろう。
金工系と木工系と石工系の魔法が使える職人集団ができる日も、近いんじゃないかな。
魔法が使える人が増えるにしたがって、仕事に必要な時間が結構減ったって話。どうも半分くらいに仕事時間が減ったらしい。今まで、生きていくだけにすべての時間を使わざるを得なかった公国人の男性たちは、空き時間が増え、女子供の仕事を手伝ったり、女神様に感謝する時間ができたりして、結果的に女神信仰が深まった。
今はみんな個人個人で女神様に祈りを捧げているんだけど、そろそろ教会が欲しい。漬物石で教会が作れるんじゃないかなって思うんだよね。僕の魔力器官も、結構大きくなってきた実感もあるしね。
お祖父さまに相談したら、大公屋敷の敷地の入り口前の土地に、教会を建てても良いことになった。僕は建築の知識とか無いから、教会は三角屋根でシンプルなシューズボックスタイプのワンルームにしようと思う。だいたい学校の教室くらいの大きさでいいかな?
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「母上~ そろそろいい?」
「ええ、もう大丈夫よ。早速外へ行きましょうか! もうドン爺たちも来てると思うわ」
「はーい」
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「いいか、お前たち! 今日は救い主様が女神様の教会を作られる。何を見ても、決して騒ぐな! そして、救い主様の偉業をしっかと目に焼き付け、子々孫々まで語り継ぐんじゃ! よいな! カッカッカ!」
「(うわ、なんか大勢の人がいるね……公都にこんなに人がいたんだ……)あっ! トム爺! ドン爺も! お待たせ~ 教会見に来たんでしょ? まだできてもいないけど」
「おう坊ちゃん、もちろんじゃ! のう、ドン」
「ほっほっほ。楽しみじゃのう」
「あ、そうそう、ドン爺たち、銅石と鉄石、集めてといてくれた?」
「坊ちゃん、抜かりはないぞい。ほれ、あそこにある」
「じゃあ、やっちゃうね! 皆、少し離れててもらえる~?」
「ミチイル、無理だけはしないでちょうだいね……心配だわ……」
「はーい! そんじゃ」
***
『漬物石』 ピカッ
『漬物石』 ピカッ
『金串』 ピカッ
『パスタマシーン』 ピカッ
そして最後の仕上げ……
『漬物石』 ピカッ
***
「できた~」
「な、な、な、なんと! さすがはわしの坊ちゃんじゃ! カッカッカ!」
「誰がおんしの坊ちゃんじゃ、坊ちゃんはのう、わしが最初に」
「きゃ~っ! ミチイル、すごいわ! こんな立派な建物が一瞬で! かわいいミチイル、さすが私のミチイルね!」
「う、うん……とりあえず、中へどうぞ~」
「す、すごいの! さすがじゃ! カッカッカ!」
「ほんまにのう……」
「みんな~、好きな時に自由に教会に来て、たくさん女神様に祈りを捧げてね~」
***
さすがに直後はちょっと疲れたけど、無事、思い通りに教会が建った。
壁はコンクリートブロック積み風、床は石畳、屋根は鉄骨でテントみたいに骨組みして、その上に銅板瓦葺き、仕上げに室内に石造りの長ベンチを並べてみた。祭壇や女神像は特になし。ちゃんとした女神様の姿を知らないからね、僕。それと、木材使えないから、入り口と窓は穴を開けているだけだけど。
あ、でも食べ物が増えたら祭壇作って、お供えしてもらわないとね。食べ物が足りない今は無理だもん。食べ物増やす方法も思いつかないし……
僕が魔法を使うと、ほんとチートだと思う。
他の人が同じものを作ろうと思うと、こんなに一瞬でできないはずだもん。漬物石魔法はトム爺たちもできるから、床と壁は作れると思うけど材料の石が必要だし、鉄骨と銅板瓦を作るためには、金属石だけじゃなくて、金属を溶かした状態にしておかないとならないと思うし、それに、漬物石魔法以外は任意の場所に設置できないからね、僕以外の人は。鉄骨と銅板瓦を作れても、設置のための建設工事が必要だもん。
でも、多少工事が必要だとしても、魔法を使える職人たちと材料があれば、このくらいの教会なら一日でできる気がする。魔法が無かったら、一体何日かかるだろうね……そもそも鉄骨も作れないだろうから、魔法が無いと今の文明じゃ同じものは無理かも。
そして僕の場合、本来は材料の金属石すら必要なかったけど、今回は一気に作るから、万が一のことを考えて金属石だけ用意してもらった。石を運んでもらうのは重いし申し訳なかったからね……道路工事の時も、公都に近づくと周りに材料の石が少なくなってくるから、北から石を運んで作ってたもん。でも、石より軽い金属石ならって思って。
だけど、教会を建てた感じからすると、僕は多分、金属石も必要なかったと思う。
ま、何にせよ、これで女神信仰が、もっともっと大きくなればいいな。
あ、そうだ。教会の数も増やそう。とりあえず南の村かな……
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――アタシーノ星で初めての教会ができ、祈りを捧げる人と回数が激増した事によって、この世界の星神力が一気に増える事になる
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教会を作ってから、またしばらく時が過ぎた。
直ぐに南の村にも教会を建てようと思ってたんだけど、職人たちが、自分たちで同じものを作ってみたいと言うから、お任せしてみた。
時間は少しかかったらしいけど、僕が作ったのと遜色ない教会が建ったって。僕はまだ現物みてないの。でも、これでさらに祈りが増えると思う。
***
「ねえ、アイちゃん」
『はい、救い主様』
「僕、結構魔法使ってるし、僕の魔力器官、だいぶ大きくなったんじゃないかと思うんだけど」
『そうですね、かなり大きくなりました』
「やった! そうなんだ、やっぱりね、良かったよ~ 教会も一気に建てられちゃったもんね~」
『そうですね、素晴らしいです。きっとあの女神も喜ぶでしょう。あちらの事情のせいで、まだ連絡がとれませんが」
「そうなの? 天使が神と連絡とれないって……大丈夫なの?」
『全く、一切問題ございません。私めがいれば救い主様に不都合なこともございませんから、ご安心を』
「うん、アイちゃん、頼りになるよね~ でさ、僕の魔力器官、どのくらい大きくなって、後どのくらい大きくなる余地があるの?」
『はい、救い主様の魔力器官は、とても大きくご成長されまして、たとえて言うなら、芥子粒くらいの大きさになりました』
「けしつぶ……アイちゃん、もしかして僕の事、馬鹿にしたりしてなーいー?」
『どんでもない事にございます! アルビノ人の魔力器官は、器官と言ってはいますが、元の大きさは細胞一つ分ですので、肉眼で見えないレベルの大きさです。ですから救い主様の現在の魔力器官の大きさは、それから見ると何千倍もの大きさなのです! 救い主様の事を馬鹿にするなど、決して! 決して! 決してそのようなことは! かくなる上は、そこらの豚にでも入って』
「あああ、アイちゃん、冗談だよ、冗談!」
『そうでしたか、安堵致しました』
「でも、芥子粒っていう表現は、あまり喜ぶ人はいない気がするから、違うたとえの方がいいかも~?」
『そうだったのですか……事実をわかりやすく端的にお伝えしたつもりでおりました。申し訳ございません、救い主様。私め、もっと精進してまいります所存』
「ハハ、それは大丈夫、アイちゃんは今のままでいいよ~ それはそうとさ、後どのくらい大きくなれるの? 魔力器官」
『はい、理論的にはいくらでも大きくなると思いますが、仮に救い主様が今のペースで魔法を使い続けると仮定すると、だいたい一万年ほどで、クルミくらいにはなるのではないでしょうか。誰も到達したことのない領域の話ですので、証明はできませんが』
「ハハハ、一万年も生きられるはずがないから、そんな心配はいらないよね~」
『…………』
「まあとにかく、魔法はいくら使っても、もっともっと使っても、何も問題ないってことだよね? ある日突然、魔力器官が膨れて破裂したり、口から飛び出たりはしないってことだよね?」
『はい、そのような心配は、全くご無用にございます』
「あー、安心したよ~」




