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3-22 パイプオルガン

さて、魔石を使用した魔道具が作れることはわかった。


これは、色んな可能性が広がるよね……でも、みんな魔法が使えるからなあ……アルビノ村時代に有ったらね、きっと便利だったと思うけど。……調理関係の魔道具があれば、このカナンでも便利にはなるかも知れないし、ちょっと宿題にして置こう。


さ、気を取り直して、パイプオルガンを完成させなきゃね……そもそも、そのために研究を始めたんだもん。でも、別にパイプオルガンなんて必要も無いんだけどさ……地味に面倒くさい……


…………


ま、取り敢えず、パイプの太さを変えたりするのは面倒だから、同じ太さの丸い筒を、竹で49本作ったよ。もちろん流しそうめん魔法で。


そして、パイプの下の方にレンジフード魔法の魔法陣を仕込む。下から空気を吹いて、上に音が抜けるって感じだね。そこは本物のパイプオルガンと同じで、違うのは魔法でパイプに空気を直接送るって所かな。本物は鍵盤押したら空気穴が繋がって、大元のフイゴから空気が流れてきて音が鳴ると思うけど、いま作ってるのは、いわばパイプの一本一本にファンが付いているようなもんだからね。


さて、面倒な魔法陣の下ごしらえが終わった。って言うか、僕が作るとさ、本当はイチイチ最初から作らなくてもいいんだよね。まあ、そもそもペルチェ導線も要らない感じなんだけど、一応、パイプに収まる感じのレンジフード呪文魔法陣ををペルチェ導線で一つだけ作って、後はそれを見ながら針金魔法で同じものをイメージして量産するだけなの……これは多分、僕しかできないと思う。建物を建てたりする時に、二つ目からはイメージだけでいっぺんに建てられちゃうのは、僕だけだからさ……ま、チートだけど、しょうがないよね、使えるんだもん。


という事で、ミニレンジフード魔法陣も49個量産して、パイプの下に取りつける。そして、パイプが鳴るようにリコーダーみたいに切り込みを入れていく。これも、まな板魔法ですぐ。こうして、レンジフード魔法を起動したら、取り敢えずはボーーと音がなるパイプが完成。


後は、一番長いパイプをドの音っぽくなるようにパイプの長さを調節して、半音階ずつ49本のパイプを少しずつ短く切断。ま、これは聴いた感じの適当だね。数値化できるチュナーがある訳じゃないしさ。で、レンジフード魔法陣に接触させるようにペルチェ導線を接着し、これで魔力が流れると音が鳴る、チューニング済みパイプが49本完成。


後はこれを木枠型の箱にぴっちり並べて、下には隙間を空けておいて、中に入れたパイプが動かないように接着。全部長さが違うパイプは、底面は揃えて、切りっぱなしの上側は、それぞれ長さがまちまちだね。ま、大きな箱に隠してあるから、外側からは見えては居ないけど。そしてペルチェ導線は下の隙間から手前に持って来て置く。順番が狂わないように、慎重に……これで、上半分にパイプオルガンのパイプだけが収まった、押し入れくらいの大きさの箱の音が鳴る部分ができた……予想より、でかっ!


ああ、だんだんさらに面倒になってきたよ……


取り敢えず、スイッチ代わりの鍵盤を作らなくちゃ。僕が普通に弾けるように、地球の鍵盤と同じ感じにしよう。鍵盤サイズの、細長い部品を49個、半音部分のは黒色に、白鍵部分のは白色に食紅魔法。そして、これを全部、シーソーみたいな構造にする。鍵盤シーソーの側面中央部の真ん中に、型抜き魔法で穴を開けて、その穴にフィットする感じの金棒を針金魔法で作成、そして鍵盤の穴に入れる。鍵盤と鍵盤の間には、丈夫なガット糸を巻き付け、ワッシャーみたいな機能を持たせて、鍵盤同士が擦れあわないようにする。そしてシーソーの手前側を押せば、反対の向こう側が持ち上がる構造の鍵盤を作成した。


黒鍵を白鍵の間に入れるのは、細工が面倒だったら、黒鍵は別な段の二段式鍵盤にしたよ。下段は白鍵だけ、そして上段は黒鍵だけね。弾きにくいけど、黒鍵はおまけだからさ、ハ長調の曲なら黒鍵必要ないし、そもそもの話を言えばパイプオルガンだって、必要は無いんだもん。ちょっと作れるかどうか研究しているだけだからさ……


そして、鍵盤の向こう側、鍵盤を押し下げたら持ち上がる所に、小さな魔石をセット。魔石が持ち上がったらペルチェ導線に接触するようにする。鍵盤を離せば、反対側の魔石の重さで自然と鍵盤手前が持ち上がって、魔石とペルチェ導線が離れる。これを49音、半音付き4オクターブ分を細工して、鍵盤シーソーの手前部分だけ見えるように、シーソー軸から鍵盤奥は隠れるような箱を作り、それを被せる。


さあ、これで押し入れ一個分サイズのパイプオルガンが完成した、はず。見た目の形はアップライトピアノっぽい。


鍵盤を押したら、箱に隠れている奥の魔石が上がって、各パイプから伸びているペルチェ導線に接触、各パイプのレンジフード魔法が瞬時に作動して、パイプからリコーダーみたいな音が鳴る……はず。


さてさて、めっちゃ弾きにくそうだけど、ぱっと見、一応ちゃんとオルガンになっているパイプオルガンを弾いてみよう!



ポーポーポー


プワープワープワー


「お! ちゃんとそれっぽく聞こえるし、音もちゃんと鳴ってる! ま、適当なチューニングだけどさ、この揺れ揺れな不安定な音も、これはこれで良い感じ~ さ、何か弾いてみようかな~ 小学生以来だけど……小学生の時、最後に発表会で弾いた、あれ、何だっけ……ブルグミュラーの……そう、スティリエンヌ! そう言えばこの曲、おかんの時代はスティリアの女とかいう題名だったって言ってたな。スティリアの女だったらさ、間抜けな女性が踊り狂っているような曲に聞こえちゃうよね~プププッ ……いやいや、話しが脱線したし、そもそも曲ももう忘れてるし、そもそもこれはオルガンだしピアノじゃ無いし、鍵盤もまともじゃないんだから、普通に弾こうなんて無謀だった。ま、せっかく和音も鳴るんだから~ えっと、ミ・ミレド・ド・レ・レ・ミレド・ソ・ソファミ・ミ・レドレミドー~と。伴奏は和音を鳴らしただけだけどさ、それでも単音だけよりは、ずっと音楽っぽい! ちょっと音が不安定だけど」


「す、すごいですー! すくいぬし様~」


「そうでもないんだけどさ、小学生までしかピアノもやってないし、そもそも、ろくに覚えても無いからね……でも、結構弾けるもんだな~」


「これは、うたはないのですかー?」


「うん、あるんだけどね、歌詞は何かの面倒くさい所に引っかかるかも知れないからね、メロディーだけなの。メロディーは大昔のメロディーだから、問題ないんだよ」


「よくわかりませんけど、わかりました!」


「ハハ じゃ、次は何を弾こうかな~ って言ってもあんまり覚えてないんだけどね!」


「ちょっとミチイル! 今、何か、音楽っぽい感じの! 何か! 音が!」


「ああ、思っていたよりも遅かったね、母上」


「今のは何なのかしら? この大きな茶箱? これ? これなのかしら?」


「ああ、まあそうだけど。これはオルガンっていう楽器なんだ」


「おるがん……」


「うん。音が一度にたくさん出せるんだよ。でもね、琴と違って、演奏するのは難しいからね、単旋律くらいならいいけど、それ以上はやろうと思わない方がいいと思うの。大人になってから無理やりやるとね、手を傷めたりするからさ……ま、これは僕の研究用に作っただけだから、特に広めるつもりは無いの」


「あら……そうなの……なにか……そうね……わたしは……もう……歳を……歳……」


「あーあーあー、母上! そういうつもりじゃないんだって! 本当に危険なの! ま、練習しても触っても好きに遊んでもいいからさ、無理はしないで欲しいの。あ、僕の研究室に置いておくと、遊び辛いと思うからさ、これは客間に設置しておくから。客なんて、どうせ誰も泊りにも来ないしね、どう?」


「え、いいのかしら? 救い主限定の天上の音楽を演奏する楽器なのでしょう?」


「いやいや、そういう訳じゃないからさ、とにかく、手が痛くならない程度に遊んでよ」


「ええ、わかったわ!」


「それにさ、琴だって極めたらどう? もっと曲もあるからさ、どんどん教えるから!」


「まあ! それは楽しみね!」


「うん。じゃあさ、サロンでお茶にしようよ!」


「ええ、そうしましょう。今日のおやつは何かしら~」




***




「さあさあ、お茶にしよう!」


「ええ、もうお紅茶も入るわよ」


「うん。今日はね、ジャーン、オレンジジュレでーす」


「まあ! これはとってもキレイ!」


「うん。パフェグラスに入れてみたからね」


「ぱふぇ……」


「うん。本当はね、パフェっていうスイーツのための器なの。でも、高さもあってさ、全部ガラスだから側面が見えて、綺麗でしょ」


「ええ! それに、上の方がユリのお花みたいに広がって、とってもエレガントよ!」


「うん、あ、せっかくだから、フルーツパフェもここで作っちゃおうか。アイテムボックスから出して行くだけだし」


「まあ! また新しいスイーツなのね!」


「うん、じゃあまずは、パフェグラスの下に粗く割ったクッキーを敷いて……そこにホイップした生クリーム、カスタードクリームに、カットした桃でしょ、そして生クリーム、さらにイチゴを乗せて、生クリーム、皮を取ったオレンジでしょ、そして生クリームとカスタードクリームに~仕上げはバニラアイス、横にイチゴを飾って~、はい、フルーツパフェの、完成です!」


「んまあ! なんて美しくて、もりだくさんなスイーツかしら!」


「うん、じゃあ、パフェスプーンで食べよう。いただきまーす」


「いただきます……ハム……まあ! これは見た目通りで、決して裏切らないお味ね」


「うん。少し食べたらオレンジジュレも足して食べたりしよう。んー、フルーツと生クリームは、信頼の味!」


「ほんとうね。でもカスタードクリームも、とてもフルーツに合うわ!」


「うん、カナンに来て、オレンジとか一気に食材が増えたからね」


「そうね、それに民にも余裕が出てきて、今まで作れなかった物も作れるようになったわ」


「そうだよね……まだ世に出して無いものもあるし、必死に大量生産をしなくてもいいなら、少し手間がかかっちゃうものも、出してもいいかな」


「ええ、そんな事、ミチイルは考えなくても大丈夫よ。無理なら民は作らないと思うわ。ミチイルの指示なら別だけれど、みんなで頂くものなら、ほどほどに作ると思うのよ」


「ま、そうか。どこかに売る訳でも無いしね、時間がある時には作れる、みたいな感じで充分だし、選択肢が増えるって事が大切かも知れない」


「そうよ。だからミチイルは、何も気にせずに、やりたようにやればいいわ!」


「うん、そうしようかな」


「それに、この離宮なら人目も無いし、より気にせずに済むじゃない。それこそ、楽器の音だって、街までは絶対に聞こえないわ」


「そりゃそうだ~ ついでに新しい料理の匂いとかも届かないもんね~ 色々な燻製とかを作るのもいいかも~」


「楽しみね!」




***




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