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3-21 魔力の作用

琴は、職人に見本を渡して、作り方も教えておいた。少し難しいけどさ、いくつも作っていくうちに、作れるようになると思うんだ。


ついでに、木工職人に、笛の存在も教えておいた。一応さ、流しそうめん魔法で木の筒を作ってさ、筒の両端を切り落として、さらに、笛の吹き口状に加工した部品を取り付けて、筒に切り込みを入れたらさ、音は鳴るんだよ。ただ、音階を作るのが難しいだけで。穴を開けて、指で押さえたりすると音が変化するんだけど、って言っておいた。


ま、暇があったら研究するだろう。


でさ、穴を開けたりするのは良くわかんないし、難しいんだけどさ、取り敢えず笛の音は鳴る。だからさ、筒の太さとか長さとかを変えたらさ、音階ができると思うのね。パイプオルガンとかがそうだしさ。


パイプの太さ長さを変えるのはいいとして……人間の息なんてね、たかが知れてるし、空気を送り込むには……ふいごだよね。ま、その位なら作れそうな気もするけど……ん? 空気を、送る……レンジフード魔法があるよね。あれをパイプの一本一本に取り付けたら……魔力を送るだけで音が鳴りそう。


でもさ、レンジフードは使っている間中、魔力が必要なんだよ。だから事実上、僕しか使えない訳なんだから。


うーん、魔力を流し続ける……やっぱり魔石……だよね。魔石から魔力を取り出せて、それを自由に使えれば……


そう言えば、電球も魔力を使って明かりにしていると思われるんだけどさ、この離宮といい、王宮といい、スイッチ式の照明になったんだよね……あれって、どうなってるんだろう。魔石をセットするのはスイッチボックスの所なんだからさ、スイッチを入れると電気が点くでしょ……まさか無次元魔法で魔力を飛ばしてるんじゃないよね?


『はい、救い主様。あの仕組みには無次元魔法は使われてはおりません』


「ああ、アイちゃん、そうだよねぇ。いくらスキルで建てたとはいえ、特に説明も無かったんだからさ、冷蔵庫スキルとかと違って。という事は、純粋に魔石のエネルギーでしょ?」


『左様にございます』


「どうやって離れた魔石からエネルギーを届けているの? 光る部分まで」


『はい。魔力を吸収して魔力を満たす素材が使われております』


「そんなのあった? それじゃまるっきり電気の銅線と一緒じゃん。……ん? 銅線? もしかして、銅に魔力が通るの?」


『いえ、銅は魔力を通しません。魔法になれば形は自由自在でございますが、魔力そのものは通しません』


「そうだよね、魔法は魔力を何らかの力に変化させて、対象物に作用しているんだろうから、魔力そのものじゃないよね。じゃあ、魔力を通す……金属……そう言えば、ペルチェ石の金属は魔石から魔力を吸い上げて?魔力を使って? とにかく魔力を直接使って冷えたよね」


『左様にございます。照明のスイッチボックスには、ペルチェ石の金属が導線として使われている様でございます』


「そっか! あれは冷たくなるだけじゃないんだ! という事は、電球にも使われていたんだね? だから電球は熱くもならないんだ!」


『左様でございます』


「そうなんだ。魔石を収納するところにスイッチを付けて、そのスイッチと電球をペルチェ石の金属で繋げば……離れた所でも魔力が使える!」


『そうであると思料致します』


「それってさ、電気みたいに一周する回路の必要があるの? 電力の流れを作らないとダメみたいに」


『いえ、魔力が届けば作用致します。使用後の魔力は星に還るだけでございますので』


「という事は、魔石とペルチェ石の金属の導線……面倒くさいから、ペルチェ導線でいいか、ペルチェ導線でレンジフードを繋げば、魔石やスイッチから離れた所でもレンジフードが使えるかも? 魔力を流し続けなくても?」


『左様にございます』


「それってさ、タイムラグとかはあるの? 例えば、離れすぎると起動まで時間がかかるとか」


『この星の魔力は、元は大宇宙の無次元の力でございますので、基本的には瞬時に作用致します。作用物が無い場合、例えば空気中ですと、魔力が漂うだけでございますので、距離によって時間がかかります。そして時間が経てば魔力も拡散してしまいます』


「ああ、北極とかから出ている魔力が南下して……ってやつだよね。でも、ペルチェ導線を通ると、魔力は減らない?」


『ご質問の答えと致しましては、否でございます。通っていると言う表現が正しいかどうかは置いておいて、魔石の魔力はペルチェ導線に瞬時に満たされますが、ペルチェ金属が冷えるのに魔力が使用されますので、魔力はその分、減ってしまいます』


「ああ、そうか。それで冷蔵庫とかになるんだもんね……ん、そうすると、ペルチェ金属板の厚みとか面積に比例して魔力が使われるんだから、それこそ細い導線にすれば、魔力はあんまり使われないよね?」


『左様であると思料致します』


「うんうん、なんかいい感じになってきた! ペルチェ石の他には、魔力を使えたり吸い出すものって、無いの?」


『世界に自然に存在するものについてでございましたら、他にはございません』


「うん? 何か迂遠な言い方に聞こえるんだけど……他にはあるの? 自然物じゃ無いとすると、例えば創造物?制作物?とか?」


『はい、ございます。救い主様が理を構築し、魔法となって製造可能になったものがございます』


「え、僕が作った?」


『はい。それは理が確立致しましたので、現在では魔法を使用して広く制作されておりますし、かなり以前から使われております』


「ええ? もしかしてクイズなの~?」


『いえ、そのようなつもりはございませんが、救い主様が初めてお創りになられました、魔道具でございますので』


「ええ……魔道具って、魔力を使って何かをする道具だよね……電球とか冷蔵庫とか、そんなものくらいじゃない?」


『ヒントを申し上げます。その魔道具は魔石を使用致しません』


「ハハ アイちゃんもなかなかイケズだよねえ! えっと、魔石を使わないで、魔力を使う……流す?……あ! 水道管だ!」


『左様にございます。この世界初の、魔道具でございます』


「ああ、そうだったんだ~ じゃ、レンジフードとかも魔法じゃなくて魔道具として作れる?」


『救い主様でしたら、何も問題はございません』


「僕以外だと、問題があるの?」


『はい、そのままでは魔道具として制作不能であると愚考致します』


「そのままじゃ無かったら……何か別の方法で?誰でも作れるって事?」


『魔力を直接作用させるもの……この場合は水道管ですとか、電球ですとか、そういうものであれば救い主様で無くとも製作が可能でございます。しかし、レンジフードは、レンジフードと言う魔法でございますので、魔力を魔法に変換させる仕組みが必要でございます。救い主様は無詠唱で魔法が発動致しますが、人間どもの場合、呪文が必要でございますので……』


「ああ、そうか。僕が作るなら、魔道具も無詠唱になっているんだね……えっと、呪文の詠唱が必要なのは、理を明確にして魔法を起動させるため、だったっけ?」


『左様にございます』


「という事は……もしかして、理を明確にする方法があれば、呪文を唱える必要も無くなったりしない?」


『前例が無いので判りかねます……が、理論から言えば、その可能性はございます』


「そう言えばさ、魔法陣は無いって言っていたでしょ?」


『はい、この世界に魔法陣はございません』


「魔法陣ってさ、僕も良くは分からないし、ファンタジー世界のものだから使用経験も無いんだけどさ、理っていう視点から考えてみたら……魔法の理を定義して、作用範囲とか、効果とかさ、そういうのを明確に宣言するって言う感じ、かなって思うんだ。そう言う宣言として口に出す代わりに、魔法陣が詠唱代わり、って言うか……魔力を流せば、その魔法陣が、声に出さなくても呪文と同じ働きをするって言うか……」


『そうなのですか? 私めにはデータがございません』


「そっか。ラノベとかの知識も無いって言ってたもんね、アイちゃん。……ま、仮定なんだけど、そう考えるとさ、魔法陣じゃなくても、例えば文章とかを書いてね、そこに魔力を流せば、詠唱代わりになったりしそうな気がするんだ。魔法陣じゃ無いけど、魔法の呪文の文章が魔法陣と同じ感じ?」


『……魔法が使われない水道管や電球とは違い、自身の魔力や魔石の魔力を使用して、詠唱代わりの呪文の文字に魔力を流し、魔法を発動させる魔道具、と……』


「うん、どう?」


『理論的には、確かに可能に思えます』


「ちょっと試してみよう。えっと、魔力を通さないと意味が無いんだから、この場合はペルチェ導線で文字を書けばいいんだよね……ピカピカっと。でも、普通に呪文を書くだけだと、文字のパーツが離れているから、全部同時に魔力が行きわたらないよね……ペルチェ導線で網の目の方眼紙みたいなのを作って、その上にペルチェ導線で作った呪文を乗せて密閉シーラー魔法で接着……ピカピカッ。そして、この……ま、魔法陣でいいや、この魔法陣を木の筒に接着して……これで、この魔法陣に魔石をくっつければいいよね、取り敢えずの試験だしね。そんで……はい、レンジフードの魔道具が、完成です?」


『試してみてはいかがでしょう』


「うん。さて、魔法陣部分に魔石をくっつけて……」


ブワーー


「おお! 風が筒から出てる! これって、レンジフード魔法が発動してるんだよね? 成功だよね?」


『そうであると思料致しますが、救い主様の場合ですと、そもそも無詠唱で魔法が発動可能でございますので……』


「ああ、そうか。僕が試験をしてもダメなのか……」


「すくいぬし様! ぼくがやってみまーす!」


「ああ、マーちゃんなら試験になるよね?」


『おそらく……』


「じゃ、マーちゃん、お願い! この筒の魔法陣部分に、魔石を接触させてみて!」


「はい!」


ブワーー


「やった! 魔道具ができた! あ、マーちゃん、マーちゃんも魔力は流せるっていうか、注げるって言うか、できるんだっけ? クーちゃんは魔法も使えるらしいけど」


「はい! すくいぬし様! ぼくはまほうがつかえまーす! けんぞくたちも、しんたいきょうかまほうはつかっていまーす!」


「じゃあさ、今度は魔石じゃなくて、マーちゃんの魔力を直接魔法陣に流してみてくれる?」


「はい! かしこまりました!」


ブワーー


「うわー! まほうがはつどうしていまーす!」


「やったね! これで魔力を直接流しても、魔石で魔力を流しても、どっちでも使える魔道具ができた!」


『祝着にございます、救い主様。私めのデータにもございません程の、世界初の偉業にございます!』


「うふふ~ あれ、もしかしてさ、この魔道具は眷属くんも使えるんじゃない?」


『理論から言えば、そうでありましょう』


「そっか~ でも、もっと改良が必要だよね、ペルチェ導線を曲げたりするのも大変だしさ~ ま、今日はこれで良しとしよう!」


『大変な偉業に奇跡に神の御業を成し遂げられましたこと、誠に行幸にございます』


「すごいでーす!」


「ハハ 二人ともありがとう~」




***




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