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3-14 品種改良祭り

離宮に戻って来た。


まずは、離宮の裏側に養殖池を作ろう。エビとイカとカニの分ね。井戸もピッカリンコして、石で大きくて深めのプールを作る。そして、あふれた水は浸透桝で星に還す。これで、水も濁らないと思うし……さ、それぞれプールに水産物を入れて、と。これって、特に品種改良の必要も感じないんだけどさ、魔獣って事らしいけど、別に暴れる訳でも飛ぶわけでもないし……このままでもいいかな。味も、普通に美味しかったしね、サイズもデカいから、逆にこれ以上大きくしても、本当に魔獣っぽくなっちゃうよ。


なにせ、エビは普通に50cmのイセエビサイズだし、イカも赤イカ?紫イカ?よく冷凍でロールにして売られている感じのイカっぽいもん。身も厚くてさ、体長も足まで入れたら1mは超えそうなレベル。そして、カニよ、カニ。カニは大きなタラバガニな感じだもんね。これ以上大きくしたら、やばいよ。


それにしても、本当にエサは要らないのかな?


『はい、救い主様。魔力のみで成長するとデータがございますので』


「ああ、アイちゃん。でもさ、豚と鶏の魔獣は、結局飼料で育ててるでしょ? それで普通の家畜になったじゃない。この水産物魔獣もそうなるんじゃないかな」


『はい、その可能性は大いにございますが、水の中の生物でございますし、魔力も普通に使用して成長すると思われますので、さらに別にエサを与えると、想像以上に大きくなってしまうのではと愚考致します』


「あ、そうなんだ。これ以上、大きくなって欲しくないから、このままにしておくよ。手間がかからないから楽だろうし」


「救い主様、この水産物の管理は、是非、わたくしの眷属どもにお任せくださいザマス!」


「あ、クーちゃん、いいの? じゃ、お願いしようかな。ここはね、試験養殖場だからね、ここで問題が無いようなら、ちゃんとした養殖場を別に作るから。それにさ、僕とか母上だけじゃ食べきれないはずだからね、ここの水産物は、クーちゃんたちのご飯にも使ってね」


「それは、大変に恐縮でございザマス!」


「でも、カニってさ、クーちゃんたちと共食いみたいな……クモの仲間と言えば、仲間な気も……しない?」


『救い主様、それに関しましては、サルと人間が仲間であるという程度の大きな分類の場合なのではと愚考致します。実際は別種であると思われます』


「ああ、良かった。ま、本当はどうでもいいけどさ、何百年間も食べて来たんだろうしね。じゃ、この水産物の管理はお願いね、クーちゃん」


「はいザマス!」


「後は、植物だね。えっと、この色とりどりの花は……見た目は紅花に見えるんだけど、これって食べたりしていたのかな?」


『どうなのだ? ハチ』


「は、はい、アイちゃん様! この花はみつをあつめるだけにしか、つかっていません」


「そっか。毒は無いの?」


『はい、救い主様。この地にある植物にも生物にも、毒は無い様でございます』


「なら安心だね。キク科っぽいし、花もキレイだしね、色々な色があるから、食紅魔法で染料が作れると思うんだ。しかし、一本の茎から多色の花とか……どうなってんのさ?」


『あの女神が創った(ごつごうしゅぎ)でございますので』


「ああ、そっか。シンプルな植物にしたんだね、どうみてもちょうど12色揃っているけどさ、絵具にでもしようと思っていたのかな。まあ、三原色があれば、結構な色が作れたはずだしね、取り敢えず、一色ずつになるように品種改良をピッカリンコ…………」


…………


「はい、これで12色の紅花、じゃなかった、色花でいいかな、色花が、完成です! さて、取り敢えず離宮の正面は色花花壇にしよう。後は、農業部に丸投げしておこうっと。食用にもできるし種から油が取れるはずだしね。さて、お次は……このシソ科っぽい草だけどさ、これも12色あるんだけど……これも紅花と同じく、染料用なのかな?」


『存じ上げません、申し訳ございません』


「ああ、大丈夫。葉っぱがシソっぽいんだよね。でも色が12色なの。ま、これも一応品種改良して色分けして置こうかな。それに、青じそと赤じそは欲しいしね。あ、シソ科ならさ、バジルとかオレガノとかもできるじゃん。さて、頑張って品種改良ピッカリンコ…………」


…………


「はい、これで12色の色草の完成です! これは染料専用にしよう。そして、青じそと赤じそとバジルとオレガノも、完成です! さ、シソ科の試験畑を離宮東側に作って植えとこう。普通なら交配して色とかぐちゃぐちゃになっちゃうんだけど、なぜだか交配はしないんだよね~ あ、もしかしたらマーちゃん達のおかげとか? 蜜を集める時に花粉とかが混ざらないようにしたり?」


「ぼくたちはふつうにみつをあつめているだけでーす」


「そうなんだ……何で交配しないんだろ?」


『はい、救い主様、そういう世界でございますので、深くお考えになるだけ、無駄であると思料致します』


「ああ、そうだね。ま、このシソ類も農業部に丸投げしておこう」


「はい! すくいぬし様! むこうのかだんと、ここのはたけは、ぼくのけんぞくにおまかせください!」


「ああ、そう? マーちゃんたちの方が慣れてるもんね、じゃ、お願いね。さて、後は……このオリーブ?だよねえ。これも、実の種類があるようなんだけど……うん、これはゴマ油の匂いがする……こっちはオリーブそのものだし、取り敢えず、実の種類ごとに分けてピッカリンコ。そして実が大きくなるのをピッカリンコ。さらに実が美味しくなるのをピッカリンコ。さて、これで、デカい実が生るオリーブとゴマの木の、完成です! ゴマが木に生るのは違和感しか無いけどさ、こういう世界だもんね、良しとしよう。ついでに、ゴマもオリーブも野球ボールくらいの大きさの実になるけど、これも良しとして置こうかな。さて、これは日当たりが良い所が適所だろうからね、離宮敷地入り口辺りに植えて置こう」


「すくいぬし様! これもぼくたちにおまかせください!」


「ああ、ありがとう。お願いね。さて、次は……豆か。これは大豆とは違うんだよね、どっちかと言うと、小豆系な感じがする。硬さの中にも澱粉質を感じるというか、カッチカチじゃなくて、すこしポクポクした音な感じ。さ、これも、赤くて小豆っぽいのと、白くてインゲン豆っぽいのにピッカリンコ。さらに、普通サイズのまま多収量に品種改良してピッカリンコ。さ、こんなもんかな。これで、小豆と白いんげん豆の、完成です! これは、シソ畑の隣だね」


「すくいぬし様!」


「ああ、マーちゃんたちの管理だね、よろしくね。そして、いよいよ最後は、柑橘か。これはスダチみたいな感じだけどさ、レモンとオレンジが欲しいな~ ま、一応、そのままスダチになる感じと、色が薄くなる感じにピッカリンコ。そして、緑色のはサイズそのまま多収量にピッカリンコして、色が薄いのは、黄色になるのと、オレンジになるのにピッカリンコ、さらに黄色のは多少大き目で酸っぱくピッカリンコで、オレンジのはオレンジになるようにピッカリンコ…………ふう、オレンジはさすがに時間がかかったわ。でも、これで無事に、スダチとレモンとオレンジの、完成です! ささ、これは離宮の西側にたくさん植えちゃおう。あ、マーちゃんたち、よろしくね~」


「はい! おまかせくださーい!」


「じゃ、後は、新作物の種を全部、農業部に丸投げして、あ、果樹は苗にして置こう。ピッカリンコと。さ、取り敢えずオレンジをたくさん収穫して、キッチンに行こう!」




***




いやー、一気に食物が増えたね~ ま、これで、この世界の食物は打ち止めだけどね。もう新天地も無いんだし。でも、海産物の水産物があるのもさ、ものすごくインパクトがデカいじゃん。それに、ごまに豆でしょ、これで和菓子が一気に進むね。あ、もち米があるとねえ、もう和菓子が完成と言ってもいいんだけど……確か、アミロースがゼロだったかで、もち米だったよね。ま、今度品種改良してみよう。今日はさすがにもう疲れたし……


さ、オレンジオレンジ~


「ふんふんふーん まずは、オレンジ皮を皮むき器魔法でペロンとしちゃいまーす。皮の白い部分をスライサー魔法でスライスしながら少なくして、さらに残ったオレンジの皮は細切りにして水にさらしまーす。あ、そうだ、オレンジの皮のオレンジ色の部分だけ、皮むき器魔法でペロンもしておこう。さてさて、皮を剥いたオレンジを半分にしたら……あれ?そう言えば、果汁を絞ったりできないよねえ……今まで果汁を絞ったジュースとか、作る余裕なんて無かったもんね。そもそも柑橘類も無かったしさ、レモン絞りも作ってな」




***




――ピロン レモン絞り魔法が使えるようになりました。圧搾できます




***




「レモンに限定されてないのね……ま、有難く使いましょ。さ『レモン絞りでオレンジジュース』 」


ピカッ ドシャ―


「おお、オレンジジュース! オレンジ色! はい、オレンジジュースの、完成です! ちょっと味見を……うまーい! マーちゃんも飲む? はい、どうぞ」


「ありがとうございまーす! ん、んんー! とってもおいしいでーす!」


「だよね~ さ、これは冷蔵スキルでピッカリンコして収納して置こう。そして、オレンジの絞りカスから、白いワタだけを抽出魔法して、残りの種とカスカスの果肉の残りと、果肉の透明な皮部分を水に入れて、砂糖と一緒に圧力鍋魔法ピカッと。おお、ペクチンがとろっと~後はザルで越して置こう。さ、さっきのオレンジの皮は……お、アクも抜けたかな。これを一度茹でこぼして、水気を絞ってから、さっきのペクチン液に全部入れて、砂糖もドバっと入れて圧力鍋で柔らかーくピカッ。そして濃縮魔法で水分を少し減らしたら、はい、オレンジマーマレードの、完成です!」


「ミチイル~ 離宮の外が、なにか植物だらけなのだけれど……って、何か作っていたのかしら」


「うん、とっても美味しいものなんだ~ オレンジが手に入ったからね」


「オレンジって言えば、オレンジ色のオレンジかしら?」


「うん。オレンジ自体は無かったんだけどさ、このカナンに柑橘類の木があってね、それでオレンジを作ったの」


「アトリエの窓から、木がたくさん見えたけれど、それなのね。緑色の実も、黄色い実もあったわよ」


「うん、緑のはスダチで、黄色のはレモン、そしてオレンジはオレンジね。それで今は、オレンジジュースとオレンジマーマレードを作っていたんだ」


「まあ! その鍋の中がそうなのかしら?」


「うん、これはマーマレードだね。ジュースは冷やしてあるよ。じゃ、ダイニングでお茶する?」


「いいわね!」




***




「はい、お待たせ~」


「わたしも、お紅茶の準備をして置いたわ。ミチイルはパンケーキを作ってくれたのね」


「うん。じゃ、取り敢えずオレンジジュースを飲もう。はい、どうぞ。あ、お供えも」


「まあ! とっても背の高いグラスね! オレンジ色がキレイ。では、いただきましょう」


「いただきまーす。んー、やっぱり冷やして氷も入れると格別~」


「んまあ! これは甘いけれどさっぱりして、でも濃厚で、でも後味はすっきりね! とってもエレガントな見た目だし、香りもいいし、美味しいわ!」


「うん、オレンジは美容にもいいからね~」


「なんですって! 美容にいいのですって!」


「うん。オレンジはね、ビタミンCがたくさんあるからね、抗酸化作用もあるし、肌のコラーゲンの生成も促してくれるからね、お肌がプルプルになるかもしれ」


「なんですって! プルプル! コラーゲンとは確か、豚骨スープの成分じゃなかったかしら?」


「うん、それをね、肌のプルプルに変えやすくなるって言うか」


「んまあ! これは大変な大変革じゃ無いの! この神ジュースを飲めば……赤子のようなお肌に!」


「う、うん、まあ、そんな感じかも……知れないね。ただ、搾りたてのジュースじゃ無いと効果が無いけどね」


「そうなのね! もしかして、わたしが搾りたてをいつでも飲めるように、わたしのお部屋とアトリエの目の前に、木をたくさん植えてくれたのかしら! まあ、さすがわたしのミチイルね! 孝行息子を持って、わたしはとっても幸せよ!」


「う、うん。……母上が喜んでくれて、良かったよ……」


「それで、この神ジュースは何リットル飲めばいいのかしら!」


「いや、一日にグラス一杯くらいだよ。これに限らず何でもそうだけど、食べ過ぎ飲み過ぎは良くないの。毎日、なるべく色々な物を少しずつ多種類を食べるのが、一番良いんだからね」


「……わかったわ。毎日木から収穫して飲めばいいのですものね! それで、このオレンジ色の綺麗なジャム?はなにかしら」


「うん、これがオレンジマーマレードだよ。パンケーキに乗せて食べるのと、後は紅茶に少し入れて飲んでも美味しいよ」


「じゃ、さっそくいただきましょう……まあ、これも爽やかだけれど、少しだけ苦味もあって、大人の味だわね。このお紅茶は……んまあ! これはとってもお紅茶に合うわ! リンゴのコンフィチュール以来の、お紅茶革命ね!」


「うん。マーマレードは料理にも使えるしね、パンに塗ってもいいし、お菓子にも使えるし、使い勝手がいいよ」


「さすが、神のジュースの木は奇跡を起こす木よね。うふふ、これで毎日……うふふ」


「まあ、飲み過ぎないようにしてよね」




***




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