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3-4 結婚問題

取り敢えず、これですぐに神聖カナン王国の民も暮らせるだろう。


僕の別邸も仮首都北の製造地帯にそのまま出したからね、今日から暮らせるし。ジェームズ邸はね、取り敢えず仮首都の男爵邸にくっつけて出して置いた。お祖父さまは別邸に居ないしさ。


「とりあえずマーちゃん、僕をエレベーター前まで連れて行ってくれる? ここから20kmくらいあるからさ、距離が」


「かしこまりました!」


「では、わたくしもご一緒するザマス」


「ええ? クーちゃん、マーちゃんと同じ速度で走れるの?」


「全く問題はございませんザマス」


「そ、そう。どうりで、最初に会った時に、猛スピードで迫って来たわけだね……」


「ではすくいぬし様、いきまーす!」




***




「あ、母上」


「あらミチイル。もう用は済んだのかしら?」


「うん。一番北の工業地帯までは出して来たよ」


「工業地帯?とは何だったかしら」


「うん。今までは工業団地って言っていたけどさ、これからは工業地帯って言う事にしたんだ。意味はあんまり無いんだけど、工業地帯の方が、なんとなく発展した感じがするからさ」


「そうね。良くわからないけれど、ミチイルの好きにしたらいいと思うわ」


「それで、民の移動はどんな感じ?」


「ええ。もう半分くらいはカナンへ上がったのではないかしら。このまま行けば、暗くなる前には全員上がれそうよ」


「よかったよ。ま、暗くなっても電球もあるしね、何とでもなるとは思うんだけど。それで母上は何をしてたの?」


「ええ。特にする事も無いから、ここで民を眺めていたのよ」


「……みんな、元気あるかな? 故郷を捨てる事になっちゃったけど」


「ええ。逆にとてもワクワクしているみたいよ。新天地ですもの、しかも女神様が約束してくださった約束の地よ! 嬉しくないはずがないわよ!」


「何をどう約束したのか分からないんだけどね、でも、全員が充分に暮らしていける土地だからね、そういう意味で、幸せが約束された土地である事は間違いないね」


「そうね。もうエデンの事は気にしなくてもいいんですもの、それだけでも気楽よ!」


「そういえば、伯母上とかは? セルフィンは名実ともに完全に一緒の国になっちゃったけど」


「ええ。それはもう、救い主様の民となったと言って、大喜びよ。まあ、エデンの王室でブイブイ言わせる事ができなくなったし、少し張り合いが減ってしまったかも知れないわね」


「伯母上はそんなに社交が好きだったんだね」


「……ええ、まあ、そうとも言えるかも知れないわね」


「それでさ母上、僕たちの別邸も製造地帯に出したからね、もう別邸に帰れるよ」


「製造地帯は……以前の中央工業団地と同じだったかしら」


「うん。各工場の位置関係も、全く同じにして出して置いた。別邸の周りだけをみれば、カナンに来た気がしないかも」


「そんな事は、些細な事よ。みんなが一緒なんですものね。お姉様たちがセルフィンから来た時には、どちらかと言うと逃げて来たとか避難してきたみたいな感じだったけれど、今回は、全員で移り住んだのよ。建物は以前と同じでも、働く人は変わるのではないかしら」


「あ、そうだよね。セルフィンの職人とか従業員も、みんな一緒に働くもんね」


「ええ。それに、もう王国へ輸出も考えなくても良いんですもの、労働力も増えて、みんな余裕が生まれるのではないかしら」


「ああ! そうだよね! もう自分たちが消費するものだけ作っていけばいいんだ! もしかしたら、本当に生活に余裕ができて、文化も成熟するかも知れない!」


「もちろんよ! わたしも美容とおしゃれに邁進する覚悟よ! 美容は一朝一夕にして成らず! はい! という事で、ミチイル~ わたし、待っているわね!」


「え? 何を?」


「もちろん、文化を成熟させるための、新たな方法とか、モノとか、技術とか、美容品とか、そういうのよ! これは神聖カナン王国での最重要課題になるわ!」


「ハハ じゃ、ま、食べ物だけじゃなくて、そういうのも作って行こうかな~」


「さんせーい! さすが、わたしのミチイルね!」


「じゃ、別邸に帰ろうか。伯父上たちとかはいい?」


「ええ、任せておけばいいわよ。お兄様たちは神聖カナン王国の王家になるのでしょう? 王家の仕事ですもの、しっかり働いてもらいましょう!」


「そうだよね~ じゃ、僕たちは帰ろう」


「では、わたくしもご一緒するザマス」


「ぼくも~」




***




「あー、帰って来たね」


「そうね、この数日の事は、なんだか夢を見ていたような気分になるわね、こうして屋敷にいると」


「そうだね。そう言えばさ、使用人はどうしようか。カンナがまた手配してくれるんだとは思うけど」


「救い主様! わたくしどもが居りましてございザマス!」


「へ? クーちゃんたちが居る?」


「左様でございザマス! わたくしどもの本職はメイドでございザマス。救い主様に一切のご不自由の無い様に務めさせていただきザマス」


「えっと……あんまり仕事がないんだよね、この屋敷」


「そうねえ、ある程度の事は自分たちでやってしまえるものね」


「左様でございましたザマスか……救い主様のメイドとなる日に備え、数百年の間、技術の向上に努めていたのでございザマスが……」


「えー、ぼくたちといっしょに、ずっとだらだらしていたでしょー、クーちゃん」


「それは言わない約束ザマス! マーちゃん!」


「ハハ 確か、休暇?だったんだっけね。でも、本当に仕事があんまりないんだけど、いい? それにクーちゃんの眷属は言葉も話せないんだよね?」


「……左様にございザマス……ですが、わたくしは問題ないザマス!」


「ミチイル、クーちゃんもこう言っている事ですもの、いいじゃないの。お仕事をお願いしましょう。わたしもクーちゃんに色々教わりたいもの!」


「ま、マリア様! わたくしでお役に立つ事なら、何なりとお申し付けくださいザマス!」


「うん、まあ、じゃあ、お願いしようか。もし誰かを呼んできて欲しいとか伝言とかは、手紙を書いて渡してもらうとかにもできるだろうし」


「そうよ! やったわね、クーちゃん。ちょうど東棟の部屋も空いているのですもの、クーちゃんが使えばいいわ!」


「母上、あそこは一応、お祖父さまの部屋だけど」


「あら、恐れ多くもケルビーン王家のご老公……あら? もう大公家じゃなくなるんですもの、なんて呼ぶのかしら」


「そう言えば……退位した王とかの呼び名って無かったかも。新たに公爵とかになったり? うーん、そう考えると、退位して大公、でもいいんじゃないかな。ま、どうでもいいし、今まで通り、ご老公でいいんじゃない? もう引退してるんだし」


「そうね! じゃ、恐れ多くもケルビーン王家のご老公様ですもの、もちろん王家屋敷でお住み頂くのよ!」


「そう言えば、王家だし宮殿とかってしてもいいかも~ 首都を作る時には考えようかな」


「宮殿! 何だか変な感じね、ケルビーン家が宮殿に住むなんて!」


「ま、王国の王家だし、その方がしっくりくるんじゃないの? 今は違和感があってもさ、そのうち普通になるだろうし」


「そうね。そう考えると、神聖カナン王国の貴族制度も、もう一度考えた方がいいかも知れないわね」


「……うん。僕たちの扱いも、どうしようかね」


「そうね……別な一家を興すものねえ。……ミチイル次第では無いのかしら」


「僕?」


「ええ、そうよ。ミチイルの子供がいるなら、別な一家として存続を考えてもいいのでは無いのかしら」


「……僕はね、結婚はしないよ。救い主の責務を果たしたら、それで死んで終わりなの。僕は、この世界の異物だから、子孫は残したくないし、残さないよ」


「……そうね。今は良くても、数百年とか経ったら、色々面倒な事になるかも知れないわね。もちろん、わたしも嫁に行く気はないのですもの。じゃあ、わたしとミチイルで終わりなのだから、このまま本家の所属でもいいわね。どうせいずれは居なくなるのですもの」


「母上も、嫁に行かないの? 歳も取ってないんだし、いくらでも嫁に行けるじゃないのさ」


「ええ、見た目はそうかも知れないけれど、歳を取っているのは確かなはずよ、実感は無いけれど。それに、ミチイルと同じ理由もあるじゃないの。わたしがミチイルの弟でも妹でも産んだとしたら?」


「ああ、確かに。何だか面倒な気配が漂うよね」


「そうよ。そもそも嫁になんて行きたくもないわ。わたしは、ここでミチイルと暮らすのよ! ミチイルに嫁が来ないのなら、誰に遠慮もせずに、大手を振って暮らせるわね!」


「ハハ ま、僕はこれ以上、家族は増やさないからね、別な一家じゃなくて、本家、王家か、王家の所属のままにしておこう。そうすると、この別邸も、離宮って感じかな~」


「んまあ! いいじゃない、離宮! なにか、とても落ち着いた住まいな感じがするわね! エレガントで高貴な雰囲気だわ! もう、離宮で決まりね!」


「ハハ じゃあさ、取り敢えずは東棟の二室は、クーちゃんとマーちゃんで使ってよ。別に北の本拠地で暮らさないとダメな理由とかが無ければ、だけど」


「わーい! すくいぬし様、ぼくもいっしょにくらしまーす!」


「ありがとうございザマス、救い主様。お言葉に甘えさせて頂くでございザマス」


「うん。よろしくね」


「マーちゃん、クーちゃん、仲良く暮らしましょうね」


「はい!」「はいザマス!」


「ま、首都が完成したら、僕たちの離宮も作り直そう」


「あら、どんな風にするつもりなのかしら?」


「うん。まだ決めて無いけどさ、オーベルジュもあるしね、色々できると思うんだ」


「んまあ! オーベルジュって、寮の建物よね? あの建物はステキですもの、離宮にふさわしいのでは無いかしら!」


「そうかもね。王宮はもっと立派にした方がいいかも知れないし。それよりもさ、ここじゃなくて、もっと外れた場所に建てたいと思うんだ」


「街じゃない所って事なのかしら? ここも工場のエリアで市街地では無いけれど」


「うん。今考えているのはね、森林地帯の中とか、いいな~って思ってるんだ。周りに誰も住んでないしね、森に囲まれて暮らすのもいいかなって思って。あまり人にも会わずに済むしさ」


「まあ、ミチイルったら、本当に引きこもりなのね」


「全く、また変な所から語彙を引っ張って来たでしょ、母上。僕はね、引きこもりでちょうどいいの! 王に国を任せるんだから!」


「……まあ、それもそうね。権力を一元化するなら、確かにミチイルが王の周りにウロウロしない方がいいのかも知れないわね」


「うん。ま、そうなったら、もっと北に行ってもいいけどね。湖? まだ見ていないけど、その近くで住んでもいいし」


「んまあ! 湖の近くですって! 想像もつかないけれど、エデンの園みたいな感じなのかしら」


「ああ、あそこもエデンの泉が近くなんだったっけね。僕は結局、泉は見なかったけどさ。食べ物とかを採って、さっさと帰ったしね」


「そうね、エデンの園は神24シリーズの原料を供給しただけの存在だったわね。桃さえあれば、後はどうでもいいわ」


「まったく。そう言えば、大洪水があったはずだよね、僕たちには全然分からなかったけどさ。エデンの王国とか、どうなったかな」


「どうでもいいわよ。助かりたければ女神様に祈って、ご神託の通りにすれば良いだけだもの。とってもシンプルでわかりやすくて、誰にでもできる簡単な事ですもの。それをしなかったやつらが、どこでどうなっていようが関係ないわ。エデンの園だって、桃はもう手に入れているのですもの、無くなっても困らないわね」


「ふむ。ま、確認のしようもないし、考えても分からない事は、考えてもしょうがないもんね」


「そうよ! それよりも、これからの楽しい事を考える方が、ずっと有意義じゃ無いの。過去を振り返っている暇は無いのよ、ミチイル。一刻も早く、美容製品や美容技術や、美容革命を起こさないといけないのですからね!」


「あれー? 文化を云々って話はどこへ?」


「美容は文化よ!」


「はいはい。じゃ、そろそろ晩御飯の準備でもしようかな」


「そうね!」


「わたくしもご一緒に作業をさせていただくでございザマス」


「ぼくも~ すくいぬし様~」




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