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3-3 国の名前

ゴイーン



「あら! あらあら! なあに、見たことが無いような美しくてステキなドレスを着た、小さくてエレガントな……何かしら?」


「お初にお目にかかりザマス、アラクネのクーちゃんと申しザマス。皆様、宜しくお願い致しザマス」


「クーちゃん、こちらは僕の母上ね」


「マリアよ、よろしくお願いするわね、クーちゃん。ねえあなた、そのステキなドレスは何なのかしら? 見たことも無い艶やかな布に、素晴らしいデザインだわ! さあ! 何をどうやってつく」


「母上……その話は後でゆっくりしてもらえる? はい、そして、こちらは僕のお祖父さま」


「ミカエルじゃ。これから世話になるの」


「そして、こちらは僕の伯父上ね」


「ミハイルです。よろしく」


「皆様、改めまして、宜しくお願い致しザマス。わたくし達は、救い主様の忠実なしもべ。どうぞよろしくお願い致しザマス」


「僕の事は、救い主って言わないで欲しいん……あれ? もしかしてさ、もう何も隠すことも無くない?」


「そうね、もう何の憂いも無くなったもの!」


「じゃあ、好きに呼んでね、クーちゃん」


「恐れ入りましてございザマス」


「じゃあさ、伯父上達、この辺りに仮首都を作ろうと思う。取り敢えずさ、神聖国の建物をそのまま収納してあるからさ、それを並べて行こうと思うんだけど」


「ミチイル様、仮首都とは?」


「うん。人口もそれなりだしね、もう少し中心部に、新たに首都を作った方が良いと思うんだよね」


「ミチイル、首都と公都は何が違うのかしら」


「うん。公都はさ、大公国だから公都でさ、首都って言うのは国の中心都市?」


「国はアタシーノ神聖国じゃな!」


「うん、お祖父さま。何かケチが付いたからさ、違う名前にしたらどうかな」


「ミチイル様、例えばどんな名前でしょう?」


「うん、伯父上。まずさ、僕は王国の方がいいんじゃないかと思うんだよね。なんかさ、宗教国家みたいになっちゃうと、僕とかの位置づけが変になる気がして。だからさ、僕以外が王ってなった方が分かりやすい感じがしない?」


「そうじゃのう、王と聞けば、国で一番偉い人と民は思うからのう」


「うん。だからさ、ここは王国でもいいかなって。そうするとね、指令系統が一元化されてさ、みんながあっちこっち迷わなくてもいいんじゃないかって気がするんだよね」


「それはそうかも知れないわね。何となく、王国って言うとエデンを思い出すけれど」


「うん。後は帝国とかってのもあるけどさ、今回の場合はちょっと違うんだよね。帝国だとさ、国をいくつか持っている感じなの。だから除外して、公国、神聖国と来て、次は王国でもいいかなと思うんだけど」


「でも、神聖国というのも女神様の国という感じがして、良かったですけどね」


「そうかも知れないんだけどさ、伯父上、この場合はね、これからはもう世界と交流を持たないからさ、国内での指揮系統が分かりやすい方がいい気がするんだ」


「そうかも知れんのう。国の名前が何になって、王が誰であっても、ミチイルが救い主である事は変わりないからのう。これからもミチイルが中心となって国を動かしていくんじゃろうが、ミチイルが命令をするというのは、逆にミチイルの価値を下げてしまうかも知れんの」


「……そうね。ミチイルは、組織の中に組み入れない方がいいのかも知れないわ。そういう次元の存在では無いもの」


「言われてみれば、そうかも知れません。では、王国でいいとして、名前はどうなさるのですか?」


「うん。アタシーノ星って言う名前なんだ、この世界。そして女神様の名前もアタシーノ神って言うんだけど、本当の名前じゃないらしいの」


「え? そうだったのかしら? 女神様の名前なんて、全然聞いたことも無いわ!」


「うん、僕も女神様の本当の名前は知らないんだけどね、どっちにしても、アタシーノって入れなくてもいい気がする。だからさ、カナン王国とか、そういうのはどう?」


「ふむ、カナンとは、この約束の地の事ですね?」


「うん。約束された地で、新たに国を興す感じ」


「いいんじゃ無いのかしら。カナン王国ね」


「でも、神聖国ってのも、とてもいい響きでしたが」


「それなら、神聖カナン王国というのはどうじゃ?」


「おお! お祖父さま! それ! それがすごくいいよ!」


「そうね、なんか言葉の座りがいいわね」


「そうですね。神の地の聖なる神の国、神に仕える王、とてもいい気がします」


「うん、じゃあ決めちゃおう!」


「神聖カナン王国ですね!」


「わしは賛成じゃ!」


「わたしもよ!」


「それでさ、その首都をちゃんと作るとしてもね、今はみんな下の海岸で避難所生活だから、とりあえずここに仮の首都を作ろうと思うの」


「なるほど、良くわかりました」


「だからさ、仮の首都だから、とりあえず以前の公都と同じように作っちゃおう。以前の公都に南村をくっつけて、直ぐ北に中央工業団地改め製造地帯、その北に農場地帯、その北に牧場地帯、果樹園と続けて行って、一番北が工業地帯、そこからだいぶん進んで資源場」


「資源場? そんな所があるのかしら?」


「うん。このカナンには、全部の資源が湧いているらしいの。僕もまだ見ては居ないんだけど」


「それは、素晴らしいですね!」


「そうじゃの!」


「ここと、工業地帯の中間くらいを広く開けておいて、そこを将来の首都にしようと思う。カナンの北には湖があるんだって。そして、その湖の北側は、マーちゃんとかクーちゃんたちのエリアだからね、資源場より北側は手つかずにしとこう」


「すくいぬし様! ぼくたちはだいじょうぶでーす!」


「左様でございザマス。救い主様のお好きな様になさってくださいザマス」


「うん、ありがとう。でも、今はいいの。そんなに広い土地も必要ないからね、充分すぎるくらい土地があるから」


「そうですね。何百年後かにはわかりませんが、今は必要ないと思います」


「うん、じゃあさ、とりあえず旧公都と旧南村を出しちゃおう! まずは、南北3km東西3kmのエリアを、1km区画で大通りを石畳してピカッ、そしてその区画をさらに1ヘクタールずつに普通の通りをピカッ、さあ、大通りに面したところ以外に公営住宅を住所順にザザッとピカッ、そして大通りに公共施設をピカッ、仕上げに、街の中心部にケルビーン王家屋敷を始め、各貴族の屋敷をピカッ、で、はい、仮首都の、完成です!」


「ミチイル、以前よりもさらに奇跡がすごくなっているのでは無いかしら……」


「そ、そうじゃな……」


「さすがミチイル様です」


「すごーい! すくいぬし様~」


「さ、左様でございザマス……」


「うん、まあね! 井戸も排水も以前のままだしさ、これですぐに民が海岸から上がって来れるでしょ」


「公営住宅は住所のナンバリングもそのままですし、これで民も自分たちの家に戻れるでしょうね」


「そうね。それでミチイル、わたしたちの別邸はどうするのかしら」


「うん。前みたいに、製造地帯エリアに出そうかなって思ってるんだ」


「それはいいわね! ミチイルもレシピ研究をすぐに広められるものね!」


「マリアは自分の仕事がやりやすいと思っているだけではないですか」


「そんな事ないわよ! もちろん製造工場に近い方がわたしにも便利だけれど、ミチイルが一番なのよ!」


「うん。先の事はわからないけどさ、当面はこれで行こうよ。暮らしが充分に落ち着いたら、ゆっくり考えよう」


「そうじゃな! さて、ミチイル! わしはどこに住もうかのう~! グフグフッ」


「お父様はもちろん、ケルビーン王家屋敷の一室よ」


「そうですね、父上。それ以外にはありませんね」


「そ、それは……み、ミチイル~」


「はいはい、父上、海岸から民を誘導しますよ」


「そうね、でも、あのエレベーター? あれだけでは足りないのではないのかしら」


「あ、そうだよね。20人乗りのエレベーターで三万人は無理だ……じゃ、取り敢えず合計10基に増設しよう。そうすれば一回に200人が乗れるでしょ、そうすれば、えっと、150回! うわ……」


「大丈夫ですよ、ミチイル様。大陸から歩いてこの約束の地へ来るのよりもラクで速いでしょうし」


「そうよ、ミチイル。それにエレベーターの数が多すぎても、後で管理が大変じゃないの」


「うん、そうだね。使い方は分ったよね?」


「ミチイル、大丈夫じゃ! わしがついとるからの!」


「うん、じゃあさ、民の誘導をお願いね。僕は畑とか、そっちの方をやってしまうから」


「わかったわよ、わたしたちに任せて、後はお願いね」


「うん。じゃあ、後でね」




***




「さて、取り敢えずエレベーター前から仮首都を通って30kmくらいの南北大街道を通しておこう。ピカッとね。そして、仮首都のすぐ北には旧中央工業団地と僕の別邸を出して―の、ここは一辺1kmの1平方キロメートルでいいかな。そんで、次は農場地帯だけど、ここは移転予定もないし、最初から大きく作っておこう。南北1kmで東西4kmくらいでいいかな~ さて、全ての作物を促成栽培で収穫直前にもしたし、これで農場は終わり! あ、アイちゃん、カナンも作物が一か月で収穫できると思う?」


『魔力の濃い土地ですし、その程度で収穫できるのではと思料致します』



「うん、ありがと。なら、この4平方キロメートルで充分だよね。400ヘクタールなんだもん。一ヘクタールで100人くらいを維持すればいいし、人口が増えても4~5万人くらいは余裕余裕~ 年間に5回も6回も収穫できるからね! あ、そっか。川が無いんだよね……井戸を作らないと。前の竹の事を考えたら、一ヘクタールに井戸を一つでいいよね。そのくらいで竹が育ったんだから、水は地中にちゃんと回るよね?」


『井戸は、その程度で充分かと愚考致します』


「うん。じゃあ、一ヘクタールの畑や田んぼの真ん中に一つ井戸を掘ろう。えっと、400個の井戸ね。はい、ピッカリンコ! そして次は、牧場地帯。これも農場地帯と同じ広さでいいかな。そして、丸ごと収納していたのを、丸ごと出そう。さあ、窮屈な思いをさせてごめんね、家畜たち! ま、時間が止まっているから何も思ってはいないと思うけどさ、僕の中では、みんなが元気に生きていたよ! さあ、出でよ! ピッカリンコ!」


ドサッ ブモー……


「やった! やったよアイちゃん! アイテムボックスで生き物を収納して出せた!」


『おめでとう存じます、救い主様』


「すくいぬし様、すごーい!」


「左様でございザマス!」


「ハハ 本当はお取り寄せ出来ている段階で、こうなる事は分かっていたんだけどね、やっぱり成功すると分かってても嬉しいよね! でも、人間には使いません! 異論は認めません!」


『救い主様の、御心のままに』


「はーい! では、牧場地帯の北側に、畜産加工場を出さないとね。そんで、牧場地帯の次は、北に果樹園だ! さ、これは南北500m東西2km程度でいいよね。そんなに土地も使わないとは思うけど、取り敢えず神聖国で収納した一式を果樹園用地北側に出そう。ピッカリンコ! はい、茶の木、ブドウの木、リンゴの木、山椒にエデンの桃、エデンの命の木にバニラと蘭と桃の花でいっぱいになりました! そんで、南側の空き地南北500m分には、もちろん加工場もね。果樹園の加工場と畜産加工場は南北で隣接エリアね。将来的にはここに製造地帯を集約させるかも知れないしね~」


「救い主様、このカナンにも花や木がございますザマス」


「話には聞いたけど、それもクーちゃんやマーちゃんの家の近くなの?」


「はいザマス! 湖の周辺ザマス」


「うん、みずうみのまわりだよね~」


「そっか。後で確認しよう。とりあえず、ここに出したのは神聖国で使っていたものだからね。マーちゃん、その時は連れて行ってね」


「かしこまりました!」


「さ、果樹園の北側は、将来の首都用地として南北10kmくらいを開けておこう。そんで、その北側には森林地帯だ! これは南北5kmくらいにして、将来の首都寄り3km幅には早生桐を、残りの北側には竹を植えよう! 竹は住宅から離したいしね~ さ、早生桐を出して、さらに促成栽培スキルで増やしておこう。竹は、植えるだけでいいかな。井戸さえ作っておけば一日で成木になるしね」


「す、すごいザマス……あっという間に、木が森になったザマス!」


『救い主様なら、当然です』


「ハハ じゃ、後は北に北部工業団地改め、工業地帯を出して、終わりっと。あと5kmくらいまでは北にさっきの大街道を通したと思うけどさ、えっと……計算上、この工業地帯からは35kmくらいは北なんだよね? 資源場」


「左様でございザマス」


「じゃ、街道を延ばさないとね」


「すくいぬし様! しげんはぼくたちがここまではこびまーす!」


「わたくしの眷属にも運ばせるのでございザマス」


「あ、それは助かるね。じゃ、当面はそれでお願いしようかな」


「はーい! おまかせください!」


「かしこまりザマス」




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