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3-2 約束の地カナン

「救い主様、お初にお目にかかりザマス。クーちゃんと申しザマス。以後、お見知りおきを、よろしくお願い致しザマス」


『うむ、ご苦労。準備はできているな?』


「勿論でございザマス、アイちゃん様。木の実に服も、数えきれないほど、用意してございザマス」


「クーちゃん、おつかれさま~」


「マーちゃんも、お役目、お疲れ様でしたザマス」


『救い主様? 如何されましたか?』


「……え? なに?」


『……そろそろ再起動をお願い申し上げます』


「……ああ、そうだね……この人形にしては大きいビスクドール達は、なにかな? 僕の見間違いかな? 無表情って言うか、顔に目しかついてないのに喋ってるみたいなんだけど……見間違いだよね! うん!」


『救い主様、見間違いではございません。この者は、一級天使でアラクネの魔獣でございます。それと眷属でございますね』


「あらくねのまじゅう」


「はいザマス、救い主様。わたくしは女神様から頂戴したアラクネ魔獣の体を使っております一級天使でございザマス。そして、この者どもはアラクネ魔獣の眷属ザマス。奴隷として不眠不休で働くのでございザマス」


「一気にファンタジー感たっぷりな上に、キャラが濃い……」




***




――「働き者と言えばミツバチよね! ついでに蜂蜜もたっぷりだし! ミツバチの名前と言えば、昔からマーちゃんよ!」


――「そりゃもちろん、メイドと言えばアラクネに決まっているでしょ! ステキな糸も出せるし、ドレスも作らせよう! 人間の女だと生々しいから……上半身は人形にしとこうっと。名前はクーちゃんで決まりね!」


――と、あの女神が言った所為である




***




『……ハチもクモも、あの女神が用意した器でございます。一級天使は、その魂を器に入れ、救い主様をサポート致します。私めにも器があれば良かったのですが……諸事情により……もどかしゅうございます。ここはやはり、そこらの豚にでも』


「ああ、アイちゃん、大丈夫。ごめんね、ちょっと最近さ、色々あって……僕、疲れているって言うか、あ! そうだ! 豚と言えば……無次元で元気にしている家畜たちも出さなきゃね」


『救い主様、その前に救い主様の民を』


「あ、そうだった。ええっと、どこに街を作ればいいのかな?」


「どこでも救い主様のお好みの場所をお使いいただいて結構でございザマス」


「あ、そう。えっと、何ちゃんだっけ?」


「クーちゃんだよ、すくいぬし様!」


「ああ、ありがとう、マーちゃん。マーちゃんはミツバチで、クーちゃんはアラクネ?だっけね」


「左様でございザマス」


「ということは、クモと人体……いや、なんて表現をすれば良いんだか」


「お気遣いは無用にお願い致しザマス。下半身はクモで上半身はドールでございザマス。そしてドレスは自前でございザマス。アラクネ絹も使用するザマスが、繁殖させている虫からも糸を取って使用しているでございザマス。衣服の事なら、わたくしと眷属がお役に立つザマス。他に、メイド仕事も本職でございザマス。メイドとして、誠心誠意お仕え申し上げるザマス。どうぞ、なんなりとお申し付けくださいザマス。わたくし共には口は無いのでございザマスが、わたくしは普通に話せるザマス。眷属は話せませんが言葉は理解しているのでございザマス。わたくしも眷属も口は無くとも食事は摂れるザマス。ただ、アラクネの食事風景は、絶対に覗かないで頂きたいザマス。そして、アラクネが服飾仕事をしているところも、絶対に、絶対に、絶対に覗いてはなりませんのでございザマス! もし、アラクネが服を作っている所を覗き見たら……とても大変な事になるとだけ、申し上げるザマス」


「じ、情報量が……」


「クーちゃんはクモのところから、ごはんをたべるんだもんね~」


「クーちゃん、それは言わない約束ザマスよ!」


「クモの所……ということは、見えて無いけどドレスのスカートの中は……?」


「救い主様、淑女のスカートの中を想像するのは、どうかと思うのでございザマス!」


「ああ、ごめんごめん。下がクモの部分だから、見えないようにスカートがエレガントでゴージャスに広がっているんだね! 普通にビスクドールにしか見えないよ! うん」


「まあ、お褒めのお言葉を頂き、大変恐縮でございザマス!」


『クモ、いい加減にしなさい。さもなくば』


「は、はいザマス!」


「マーちゃんもクーちゃんも、体長?が1mくらいで、真っ白なんだね。眷属はどっちも黒い色なのか……って言うか、黒いドレス……?」


『本来は、ハチもクモも魔獣でございますから』


「あ、天使は白で、って事だった……んだっけ。まあ、いいか。それで、この土地は、どのくらい広いの?」


『はい、端から端までおおよそ100km程度はあるかと存じます』


「おお、そんなに広いの?」


『はい。湖や花もございますし、エデンの木もございます』


「エデンの木って、命の木と、果樹?」


「左様でございます」


「それに救い主様、北側には石がたくさん、無尽蔵に噴き出ているのでございザマス」


「そうなの? 石って、金属とか魔石とかの石?」


『左様にございます。大陸で採れていた資源は全て、この約束の地でも湧いてございます』


「ああ、それはすごいね! そう言えば女神様が、ちゃんと約束の地を用意してあるって言ってたもんね! そんなに前から用意してただなんて、さすが神! もう魔獣と戦いながら石を拾わなくてもいいんだ! あ、魔獣と言ってもマーちゃんとクーちゃんの事じゃないよ」


「だいじょうぶでーす!」


「心得ておりザマス。わたくし達は魔獣であって、魔獣では無いのでございザマス。救い主様のお役に立つ事しか、しませんのでございザマス」


「ああ、ありがとう。それで、この辺りは平地だけしか見えないけど、奥の方?に行ったら木とか湖があるんだね?」


「左様にございザマス。この辺りは南側でございザマス」


「じゃあ、この辺りにとりあえず、収納した家なんかを出そうかな。こっち側だもんね、山すそに避難所とか建てたの」


『左様でございます』


「うん、じゃあ、この辺りにしよう。行く行くは奥の方に新都市を作ってもいいしね。あ、資源が取れる場所は、ずっと先なの?」


「ここから60kmくらいは行った所でございザマス」


「北側って言っても、本当に北の端っこでは無いんだね」


「左様にございザマス」


「ところでさ、マーちゃんとかクーちゃん達の家はどの辺り?」


「はい! いちばんきたです!」


「あ、じゃあ、資源が湧いている先?」


「左様でございザマス。資源と魔力の口の北に湖があるザマスので、そのさらに北にございザマス」


「じゃあ、ちょうどいいね。この約束の地は、資源のところから南側半分を使おう」


「全部を使って頂いてもよろしいのでございザマス」


「いや、いいよ。足りなくなったら考えよう。でも、足りなくならないでしょ。それじゃあ、取り合えず仮首都を作ろうかな」


『救い主様、その前に、海岸とここを結ぶ方法をお考えになっては如何でしょうか』


「え……そういえば、そうなんだけどさ、階段でも作る? いやいや、100mくらい標高あるんでしょ? 無理じゃんね。エスカレーター、よりはエレベーターだけど、どうやって作るのか、想像もできないよ。……それとも、転移? 転移魔法陣とかあるの??」


『次元魔法に相当すると思われますが、魔法陣などはございません』


「ああ、変な所でファンタジーだけど、そういう所は現実的なんだよね、この世界。うーん、作ろうと思えば作れそうなんだけどさ、いや、そもそも僕のスキルって言うか、次元魔法を使ったら、僕が死んだら終わりでしょ。使えないよね」


『…………』


「うーん、籠みたいのを作って、鎖でもつけて、上から引っ張る? あ、滑車! 滑車を作って鎖で引っ張る? 動力は何よ? あ、川の水力とか??」


『湖はございますが、ここには川がございません』


「ああ、ダメじゃん! 滝は?滝とか無いの?」


「滝と言うものも、無いのでございザマス」


「ああ……じゃ、やっぱり詰んでるじゃん。あ、牛にでも引かせるか。それなら……箱型台車?ゴンドラ?に鎖をつけて、引っ張って上げ下げする感じ! ……そういえば似たような構造で地下厨房とかから上の階に料理を運ぶ、配膳用リフト? そんなのもあっ」




***




――ピロン 配膳用リフトスキルが使えるようになりました。昇降機が思いのままですが、維持には無次元の力が必要です




***




「おうふ。もう昇降機って言っちゃってるよ、ロイド氏。ま、いいか~ ありがたいんだから~ じゃ、取り合えず……どこに?」


『南側の岩壁が宜しいのではと愚考致します』


「ああ、そうだけどさ、今はこっち側が出入口とするでしょ? そして下に行ったらさ、向こう側が出入口じゃない? あ、そうか! 両方から出入りできるようにすればいいんだね。ちょっと岩の壁の厚みが何百メートルもありそうだけどさ、きっと魔法が何とかしてくれると思う! 両方に出入口が付いてる感じのやつ、駅のホームとかでも普通にあるもんね、エレベーター。きっと、何の問題も無いよ! あ、エレベーターって言っちゃった、アハハ」


『魔法の理が構築されれば、こっちのものでございます』


「なんかアイちゃん、ここの所、いろいろぶっちゃけモードじゃない?」


『そのような事は、決してございません。救い主様のサポートをさせて頂くのが、私めの使命でございます』


「そっか、ありがと。じゃあ、行くよ!『配膳用リフトスキルであっちとこっちの大きいエレベーター!』 」


ピカッ ゴイーン


「うお! 普通にエレベーターだけど。あ、エレベーターってお願いしたもんね。えっと、このボタンを押せば? ぽちっとな」


ゴイーン


「ハハ 開いた! ま、当たり前か。それでさ、ふむ、どうすればいいんだか……ん? 何かガラスっぽい半球体があるね……あ、ここに魔力を入れるとか? 水道管と同じシステムだね! えっと、でも海岸に行くには? あ、そもそも、山の上と海岸しか行かないもんね。ここで魔力を入れれば下に行くだけか。んじゃ、行くか!」


「ぼくものります!」


「では、僭越ながらわたくしも」


「あ、クーちゃんは待っててくれる? まだ誰にも紹介していないからさ」


「かしこまりザマス」


「さあ! 魔力を流すよ!」




***




ゴイーン




***




「これは、ミチイルが何かをしたのだと思うのよ」


「そうでしょうね、きっと」


「なに! わしのミチイルが!」


「あら、お父様。わたしのミチイルよ!」


「二人とも、民の前で……」


「あら、お兄様、お兄様は気にならないのね。じゃあ、わたしとお父様の二人だけでミチイルを待ちましょう!」


「そうじゃの! グフグフッ」


「気になるに決まってるじゃないですか!」


「うふふ」




***




ゴイーン チン




***




「お! 着いた着いた!」


「ほら、やっぱりミチイルじゃない!」


「あ、母上に、お祖父さまに伯父上」


「ミチイル、岩……山の上に行っていたのかしら?」


「うん。ここは土地があまり無いでしょ? 山の上にはね、すごく広い土地があったよ。だから、山の上に都市を作って、みんなで住もう!」


「さすがは、わしのミチイルじゃの!」


「お父様、()()()()ミチイルよ!」


「そんな事よりミチイル様、この扉は何でしょうか?」


「うん、伯父上。これはね、エレベーターって言って、これに乗ると山の上まで行けるの。ここにね、ガラスの半球があるでしょ、これに魔力を流すと扉が閉まってね、魔力を流し続けていると、上に着くの。ちょっと少しの間、魔力を流し続けないといけないかも知れないからね、出来ない人もいるかも」


「あら、子供とかだと無理かも知れないのね?」


「うん。無理かも」


「では、ちょうど良いではないですか。子供だけで下りるのは禁止にしないといけませんからね。何があるか分かりませんし」


「そうじゃの。海岸に下りるのは禁止じゃな」


「うん。そうだね。でもさ、魚とか昆布とか海産物を獲って欲しいからね、海産部は下りてもらわないと」


「子供だけで下りなければ良いのでは無いでしょうか」


「そうね、それでいいと思うわ! あら! 大変よミチイル! 扉が閉まってしまったわ!」


「大丈夫だよ母上。扉の横のボタンを押せば開くから。もしエレベーターが上に行っていたら、魔力を流せば戻って来ると思う」


「あら、さすがミチイル、ちゃんと考えてあるわね!」


「ミチイル~ わしも上に行ってみたいんじゃがのう」


「じゃ行こうか」


「もちろん、わたしも行くわよ!」


「それは、もちろん、私も行きますよ」


「じゃあ、取り合えず、約束の地を視察に行こう!」


「ミチイル、約束の地、カナンよ!」


「ああ、そうだった……の?」




***




『救い主様、あの女神が名付けたようでございますので』


『あ、そうだったっけ』


『左様にございます』


『うん、ありがと』




***




「わかった、カナンね。じゃ、施政者で取り敢えず視察だ~! はい、ぽちっとな!」


ゴイーン




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