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2-55 民族移動

セルフィンの民の移住が完了した。


その結果、確認作業で判明したんだけど、攫われたのは5名。全員女性。商店街の従業員だったから、調理関係の人達らしい。


そして、南部から混血民も神聖国へ移住。でも、全員じゃ無かったみたい。いくら女神信仰があるとは言っても、神聖国民ほど色々は目にしていないからね、半信半疑の人も居たみたいね。半分近くは南部に残ったって。仕方ないよね、強制はしてないから、みんな自由だしね。


そして、公都のセルフィン用公営住宅の建設も、もちろん完了。


さらに、南村にも住宅建設。もちろん、混血の人達の分ね。南村も人口が増えたから、もう村じゃ無いけどさ、面倒だから、そのまま。


そして、住民登録を新たに作り直し、神聖国の人口が出た。


旧アタシーノが15000人、セルフィンが13000人、そして混血民が2000人で、総合計が30000人。ま、ざっくりだけどね。


早くセルフィンへ行きたかったけど、先に国境の壁を設置する事にした。いつ、見えないところからスローン人が来ないとも限らないし。


壁は、公都から東に15kmの地点に南北60kmで高さ5mの石壁。もう東側には行かないし、侵略防止の壁だから、出入り口は無し。はあ、なんか冷戦時代みたいになっちゃった……


ついでに、セルフィンとの街道も、できるだけ剥がす。途中の宿場も更地にした、と思うけど、ブラインドで魔法を使ったから予想なんだよね。さすがに現在の状態が細部までは判然としないから、ブラインドでセルフィンの街並みを収納するのは無理だったよ。明確に分かっているか、見えてる範囲しか収納できないからさ……ああ、そういえばアイちゃんなら確認はできるんだっけ。でも確認だもんね、代わりに魔法を使ってもらえる訳じゃないからさ。


そして、南側にも国境の壁を設置。南村と森林地帯の間に、同じような壁を東西40km、海岸から南北壁までね。この壁には現状で出入り口が真ん中らへんに一つだけ。まだパラダイスと流通があるからさ。


これで、神聖国は東西40km南北60kmで、東と南が石壁で覆われた国になった。資源石拾いの場所よりずっと北の奥は、壁が無いけどね……石拾いに毎日人が行っているし、北には魔獣もいるはずだから、攻め入るのも大変なはず。なので取り敢えずは警戒だけする事にしてもらった。


元々エデン人は北部には来れないんだろうけど、主にスローン対策だからね。アルビノ人だから、スローン人は普通にどこからでも来れちゃうもん。


だからさ、仕上げにセルフィンへ行って、国じゅう丸裸にするつもりだったのに、母上が猛反対してさ、伯母上もその必要はないって言うし、泣く泣くセルフィンは放棄……聖母様の発言力は絶対だからね、神聖国じゃ。僕より発言力があるんじゃないかな。


でも、井戸やら工場やら畑やら作物やら、何やらかんやら、セルフィンには残ったまんま。


スローンにいいようにやられちゃうじゃん。


って思ったけどさ、魔法を使わないと神聖国みたいな生産体制は構築できないだろうしね、ま、いいよ。うん、いい。いや、良くないけど、いい!


……はあ、全然良くないよ。人さらいや毒テロをするようなやつらにさ、女神様の祝福が取られちゃうんだよ? 僕は救い主だけどさ、スローン人とかは、ほんとどうでも良くなったよ。もちろんエデン人もだけどさ。


勝手すぎるじゃん。ちゃんと機会は得られるようにしてたのにさ、自分たちでは何もしないんだから。


あー、もう考えるのは止めよう。女神様も人類は救わなくてもいいって、言うはずだよね、イライラするもんね!


早く攫われた人を助けないとね……もう情報が手に入らないからなあ……鎖国すると、世界の情勢が不明になっちゃうよね。


ま、まだパラダイスには門戸を開いているけど、僕たちは出入りしないし……


ああ、やだやだ。行方不明の5人を助けたら、パラダイスとも断交して完全鎖国にするか!




***




「して、攫って来たアルビノ人はどうしたのだ? スローン大公。シンエデンで働かせようと思っておったのに、いつの間にか居なくなったなどと言うではないか! どうなっておるのだ!」


「シンエデン王、王国で攫って来た人質を管理していたのはシンエデンではございませんか。私どもは、シンエデン王国とは別に、ほんの数名を国へ連れて行っただけでございます。他の責任は、シンエデンの方々にあるかと思いますが」


「やかましい! そもそもお前らが役立たずだからだろうが! 早く商品を作れる奴隷を連れてこい!」


「無理でございます。そもそもアルビノ人は、エデンの王国では能力を発揮できないと言われております。エデン人が北部へ足を踏み入れられないのと同じでございますので」


「なんだと! そのような話を聞いたことがあるか? カンターラ、どうだ」


「アルビノ人が王国で思うように働けないなどとは、聞いたこともございません」


「スローン大公、お前、いつもいつも嘘ばかり申しおって! 殺すぞ!」


「嘘ではございません。優秀なアルビノ人は、このエデンの王国では満足に仕事ができないと、人質が申しておりますので」


「ええい! ああ言えばクドクドと! カンターラ! 新たにアルビノ人を攫ってこい!」


「恐れながら、無理でございます。殺戮の黒悪魔がエデン人に呪いをかけに来るとの噂が広がり、誰も中央エデンに行きたがりません」


「そんなものが本当にいると思っておるのか! たわけが!」


「それが……攫ったアルビノ人をシンエデンへ連れ帰る際、野宿をしている所へ、星を掲げた黒い悪魔が来て、アルビノ人をどこかへ運んで行ったとか。当家の者が経験しておりますので、間違いはございません」


「はあ? お前も嘘ばかり申すのか!」


「残念ながら、嘘ではございません」


「シンエデン王、その話はあちこちで耳に致します。シンエデン王国がどの程度、あいつらを攫ったのかは存じませんが、一人でも連れ帰る事ができたのですか?」


「どうなのだ、カンターラ」


「一人もおりません。確かに中央エデンから攫ったはずでございますが、誰一人として連れ帰っておりません」


「この、役立たずが! おい、スローン大公! お前の国には奴らがいるのであろう? なぜ攫う事ができたのだ!」


「シンエデン王国のように、一度に大々的に攫ってしまえば、すぐに敵に気づかれてしまいます。一人ずつ、日を変え、巧妙に連れ出してございますので」


「おい、カンターラ。おぬしも、そうせよ」


「かしこまりました」




***




「なに? カンターラ、アルビノ人が居ないだと!」


「はい、シンエデン王」


「どこへ行った!」


「おそらくですが、シンエデン王の計略が成功し、尻尾を巻いて逃げ出したものと存じます」


「ほう、そうかそうか、それは重畳である! 早速に奴らの残して行ったものを持って参れ」


「ございません」


「なんだと! 持って参れと言うのが聞こえんのか!」


「ですから、ございません」


「お前は馬鹿か! 手ぶらで戻って来たと申すのか!」


「はい。物はおろか、何一つ残っておりません。建物すらございません」


「なんだと! そのような世迷いごとを抜かしおって! そんな事がある訳なかろうが!」


「ですが、事実でございます。この目で確認致しましたので」


「うぐ……では、せっかく呪われた民を追い払ったと言うのに、何も手に入らんのか!」


「それが……スローンの者どもが中央エデンで商品を売っております」


「なに! 商品があるのか!」


「はい。今までと同じものがあるのかどうかはわかりませんが、商売はしているようでございます」


「スローンのやつ、わしを謀ったか!」


「存じません。ですが、商品があるのであれば、シンエデン王に献上しに参るのも、近いのではございませんか?」


「うむ、そうか。それならば良い」


「しばらくお待ちなさいませ」




***




「ナモナクよ」


「はい、中央エデン王」


「神聖国は朕の国から居なくなったと言うは、誠かの?」


「そのようでございます」


「なぜじゃ?」


「噂によると、神聖国の民が行方不明になったようでございます」


「なに? それがどう関係するのじゃ?」


「アルビノ人に被害のあった場合、北部へ即刻引きあげるという条約でございますので」


「それは知っておるがの、朕の国の所為ではないじゃろうが?」


「ですが、アルビノ商店街は、既にもぬけの空でございます」


「それでは、スイーツも買えぬではないのかのう」


「左様でございましょうね」


「王妃も大騒ぎしておるんじゃが……商品を持ってくるように、神聖国へ伝えよ」


「それが、方法がございません」


「セルフィンに申し付ければ良いじゃろうが」


「そのセルフィンですが、どうも神聖国人は居ないようでございます」


「なんじゃと? どういうことじゃ?」


「スローン人がセルフィンを乗っ取ったとの話にございます」


「なぜじゃ? 元の大公夫人も居るじゃろうが。あの夫人はかなりの食わせ者ぞ?」


「はい。私の妻も、いつも憤慨しております故」


「その夫人が居る国を、スローンごときがどうにかできるもんでは、無いじゃろう?」


「ですが、神聖国と連絡が取れない状態なのは、事実でございます。スローンの者が申すには、注文はスローンで受け付けるとの事にございます」


「神聖国の商品を、スローンが作るとでも申すのか?」


「わかりません。ですが、現状、他に方法はございません」


「あの者どもは、朕の国でも粗悪なものを勝手に売っていたではないか。シンエデンと組んで、なにやらゴソゴソやっているという噂もあるじゃろう。ナモナク、そなたもシンエデンと繋がってはおるまいの?」


「とんでも無い事でございます、中央エデン王。そのような事はございません」


「なら良いが、一刻も早く化粧水を購入せよ。紙幣もあるのじゃからな」


「それが……神聖国と連絡が取れませんので、今月分の紙幣の納入も行われておりません」


「何じゃと! 一大事ではないか! どうするのだ! そうじゃ、パラダイスはどうなっておる?」


「特に何も報告は受けておりません」


「なに? 朕の国から引きあげたというに、パラダイスでは変わらず商売をしていると申すのじゃな?」


「確認はしておりませんが、左様であると存じます」


「そうか。次のエデン会議はシンエデンじゃな?」


「左様ございます」


「そこでアタシーノ大公を問い詰めんといかんの」


「左様でございますね」




***




「ナンターラ子爵!」


「何だ?」


「神聖国が中央エデンから引きあげたとの噂ですが、何かご存じで?」


「知るか! 私はもう宰相でもないのだぞ!」


「ですが、中央エデンにもシンエデンにも血脈がお在りのはず。何かご存じでございましょう?」


「知らん。カンターラもウンターラも、何も言って来てはいないのだ」


「それでは、セルフィンがスローンに奪われたという話も?」


「何だと! そのような事があったのか?」


「噂なのですが」


「どこからの情報だ?」


「中央エデンでございます」


「おう、ソノミーはくしゃ……おお今は違うのであったな、ソノミー、そなたも中央エデンに親類が居ったのだったな」


「はい。中央エデンではアルビノ商店街が消え失せ、商品が思うように手に入らない様子。ですので、パラダイスで購入できないかと、ソノニーが直々に私どもの所へ参りましたもので」


「そうか。パラダイスで購入したものを中央エデンで高く売りさばけば、紙幣が多く手に入るやも知れん! いい事を聞いたぞ! 礼を申す」




***




――世界が混沌に包まれ始めた




***




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