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1-16 寿命

「トム爺、こないだ流しそうめんを途中で止めたところに寄って欲しいんだけど~」


「おう、坊ちゃん、それなんじゃがの、あの辺りは歩きにくいで、ドンにはちぃときついんじゃ。あそこはまた今度にして、今日は海側の道を行こう思うておるんじゃが……どうじゃろうか? な!ドン!」


「そっか、それなら仕方がないね~ 海側でいいよ~ でも、早くした方がみんなが助かるだろうから、またよろしくね」


「おうよ!」


「……すまんのう、坊ちゃん、わしはトムほど走れんでのう」


「なんで棒読み? ま、大丈夫だよ、ドン爺。僕、海も見てみたかったし、ちょうどいいよ~ ピクニックみたいだし~」


「カッカッカ! わしらでピクニックじゃ!」


「ほっほっほ、ピクニックじゃ! (……? はて、ピクニックとは聞いた事がないが、不思議と、弁当持って景色を眺めに遠くに出かけるような気がするのう……はて、弁当って何じゃろのう?) 」


(……爺ちゃんたち、普通にピクニックって言ってるけど、スキルとか魔法に係わらなければ普通に聞こえるんだろうね、きっと……)




***




「うわ~ 海が見える~ ずっと岸壁が続いているんだね~ 高さは低いけど」


「ほっほっほ、海の近くはだいたい平らな岸壁じゃからのう、この上は天然の石道じゃから女子供や年寄りでも歩きやすいんじゃよ」


「気合を入れて思いっきり走っても、足が取られることもないしの! カッカッカ!」


「公都もそうだけど、この辺りで魚とか捕って食べないの?」


「魚とは聞いたことがなかったが……おらんのう」


「坊ちゃん! 魚とは、なぜかうまそうな気分になってくるもんじゃの! カッカッカ!」


「そ、そっか~ 木材が手に入ったら、舟を作って探してみようね~」


「楽しみじゃのう」


「カッカッカ!」




***




「ねえトム爺、公都から南の村に向かう人が少ない気がするんだけど、いつもこのくらい~?」


「言われてみれば少ない気もするの!」


「確かにのう。公都に向かう人の数はこんなもんじゃとは思うがのう」


「僕は初めて通るからわからないけど……何かあるのかな……」


「カッカッカ! わからないことは考えても仕方がないのう! ほれ、坊ちゃん、塩を作っている場所が見えてきおる!」


「あ! あそこで塩を作っているんだね~ あの辺りは岸壁じゃなくて砂浜なんだね~ 特に煙も見えないけど、天日だけで蒸発させてるの?」


「ほっほっほ。坊ちゃんはほんに賢いのう。そうじゃよ、海の水を底付きの木枠に入れた砂に撒いてのう、少しずつ濃くしていくんじゃ。ほんでの、濃くなった海水を、今度は砂の入ってないのに入れてのう、後は塩になるまで置いておけば塩になるんじゃよ」


「へぇ。それじゃたくさん塩作れないけど、足りるの~?」


「カッカッカ! 塩なぞ、ドン爺みたいなやつらがなめたり、魔獣の塩漬けくらいにしか使わんからの! ま、隣のセルフィンにも送ったりはするが、そんなにたくさんはいらんの!」


「そうじゃのう、鋳造とか鍛冶とかは火を使うからのう、塩をなめとかんと具合悪うなってしもうて仕事にならんからのう。水も多めに飲まんと、倒れてしまうでのう」


「そっか、マッツァには最初から塩分入ってるから、普通の人は塩を摂らなくてもいいんだね~」




***




「あっ! 南の村が見えてきた~」


「坊ちゃん、もう少しじゃ。しっかり掴まっといての!」


「こないだは木工場じゃったんじゃろう? 今日は、鋳造所じゃぞ、トム」


「カッカッカ! わかっておる!……さ、坊ちゃん、着いたぞい!」


「ありがと~ 早く中に入りたい~」


「ほっほっほ、火を使ってるでのう、気を付けるんじゃよ、坊ちゃん」


「は~い」




***




「おう! 邪魔するぞ!」


「さすがに暑いね……あっ! これは金だね! これ、金貨?なの? ドン爺」


「今日は金貨の日じゃったか、こりゃ丁度良かった。そうじゃよ坊ちゃん。これが金貨じゃ」


「思ったより小さいね。金貨っていうよりもピカピカの卵ぼうろだけど」




***




――ピロン 卵ぼうろ魔法が使えるようになりました。卵ぼうろが作れます




***




「 『卵ぼうろ』 」ピカッ


「おお、坊ちゃん、残りの金が全部金貨になってしもうたのう! ほっほっほ」




***




「こっちは何をしてるの~?」


「ここらは、刃物系じゃのう。刃物やノミなんかの鉄道具や、鋸なんかもここで作っとるのう」


「切る道具なら全部ここなんだね~ 鋸とか作るの大変そう。これは、すごい技だね、匠の……包丁とかは少ないんだね」




***




――ピロン 匠の包丁魔法が使えるようになりました。匠の技で刃物なら思いのまま作れます




***




「 『匠の包丁』 」ピカッ


「おおお、坊ちゃん、の、鋸が出来てしもうたのう! こんなに目の鋭い鋸は初めてじゃ、ほっほっほ」




***




「ドン爺、これは?」


「これは釘じゃのう」


「両方尖っているけど、これじゃ叩き難くない~?」


「こんなもんじゃがのう、気を付ければいいだけじゃからのう」


「片方の先を平たくすれば、打ち付けやすくなるでしょ?」


「そうじゃろうのう、じゃが、難しいんじゃよ。砂の鋳型に流して作るもんじゃから、そこまで細こうできんのじゃよ」


「そっか~ でもこれじゃ、釘っていうより金串だけど」




***




――ピロン 金串魔法が使えるようになりました。どんな金串でも好きな形に作れます




***




「 『金串』 」ピカッ


「おおおお、坊ちゃん、片方が平らで叩きやすそうな釘がいっぱいできたのう、ほっほっほ」




***




「ここでは銅板を作っているんだね」


「そうじゃな、わしが作っているオロシガーネに使う銅板も、ここで作っとるんじゃよ」


「でも、大変そう。溶かした銅を固めた砂の上に流して広げてるんだね」


「そうじゃよ。手早く薄くせんといかんしのう、難しい作業なんじゃ」


「ローラーみたいなのがあれば、いいんだけど、この世界の技術じゃ無理だろうし……でもパスタマシーンサイズのなら作れるかな」




***




――ピロン パスタマシーン魔法が使えるようになりました。金属を思いのまま薄く延ばして裁断もできます




***




「 『パスタマシーン』 」ピカッ


「おおおおお、ど、銅がこんなに薄く、しかもつるつるぴかぴかじゃ! ほっほっほ」




***




「これは、鍋を作ってるところだね」


「銅板を丸く大きめに作ってのう、その後に叩いて鍋にするんじゃよ。わしが叩いて皿を作ったのと同じじゃのう。鍋は大公家くらいしか使わんからのう、そんなに数はいらないんじゃが、皿はそれなりに作らんといかんのう」


「でも、ひとつひとつ叩いて作るのは大変だよね、ドン爺みたいに技術があればいいけど」


「ほっほっほ、なあに、30年もやっとりゃ、誰でもできるわい」


「金属板か……金属……薄い金属板を型にはめるとか? そしてカップ状にするとか……カップね……アルミカップも一応薄い金属だけどさ、でもそんなのむ」




***




――ピロン アルミカップ魔法が使えるようになりました。薄い金属を思いのままに変形できます




***




「 『アルミカップ』 」ピカッ


「おおおおおお! なんじゃこれは! さっきの銅板が鍋に皿に、しかも銅のコップまで、あっという間に! ほふぁっほふぁっほふぁっ」


(……ドン爺が壊れた??)




***




「そ、そろそろ僕、休憩したいかなぁ」


「そうじゃぞ、ドン、少しはわしみたいに落ち着いたらどうじゃ? 全く、年甲斐ものう」


「僕、お水飲みたい~ トム爺、外の水樽に行こ! ドン爺、ゆっくりしていてね」


「ドンのやつ、聞いとりゃせんわ、カッカッカ!」




***




水樽のところで水を飲もうと、トム爺と外に出た。


さすがに鋳造してる建物は暑いわ……


ん? なんか水樽のところとブッシュ地帯の方との間を、人が続々と往復している。




***




「お、お、おまえら~ 何やっとるんか~!」


「あ、大親方。いやー、ここのところ大親方がブッシュの方でコソコソしてるんで、気になって見に行ってみたら、水が流れてるじゃないですかー 水が流れてたら、そりゃ、水を汲むに決まってますよねー」


「え? 水? 流しそうめんのこと? でも流しそうめんはもっと公都寄りの向こうだよね?」


「ぐぬぬ~ せっかくわしがっ、坊ちゃんを驚かそう思うて、内緒にしとったんに~! この、ばかもんが~ あ、こら、待て~」


「えっ? もしかしてトム爺が、あそこまで流しそうめんを伸ばしたの?」


「そうじゃ! わし、この前、坊ちゃんの魔法をみてからの、坊ちゃんの真似してやってみたんじゃ! わし、ものすごう頑張ったんじゃ! そしたら! なんと! わしも魔法が使えるようになったんじゃ~! カッカッカ!」


「そ、そう。すごいね、トム爺。うん、すごいよ! (アイちゃんが言ってた証明ってこれか……) 」


「そうじゃろ、そうじゃろ~ わし、もっと頑張って、もっと魔法を使えるようになるんじゃ~ 長生きして、いっぱい魔法を使うんじゃ~! カッカッカ!」


「長生きって……トム爺、歳はいくつなの?」


「ん? わしか? わしは……53歳……じゃったかの! ドンと一緒じゃよ!」


「53歳なら、まだまだ死なないでしょ……」


「いつ死ぬかは女神様にしかわからんの! じゃが、だいたいみんな60くらいで女神様のお迎えが来るからの! 坊ちゃん、ここで水飲んどいてくれの! わし、あいつらんとこ行ってくるでの! くぉら~おまえら~!」


「……」




***




「アイちゃん」


『はい、救い主様』


「この世界の寿命って、60歳くらいなの?」


『そうですね、だいたい皆、そのくらいで死ぬようです』


「随分早死になんだね」


『はい。完全栄養食のマッツァがあるとは言っても、特にアルビノ人は十分に食べられていませんので。ですが、魔力器官がありますし、草も食べていますから、結果的にはエデン人と同じくらいの寿命だと思います』


「そうなんだ。……ん? それってアルビノ人が十分に食べられるようになったら、逆にエデン人より長生きになるって事だよね?」


『理論的には、そうなると思います』


「わかった、ありがと。……僕が死ぬまでに、なんて悠長なこと言ってる場合じゃない。もっと急いで食べ物をお腹いっぱい食べられる国にしないといけない」


『…………』




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