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2-42 物流革命

パラダイスのアルビノ商店街南に、学園カフェと同じ建物を建てた。


そしてすぐさま営業を開始。取り敢えず学園カフェとメニューは同じね。


カフェの料金は一律金札10枚。個室は貴族専用にしといた。別料金は当面設定してないの。もし、個室が混み合うようなら予約料でも設定しよう。


そしてエデンで販売するコーチは、魔石関係を排除した無色の最新式。以前は金札10000枚にしちゃったけど、今回は金札2000枚の特別価格!


その代わり、牛と御者は別料金で、足軽家からレンタルね。レンタル料は一日金札100枚。


これで足軽グループもさらに裕福になるに違いない。うん、まだコーチは売れてないけどね!




***




「ねえ、アイちゃん」


『はい、救い主様』


「なんかさ、世界が色々不穏な気がするんだけど、何か知ってる?」


『はい。争いの種が活動を始めました』


「ん? それって昔に大陸の国が分かれた原因だったっけ?」


『左様でございます。この世界では長らく休んでいたようですが、また活動を始めました』


「ああ、それって確か……人が成長するのに必要な事だったんだっけね。とすると、女神様の計画?」


『大きなくくりで言えばそうなるかも知れませんが、争いの種の活動方針に、あの女神(くそ)は関わっておりません』


「ん? と言うことは、争いの種は自由に活動してるって事なの?」


『左様にございます』


「ふーむ……じゃ、この先どうなっていくか、誰もわからないって事か……なんで急に争いの種は活動開始したの?」


『世界の変革の気配を察知したのではと愚考致します』


「ああ、そういえば地球でも、戦争が起こるたびに技術が進歩してたもんね。いや、技術が先なのかな……いや、戦争が先なのかな……神の計画って、人間には推し量れないものなんだね」


『……それは、世界によって色々でございましょう』


「あ、そうか。地球とこの世界じゃ、全然違うもんね。じゃあさ、この後、争いが増えていくって事だよね」


『おそらくは』


「僕にできる事って、あるかな……」


『救い主様は、思うがままになされば宜しいのです。人間どもを救う必要などございませんし、争いを止める必要もございません。逆に戦争を始めて人間どもを一掃するのも、また一興』


「いやいや、『また一興』なんかで戦争なんてしないよ、もう。……まあ、結果的に経済戦争にはなってる気がするけどさ。でも、本当の戦争が起きちゃったら……」


『その時には、どこへでも逃げればよろしいのです。何の心配も一切必要ございません』


「ああ、アイちゃんのその言葉を聞くと、なんか安心するよね~ そうだね、その時はもっと北へ行けばいいよね、うん、わかった。ありがと、アイちゃん」


『救い主様の、御心のままに』




***




「さーて、考えても判らない事は考えても仕方が無いからね、仕事でもするか~ キッチンにでも行こうかな~ ふんふんふーん」


…………


「あらミチイル、露天風呂にでも行くのかしら? さっきまで、ぼーっとしていたようだけれど、もう、ぼーっと時間割は終了かしら」


「いや、別にぼーっとするのを時間割には入れてないよ、僕」


「あら、そうなの。ミチイルには、毎日そういう時間が必要なのだと思っていたけれど」


「うん、必要っちゃあ必要だけどさ。でも、計画的にぼーっとしている訳ではないもんね」


「そうよね。ぼーっとする時には、いつの間にかぼーっとしているものですものね! わたしも気がついたら、何もしていないのに時間が無くなっていることがあるわ。時間の流れって、人間の自由にはならないものよ。神の世界の不可侵領域なのね」


「なんか、迂遠な真理を語っているように言わないでよ、母上ったら。ぼーっとしてただけでしょ」


「人が生きていくのには必要な時間なのよ。きっと女神様が与えてくださっている時間なのね!」


「まあそうかもね~ 忘却は最大の賜物って言うしね~ ぼーっとしてたら結構色々忘れちゃうもんね~」


「なあに? そんな言葉があるのかしら」


「うん。人間は忘れていくから生きて行けるんだよ。もし、何も忘れられない生き物だったら、ずっとずっと苦しまないといけないからね」


「そうだったのね……じゃ、これからも心置きなく、ぼーっとしましょ!」


「そうだね!」


「それで、これからまたぼーっとするのかしら? ミチイル」


「いや、だから計画的にぼーっとはしてないってば! これからキッチンで仕事するの!」


「あら、と言うことは……また時代の変化が! 今度はどんなシリーズを創り出すのかしら、ねえねえ、どんな美容に効果があるものなのかしら?」


「いや、特に」


「あらあら、まだ色々あるんでしょう、ミチイルの事ですもの」


「いや、物流を効率的にしていこうと思っているだけなんだけど」


「あらそう」


「急にテンション低くなったね、母上。物流が効率的になれば、人の流れも、そしてお金の流れもスピードアップして、もっとお金が集まってくるかもよ」


「あら! そういうことはもっと早く言ってちょうだい! さ、今日も頑張りましょう!」


「まったく……」


「で、何をするのかしら」


「うん、規格を統一しようと思ってね」


「企画? まあ! どんな美容の企画なのかしら!」


「だーかーらー、企画じゃなくて規格! 入れ物の大きさを統一するの! 今は時々に作ってきた入れ物だから、バラバラでしょ、大きさが」


「そうだけれど、特に困っていないじゃないの」


「うん、そうだけどさ、例えば箱の大きさがバラバラだとさ、荷車に積むのにも隙間が増えるでしょ、でも大きさを統一したら、隙間なく運べるじゃない。そうすると、一回の運送で一つでも二つでも多く運べるんだからね」


「あら、そういう事もあるのね」


「うん。それに箱の大きさとかが同じなら、数も数えやすいでしょ、確認もしやすいでしょ、手間が減るでしょ、箱に行先なんかを書いておけば、数人で数回リレー方式にすればね、速くモノが届けられるようになるしね」


「一つの荷物を何人もで運ぶってことなのかしら? それでは人数が増えるじゃないの。効率悪いと思うわよ」


「うん。でもさ、例えばだよ、この別邸から南村までをひたすら往復だけして運送する人を設定するでしょ、そして南村からパラダイス商店街へ往復する人も設定して、さらにセルフィン南村まで往復の人も作るのね、そうするとさ、統一した箱に行先を書いておけばさ、別邸から南村まで箱を運送して荷下ろししてね、その後は南村からパラダイスへ別の人が、さらに南村からセルフィンへ別の人がそれぞれ箱を運ぶの。そうするとさ、今までは別邸からパラダイスへ行く人とセルフィンへ行く人の二人が必要だったのに、別邸から南村までの一人だけで済むじゃない」


「まあ! 少し難しいけれど、運送の区間を区切って、その間だけを運送するのを繰り返すのね。それで箱の大きさが揃っていると個数もすぐに確認できるし、便利って感じなのかしら」


「母上も、さすがはケルビーンだよね、理解が早いって言うか」


「あら、わたしの優秀さに今頃気づいたのかしらあ?」


「はいはい。だからね、取り敢えず規格を統一するの。もちろん、数種類の大きさの箱が必要だけどね、物流にいつもその箱を使っていればさ、すぐに神聖国のものだって一目で判るじゃない。エデンとか一般人はともかくとしても、統一規格の箱に全部変更したらさ、神聖国民なら、神聖国の箱なのか違う国の箱なのか、すぐに判断できるでしょ」


「もしかして! スローン人が商売をしていても、すぐにわかる可能性があるのね!」


「うん、ほんと理解が早いね、母上」


「それはとても大切な改革よ! さ、さっさと片付けてしまいましょう!」


「ハハ でもね、とりあえず大きさをどうしようか……偽造を防ぐ必要もあるし……茶箱は使えるけどさ、大きさも厚みも自由自在だからさ、逆に統一しにくいし……取り敢えず三種類くらいのサイズは必要かな。大きな茶箱サイズには軽いものを入れて、中くらいのと小さいのも要るしね……どうせなら折りたたみとかできればいいけど……ああ、食品コンテナでもあれば」




***




――ピロン 食品コンテナ魔法が使えるようになりました。お好みの材料でお好みの規格の食品コンテナが思いのままです。ロゴマーク付き




***




「ああ、お久しぶりです、ロイド氏。ありがとう。これで解決したっぽい~」


「あら、相変わらずミチイルは仕事が速いのね」


「……うん。僕じゃなくてロイド氏なんだけどね。ま、いいか~ じゃ早速『食品コンテナ』で大中小!」




***



ピカッ ドントンポテ




***




「あら、大きなツヅラと中くらいのツヅラと、小さなツヅラが現れたわ! もちろんわたしは、おおきなツヅラね! さ、何が入っているのかしら~」


「いやいやいや、そのツヅラは開けたらダメなやつ!」


「あら、開けられないなら運送に使えないじゃないの」


「いや、まあ、うん、一応ね、なんとなく。ま、もし、開けたらダメって雀に言われたら開けたらダメだからね」


「スズメが何かよくわからないけれど、ダメって言われたことなんて、しないわよ」


「うん、よろしくね。じゃあ、中を確認してみよう」


「結局開けるのじゃないの」


「ハハ 雀の存在が肝心な部分だからね、今は居ないからいいの。ま、とにかく……お、これはいい感じ」


「ミチイル、とっても薄くてシンプルな木材の箱ね」


「うん。薄いけどたぶん丈夫だと思う。きっと軽いとも思うし……お、軽い軽い。それに……畳める!」


「あら、その箱は空の時は省スペースね。とっても便利じゃない! 帰りに入れる荷物が無くてもかさばらないわね」


「うん。エデンの王国からの帰り荷なんてないからね。紙幣くらいしか持って帰らないもん。コンテナが折りたためれば便利便利~」


「それに、何か模様が書いてあるわよ」


「ん? あ、ほんとだ。『神聖国』って焼き印がしてある。あ、ロゴか~」


「あら、紙幣に書いてあるような文字だったのね。神聖国って書いてあるなら一目でわかるから安心ね!」


「うん。偽造は不可能だし、規格も統一できるしね、材料も、これは竹みたいだけどさ、他の木材でも、おそらく金属でも石でもガラスでもできると思う。ま、ガラスは使わないけどね」


「これで箱に文字を書き入れて、行先なんかをわかるようにするのね」


「うん、文字は殺菌消毒魔法で消せるしね、エデンの王国では消せなくても鉛筆で書くことはできるから、神聖国に戻って来てから消せばいいし、農作物も工業製品も入れられる。大きい製品は無いからね」


「もしかして、これにお姉様の名前を書けば、お姉様に直接何かを送ることもできるのかしら」


「うん、物流機構を整備したらできると思う。宅配便って言うんだけどね。でも、一般国民へは無理かな」


「神聖国では個人の持ち物とかもあまりないもの、送るものだってないわよ。配給所で好きなだけ貰えるんですもの」


「そういえばそうか。じゃ、後は伯父上に丸投げだ!」


「そうね! それがいいわ!」


「じゃ、お茶にでもしようか、母上」


「そうね!」





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