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2-38 二年生

さ、随分休んじゃったけど、そろそろ学園に戻ろう。


はあ、かったるいわ……




***




「いいか、我々偉大なるエデン人は、うんたらかんたら……」


「さあ、難解な引き算を致しますよ! 100-1は? はい、そこのあなた」


「見ろ! 良く見たか! 見たな! いや、まだだ……」




***




「はあ。ここは相変わらずだよねえ」


「ほんと~ でもミチイル様は久しぶりだもん、まだ僕たちよりもいいじゃん~」


「お二人とも、お疲れ様でございました」


「あれ? 足軽君とかは?」


「アドレ侯爵令嬢ともども、食券の販売にお忙しいのでは無いかと思います」


「ああ、そう。商売が順調なのは、いい事だよね~」


「そうだよね~」


「商売と言えばミチイル様、そろそろ次の学生用メダルのご準備を」


「ああ、もう出来ているから大丈夫。卒業した人からメダルは回収できてるの?」


「正直言えば、出来ておりません。良くわからないうちに居なくなってしまいますので」


「ああ、そうだよね、勝手に卒業するんだもんね。別に大丈夫だよ。ナンバリングしてあるし、不正にメダルを使おうとしたら、アルビノ商店街に出入り禁止ね。それでもダメなら、貴族の名前を王家にチクって、損害の分、王家の紙幣を減らそう。もちろん学園価格じゃなくて、正規の販売価格の損害額ね。そう伯父上に報告しておいて貰える? シェイマス」


「かしこまりました」


「王家も、自分たちの紙幣が減るとなると、真剣に取り締まるよね~」


「左様でございましょうね、シモン様」


「全く、どこの王家もどうしようも無いよねえ」


「ほんとだよ~」


「どこの王家と言えばミチイル様、シンエデンの王族が新しい服を着ているようでございます」


「新しい服?」


「はい。私どもが着ている、金札1500枚の服でございます」


「あれ、その服は、とてもじゃないけどシンエデン王家では買えないよねえ。なにせ毎月金コイン500枚しか払ってないんだから」


「はい。ですので、以前に寮から紛失した、と言うか、盗まれた服では無いかと思います」


「ああ、スローンからシンエデン王家に行った訳か」


「物を盗んでまで着飾りたいのかな~ 馬鹿だよね~」


「シンエデン王家は、入手方法は知らないかも知れません、シモン様」


「ミチイル・ケルビーン様! 是非、わたくしとお茶でも」


「ミチイル・ケルビーン様、そのような者とではなく、わたくしと」


「ミチイル・ケルビーン様! わたくしの方が相応しいと存じ」


「ミチイル・ケルビーン様!」


「ミチイル・………………」




***




「うわー、ミチイル様、モテモテ~」


「そんな事いうとシモン、シモンが跡取りなんです!って、大々的に広めるよ。いいの?」


「わー うそうそ! ミチイル様、大変にご愁傷さまでございます!」


「なにそれ~ シモンじゃないみたいじゃん」


「さ、お二人とも、気を取り直して戻りましょう。コーチも到着しておりますよ」




***




「あ、お疲れ様、足軽君。もしかして、忙しい?」


「お疲れ様でゴザル。食券販売も忙しいのでゴザルが、何より学園レストランの方が混み合っているのでゴザル。せっかく来たのに満席で入れないと文句を言われるのでゴザルな」


「そうなの? シェイマス」


「はい。ここの所は、入りきらない人数が来ているようでございます」


「うーん、従業員は足りてるのかなあ」


「それも大変なようでございます」


「そうか。中央エデンはパラダイスと違って、エデン人をまとめてくれる人が居ないからね……でも、エデン人の従業員を増やすかな」


「エデン人に仕事ができるのでしょうか」


「うん、シェイマス。注文を取ったり運んだり、掃除をしたり皿洗いとかさ、それくらいならできるでしょ。水道は使えないだろうから、ずっと流しっぱなしとかにすれば、色々洗えるんじゃない?」


「その程度ならエデン人でも問題はないのでゴザル。パラダイスでも行っておるのでゴザルゆえ」


「それと、カフェを増設しよう。今の学園レストランは食事だけにして、お茶会専用のカフェを別に作れば、カフェは殆ど調理もないからね、既に出来ているお菓子をならべて、お茶の用意だけだもん。ホットケーキもあるかさら、調理人は必要だけど、アルビノ人が一人と、後はエデン人の従業員でも店が回るでしょ。ホットケーキも生地さえ用意しておけば、焼くくらいはエデン人でもできるんじゃない?」


「ふむ、そうですね。確かにお茶会を別な建物にすると、混雑は解決しそうです。従業員も、技術も要らず複雑な調理も無いなら、確かにエデン人でも可能でございましょう」


「うん、どうせ混雑しているって言うからね、取り合えずカフェは新設しよう。そうだ、お茶会がメインだろうから、このオーベルジュタイプのカフェにしよう」


「この寮の建物と同じものを建てられるのですか? ミチイル様」


「ううん、レストランとキッチンだけ部分的に作るよ。他の空間は要らないでしょ。それにアルビノ商店街の外に作らないと、場所は無いよね? シェイマス」


「そうでございますね、塀の外にはなりますが、そもそもカフェは外からの利用が多いでしょうし、その方が良いかも知れません」


「うん、今の学園レストランは寮生の食事場所でもあるからね、お茶会需要分は外に分けよう」


「エデン人の従業員は、どこで調達致しますか? ミチイル様」


「それなら、自分が人を集めるでゴザル。学園生に話を広げれば、働きたいというエデン人も集まるでゴザルよ」


「ああ、ありがとう。じゃ、足軽君に任せようかな。パラダイスでも実績があるしね、足軽家は」


「ですが、スタイン男爵令息様、学園は卒業なさらないのですか?」


「はいでゴザル。自分はこのまま、学園に残るつもりでゴザルよ。ミチイル様が卒業する時まで、ここでミチイル様のお役に立ちたいでゴザル」


「ああ、本当は足軽君は卒業なんだね、そうだよね、去年に二年生だったんだもん。でも、勝手に残れるの?」


「問題ないでゴザル。そもそも学園は生徒を把握してないのでゴザルし、パラダイスの寮からは既に出ておるのでゴザルゆえ」


「左様でございましょうね。向こうの寮さえ空いていれば、次の世代にも不都合はございませんし、学園はあの学園ですからね、ずっと残っていても誰も何も言わないでしょう」


「そっか。ありがとう、足軽君、とても助かるよ」


「とんでもない事にゴザル。粉骨砕身、務めさせて頂くでゴザル」


「よろしくね。それじゃあ、新しいカフェはエデン人の従業員メインでいこう。ついでにカフェ以外でも働きたい従業員が居れば雇ってもいいからね」


「かしこまりましてゴザル」


「じゃ、今日の営業が終了して、人気が無くなったら新しい学園カフェ建てちゃうから、人払いとか他の手配をよろしくね、シェイマス」


「かしこまりました」




***




「ふう、これでいいかな」


「大変に豪華な建物になりましたね、ミチイル様」


「うん。貴族がメイン客層だしね、オーベルジュを基準にしているから」


「小さなフロントに、こちらは手洗いと洗濯場でしょうか……手洗いの水も常に流れるようになさったのでございますね」


「うん。今の学園レストランにはトイレとか付けてなかったけど、まあ、トイレくらいは無いとね、不便だろうし。でも魔法を使う訳にもいかないからさ」


「左様でございますね。そして、客席部分は赤絨毯で大変に高貴な雰囲気でございます」


「うん。椅子もテーブルもカフェ仕様にしたけど、つやつやのダークブラウンにしたからね、建物の中の建材とマッチしているでしょ~」


「それに、キッチンも最新設備ではございませんが、広くて使いやすそうでございます」


「うん、水も流しっぱなしだしね、魔法は使えないから全部、薪か炭になっちゃうけど、昔は神聖国でもこんな感じだったしね、調理人も対応できるでしょ」


「左様でございますね、何か遠い昔のような気が致します。随分と世界が変わりましたね」


「ほんとだよね。じゃ、従業員が集まり次第、すぐにでも営業を開始してね。従業員の扱いは給料も含めて足軽君に差配してもらってくれる?」


「かしこまりました。売り上げの管理は、今まで通りにレストランの管理者に任せますが、人件費はスタイン男爵令息に一任致します」




***




「ミチイル様」


「あ、どうしたの? キャンティ」


「はい。ミチイル様にお願いしたき事がございます」


「なに?」


「はい。新しくオープンした学園カフェでございますが、そちらでわたくしを働かせて頂きたいのでございます」


「え? どうして? 紙幣が足りないとか?」


「いいえ、ミチイル様のお慈悲により、紙幣は食券販売で頂く手数料で潤沢でございます」


「じゃあ何で?」


「はい。新しいカフェではお茶会がメインになると聞き及んでおります。そちらのお茶会を差配したいのでございます」


「お茶会の、プロデュース的な感じか。何かやりたい事でもあるの?」


「はい。お茶会を通じて、女神様の信仰につながるようにしたいのです」


「それは! とってもいい! そうだね、お茶会の時にでも、祈りを捧げたり?」


「はい。食物は全て、女神様の祝福で作られているものでございましょうから、それらに感謝し、皆で楽しく、美味しく頂けるような雰囲気を醸成したいと存じます」


「ああ、いいねいいね! 強制はしなくてもいいけど、そういうのをお茶会の作法です!みたいにして広めるのはアリな気がする。じゃあさ、キャンティを学園カフェの支配人に任命します!」


「ありがたき事にございます。誠心誠意、努めますので宜しくご指導のほどをお願い致します」


「うん、よろしくね。好きにやっちゃっていいからね!」




***




そうか、お茶会を通じて女神様の信仰を広められる可能性もあるんだ。


そうだよね、今まで伝道とかは一切してきてないからね。忙しかったのもあるけどさ……ま、キャンティに任せよう。


そうすると、カフェのメニューも増やそうかな。何がいいか……冷蔵庫は使えないんだから……ま、カボチャ羊羹はできるかな。カボチャあんをガス袋パックにして配送してもらえば、後は寒天とか混ぜて型に入れれば作れるしね。寒天は室温で固まるからね。


それと……イモダンゴも作れるね。ジャガイモを配送してもらえば、後は片栗粉と醤油と砂糖で作れるからね、串に刺さずに白玉団子風に盛り付けて、みたらしあんを上からかけて。うん、みたらし団子と緑茶のセット、いいね。


揚げ物は、どうしようかな。レストランの食事では揚げ物してもらってるけど、カフェだとエデン人が多く働くからなあ……油は危ないから、今はやめとこう。火の調節も魔法でできないからね、ほんとに危ないもん。


じゃあ……うーん、魔法を使わないと、ほんとに大変じゃん。泡だて器とかは作れると思うからさ、シンプルなケーキとかは焼けるだろうけど、人力で卵を泡立てるのは、さすがにね。神聖国じゃ魔法であっと言う間なのに、どんな縛りプレイなのって感じだもんね。


あ、クレープならできるよね。ホットケーキから重曹抜いたような材料だもん。生クリームはダメでしょ、カスタードクリームなら大丈夫かな、いや、牛乳無かったわ。あ!練乳あるじゃん。卵は問題ないしね。でも、卵は羽毛を敷き詰めた箱で配送してるしな……あまり増やしたら大変かも知れない。


あ、そうだ!


工場でカスタードクリームを作らせて、ガス袋に詰めておけば常温で配送も保存もできるよね。手紙でレシピをジョーンに送って、作ってもらおう。んじゃ、せっかくクレープだから、ここらでイチゴジャムもエデンで解禁しちゃおう。今までのジャムはエデンにもあるブドウだったからね。クレープにカスタードクリーム乗せてイチゴジャムも乗せて、キレイに包めば、おしゃれじゃんね。


よし、これで行こう。




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