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2-37 マーちゃん

「ミチイル様、至急の要件が……あると……」


「うん、伯父上、急にごめんね」


「それはもちろん構いませんが……?」


「ああ、この子はね、僕の眷属のマーちゃんって言うんだ。ミツバチなの」


「おじうえ様、マーちゃんです!」


「ああ、ミハイルです。よろしく……お願いします?」


「ミハイル様! こちらこそ、よろしくおねがいしまーす」


「うん、伯父上、このマーちゃんがね、マーちゃんの眷属と一緒に、神聖国の農業とかをやってくれるんだって。えっと、収穫とか作物を集めたり?」


「はい! ぼくと、ぼくのけんぞくだけで、もんだいありません!」


「それは! また大変な事に!」


「うん、伯父上。今、旧アタシーノだけで農作業にどのくらい人数が割かれているの?」


「そうですね、専業という訳ではないですが、3000人程度でしょうか。以前はもう少しいましたが、子育てなどがありますから、減りました」


「あ、そう。マーちゃん達が働いてくれたら、それが半分くらいにはなるのかな」


「はい! はたけはずっとみてきましたから、だいじょうぶです!」


「あ、そっか。伯父上、マーちゃん達は畑の作物の受粉をしてくれていたんだって。受粉ってのをしないとね、実が成らないの」


「そのような重要な働きをしてもらっていたとは……民たちが畑の妖精と言っていましたが、本当だったのですね」


「うん、そうみたい。夜中に受粉していたらしいんだけどね」


「まあ、照明が登場してから、農業部では夜中も畑に居たものがあったのでしょうね」


「うん、それでね、マーちゃん達が働けるように、手配してもらえる? 伯父上」


「かしこまりました。リサにも伝えて、手配しておきます」


「うん。マーちゃん、伯父上達と相談して、働いてもらえる?」


「かしこまりましたー!」


「くれぐれも働き過ぎないようにしてね」


「ミチイル様、ありがとうございまーす!」




***




なんかさあ、天使様とか魔獣とか、また急にファンタジーな世界になっちゃったけど、そもそも受粉をしていたとはね。


落ち着いて考えてみたら、そりゃそうなんだけどさ、エデンの園には行ったことが無いしね、昔の北部じゃ雑草しか無かったし……でも、雑草も花が咲いていたんだから、きっと受粉はしていたんだろうね。


ま、受粉もせずに実が付かないもんね。女神様もちゃんと考えていたんだね~


あ、そうそう、入れ物を渡せば蜂蜜をくれるっていうからさ、お願いして蜂蜜を貰っているの。なんか、貯まり過ぎて海に捨ててたらしいよ。


だから、遠慮なく貰う事にした。砂糖もあるしね、普通に消費する分には困らないかな、蜂蜜も。


それとね、人間も一人なら抱えて飛べるらしい。どんだけ力持ちなの。


でも、マーちゃん達は旧アタシーノ以外には行かせないからね。バレたら困るし……困るかな……いや、困るよね。万が一、マーちゃんの眷属たちでも攫われちゃったら、大変だもん。エデン人は強欲だからね、奴隷のように扱っていたアルビノ人が思うようにならなくなっちゃってるからさ、その代わり、なんて勝手に思ったとしてもおかしくないからね。


マーちゃんの眷属たちと言えばさ、みんなマーちゃんと違って、黒いんだよ。黒いミツバチっていうか、ぱっと見スズメバチかと思うけど、ま、マーちゃんは天使様だからね、真っ白なんだと思う。


それで、マーちゃんと眷属たちがね、ガンガン働いていて、生産量が倍増以上になりそうな勢いなんだって。


それで農業部から人員を食品工場系に配置換えしてね、その食品工場系の人達を、エデン方面へ振り分ける事にしたの。


作物が増えたら、エデンでの販売を増やしたいからね、調理人とかが必要なんだもん。食べ物以外はね、エデン人の従業員とかも使えるけどさ、調理はね、今の所、神聖国民しかできないから。


とりあえず、パラダイスかな。


エデン人にお金を使わせるには、エデン人に紙幣をバラまかないとならない。


でもね、何もせずに供給する事もできないしね。ただでさえ、風前の灯の王家の権力が、消え失せちゃうし。仕事と言ってもねえ、エデン人ってあんまり仕事ができないらしいんだよね。ま、何百年も仕事をロクにしていないからね、当たり前なんだけど……


何かエデン人でもできるような仕事は無いかな……


市中にお金をバラまくには……公共事業だよねえ。でも、エデンの公共事業を行えるのはエデンの王家でしょ……エデン人を北部に入れる訳にもいかないし、そもそも入れないし……あ、そうか。南部なら入れるんだ。


そういえば昔は人がリヤカーを引いていたもんね。エデン人にアルビノ村からリアカーを南部まで引かせよう。そして、南部の農業もさせようかな。米はまあいいとして、麦は籾殻もついた状態で南部に渡して、それを裸麦にさせよう。そうそう、マッツァも粉にする作業をエデン人にさせて、南部で牛の飼料にすればいいよ。そうそう、飼料を合わせる仕事だって、指示さえすればできるんだしさ。


もうパラダイス王家とかは無視して、道の整備とかもやってもらおうか。その道を使うのは、広い意味で神聖国だからね。石さえ用意しておけば、昔に足軽さんにやらせたようにできるじゃん。


よし、パラダイスで公共事業をして、エデン人に紙幣を持たせよう!


そして、それを使わせよう!


とりあえず、パラダイスのアルビノ商店街近くに、また物流倉庫兼作業場を建てて、アイテムボックスにも入っている石材とリユース廃木材をどかーんと置いちゃおう。


えっと、農作物の生産量が倍になったとして、増えた分は全部、輸出可能でしょ。農業はまだまだ旧アタシーノが主流だしね、という事は、ざっくり二万人以上の食料が余る訳なんだから、一家四人として5000家庭分。一家庭に金札25枚を給料として払うと、月に13億円くらいは紙幣の発行が可能だよね。実際はもっとぼったくっている訳なんだから、金札13万枚分の商品は用意できるじゃん!


相当ぼったくって販売しているからね、実際は三倍も四倍も多くの紙幣を発行できるはず。


さ、そうと決まれば、くだらない単純作業をエデン人に振り分ける公共事業を始めよう!


ということで、伯父上~




***




はい、伯父上に丸投げしました~


紙幣の発行も、頑張って~


物流だってリアカーさえ数が揃えば、エデン人に人力で運送させられるからね~


さて、エデンのアルビノ商店街に建築作業に行かなくちゃ。




***



「ミチイル~ こうやって出かけるのも久しぶりね」


「ほんとだよね。前回がいつか、もう思い出せないよ」


「ミチイルも大人になってしまったものね。もうわたしが付いていく必要もないもの」


「まあ、別にそんな事を考えなくても、普通にお出かけするって感じでいいんじゃない?」


「ま、そうね!」


「そろそろ南村かな。お、混血の民だね」


「あら、ほんとうね。話には聞いていたけれど、本当に神聖国に入っているのを見ると、何か感慨深いわ」


「そうだよね。エデン人から逃げ隠れしていた時代を思い出すと、随分世界が変わったよ」


「そうね。神聖国だけでも大変革だったけれど、今ではエデンの王国もですもの。エデン人もびっくりしているわよね」


「そうだろうね。何が起こっているのか、正確には分かっていない人も多そう。学園でだって、最初はなんだか酷かったけどさ、今じゃ、アルビノ人の僕にエデン人が媚びを売るような時代になったんだよ」


「あら、今も何も、ミチイルは戻ってきた後まだ学園に行ってないじゃないの。もうとっくに長期休業も終わって、シモンもシェイマスも二年生なのに」


「二年生も何もないでしょ。毎日の勉強は全員ずっと同じ内容なんだもん。二年生になって、何が変わるっていうのさ」


「まあね。婚姻相手を見つける以外に利用価値なんて無いんですもの。もうこのまま行かなくてもいいわよ、ミチイル」


「まあ、向こうでやりかけている事もあるしね、そんな訳にはいかないんだけどさ。でも、こっちでもやる事をやらないと」


「ほんとうにミチイルは、小さいころから働きづめね」


「そうかな……」


「とにかく、無理はしないでちょうだい。嫌になったら止めればいいのよ。それか、適当に指示だけしておけばいいわ」


「ま、今も似たようなものだけどね」


「さ、パラダイスのアルビノ商店街に着いたわよ。暗くなるまで休んでいましょう。どうせ明るいうちは作業なんてできないんですもの」


「そうだね」




***




パラダイスのアルビノ商店街南部の、工場の辺りにでかい倉庫と作業場を新築して、辺りに石材他を大量に積んで置いた。後は、足軽家がうまくごまかしてくれるだろう。そして、以前も使っていた人力用のミニキッチンカーもたくさん置いてきたよ。王都を売り歩くかどうかはわからないけど、労働力があるようなら、これも活用して欲しい。


そして、エデンでも簡単な調理ができるようになって欲しいけど、冷蔵庫もないしねえ。あ、マッツァナンなら、マッツァを乾燥させて粉にすれば作れるんだから、それを作ってもらうように仕向けようか。添え物のジャムも販売して、酵母もドライイーストにしてエデンで売ろう。乾燥マッツァは、自分たちのを乾燥させれば手に入るんだからね。


スープの素も売れば……いやいや、あれは手間がかかるんだった。昆布とかなら……あ、昆布茶を売ろうか。あれなら、昆布をカラカラに乾燥させて、塩と砂糖を少し混ぜればいいんだからさ、お湯で伸ばせば昆布スープになるもんね。銅の缶で売ればいいじゃん。昆布は余っているからね。うん、これは格安にしておこう。そうだね、銅の缶付きで50g金札1枚で、詰め替え用ガス袋入り50gを二つで金札1枚でどうだ! うん、安い安い。


さあ、とりあえずこれでどうかな。


ああ、後は、食文化とは関係ないけどさ、リネンの布と糸と針とか売れば、もしかしたらエデン人も簡単な服とかは作るようになるかも知れない。うん、これも売り出そう。作れなくてもいいよね、やろうと思ってくれればいいし、何より、昔の布巻服に比べたら、紐を自分で付けるだけでもいいと思う。これは、服一着分のリネン布と糸のセットでいいかな。これをセットで金札1枚にしよう。服よりもかなり割安でしょ。針は他の調理道具と同じ扱いでいいかな。よりどり一個金札1枚ね。


うん、これだけ紙幣もバラまいて、商品も増やせばね、いやでもパラダイスの経済が活発になるよね!


ああ、考えただけでも疲れたよ。


さ、後は、関係各所に丸投げだ!




***




――こうして、パラダイス王国は経済活動が活発化し、アタシーノ星史上初の好景気を迎えるのであった




***




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