表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/237

2-36 16歳になった

そうこう過ごしているうちに、僕は16歳になった。


この一年はとっても忙しかったせいなのか、15歳になった時と比べて、体が成長している気がしないよ。寝る子は育つ、だから、働き過ぎたかな。今年はもっとゆっくりしようっと。


でもさ、解決しないといけない事があるよねぇ。




***



「ねえ、アイちゃん」


『はい、救い主様』


「混血の民ね、今は南村では問題がないらしいけどさ、もっと北で活動できないのかな」


『はい。特に問題はございません』


「あ、そうなの?」


『はい。極小ながら魔力器官がございますので』


「なーんだ、そうなのか~ 僕、てっきり死んじゃうかどうかするのかと思ってさ、びくびくしてたよ」


『一切の問題はございません。ですが、魔力山には近づく事はできません』


「ああ、それはアルビノ人も同じでしょ?」


『左様にございます』


「じゃあ、混血の人達に魔法をもっと使えるようになってもらって、労働力として頑張ってもらおうかな」


『労働力をお求めなら、救い主様のお力になれる者が居ります』


「え? いるの? どこに?」


『はい、居ります。この大陸ではございませんが、とある場所にくそがわすれたところで暮らして居ります』


「そうなんだ。この世界に、この大陸以外にも人が住めるところがあったんだね」


『人間ではございません。魔獣でございます』


「まじゅう、ふたたび」


『はい。本来は天使なのですが、あの女神(くそ)に器を与えられて居ります。配下の眷属と共に、救い主様のお役に立つ日に備え、待機している状態でございます』


「そうなんだ。今まで見かけたことは無いと思うんだけど」


『はい。ミチイル様にお目通りは叶っておりませんが、今までも眷属が働いて居りました』


「え? そうなの? どこで? なにを?」


『はい。魔獣ミツバチの眷属でございますので、この大陸で花から蜜を集めております。エデンの実が成るのも、神聖国の作物が実るのも、眷属の働きに拠るものでございます』


「えええー! そんな重要な働きをしてくれていたなんて、僕、全然知らなかったよ。悪い事しちゃったよね、ずっと知らなくて」


『いえ、救い主様がお気になさるような事ではございません。ミツバチの魔獣でございますので、蜜を集めているだけでございます。結果として受粉が行われているだけですので、全く、これっぽっちもお気遣いの必要はございません』


「そうなんだ。という事は、蜂蜜があるって事?」


『おそらく存在すると思いますが、この大陸ではございませんので。何なら持ってこさせますが』


「うん、まあ、蜂蜜は今度でいいけどさ、その魔獣ミツバチが労働力になるの?」


『左様でございます。農作業も運送も可能でございます』


「でもさ、僕、そのミツバチは見たことが無いんだけど」


『はい。花から蜜を集めるのは深夜、人目のつかない時間でございますので』


「そうなんだ……この世界じゃ夜は真っ暗だもんね。畑に照明点けて無いし、それじゃあ見えないか」


『左様でございましょう』


「でも、ミツバチって普通、太陽の光が無いと飛べなくないの?」


『魔獣でございますので』


「ああ、そうだったそうだった。地球の常識で考えたらダメだよね。それでさ、そのミツバチさんとはどうやったら会えるの?」


『少しお時間を頂ければ、ここに参上するように申し付けます』


「そっか。なんか僕が呼びつけちゃってもいいのかな。天使様なんでしょ?」


『私めも含め、天使とは救い主様のサポートをするものにございます。救い主様の御命令には忠実に従いますので、何も一切の問題はございません』


「ハハ 久しぶりに聞いたよ~ じゃ、アイちゃん、その天使さんを呼んでもらえる?」


『かしこまりました。ここへ呼びつけても構いませんでしょうか?』


「うーん、国民が騒ぎとかになるかなあ」


『なるやも知れませんが、労働力として扱き使うのであれば、いずれ人間どもの目にも触れる事と存じますが』


「ああ、そうか。じゃいいよね。うん。アイちゃん、悪いけどお願い~」


『かしこまりました。少々お時間をば』




***




「あ~ まいにちまいにち、たいくつ~」


「あら、マーちゃんは毎晩のように大陸へ行っているではないザマスの。ここから出ないわたくしよりも退屈ではないザマス」


「まあ、そうだけどさ~ クーちゃんは服をつくっているから、ひまがなくて、いいよね~」


「そうザマスが、誰に見せる訳でも無いザマス。張り合いもないザマス」


「ぼくたちさ~ いつまでこの星にいればいいんだろうね~」


「知らないザマスよ。でも、大宇宙中央管理センターへ戻っても、業務不履行で厳罰が待っているザマス。せめて、この星が無次元の力を大宇宙に返し終わるまでは、ここにいるザマスよ」


「そうだよね~ みつだって、すててもすててもたまるいっぽうだし~ めがみさまはいつもいないし~ でもみつはあつめないと実がならないし~ なかなかたいくつ~」


「マーちゃんは眷属に働かせているのではないザマスか。楽をしているから退屈なんザマス」


「クーちゃんだってさ~ けんぞくにふくをつくらせているじゃん~」


「チマチマした作業は面倒ザマス」


「そうだよね~ ぼくもチマチマ花をまわるの、めんどうだもん~」


『おい! こら! ハチにクモ! おめーら、何百年もグダグダさぼりやがって、いい加減にしねーと、そろそろぶっ殺すぞ!』


「はい! とっきゅうてんし様」


「はいザマス! 特級天使様」


『おい、おめーら、さぼりは終わりだ。仕事だ仕事。あのクソは居ねえがな、救い主様のお力になれるよう、身を粉にして働け! なんなら今すぐ粉にしてやってもいいぞ!』


「滅相もございませんザマス」


「ぼく、ちゃんとがんばります」


『おう、いい心がけだな。じゃ、早速、ハチ! 救い主様の国へ行って、奴隷として働け! いいな!』


「か、かしこまりました! とっきゅうてんし様」


『眷属全員連れて行けよ! わかったな! いや、その前に、ハチ! お前だけ先に救い主様に目通りさせてやる。着いてこい!』


「は、はい! とっきゅうてんし様」


『おう、それとな、特級天使様は禁止だ。アイちゃんと呼べ! いいな! それと、てめー、余計な事を言ったら、すぐさまぶっ殺すからな! わかってんな!』


「はい! アイちゃん様!」


『まあいいか。そして、クモ!』


「はいザマス!」


『おめーは待機だ! だがな、…………………………しとけ。わかったな!』


「はいザマス!」


『おーし、おめーらの休暇は終わりだ! キリキリ働け! いいな!』




***




プーーーン


「すくいぬしさま~」


「え?」


「すくいぬしさま~」


「え? なに?」


『救い主様、天使が参った様でございます』


「プーーーン シュタッ! すくいぬし様、おはつにおめにかかります~」


「うっそ! 真っ白いミツバチ??」


「ぼくは、一級てんしのマーちゃんです! すくいぬしさまのどれいになりにきました~」


「は? アイちゃん、なにか不穏な事を言っちゃっているけど」


『一切何の問題もございません。昼夜を問わず一日中働かせても文句も言わず、さらに休みなく働けますので、どうぞご安心を』


「いやいや、安心する要素ないでしょ!」


「ぼくは、すくいぬし様のどれいですから、だいじょうぶでーす」


「いやいやいや、あ、それにアイちゃんと違って、普通に話せるんだね」


「はい! めがみさまから、からだをいただいていますので~」


「そ、そうなんだ……でも、妙にでっかいミツバチなんだけど?」


『左様でございますが、救い主様、これくらいのサイズが無いと、働けませんので』


「ま、まあそうか。畑仕事とか、普通のミツバチだと無理だもんね。体長どのくらい? 1mくらいかな」


『その位と存じます。眷属どもも、同じ程度でございます』


「眷属……って魔獣ミツバチとかって言う?」


『左様にございます』


「でもすくいぬし様、けんぞくは、はなせませーん」


『ですが、言葉は理解できるはずでございます。眷属どもも、救い主様の御指示に忠実に従いますので、ご安心を』


「いや、ご安心……してもいいのかな」


『勿論でございます。それと、そこの一級天使、救い主様をお呼び申し上げる際には、ミチイル様と申し上げよ』


「か、かしこまりました!」


「うん、ごめんね、えっと……」


「ミチイル様、マーちゃんでーす!」


「うん、マーちゃん。僕が救い主なのは一応内緒だからね、よろしくね。それと……マーちゃんは目立つから、旧アタシーノ公国の中だけで働いてくれる? セルフィンにはスローンのスパイがいるらしいから、バレると大変かも知れないし」


「かしこまりました! ミチイル様」


「それと……アイちゃん、マーちゃんは天使様だから、本当は偉いんだよね?」


『私めの部下でございますし、救い主様が気に掛ける必要など、一切ございません』


「うん、そうなんだけど、天使だって事も内緒の方が良くない?」


『そうでございますね……そこの一級天使、天使である事は伏せよ。奴隷として、人間どもにも敬称をつけて呼ぶように。良いな』


「かしこまりました!」


「うん、ありがと。でも、母上とかさ、伯父上とか、身分の高い人だけでいいや、敬称をつけるのは。母上たちを呼び捨てにしちゃうとさ、この国だと色々面倒なんだ。天使様なのに、ごめんね」


「だいじょうぶです!」


「で、どんな事ができるの?」


「はい! けんぞくは力しごとができまーす。のうさぎょうやうんそうなら、すぐにおやくにたてまーす!」


「ああ、そうか。じゃ、農業と運送をやってもらおうかな。そうすれば、その人員を他に向けられるか。どのくらい働ける?」


「はい! いまにんげんがやっている、しゅうかくとかうんそうは、もんだいありません!」


「そっか。じゃ、農業部と相談して……そうだね、伯父上と相談しようかな」


コンコン


「ねえ、ミチイル、何か外が大騒ぎなのだけれど……畑の妖精が飛んでいたとか……あら?」


「うん、母上。この子はね、マーちゃんって言うんだ。ミツバチって言ってね、今までもずっと畑で作物ができるようにしてくれていたんだって」


「あら、まあ! という事は、畑の妖精さんね!」


「えっと、そんな話があるの?」


「ええ。畑では妖精さんが作物を実らせてくれるって、民が言っているそうよ」


「そうなんだ……」


「はじめまして! ぼくはミチイル様のけんぞくの、マーちゃんです!」


「けんぞく?」


「う、うん。眷属って言ってね、えっと……救い主の使い、みたいな」


「まあ! 救い主の御使い様なのね! とっても白くて美しいわ! わたしはマリアよ、ミチイルの母なの。よろしくね!」


「はい! マリア様!」


「それでね、母上。このマーちゃんと、マーちゃんの部下?がね、神聖国の農作業なんかをやってくれるって言うの。だから、伯父上に相談したいんだけど」


「ええ、わかったわ。お兄様を呼んでくるように伝えるわね。マーちゃんは、どこで暮らすのかしら? この別邸かしら?」


「ええっと……どこだろう」


「ミチイル様! ぼくとけんぞくは、かえるところがあるから、だいじょうぶです!」


「あ、そうなの?」


「はい! なにもしんぱいいりません」


「うん、じゃあ、任せるよ。働き過ぎないようにしてね」


「はい! ミチイル様」


「ではマーちゃん、ここで少しゆっくりしていてちょうだいね!」


「はーい、マリア様!」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ