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2-31 サロンの日常

「このイモダンゴは、とても良いお味ね、ジョーン」


「はい! 今日のイモダンゴは、イモ大福と言いまして、片栗粉と水分を多くして柔らかく作ったイモダンゴ生地の中に、羊羹を入れて蒸し上げました!」


「これは、大変に柔らかく、モチモチとしていて美味でございますね」


「ほんとうね。緑茶がとても合うわ。なにかほっこりするわね」


「はい! 先日ミチイル様が教えてくださいました! 日持ちがしないので、とても贅沢な和菓子です!」


「早速羊羹が使われているものね。羊羹の形は無くなっているけれど、ねっとり感はきちんと感じるわ」


「誠ですね、マリア様。このモチモチ感は、ともすると年寄りなどは喉に詰まってしまう危険性がございましょうね。わたくしは、大変美味しく頂けますけれど」


「お義母様は、お若いですから!」


「そうね、カンナは時間が止まっているかのようね。カンナと同年代の人と一緒に居たら、娘と思われるのでは無くて?」


「まあ、お世辞をありがとう存じます。やはり神の泉シリーズに加えて、高潤のおかげでございましょうね」


「そうね。高潤は外も中もキレイになるものね。まあ、体の中身は確認できないけれど」


「でもマリア様! 『高潤―体内から美しく―』を食べると、色々なものがドバっと出る気がします!」


「これ、ジョーン。はしたないですよ」


「でもカンナ、ほんとうよ。すっきりするものね」


「まあ、わたくしも毎日、大変に爽快でございますけれど」


「それにしてもカンナ、あなたの衣装はすばらしいわね」


「ほんとうです!」


「ありがとう存じます。ですが、マリア様のお衣装の方が、大変に華やかで、マーメイドドレスに大輪の花が咲き乱れて、さすが聖母と世の評判を独り占めでいらっしゃいます」


「うふふ ありがとう、カンナ。このマーメイドドレスと絞り染めは本当にステキよね! カンナも、控えめにお花が咲いているわよ。とても上品だわ!」


「ほんとうです!」


「ありがとう存じます」


「ジョーンはおしゃれをあまりしないわねえ」


「はい! 仕事の邪魔になりますので! ですが、男爵家当主夫人として応対する時には、ワンピースドレスを着ています!」


「ジョーンの仕事は、男爵家当主夫人の仕事よりも重要でございます。何と言いましても、ミチイル様に直々にレシピを伝授されるのでございますので」


「はい! お義母様! わたしもそう思っています!」


「まあ、そうかも知れないわね。ジョーンが一番、ミチイルの料理に対応してついて行くのですもの。ジョーンが居ないとミチイルも困るわよ」


「もったいないです!」


「本当に、ありがたい事でございます。セバス男爵家の誇りでございます。良く頑張っていますね、ジョーン」


「あ、ありぎゃとうごじゃいますぅ」


「あらあら、ジョーンったら。泣き虫さんね。カンナ、このブドウのジュレも食べてごらんなさいな。ミチイルが作ってくれたのを冷凍して置いたのよ。ジュレは冷凍もできるのですって」


「お義母様! このブドウのジュレは大変に風味豊かで、つるんとして美味しいですよ!」


「まあ、とても涼やかな見た目のスイーツと拝見しておりましたが、ブドウだったのでございますね。ブドウがこのように美しい緑色になるなど、存じませんでした」


「いつもは皮ごと食べますもんね!」


「ん~ やっぱりブドウのジュレはとっても美味しいわね! ブドウそのものを食べるよりも美味しいもの!」


「まあ! これは大変にプルンと致しまして、初めての食感でございます。お口の中で溶けて無くなってしまいましてございます」


「ほんとうです! ゼラチンは偉大です! お肌もプルンとしますし!」


「そうね、ジュレがこれだけプルンとしているのですもの、お肌もプルンとして当然なのかも知れないわ」


「誠でございますね、マリア様」


「それにね、この高潤のおかげで、豚骨スープを飲まなくても良くなったのですもの。それだけでも楽になったわ」


「ほんとうです! これで魔女汁とか言われなくても済みますしね!」


「誠でございますね、豚骨スープは少々濃厚でございますから」


「それにしてもねえ、足軽家が神聖国に、というか女神様ね、忠誠を誓うだなんてね」


「ほんとうですね! さすがはミチイル様です!」


「誠でございますね。ミチイル様のお慈悲があったればこそでございますから」


「そうね。セルフィンと同じような事が起きたものね」


「足軽グループでは、もう南村で滞在するものが出てきていますから!」


「そのようね。それにもう普通に水道管に魔力が流せるらしいわね。混血の人達にも魔力器官があるとミチイルは言っていたけれど、本当だったわね」


「それはミチイル様ですから! ミチイル様のおっしゃる事に間違いなどありません! ミチイル様は、こうなる事を見越して、南部にお慈悲を授けたのだと思います!」


「誠ですね、ジョーン。ミチイル様は、常人では想像もつかない奇跡をなさっておいででございます」


「そうよね、さすがは救い主だわ。王国南部でも農業が始まって、向こうも燃料が使えるようになったし、簡単な料理もしていると言うわ」


「チーズも神聖国に入って来ていますから!」


「誠でございますね。よもや神聖国に、余所から製品が入ってくるなど、奇跡以外の何物でもございません」


「ほんとうです!」


「でも、米や麦を南部へ輸出しだしたでしょう? 生産は大丈夫なのかしら」


「はい……セルフィンでも収穫されていますし、今の所は大丈夫なのですが、今より増えると少し心もとないかも知れません」


「その可能性はございますね、ジョーン。服飾部でも、小さな子供を持つ母親が増えておりますし、農業部でも同様でございましょう」


「最近では、子供が増えたものね」


「はい! ミチイル様の奇跡で、女性も体力が付きましたし、出産で命を落とすものも減りました!」


「誠ですね、ジョーン。もう食べ物の心配もございませんから、神聖国は人口が増えて来ておりますね」


「そうね。人口が増えても、増えたのは子供ですもの。まだ労働力にはならないし、逆に母親が子育てに手が取られてしまうものね。子供が増えて、民が元気に幸せなのはとてもいい事だけれど、国の運営を考えると、喜んでばかりはいられないわね」


「誠でございますね。それに、最近では旧セルフィンとの流通が盛んでございますからね、それに伴って婚姻も増えたと聞きます」


「そうね。旧アタシーノの民と旧セルフィンの民の間で婚姻が増えているという話ね。今は同じ国なのだから、当然なのだけれど」


「はい! 民の間にも出会いの機会が増えてますから! 以前のように親が決めるという事も、減っていると聞きます!」


「そうね。自由な選択肢が増えるのはいい事だと思うわ。ミチイルがいつも言っているものね、強制は良くないって」


「誠でございますね、マリア様。ミチイル様は自由を尊ばれていらっしゃいますね」


「ほんとうですね! 女神様に祈りや捧げものをするのも、強制は良くないとおっしゃっておいでですし!」


「ええ。何か理由があるのでしょうね。神聖国の中で民の活動が活発になるのは良い事なのだけれど、最近では今まで見かけなかったような知らない民も普通にいるものね。エデン人は北部へは来ないでしょうけれど、セルフィン人なのか、もしかしたらスローン人なのか、それすらもわからない可能性もあるのよ」


「ですがマリア様、スローン人の場合でございますと、衣装が違うのではございませんか?」


「そうです! スローン人は良くても作務衣ですから、シャツとかブラウスとかは着ていないのではないでしょうか!」


「そうかも知れないけれど、服なら魔法が使えなくても、人力だけでも作ろうと思えば作れるでしょう? 針と糸があればいいんですもの。確実とは言えない気がするのよね」


「何か心配事でもおありなのですか? マリア様」


「ええ、少しね。ミチイルの居る学園の寮でね、ここ最近、物が無くなったりしているそうなの。まあ消耗品もあるけれど、洗濯物まで紛失しているらしいのよ」


「まあ、そのような事が……」


「はい、お義母様。シェイマスからの手紙に、そのように報告がありました……」


「それは、少々気にかかる事でございますね……」


「ええ。スローンは女神信仰も受け入れなかったと聞くし、自分たちの方が祝福を受けて当然、みたいな事を言っていたとも聞くわ。エデン会議でも、いつもお兄様に文句を言ってくるそうなのよ」


「何様のつもりなんでしょうか!」


「誠ですね、ジョーン。自分たちの不信仰を棚に上げて、こちらに文句を言うなど、許されざる事にございます」


「ええ。ミチイルの妨げにならなければいいのだけれど」


「シンエデンの王子もいましたし!」


「そうね。中央エデンのバカ王女もいるものね。あれから何も言っては来ないけれど」


「中央エデン王室にも服が解禁されてございますしね、メアリ様が販売をなさっているのでございましょうが」


「ええ。うまくやっているとは思うわ。化粧水だって、四倍品、だったかしら。今まで五倍に薄めていたのを、少しだけ濃くして販売を開始したらしいわ」


「さすが、無慈悲なメアリ様です!」


「これ、ジョーン」


「いいのよカンナ。本当の事ですもの。お姉様も商売上手よねえ。同じものなのに、少しずつ濃くして行って、まるで新製品のように売るんですものね」


「ざまあ、と申しましたか、何か大変に爽やかな清々しい心持が致しますね」


「ほんとうです! エデンのやつら、ざまあ!」


「うふふ まあ、中央エデンの事はお姉様に任せましょう。それよりも、白い器をエデンで販売する事にしたでしょう?」


「左様と聞き及んでございます」


「これで、わたしたちと同じ食器を使っている事になるのよねえ」


「何か嫌な気分です!」


「誠ですね、ジョーン。この貴女会が、愚かな王族と同じ器を使用しているなぞ、由々しき事態なのではございませんか、マリア様」


「そうよね……そうよ! ここらでひとつ、新しい風が必要ね!」


「マリア様! 何か良い策があるのですか?!」


「いやあねえジョーン。わたしにある訳がないじゃないの。あるとすれば、もちろん……」


「ミチイル様でございますね、マリア様」


「そうです! ミチイル様は無尽蔵に新たな奇跡を起こせますから!」


「うふふ、そうよ! こういう時はミチイルに探りを入れるのが一番なのよね!」


「さすがはマリア様でいらっしゃいます。ミチイル様に新たな扉を開いていただくには、マリア様の聖母のほほ笑みが必要でございますから」


「ほんとうです! お義母様のいうとおりです!」


「そろそろ学園が長期休暇になるじゃない? ミチイルもシモンもシェイマスも帰ってくるでしょう?」


「左様でございましょうね」


「はい! シェイマスが、そろそろ戻ると報告してきていました!」


「早速わたしの出番ね!」


「楽しみですね!」


「誠でございますね」


「うふふ」


「えへへ」


「ほほほ」




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