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2-26 準神聖国民

「そうだったね、足軽グループね」


「はい。現状と何も変わらないのですが、神聖国に忠誠を誓うのであれば、神聖国民と同じような扱いとする事も可能です」


「ま、そうか。でも神聖国では暮らせないでしょ? いくら魔力器官があるとは言え」


「それはわかりません。試してみると言う方法もありますが、万が一の事を考えると」


「そうだね……とりあえず、南村辺りで試してみたらいいかも知れないね。あのすぐ近くまではずっと出入りしていたんだから、大丈夫な気がする」


「そうですね、試してみる価値はありそうです」


「うん、そうしてみてもらえる? 魔力のある土地に入ったところで、急死する訳でも無さそうだし、体調が悪くなるようなら止めればいいし」


「かしこまりました」


「だとすると、足軽さんたちには魔法の存在を隠す必要もなくなるね」


「はい。南村へ出入りするなら、当然そうなると思います」


「うん。対外的にはおおっぴらにはしないけどさ、神聖国に忠誠を誓う、というよりも、神聖国は女神様の国だからね、女神様に忠誠を誓ってもらったらどうかな?」


「それはいいわね! その方が確実な気がするわ!」


「でしょうね。わたしもそれが良いと思います」


「うん、じゃあ、そのようにしてもらえる? 扱いは、準神聖国民としてね。完全に同じにはし様が無いし」


「かしこまりました」


「そしたらさ、混血の民とは言え、エデンで暮らしているでしょ? そして表面的にはエデン人な訳だから、紙幣経済で暮らしているんだよね、神聖国と違って。だから、紙幣を支給しよう。ベーシックインカムというんだけどさ、仕事をしてもらっている混血の人達には今まで通り給料を払うんだけど、そうではない人たちにも、給料の半額くらいを支給しようか。混血民は3000人くらい居るらしいから、それぞれ4人家族と仮定して、一家庭に付き一か月金札10枚を支給する感じ。仕事をしている人は、別に給料がある訳だからさ、それも合わせると、普通のエデン人よりも結構豊かになると思うよ」


「そうですね、そうすると多くても月に一億円程度、別に必要と…そうなりますかね。王家に支払っている分の半分程度ですし、特に問題にもなりませんね」


「うん。生産能力がある限り、神聖国は紙幣を発行し放題だからね。その代わりに、現状買い上げている生産物の買い上げは廃止しよう。準神聖国民の義務として、生産物は国に納めてもらう事にしてね。もちろん、乾燥マッツァは現状と同じく一か月に5000枚支給して、その他にも穀類や野菜なんかも日持ちするものは、ある程度支給してもいいよ。でもま、メインは米と麦かな。後の野菜は向こうでも少しは栽培しているはずだからね。それと、ブドウの種もあげて育てさせて。リンゴは事情が色々あるからダメね。ブドウが収穫できたらレーズンとかワインを作ってもらって、ワイン酢も作れるはずだから。後は、桐の種だね。竹は魔法が無いと使えないし、水も必要だし、この世界のものじゃないからダメ。でも桐は、この世界の木を僕が品種改良したものだから、南部で植えても大丈夫。どのくらい育つかわからないけど、植えないと始まらないからね」


「かしこまりました」


「それと、燃料も今まで以上に渡してあげてくれる? 南部では燃料足りないから。だけどさ、魔法の存在は解禁するけどさ、魔石は出さないでね。あれは扱いに責任が取れないとね、何が起こるか、僕もはっきりわからないし……」


「かしこまりました」


「スタイン男爵家は、南部の混血の筆頭だって話だったし、後はスタイン家に任せよう。ベーシックインカムの取り扱いも、向こうの国?はちょっと違うか。領地?……うーん、対外的には違うけどさ、事実上の領地だよね。だから、神聖国としてはセルフィンと同じ感覚かな。そのベーシックインカムもスタイン家にまとめて払って、こうやって使ってねとは伝えるけどさ、後の運用は任せよう。国が一元管理してもいいしね、予定通り個別に渡してもいいし、事実上、こっちでは向こうの民の管理はできないからね」


「そうですね、それがいいと思います」


「うん。じゃ、伯父上、よろしくね」


「かしこまりました」


「それとさ母上、南部の話とは別なんだけど、エデンにね、紅茶と緑茶を解禁したいんだ。生産能力は充分あるかな?」


「椿の木は、いつも増やしているから大丈夫よ。花と油が一番ですからね、葉っぱの方はおまけなのだけれど、そのおまけの方がたくさん収穫できちゃうのよ。困ったものだわ」


「いやいや、種が少ないのは当たり前だからね、母上」


「ええ、わかっているわよ。だから、お茶の葉っぱはたくさんあるの。お紅茶も緑茶も、多少手間がかかるけれど、何も問題ないわ」


「うん、良かったよ。紅茶も緑茶も、茶葉50gで金札10枚で販売してね」


「まあ! お番茶の十倍ね! ステキよ! やる気が出て来たわ!」


「いつから母上が守銭奴になったんだろう……」


「クックック 割と最初の方からでは無いでしょうかね」


「何ですって! お兄様!」


「姉上にそっくりですし」


「んまあ! お兄様! ちょっとだまらっしゃい!」


「母上、落ち着いてね……」


「んもう、ミチイルが変な事を言うから」


「ごめんごめん。それでね、紅茶を出す訳だから、白い器も解禁しようと思う。これは生産能力はどう? 伯父上」


「はい。陶器や磁器の制作も、何も問題はありません。生産能力としては、有り余っています。魔法の習熟度が高くなっていますしね、一度に作れる数も多くなっていますので。ただ、輸送途中に割れてしまうものが出ますので、その点が心配です。現状の茶色い陶器も、割れたりする事が多いようです」


「ああ、そういえば緩衝材とか何もしていないんだっけ。あ、でも岡持ち魔法で部分的な岡持ちを荷台に作って……と言っても、割れ物だけを運ぶ時は困るよね、んじゃあさ、大き目の茶箱を作ってね、そこに籾殻を詰めて、その間に白い磁器を入れて運ぶようにしてもらえる? 陶器は今まで通りでいいけど、磁器は高級品だから、割れないようにしよう。その磁器だけどね、一つ、いちピースね、金札10枚。ティーポット以外どんなものでも一つね。そして、ティーポット付きのティーセットは一式金札500枚で販売してもらえる?」


「んまあ! なかなかのぼったくりじゃない! いいわよ! ステキよ! お姉様も大喜びだわ!」


「かしこまりました」


「本当は、陶器も磁器も、労力は同じなんだよね。磁器は骨が必要なだけだし、その骨もゴミだからね。値段も同じでいいくらいだけど、白い器は美しいから高くてもいいと思うの。それに、紅茶は白い器がいいからね」


「そうね。白いカップがいいわね。緑茶だって、白い湯呑だと色もキレイですもの」


「かしこまりました。そのように手配しておきます」


「うん。学園でお茶会と食事会の文化を広めようと思っているからさ、そうするとエデンの王国でも紅茶や白い磁器が売れる可能性もあるんだ。緑茶に関しては、伯母上が緑茶の解禁を望んでいたでしょ? この際だから、ちょうどいいと思ってね」


「そうね、お姉様は緑茶で楽しんだみたいですものね、きっとお紅茶でも色々楽しむと思うわよ」


「姉上の高笑いが聞こえてきますね」


「なんか、伯母上って、そんなに色々やっているのかな。学園でもさ、急に中央エデン貴族が僕の所に来だして、メアリ様に宜しくお伝えください、みたいな感じになったんだけど」


「ああ、ミチイルがバカな王族に暴言を吐かれたのが許せなかったらしいわよ。お姉様、ものすごく怒っていたみたい。わたしは手紙でしかわからないけれど、王国をも滅ぼしかねない怒り方だったって聞いたわ」


「ええ、そうみたいですね。姉上がその気になったら、本当に王国が滅びそうで、少々面倒くさいんですけどね」


「そうね……お姉様だと、おそらく冗談ではないと思うわ。それでミチイル、結局中央エデン王族に服を売る件は、どうするつもりなのかしら」


「うーん、僕は別にどっちでもいいよ。今はお茶会とかの方が重要だし、お茶会はアルビノ商店街のレストランでやるからさ、あ、そうだ伯父上、中央エデンのアルビノ商店街のレストランは客が居ないって話らしいんだけどさ、パラダイスもそうなの?」


「そうですね、ゼロって事はないと思います。しかし、繁盛している訳ではないですね」


「そう。ゼロじゃないなら、そのままでいいや。中央エデンはゼロだったんだよね」


「あちらの方が、アルビノ人への差別感情が大きいですからね」


「うん、そうみたいね。だから中央エデンのレストランは、学園生の専用にしたんだ。学園生が格安でお茶会や食事会に利用できるようにしたの。僕は道筋だけ作って、後はシェイマスに丸投げして、こっちに帰って来たんだけどね」


「ミチイル、格安って、どのくらいなのかしら」


「うん、一食、というか一回の利用で銀札一枚だね」


「なんですって? それはクッキー5枚の値段じゃないの。食事どころの価格じゃないわよ」


「うん、そうなんだけどさ、王国じゃ、お茶会も、食事会も文化がないから、まず広めようと思ってね。販促っていうんだけど、損しても後で得する、みたいな」


「それはわかる気がしますね、広く知られていないと、そもそも何も売れませんからね」


「まあ、それはそうね。もちろんミチイルが良いなら大丈夫なのよ」


「うん。それにね、向こうではエデン人はアルビノ商店街には来ていないから、学園生専用レストランだとしても、来るのは混血の生徒がメインになると思う。混血の生徒は10人くらいいるらしいのね、だから、その人たちにスイーツや紅茶、緑茶やまんじゅうなんかを食べて、知ってもらいたいんだよね」


「それは良いと思います。ちょうど南部の混血のグループが準神聖国民になるかも知れませんしね」


「そうね、それなら意味もあるわね」


「うん。ま、いつまでも面倒くさいのもダルいからさ、中央エデンにも服を売ってもいいって、伯母上に伝えておいてもらえる? 伯父上」


「かしこまりました」


「それじゃあ、足軽グループのうち、最大3000人くらいが準神聖国民として加わるって事だね。もちろん、女神様に忠誠を誓うってのは大前提だよ。そして、その南部の混血民の準神聖国民にもね、調理をして美味しい食べ物を女神様にお供えしてもらいたいからね、それを念頭に置いて、この神聖国を運営して欲しいの。よろしくね、伯父上」


「しかと、心得ました」




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