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2-25 急いで帰る

「あらミチイル、お帰りなさい。意外と早かったわね」


「……母上。母上からの初めての手紙だってのに、あんな手紙を貰ったら、悠長にしてられないでしょ」


「あら、そんなに大変なお手紙を書いたつもりもないのだけれど……」


「いやいや、ハハキトクとか、大変に決まっているじゃん!」


「え? 息子に帰ってきて欲しい母親が出す正式な手紙でしょう? 定型文句だと聞いたのだけれど」


「誰にさ! 言われてみれば常套句かも知れないけどさ! びっくりするじゃん!」


「あら、そういえば、誰から聞いたのかしら……変ねえ」




***




「はあ~ このスマホもSNSも無い時代の電報?とやらは、なかなか味のあるシステムね! 何かせつない気分になっちゃうわ! 簡単には連絡が取れない息子だものね、うそをついてまで息子に会いたいのよ! 奥ゆかしい母心ね! なんてステキなのかしら……」


「あら、どうしたのかしら、そんなにしみじみした雰囲気なんかで本を読むなんて。あなたにしては珍しいじゃないの」


「ええ、たまには純文学も捨てがたいものよ。心が洗われるのよね。あ、お姉様~ チョコ、チョコちょうだい!」


「あらあら、心が洗われたのでは無かったのかしら」


「それとこれとは別なのよ! はあ、あたしの星は、そろそろチョコくらい完成したかしらね!」


「あなた、そもそもカカオとかちゃんと用意してあげたのかしら? 材料も無いのにチョコレートができる訳はないのよ」


「あ、そうよね! ……用意したかな……エデンの園なんかに色々用意したつもりだけど……」


「本当かしら。スパイスだって無いって言っていたじゃないの」


「……うん。無いかも知れないわね! でも、そこの所を何とかするのが救い主ってもんでしょ!」


「あなたねえ、救い主にだって限度があるものなのよ。この地球の救い主だって、力を使い果たしてしまって、再降臨の時まで大宇宙中央管理センターで保養中なんですもの。あなたにあげた救い主の魂も、まだ短い期間とは言え、随分と働いてくれている感じではないの。こんな短期間で食事まで捧げさせて。あなたも少しは星の管理をしたらどうなのかしら?」


「う、うん。そうかも知れないわね! じゃ、チョコ、チョコ早くちょうだい~」


「あらまあ、しようのない子ね。チョコレートを食べたら一度、あなたの星へお帰りなさいな。きちんと確認してから、またここへ来ればいいじゃないの」


「うん、そうするわ。この小説を読んだらね! チョコ早くう~ あ、ココアも欲しいわ!」




***




「……うん、まあ、誰でもいいや。それでさ、何か用があったの? 母上」


「……ハッ そうそう、お兄様がね、ミチイルに会って相談があるらしいわよ」


「相談? なんだろう」


「何でも、足軽がどうとか言っていた気がするわ」


「あ、ああ、何となくわかったよ。じゃ、いつにする?」


「いつでも良いのではないかしら。ミチイルに合わせるはずよ」


「うん。じゃさ、僕も最近忙しかったからね、少し休みたいから、少し後にしてくれる?」


「ええ、もちろんよ。伝えるようにしておくわ。もう夜だし、食事をして休んだらどうかしら?」


「うん、そうする。悪いけどさ、御者さんを労っておいてね。結構急いで帰って来たんだから」


「わかったわよ」




***




はあ。久しぶりに温泉露天風呂(自称)にゆっくり入ったよ……僕も大人になって、疲れがたまるようになったのかな~


さて、今日は何をしようかな~


あ、そういえば、ブドウのスイーツを作ろうと思ってたんだった。ブドウのコンフィチュールは美味しかったからね!


まず、ブドウを皮むき器魔法でペロンと剥いて、種を抽出魔法で取るでしょ~


そして冷凍ピッカリンコね。


後は、シャーベットもいいけど生クリームを使おう。


乳製品とか卵はさ、バニラとかないと臭いがするんだよね。でも、ブドウは風味があるし、多分大丈夫。


さて、凍ったブドウの実と砂糖と生クリームと、一応アップルブランデーも少し入れよう。


そして、石臼魔法で滑らか―にしーの、はい、これでブドウアイスクリームの、完成です!


ついでにブドウのコンフィチュールも少し作って瓶詰にしとこうっと。


ふんふんふーん




***




「あら、ミチイル。今日は何を作っているのかしら?」


「あ、母上。今日はね、ブドウのアイス~ とコンフィチュール」


「まあ! アイスと言えばリンゴだったけれど、ブドウでもできるのね!」


「うん、できたよ~」


「ブドウのコンフィチュール! とても美味しそうだわ!」


「うん、美味しいよ。じゃ、サロンでお茶にする?」


「もちろんよ!」




***




「ミチイル、お茶の用意はできているわよ」


「うん。じゃあ、先にシフォンケーキを食べよう!」


「まあ、どんなケーキかしら」


「うん。とってもフワッフワでやわらかくて、軽くて上品なケーキだよ」


「んまあ! これがシフォンケーキ! とっても高さがあって大きいケーキなのね」


「うん。でも、普通のショートケーキと粉の量は変わってないからね、大きくなった分、フワフワなの」


「まあ、楽しみね!」


「うん、じゃ、いただきまーす」


「んまあ! フォークを入れたらつぶれてしまったけれど、また膨らんで元に戻ったわ!」


「うん、ショートケーキとは全然違うでしょ」


「パクッ……あら、口の中であっという間に無くなってしまったわ! 泡のケーキを食べているみたいよ!」


「うん、うまい事言うね~ そのブドウのコンフィとかもつけてみてよ」


「あら、このキレイな緑色のがブドウだったのね。ブドウは紫色のイメージしかないわ」


「うん。皮を剥いているからね」


「まあ! ブドウの風味とケーキも合うわね! 生クリームもいい仕事をしているわ」


「そうだよね、ケーキには生クリームがいいよね~」


「ええ、生クリームは絶対に裏切らないわよ。生クリームが美味しくなかった事なんて、ないもの!」


「ハハ バニラがあるともっと美味しいんだけどね~」


「無いものは仕方が無いわよ! これで充分美味しいわ。何より、冷蔵設備が無いと食べられないものね、生クリームは。とても贅沢ね」


「うん。エデンじゃ当然出して無いしね。そう言えばさ、南部の方から物は入って来てる?」


「ええ、チーズはもう少しかかるみたいだけれど、バターは入ってきているわよ」


「そっか。順調だね。そのうちチーズもできるだろうし。あ、そうそう、南部にね、焼き肉のタレを出したいの。格安で出してあげて欲しいんだ。マヨネーズボトルに入れて、南部に渡るようにできるよね?」


「ええ、それはもちろんできるでしょうけれど、ミチイル、焼き肉のタレはレシピを伝えてあるのかしら?」


「ああ! 多分伝えてない!」


「でしょうね。誰も焼き肉の事は知らないもの。以前にシモンに話した時だって、とても羨ましがっていたわよ」


「うん。シモンにはね、この間ごちそうしたんだよ。もちろんシェイマスもだけど、足軽君とね」


「それで南部に焼き肉のタレなのね。じゃ、ジョーンに伝えて工場で製造してもらいましょう」


「うん。それと、伯父上とも話しなくちゃね」


「ええ、いつでもいいわよ」


「んじゃ、ジョーンに伝えた後にしよう」




***




ジョーンに焼き肉のタレの製造を依頼して、また数日ゆっくりしてから会議。




***




「ミチイル様、お久しぶり……と言う程でもありませんね。お久しぶりはお久しぶりですが、とても国外に行っている方と会う頻度でもありませんし」


「ハハ ほんとだよね。なんか割と帰ってきている気がするもんね」


「それでお兄様、お話があるんでしょう?」


「そうでした。足軽グループから申し出がありまして、神聖国に忠誠を捧げたいそうです」


「うん、そうかなとは思ってたよ。足軽君も、そんな感じで話していたしね。それでさ、そうなると政治的に不都合があるかな?」


「はい、不都合はありません。もちろん、対外的に広く宣言してしまえば、メンツもありますから王国は黙っていないでしょうが、裏で動く分には、現状と何も変わりがありませんので、一切の不都合もありません」


「あ、そっか。別に取り立てて宣言する必要もないよね。密約でいいっか~」


「密約! なんかとっても良い響きね!」


「母上……変な噂とか広めないでよ?」


「まあ、失礼ね!」


「大丈夫です、ミチイル様。既に魔女だの何だの言われておりますから、今更ですよ」


「ええ? 魔女ですって?」


「そりゃ、獣の汁を毎晩啜っているからでしょう? 歳も取りませんしね」


「獣の汁? 母上、獣の汁をすすっているの? 毎晩?」


「い、いやあねえ、ミチイル。そんな訳ないでしょう? ちょっと美容のためにスープを飲んでいるだけなのよ。それが変な噂になっちゃっているみたいなの。というか、もう噂の域でもないわね、既にスープは普通に受け入れられているもの」


「いや、納得していい訳なの?」


「クックック ミチイル様、貴女会の女性陣はとんこつスープを毎日飲んでいるだけですよ。昔はとんこつスープで騒ぎがありましたが、今では普通に飲まれているスープですからね」


「ああ、とんこつスープね。最初の頃は、母上たちになんか色々文句を言われた記憶だけど。とんこつスープは嫌とか使うなとか」


「い、いえね、とんこつスープは作るのが大変でしょう? だから在庫を確保しておきたかったのよ。昔はジョーンしか作れなかったし、臭いも大変なのだもの。今では、私も圧力鍋魔法が使えるから、自分で作っているけれど」


「あ、そういえば、スープとかは素、みたいなものを作ってなかったね。昆布とか鰹節とかと麺つゆとかか。鶏ガラスープも豚骨スープも牛骨も、全部最初から煮て作っているままなんだね?」


「それはそうでしょう? スープはそういうものですもの。だから平民の家では作るのが難しいらしいのよ。主に給食で使われていると思うわ。液体を運搬するのも大変でしょうしね」


「そうですね、スープは運ぶのが大変ですからね」


「そうだった……スープの素を作ろう!」


「スープの元? 素? とはなんですか?」


「うん、その素をお湯に溶かすだけでね、スープができるような感じの粉?かな」


「あら、そんなステキな粉があれば、料理がとても簡単になるわね!」


「そうですね。平民も使いやすいと思います」


「うん。もっと早くに気づけば良かったよ……」


「じゃあ、早速工場で教育しないといけないわね」


「うん。その前に研究しなくちゃ。製造方法を確立しないといけないからね」


「そうね。わたしも手伝うわよ!」


「うん、お願いね、母上」


「それで、ミチイル様、話を戻しますが……」




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