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2-23 焼き肉パーティ

「本日は、お招きいただき、かたじけないでゴザル」


「うん、いらっしゃい。今日はね、外で食事にするから。こっちこっち」


「ミチイル様の部屋には、このような中庭もあったのでゴザルね。人目に付かずに落ち着くでゴザル」


「うん、最近増築したんだけどね。さ、食事の準備も整っているから、どうぞ」


「これはまた、たくさんの肉があるでゴザルね。見たことも無いような綺麗な肉でゴザル」


「うん、今日はね、七輪で焼き肉をするんだよ」


「ミチイル様~ 七輪がいい感じになったよ~」


「準備は全て整いました、ミチイル様」


「うん、二人ともありがと。じゃあ、座ろうか」


「スタイン男爵令息様、こちらのトングと皿をどうぞ」


「恐れ入りましてゴザル」


「さあ、好きな肉を乗せて焼いて、紙皿のタレをつけて食べてね」


「うわ~ ミチイル様~ 僕、目の前で肉を焼いて食べるなんて、初めて~」


「左様でございますね、シモン様。私も初めてでございます」


「私は、南部にて、ごくたまに肉を焼いて食事にする事もあったでゴザルが、タレ?と言うものは初めてでゴザル」


「じゃ、いただきまーす」


「ん~ このタレは美味しいね、ミチイル様~」


「本当でございますね。ステーキソースとは別物でございましょう」


「うん、焼き肉専用のタレだからね。かなりパンチのある味でしょ?」


「……これは、なんと! 焼いた肉は塩で味をつけるものでゴザルが、このタレをつけると別な食べ物のようでゴザル!」


「うん、これが焼き肉なんだよ。野菜もタレにつけて食べると美味しいしね」


「ミチイル様~ この塩だけのおにぎりが、とってもタレ味の肉に合うね~」


「本当でございますね、シモン様。このタレをつけた焼き肉を、ご飯に乗せて食しても美味しそうです」


「さすがシェイマス、ジョーンの息子だよね。この焼き肉をね、タレに絡めて丼に盛ったご飯に乗せたら、焼き肉丼なんだよ」


「この焼き肉は、香ばしく濃い味でゴザルから、南部の男たちも喜んで取り合いになりそうでゴザル」


「うん、今日はね、牛肉だけを用意したけど、豚肉でも美味しいんだ」


「豚肉とは、アルビノ村で売っているカツ丼の肉でゴザルな。牛肉は牛丼でゴザルから」


「そうだよ~ 牛肉以外は神聖国でしか流通してないもんね、ミチイル様~」


「うん。生の肉は保存が難しいからね。南部では牛の肉はどうやって保存しているの?」


「はい、肉にするのは働けなくなった牛でゴザルので、このように柔らかい肉では無いのでゴザルが、肉の殆どは塩漬けにしてから干して、干し肉にするのでゴザル。新鮮な肉がある時は、ごくたまに、古くなって処分しなければならない家具や家の木材を燃やして、肉を焼いていたのでゴザル。それは年に一度か二度くらいのものでゴザルが、今はミチイル様のお慈悲の七輪がゴザルので、おそらく七輪で肉を焼いて食べる機会も増えているのでは無いかと思うのでゴザル」


「ああ、そうだよね。燃料が無かったもんね、以前は」


「はい。ですが、この七輪の燃料は、火も煙も出てないでゴザルね」


「うん、これは薪じゃなくて炭だからね。南部に余裕が生まれたら、この炭も神聖国から買う事ができると思うよ。見てわかるとは思うけど、炭の原料は木だからね、南部で作るのは難しいかな」


「ミチイル様、いくら燃料の煙がほとんど出ないとは言え、今ここで肉を焼いている煙も匂いもございますが、アルビノ商店街の方で騒ぎにはなりませんか?」


「うん、それは大丈夫。真上の空の方に煙も匂いも行くようにしているからね、誰にも気づかれないはず」


「さすが~ ミチイル様は便利だね~」


「シモン様!」


「足軽君、炭は少し先の話としてさ、この焼き肉のタレなら今でも購入できると思うから、南部で買ったらどうかな。社員割引にしておくから」


「社員割引……ミチイル様の傘下の者は安く購入できる、という事でゴザルか?」


「うん、僕の傘下というよりは、神聖国の傘下というかな、うーん、でもパラダイス王国の貴族としてはまずくない? その……傘下だと」


「特に問題はございませんのでゴザル。最近はパラダイス王国から何も貰ってはいないばかりか、逆にこちらが紙幣を支払っているのでゴザルから、パラダイス王家に何を言われても何の不都合も無いのでゴザルので。現在はマッツァでさえも神聖国から融通して頂いている状況でゴザル。父からの伝令では、もうパラダイス王家からマッツァを下げ渡されなくとも、充分な量のマッツァがあるから心配するな、と伝えて来たのでゴザル。ミチイル様のお慈悲で、もう当家ではパラダイス王家と袂を分かっても問題はございませんのでゴザル。それどころか、マッツァを頂き、仕事を頂き、紙幣を頂き、お慈悲も頂いておりますので、当家はミチイル様を王として忠誠を誓いたいと存じておるのでゴザル」


「賛成賛成~! ミチイル様に王になって貰おうよ~」


「シモン様!」


「ハハ 僕は跡継ぎにも王にもならないよ」


「んもう、それはわかっているけどさ~ あと少しで僕が後を継がなくても良くなりそうだったのに~!」


「ミチイル様は、後を継がないのでゴザルか?」


「うん、そもそも跡継ぎはシモンだしね。僕は本家の所属にはなっているけど、大公の息子じゃないからね」


「そうでございましたでゴザル。ミチイル様は聖母マリア様のご子息でいらっしゃったでゴザル」


「せいぼ……歳暮?」


「……ミチイル様……」


「冗談冗談だよ、シェイマス、わかってるって」


「それにしても、聖母マリア様の事も、スタイン男爵家では把握しているのでございますね」


「左様でゴザル。数年前に元々の交換所を廃して、石畳を敷くように言われた頃くらいから、当家では把握しておりましたでゴザル。当家を含め、混血の南部の民は、女神信仰があるのでゴザルから、これらは女神の奇跡だと、最初から言われているのでゴザル。ある日突然、山のような石材や木材が現れて、これを使いなさいと言われたのでゴザルから、これが神の奇跡で無くして何なのだ、という感じでゴザルね」


「ハハ どうも、僕のせいだね」


「……左様でございましょうね」


「そんなのさあ~ エデンに出た時点で隠すのなんて無理じゃなーい?」


「シモン様は、至極まれにいきなり真実を穿つ事がございますね。さすがでございます」


「シェイマス、それって褒めてるのかな?」


「ミチイル様、もちろんでございますよ」


「え~ もしかして僕、嫌味を言われてる感じ~?」


「とんでも無い事でございます、シモン様。シモン様は物事の本質を良く捉えておいででいらっしゃると言う話でございます」


「まあさ、その事は置いておくとして、とりあえず焼き肉のタレをマヨネーズボトルに入れて南部に格安で販売するようにしておくね」


「重ね重ね、かたじけない事でゴザル」


「ミチイル様~ 割とお腹いっぱいなんだけどさ~ デザートとかあるんでしょ~?」


「もちろん用意しているよ」


「なら、僕はここらで、ごちそうさまにするね~」


「それでは私も、この辺にしておくでゴザル」


「うん、じゃあさ、部屋の中でお茶とデザートにしよう。シェイマス、悪いけど二人を案内してあげてくれる? 僕、少しやる事をやってから部屋に入るからね。窓を閉めてあるからランプつけといて。片付け終わった後に窓を開けるからさ」


「かしこまりました、ミチイル様。さ、お二人はこちらへどうぞ」




***




「おまたせ~」


「うわ~ ミチイル様、つやつやした茶色のケーキだね!」


「これは! もしや、チーズケーキではないでしょうか? ミチイル様」


「うん、良く知っていたね、シェイマス」


「はい。祖母からの手紙に書いてありましたもので。大層美味であったとか……」


「あ、そうだった。カンナには食べてもらったからね、少し前に。でも、随分情報が速いね、シェイマス」


「勿論でございます。神聖国とは毎日、手紙をやり取りしておりますので」


「え? 手紙って毎日やり取りできるの?」


「はい。アルビノ商店街では毎日、神聖国から物流がございますので」


「あ、そうだよね。僕、現場の事は全然把握していないからさ、言われてみればって感じだよ」


「大丈夫だよ、ミチイル様~ 僕なんて、さらに何にもわからないからね~」


「シモン様! シモン様は次期大公としての自覚をお持ちくださいませ!」


「はーい」


「そうは言っても、大公の代替わりなんてさ、あと十何年も先でしょ? そんなに急がなくてもいいんじゃない?」


「そうだよ~ シェイマスは気が早いんだから~」


「お三方は仲がとてもよろしいのでゴザルね」


「恐れ多い事でございます、スタイン男爵令息様」


「ハハ みんな家族だからね。さあ、これはベイクドチーズケーキというケーキなんだ。イチゴのコンフィチュールと生クリーム添えだよ」


「ミチイル様、紅茶の用意も整いました」


「ありがとう、シェイマス。さあ、お供えもして、と」


「ミチイル様~ 早く食べようよ~」


「んじゃ、いただきまーす」


「んー! どっしりとしてるけど、濃厚な味わいで美味しいね~ フワフワのケーキとはまた違って、美味しいよ~」


「左様でございますね、シモン様。チーズの風味が舌と鼻に抜けて香り高いです」


「これは! 今まで食べたケーキとは系統が全然違うのでゴザル」


「うん。この味のまま、フワフワに焼くこともできるんだけどね、僕はこのタイプのがチーズの風味が生きて、好きなんだよね」


「ミチイル様、お供えとは、何でゴザルか?」


「ああ! もしかして南部の女神信奉者の人達は、お供えしてないの?」


「お供え、というものは特に伝わってもいないでゴザル。女神様に食べ物を捧げるのでゴザルか?」


「うん。女神様にはね、お祈りはもちろんなんだけど、美味しい食べ物も捧げないといけないんだ。強制する事じゃないんだけどね、女神様を信奉するなら、食べ物もお供えした方がいいんだよ」


「これは、早速に父上に知らせねば……当家を始め、混血の女神信仰をしている者たちにも徹底させるでゴザル」


「うん、足軽君、よろしくね。いやあ、確認しにくい事とはいえ、すっかり忘れてた。世界中で広めないといけないのに」


「……ミチイル様」


「ああ、シェイマス。うん。足軽君、とりあえず南部にお供え文化を広めてね。後、毎度のことだけど、色々内緒にお願いね」


「承知してゴザル」


「ついでと言っては何なんだけどさ、ちょっと足軽君に助けて欲しいことがあるんだ」




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