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2-18 納品

中央エデンアルビノ商店街の寮に戻って来た。


別邸から一日で着くとは言え、疲れるよね。




***




「ミチイル様、シモン様、お帰りなさいませ」


「うん、お疲れ様~ シェイマス~」


「ごめんねシェイマス、ほったらかしにしちゃって。それで何か変わった事はあった?」


「特にこれと言ってはございませんが、スタイン男爵令息が、改めてご挨拶したいとご連絡がございましたのと、シンエデン王子が騒いでいた程度でございます」


「あ、そう。足軽さんは、この寮に食事に招待しようかな。足軽さんは混血だから、アルビノ商店街は平気だもんね?」


「もちろんでございます。パラダイスでもエデン人を取り仕切っておりますので」


「うん、じゃあ、招待して、僕の部屋で美味しい食事を一緒に食べよう。学園って休みがあるんだっけ?」


「みんな勝手に自主的に休んでいるもんね~ 休みなんて、あっても無くても一緒だよ、ミチイル様~」


「左様でございますね」


「うん、とりあえず、スタイン男爵令息に会ったら、話をしてみよう。それと、シンエデン王子には僕が直接話すから。王子、明日とか学園に来るかな?」


「はい、王族などは、学園に多頻度に来ています。特に、パラダイスとシンエデンは中央エデンとは違い、住んでいるのは自宅ではなく、学園の中の寮ですから」


「ああ、学園に登校しなくても、学園の敷地の中にはいるんだもんね」


「はい、それと、身分が高ければ高いほど、学園で偉そうに致しますので、そういう愚か者は率先して学園に来ております。シンエデン王子は学園に来るくらいしかやる事が無いため、毎日のように来ているはずでございます」


「ああ、学園に来れば、皆がヘイコラしてくれるもんね、気分がいいのか~ 清々しいくらい愚かだね」


「うん、ほんとだね~」


「じゃあ、神聖国民の分の新しい服とかも持ってきたからね、寮の皆に配ってくれる? この服はね、エデンでは金札1500枚で売るからね、それを頭に入れて置いて、って伝えてね。欲しければ注文を受け付けますって、言えばいいから。何ならお届けしておきます、請求は各王国へ致します、でもいいや。それだけ言えば、王家以外の貴族は無体な事は言わないと思うしね」


「そうですね、かしこまりました」




***




「はあ、またこのくだらない学園に来ちゃったよ。こんな所に来るくらいなら、レシピ開発でもしてた方が有意義だよね」


「うん、ミチイル様。さぼっちゃう?」


「シモン様!」


「ハハ とりあえず、王子に遭遇しないとね。シェイマス、悪いね、荷物持たせちゃって」


「とんでも無い事でございます」


「はあ、また教室か」




***




「いいか、我々偉大なるエデン人は、うんたらかんたら……」


「さあ、難解な引き算を致しますよ! 10-3は? はい、そこのあなた」


「見ろ! 良く見たか! 見たな! いや、まだだ……」




***




「ふう。こんなの毎日耐えるなんてさ、死んだ方がマシじゃない?」


「うん、ミチイル様~ 明日はさぼっちゃおうよ!」


「シモン様!」


「おい! そこの無色! 献上品は持ってきたんだろうな! しばらく逃げ隠れしていたようだが、許さんぞ!」


「おお、これはこれはシンエデン王子様。お待ち申し上げておりました。王子様へ納品いたします品を取りに、帰国しておりましたもので。シェイマス、あれを」


「はい、シンエデン王子、こちらがお品でございます」


「うむ、最初から素直にしておれば良かったのだ! アルビノ人の分際で! これからも身の程をわきまえるのだな!」


「はい、わたくし共は商売をしておりますので、シンエデン王子はお客様でございますから。本日は無色でシンプルなシャツとズボンをお買い上げいただきまして、誠にありがとうございます。代金は金札、いえ、シンエデンでは古いコインをご使用でしたね、代金は金コイン500枚でございます。本来、金札への両替が必要なのですが、神聖国から毎月支払われているコイン額と同じでございますので、次月分は、本日お納めした服と相殺させていただきます。どうぞ良しなに。それでは」


「なに! 金をとるだと! きさま、何様のつもりだ!」


「はい、アタシーノ神聖国の元首、ケルビーンの子でございますよ? ご存じではありませんでしたか?」


「なに! あの強欲な不届きものの一族か! お前らはアルビノ人のくせして、エデンの王国を手玉に取っている悪の組織ではないか! 神をも恐れぬ愚民が!」


「エデンの王国では、神は居ないという事でしたが? 先ほどの授業も理解できなかったのですか? それはお気の毒な……」


「うるさいうるさい! このシンエデン王族を愚弄する気か! マッツァは渡さん! お前らは死ね!」


「先日も申し上げましたが、神聖国ではシンエデンと取引はございません。したがってマッツァも買っておりません。王子がそうおっしゃるのなら、この先、未来永劫、神聖国はシンエデン王国と取引は行わない事にいたします。よろしいですね?」


「なにを! お前らなどに何ができると言うのだ! 偉大なるシンエデン王室がその気になれば、神聖国など、明日にでも滅ぶぞ!」


「ハアハア……シンエデン王子! そこまでになさいませ! 王子の身分で国を代表するような事はおっしゃってはなりません! ほら、お前たち、王子を寮にお連れしろ!」


「か、かしこまりました」


「失礼致しました、ケルビーン様。私はシンエデン王国寮の寮監でございます。本日の事は、なにとぞ寛恕くださいますよう、お願い致します」


「ああ……ま、わかりました。他の事はともかく、服の代金は相殺ですので。まあ、神聖国からシンエデンにも正式に通告が届くとは思いますが、念のため」


「…………」


「参りましょう、ミチイル様、シモン様」




***




「はあ、疲れたよ」


「ほんと~」


「ミチイル様、お久しゅうゴザル」


「お、スタイン男爵令息、僕が居ない間、悪かったね、気を遣わせちゃったみたいで」


「帰国なされていたとの事、無事にお戻りで祝着にゴザル」


「ハハ ところで……いや、なんて呼べばいいんだろ。ホル君? スタイン君? 足軽君?」


「学園にスタインは私一人でゴザルので、何とでもお呼びくださって結構でゴザル」


「お父上もいるもんね、僕は会ったことが無いけど……足軽君? いや、何年生なの?」


「2年生でゴザル」


「まさかの年上だった。クンはちょっとあれだから、いやでも、お父上の事は足軽さんだし……うわー、名前が親子で同じだと、大変だ」


「では、足軽君で、よろしゅうゴザル」


「あ、そう? じゃ遠慮なく。足軽君はさ、パラダイスの寮にいるんでしょ?」


「左様でゴザル」


「アルビノ商店街とかにさ、一人で来れる?」


「もちろんでゴザル」


「じゃさ、アルビノ商店街に僕たちの寮があるんだけどさ、今度遊びに来てよ。先日のお礼方々食事をごちそうするから。夜だと暗くて移動できないからさ、昼間の方がいいかな、とは思うんだけど、どうかな」


「恐れ入りましてゴザル。私はどちらでもよろしゅうゴザル。ランプもゴザルし、夜道も問題なく歩けますのでゴザル」


「僕もどっちでもいいよ。シモンもシェイマスもどっちでもいいよね? ま、学園をさぼりたくないなら夜でもいいし、学園を自主休日にできるなら昼でもいいから」


「では、昼でお願い致します。私はいつでも大丈夫でゴザルので」


「じゃあ、明日、アルビノ商店街の裏にね、従業員寮があるんだけど、パラダイスのアルビノ商店街と同じ構造だからたぶん知ってるよね、そのさらに北側に僕たちの寮があるから、そこへ来てもらえる? 商店街の裏手の門番には伝えておくから」


「かしこまりましてゴザル」


「じゃ、明日ね~」




***




「ねえ、シモンとシェイマス、明日、何が食べたい?」


「僕はね~ ショートケーキ!」


「私は何でも美味しく頂きます」


「うん、じゃ、ケーキは作るとして、何がいいかな。ショートケーキだったら洋食がいいよね」


「じゃあ~ グラタン!」


「うん、でもさ、グラタン、熱くない? この国は暑いからさ、熱い食べ物とかさ、嫌じゃないの?」


「うん、余所で食べるなら熱いのはいやだけどさ~ ミチイル様のこの部屋で食べるんでしょ~ ここは涼しいもん」


「シモン様、そもそもグラタンは、余所では召し上がれません」


「あ、そうか。この部屋、冷房つけたからね。熱くてツラいなら、シモンとシェイマスの部屋にも内緒でつけようか? 魔石は必要になるけどさ、そのくらいどうにでもなるでしょ。この寮はどうせ魔石使っているからね」


「やった~」


「……恐れ入ります、ミチイル様」


「うん、後でつけよう。じゃ、グラタンにしようか。サラダと、スープと、デザートにショートケーキね」


「楽しみ~」


「憚りながら、私も楽しみでございます」


「そういえばさ、普通の学園生は何を食べてるのかなあ」


「中央エデンの王室から支給される、生マッツァを食べているのではないかと思います」


「生のマッツァって、どんな味なんだろうね」


「僕は食べたことが無いからわかんない~」


「私も食した事はございません」


「エデンの園?に生えているんだっけ」


「話では、そう聞いております」


「学園の敷地にはさ、パラダイスとシンエデンの寮があるんでしょ?」


「はい、ございます。学園の建物の南側にあるようでございます」


「うん、そうらしいよ~ 僕たちは近寄れないから見たことは無いんだよね~」


「ですが、学園の建物と同じようなものでは無いでしょうか」


「ああ、原始的な木造建築ね」


「窓も閉まらないし、ドアとかもないんじゃなーいー?」


「ドアも窓も、全てミチイル様の奇跡によって使えるようになったものですから、当然エデンの王国には存在していないでしょうね」


「ま、そうだろうね。職人が横流ししたら、あるかも知れないけど、そんな事しないだろうし」


「しないんじゃなーい? そんな事したら、神聖国に居られなくなっちゃうもん」


「世界一豊かで進んだ文化の神聖国から、余所の国へ移住したい民など居りません」


「ま、そうだよね、僕だっていやだもん。しかも、パラダイスはともかく、シンエデンとかさ、アルビノ人には地獄だよね、あんな王子みたいのがゴロゴロいるんだろうし」


「うわー 僕、耐えられない~」


「でもシモンは大公になったら、エデン会議で毎回、あんなのと話をしないとならないんだよね」


「そうですね。それが大公の務めの一つですから」


「僕、いやだよ~ ミチイル様、代わって~」


「ハハ 無理~」


「シモン様、ミチイル様の道を妨げてはなりませんよ」


「はーい」


「ハハ よろしくね。じゃ、シモンの部屋からペルチェ冷房をつけちゃおうか!」




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