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2-17 帰国

「いやー、僕、服の事、すっかり忘れていたよ。確かに皆、作務衣を着ているなとは思ったような気もするけどさ、考えてみれば、ズボンとかシャツとか、エデンで解禁して無かったよね」


「でも、ミチイル様だし~ 好きにすればいいんじゃなーい?」


「左様でございます。ミチイル様のご自由になさってください。何を言われても、取り合わなければ宜しいのです」


「でもさ、聞きしに勝るっていうけど、あんなに酷い学園だとは思わなかったよ。あんな教育?教育とも呼べないけどさ、洗脳かな。洗脳を受けてちゃね、アルビノ人に対する差別というか、認識を改めさせるのは難しいじゃん」


「別にいいんじゃなーいー? 痛くも痒くも無いし~」


「そうですね。もし、危害を加えられるような事があれば、アルビノ人はエデンから全て引きあげると聞いております。どんな事になろうとも、何も問題もございません。困るのは、エデン人でございますから」


「うん、まあ、そうなんだけどさ。とりあえず、服はどうしようかな。あんな風に毎日寄って来られてもウザいしね……もうエデンでもシャツとズボンにブラウスとスカートを解禁しちゃおうか。なんか腹立つから、超絶高額にしてやろう。シモンもシェイマスも、普通の服は持って来ているの?」


「はい、もちろんでございます」「うん」


「じゃあさ、僕、一度戻って来るね。来たばかりだけど。シモンとシェイマスも、しばらく学園を休んだらどう? 明日から面倒でしょ」


「うん! 僕もミチイル様と一緒に一回帰ろうかな~」


「私は残ります。こちらの事は良い具合にしておきますので」


「でも、あの王族達は大丈夫?」


「はい。何という事もございませんので、ご心配なきよう」


「んじゃ、よろしくね。あ、それとさ、僕の食事は今度から自分で用意するからね、そのようにレストランに伝えてくれる? 居たり居なかったりすると迷惑だしさ、学園もあんなだから、僕、多分学園にはほとんど行かないと思う。食事を頼んでいると、僕が居るとか留守とかさ、他の人にわかっちゃうからね。この寮にはスローン人もいるしさ、僕の所在は、ぼかして置く方がいい気がするんだよね」


「ミチイル様が、それで良ければ何も問題はございません」


「うん。じゃ、明日の朝、早い時間に出発するからね、シモンもそれでいい?」


「うん、大丈夫~」


「では、御者に伝えておきます」




***




「あら、ミチイル、どうしたの? 学園に行ってから、まだ三日しか経っていないのに。わたしに会いたくなっちゃったのかしら」


「うん、良くわかったね、母上」


「まあ! 可愛いわね! で、本当はどうしたのかしら?」


「うん、カクカクシカジカでね、一度戻ってきたの」


「なんですって! わたしのミチイルを誰だと思っているのかしら! たかが貧乏王族の子のくせに!」


「僕の事は、たぶん知らないでしょ~」


「……まあ、そうね。それにしても、わたしが通っていたころと、少しも変わっていないのね、あそこは」


「うん、母上の言った通りだったね。それでね、ズボンとシャツにスカートとブラウスをエデンに解禁しようと思うんだ」


「なにかもったいない気がするけれど……どの程度の物を出す予定なのかしら」


「うん、どのくらいの在庫があるんだろう?」


「少し待ってくれる? ねえ、そこのあなた。隣にカンナは在宅かしら?」


「はい、マリア様、先ほどお見掛けしました」


「悪いけれど、カンナを呼んできてくれないかしら。手が空いたら来て欲しいって伝えてちょうだい。その後は、帰宅してくれて構わないわ」


「かしこまりました。失礼します」


「それじゃあ僕、キッチンでお菓子の用意をしているね」


「私はお茶の準備をしておくわ」




***




「悪いわね、カンナ。もう夜なのに急に来てもらって」


「とんでも無い事でございます、マリア様。ミチイル様が御帰還とか」


「ええ。服の事でカンナと相談があるのよ」


「まあ、何でございましょう。中央エデンから急ぎお帰りを要する程の事が……?」


「ええ、カクカクシカジカだったそうなのよ」


「まあ、それは、さすがのミチイル様も、ご立腹でございましょう」


「ミチイルは相変わらずだったわね、特に機嫌も悪くもないし」


「あの愚かな王国どもは、一体全体どなたのおかげで紙幣が手に入っていると思っておるのでございましょう」


「ほんとうよ。でも、ミチイルの事は内緒にしていたから、知らないみたいなのよね」


「そうでございましたね」


「母上~ お待たせ~ あ、ごめんねカンナ」


「ミチイル様のお召とあらば、真夜中にも馳せ参じます」


「ハハ 相変わらずカンナは元気だね」


「ミチイル、何のお菓子を作ったのかしら」


「うん、ちょっと待ってね。はい、母上、カンナ、どうぞ~ ベイクドチーズケーキだよ」


「まあ、これは初めてのお菓子ね!」


「左様でございますね」


「では、召し上がれ~」


「まあ、とてもどっしりとしたケーキ……パクっ! これはとてもチーズが濃厚ね! 風味が高いから、添えられた生クリームがあっさり感じてしまうわ! お紅茶と相性がいいわね」


「誠でございますね、マリア様。これはフワフワとしては居りませんが、大変にしっとりとしてございますし、下のクッキーでしょうか、それもしっとりとした食感で、年寄りにも宜しいのではないでしょうか。この婆も、大変美味しゅうございます」


「うん、本当はレモンとかあるともっと美味しいんだけどね~ それでさ、カンナ、エデンにシャツとズボン、ブラウスとスカートを出そうと思うんだ」


「いよいよでございますね」


「うん、それでさ、一番シンプルなシャツとズボン、ブラウスとスカートは在庫があるかな?」


「平民用でございましたら、数多くの在庫がございます。シャツもブラウスも、ギャザーもタックも無く、染色前で無色のリネンでございますけれど……ズボンとスカートも同様でございます」


「綿のはあるかな?」


「はい、ミチイル様を始め、高貴な方々用のがございます。ですが、平民に渡るほどの数はございません」


「うん、そうだろうね。例えばさ、今エデンの王室に出しているのは、適当な色を着けた正統派作務衣でしょ? それの一式を作るのと、ズボンとシャツの一式を作るのでは、どのくらい作業に差があるものなの?」


「はい。シャツに関しては、コックコート魔法がございますので、作務衣と変わりはございません。少々魔力が多く必要なのか、作成できる枚数が多少減る程度でございますが、ズボンの方は、密閉シーラー魔法で手縫いでございますので、時間がかかります。正統派作務衣一式を1とすると、シャツとズボンでは5くらいの手間暇の差がございます」


「そっか、そうだよね。じゃあ、無色の綿生地のシンプルなシャツとズボンは一式金札500枚、色つきは金札1000枚、ブラウスとスカートも同じにしよう。平民用のリネンは半額にしてあげようかな。買えないとは思うけどさ、リネンでも綿でも手間暇は変わらないもんね」


「左様でございますね、素材による作業の違いは殆どございません」


「一切飾り気のない、神聖国では普通の服の一式だけどね。布ベルトもサービスしてあげて。革ベルトはつけなくていいから。面倒だしね」


「かしこまりました」


「大人用の服ってさ、ワンサイズだったもんね?」


「左様でございます」


「この世界ではあんまり体型の差も無いもんね。服はダボダボと作っているし、筋肉質の人でも問題ないしね」


「そうね。布ベルトである程度、絞ったり緩めたりできるもの。ワンサイズで充分でしょう?」


「うん、そのうちに各人の体型にあった服を作れればいいよね。ダボダボした世界にボディコンの概念が~」


「シュッとした服を着ているだけで、注目されちゃうわね!」


「でさ、母上、ドレッシーなブラウスとかはどうする?」


「どれっしー……! またステキな言葉ね! エレガントでドレッシー! うふふ」


「ねえってば~」


「ああ、そうね、ワンピースは出さないで置きましょう。もっと値段を吊り上げるわよ! ドレスなんて、一生出さなくてもいいものね!」


「じゃあさ、ドレッシーなブラウスとシャツは高級綿の単色な色つきだけにしてさ、ギャザーとフリル、タックやプリーツね、そのタイプの一式は金札1500枚にしよう。これは貴族用ね。どうせ数は売れないからね、在庫も少数でいいでしょ」


「そうね! さすがに金札1500枚だと、王家でも毎月一式買うのでせいいっぱいのはずよ。それとも、スイーツでも我慢してもっと買うかしら、うふふふ」


「じゃあさ、エデンで活動する神聖国の貴族は、その金札1500枚の服を着ることにしよう。そして、同じく平民は色つきリネンの金札500枚のタイプね。これをエデンで着るのを解禁しよう!」


「神聖国民が全員、新しい服を着ていたら、エデン人も欲しがるでしょうね! うふふふ」


「左様でございましょうね、ふふふ」


「それで、シンエデンの王子には、綿のシンプル無色一式金札500枚の服を渡そうっと。シンエデンには毎月金コイン500枚を払っているもんね、それで相殺するからさ、来月は払わなくてもいいって伯父上に伝えてくれる? 母上」


「ええ、しっかり伝えておくわ!」


「それとね、中央エデンの王室には、新しい服は一切売らないでって伯母上に連絡もしておいて~」


「もちろんよ! そのバカ王女、さぞかし、くやしがるでしょうね!」


「ハハハ」


「うふふ」


「ふふふ」


「じゃあ、カンナ、パラダイスには配送の手配をしておいてね。中央エデンとか寮の分は、僕が持って行くから、用意だけしておいてもらえる?」


「かしこまりました」




***




一週間くらい、色々準備して、アイテムボックスの備蓄も増やしたよ。


これから自炊するからね、材料はたっぷり用意しておかないと! エデンじゃ、すべての物は手に入らないからね~


この一週間の間に、パラダイスでは既に新しい服を販売開始。平民はまだ買えないからね、王家を始めとした貴族が中心だけど。


中央エデンでは、まだ僕が行っていないしね、販売前。しかも王族には売らないからね、他の貴族が王族を差し置いて買うかどうかはわからないけど、王族よりもいい服を着てたら、面白い事になりそう。売れ行きがどうなるかはわからないけど、途中、セルフィン南村へ寄って、中央エデン分の服を荷下ろししてから寮に戻るつもり。後は、伯母上に任せよう。伯母上、商売が得意らしいからね~


寮にいる神聖国民用に、服も多めに持ったしね、もちろん、居るのは全員貴族だからね、金札1500枚の超セレブ服だよ。


さ、シモンも乗せて、寮へ戻ろうかな。




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