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2-9 丼もの

「さて、キッチンスタジアムを開始しまーす」


「パチパチパチザワザワザワ」


「今日は、丼ものを教えまーす。丼物とは、ご飯の上におかずを乗せた料理でーす。まず、他の肉に比べて消費量が少ない牛肉を使いまーす。牛肉を船盛魔法で薄切りにしたら、鍋に入れ、同じく魔法で薄切りにしたタマネギも牛肉と同量くらい入れまーす。トウガラシ少しと砂糖を多めに入れ、そこへ麵つゆの原液をドバっと入れまーす。そして蓋をして圧力鍋魔法で加熱しまーす。具材の水分は逃がしたくないので、必ず蓋はしてくださーい。煮込んだ具材が柔らかくなったら、丼によそったご飯の上に、ご飯が見えなくなる程度に煮込んだ具材を乗せたら、牛丼の、完成です! これは、具材を大量に作って置けるので、持ち帰り販売向きでーす。マフィンカップ魔法で作った紙の丼に入れて販売してくださーい。紙蓋も忘れないでくださーい。エデンでの販売は、一食銀札3枚でーす」


「はい! ミチイル様!」


「どうぞ、ジョーン」


「トウガラシは必要なのでしょうか? とても少量ですし、辛い味付けにもならない気がします」


「いい質問です、ジョーン。トウガラシは辛くするために入れるのではなく、隠し味です。隠し味とは、はっきりとは味を感じなくとも、味を複雑にしてくれるものです。今回の場合、煮込み料理でもありますので、トウガラシを少量入れると舌にほんの少し刺激がありますから、水分が多い煮込みでも味にメリハリがつくのです。なので、醤油などをたくさん入れずとも、舌が濃い味と勘違いして美味しく食べられるのです。希望者には、乾燥トウガラシの粉末などを牛丼にかけてあげるのもいいですね。同じ理由で、かけうどんなどにも乾燥トウガラシ粉をかけて食べたりするのもオススメです」


「かしこまりました! ありがとうございます!」


「はい、続いては、フライパンに薄めた麵つゆと、砂糖を少し足して煮立たせまーす。そこへ、小さく切った鶏もも肉を適量入れて少し煮て、さらに薄切りのタマネギもパラパラと入れて火を通しまーす。具材が煮あがったら溶き卵を上から回しかけ、さらに煮まーす。最後に、アオネギのみじん切りを散らして、丼のご飯に乗せたら、親子丼の、完成です! 給食やレストランなどで出す場合、最後にかけた卵は少し半熟が良いかも知れませんが、エデンで持ち帰り販売をする時は、完全に火を通して販売してくださーい。値段は牛丼と同じでーす」


「はい! ミチイル様!」


「どうぞ、ジョーン」


「なぜ親子丼という名前なんでしょうか」


「はい。卵は鶏から生まれますね? ですから、子です。そして鶏肉は子の親ですので、両方を使っていますから親子丼という、大変残酷な事実を端的に表現した名前となっています。なお、生の鶏肉の代わりに、時間が経ってしまった鶏のからあげを小さく切って親子丼にする事もできます。その場合は、チキン丼と呼んで区別してください。チキン丼はエデン価格で銀札5枚です」


「かしこまりました!」


「続いては、丼物の王様を作りまーす。フライパンに親子丼の時の汁を用意しまーす。毎回調合するのが面倒くさいので、麵つゆ原液に、砂糖と昆布を足したものを用意して、それを薄めて使う方が便利でーす。このタレは、丼のタレ、という名前で製造しちゃってくださーい。さ、フライパンに丼の汁を用意したら、その上にスライスタマネギを適量入れ、さらに、時間が経ってしまったトンカツを食べやすいサイズに切ったものを並べまーす。トンカツ定食一人前と同じ量のトンカツは要らないので、乗せるカツの量は少し減らしてくださーい。ささっと煮込んだら、溶き卵を回しかけ、仕上げにアオネギを散らして丼のご飯に乗せたら、カツ丼の、完成です!」


「はい! ミチイル様!」


「どうぞ、ジョーン」


「チキン丼もそうでしたが、なぜ揚げたてを使わないのでしょうか」


「大変良い質問です、ジョーン。もちろん、チキン丼もカツ丼も、揚げたてを使うこともできますし、その方が美味しいと思います。ですが、丼物の良さは、手軽にササっと作れる事にもあります。しかも、ご飯とおかずをいっぺんに食べられて、洗い物やゴミも少ないのです。ですから、いちいち揚げたりしていては、せっかくの手軽さが失われてしまいます。それに、唐揚げが三個だけ余った場合、後でつまみ食いをしても結構ですが、その三個の唐揚げを小さく切ってチキン丼にリメイクすれば、たった三個の唐揚げが立派な一食へ変化するのです。トンカツも同じです。トンカツ定食にするほどの豚肉が無かった場合、少ない量でもカツ丼は作れます。それに、トンカツを調理する場合など、少し多めにカツを揚げておいて冷蔵庫へ入れて置けば、次の日にでもカツ丼をすぐに作れるのです。ですから、エデンで販売する事も考えて、古くなった揚げ物を使うことにしました。販売する時は、カツはセンターで大量に揚げて置いたものを使うと良いでしょう。カツ丼のエデン価格は、チキン丼と同じく一食銀札5枚です」


「かしこまりました! ミチイル様の深謀遠慮の深謀がすごいです!」


「ハハ では続いて参りましょう。次は、中途半端に余っている野菜、今日はタマネギとピーマンとニンジンを使いますが、これを適当に太目の千切りにでもして、油を敷いたフライパンで薄切りの豚肉と一緒に炒めまーす。そこへ鶏ガラスープを少なめに入れて、砂糖と塩で少し濃いめの味付けにしまーす。具材に火が通ったら、片栗粉を水で溶いたものを入れ、数分煮込みまーす。丼のご飯にかけたら、中華丼の、完成です! なお、エデンで販売する時には、この中華あんかけを大量に作っておいて、後はご飯にかけるだけにしておきまーす。片栗粉でトロミをつけるものは、かならず充分に煮込んでくださーい。理想としては10分くらいはしっかり加熱して欲しいでーす。トロミがついたからと言って加熱をやめてしまうと、後でトロミが無くなって汁に戻ってしまいますので、注意してくださーい。中華丼もエデン価格で一食銀札5枚でーす」


「さ、続きまして、鶏肉を石臼魔法でミンチにしまーす。それを鍋に入れ、丼のタレの原液も適量入れて、水分がなくなるまで炒り煮しまーす。別のフライパンで炒り卵も作りまーす。アオネギのみじん切りも用意しまーす。丼のご飯の上に、半分は鶏そぼろ、もう半分には炒り卵を混ざらないように盛り付け、上にアオネギを散らしたら、鶏そぼろ丼の、完成です! これも具材はそれぞれ大量に作っておいて販売してくださーい。エデン価格は一食銀札3枚でーす」


「ささ、続きましては、ハンバーグを用意しまーす。ハンバーグは、薄く平べったく大きめに作ってくださーい。それを焼いたら麵つゆ原液を入れてさっと煮まーす。丼のご飯の上に、千切りキャベツを少し散らし、真ん中に薄いハンバーグを汁ごと乗せ、周りにトマトの角切りを適当に乗せたら、照り焼きハンバーグ丼の、完成です! 麵つゆの代わりに、ウスターソースやケチャップでも同じように作れまーす。この、各種ハンバーグ丼は、エデン価格でなんと、金札1枚でーす。手間暇がかかりますからね!」


「さささ、続きましては、豚のバラ肉を一口大に切りまーす。鍋に入れてトウガラシ少々と砂糖は多めに加え、上にオールスパイスの粉を少々振りかけ、さらに麵つゆの原液を多めに注いで、蓋をして圧力鍋魔法しまーす。強めに加熱して、豚肉がくずれるくらいに柔らかくなったら、丼のご飯の上にタマネギのみじん切りをパラパラ散らし、その上に煮た豚肉を少なめに乗せ、さらに煮汁を多めに回しかけまーす。仕上げにアオネギを散らしたら、角煮丼の、完成です! 本当は豚肉は一度焼き目をつけ、お湯で洗ってから作る方が美味しいのですが、面倒くさいので直煮にしちゃいまーす。汁に豚の油がたくさん浮かんでくるので、それは集めて置いて炒め物、今回の場合は、中華丼の具を炒める時などに使用すれば、美味しくなる上に無駄もありませーん。これも、あらかじめセンターで大量に作って置けば、すぐに販売できまーす。エデン価格は、もちろん金札1枚でーす」


「さささ~ 続きましてーは、本日の大トリに行きたいと思いまーす。タマネギは薄い輪切り、ピーマンは種を取って縦半分に、ナスもヘタを取って縦半分にして切り込みを入れ、春菊の葉っぱも食べやすい大きさにし、鶏の胸肉、できればササミ肉がおススメですが、それも薄切りにして、これら全てを天ぷらにしておきまーす。丼のご飯の上に、天ぷらを一つずつ立体的に盛り付けたら、上から丼のタレを原液で控えめに回しかけ、天丼の、完成です! この天丼は、揚げたての天ぷらを使ってくださーい。具材は好きに変更可能でーす。なお、これは手間暇がかかりすぎるので、エデンでの販売は無しでーす。天ぷらも、余ったりしたものはチキン丼の唐揚げの代わりに使えまーす」


「最後の最後に、天丼からの派生品として、おまけでもう一品。天丼の具を、すべて千切りにしてから、薄力粉を全体にまぶし、そこへ天ぷら衣を少量混ぜまーす。それをお玉ですくって揚げ油に丸く平らに成形しながら入れ、かき揚げを作りまーす。このかき揚げは大量生産が可能でーす。鍋に丼のタレを濃い目に薄めて火にかけ、そこへこのかき揚げを入れて少し煮まーす。丼のご飯に汁ごと乗せたら、かき揚げ丼の、完成です! エデンで販売する時は、天丼じゃなくて、こっちにしてくださーい。エデン価格は、金札1枚でーす。なお、かき揚げはかけうどんに入れて食べるのもおすすめでーす。揚げたてのかき揚げは、そのままご飯のおかずにも美味しいですし、なにより大量に生産して作り置きができますし、冷蔵庫で数日間は保存可能ですので、生産能力に余裕があれば、配給品のラインナップに加えるのもいいかも知れませーん。かき揚げの具材は、日替わりでもなんでも大丈夫ですから、余ってる水分の少ない野菜の他、カボチャやジャガイモなどを適当に使って作ってもいいと思いまーす。廃油は石鹸になりますからね、アブラナの増産などの手配も、した方がよいかも知れませーん」


「はい! かしこまりました!」


「では、お供えもして、みなさんで試食をしましょう。いただきまーす」




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