2-5 14歳になった
そうしているうちに、僕は14歳になった。
この世界では15歳で成人だって話だからさ、僕もあと一年で大人~
エデン会議でアタシーノ神聖国の樹立を宣言、正式に国へ。大公国じゃなく、国ね。王国じゃないし、勝手に身分を作っても面倒だから、貴族の身分としては大公のままだけどね、伯父上は実質的に王と同じかも知れないね。
僕は、大公家の本家の所属のまま……だから、僕と母上の屋敷も、分家屋敷じゃなくて別邸のままだよ。どういう扱いなのかな、対外的に。公子はシモンだろうし……ま、どうでもいいや。
そして、平民学校も無事に発足して、10歳の子供が一年通うように通達。もちろん副都セルフィンでも同じ。文字は新しい技術だからね、文字を学びにセルフィンの先生予定の人が来てたみたいよ。シモンとシェイマスに任せっきりだから、細かい事はわかんないの。
給食は、予定通り子供用の弁当箱を作成して、勉強している間に給食を作って、昼になったら教室で食べるようにした。学校給食は、なるべく品目を多くして、乳製品は必ず毎日摂取する事がルール。そうそう、今まで保管が不安だったから流通させてなかったヨーグルトを解禁した。公都が新しくなってね、平民の家にも冷蔵庫が普及したから、ヨーグルトも大丈夫になったの。冷凍庫はまだあんまりだけどね。ま、冷凍庫はいらない気もするよ。
ヨーグルトだとさ、やっぱりジャムが欲しいじゃない? 今までリンゴのコンフィチュールとリンゴジャムしか作ってなかったけど、イチゴの消費も落ち着いていたし、イチゴジャムも流通開始したの。もっと果物があるといいんだけどな~
そして、平民の大人たちの文字教育も始まった。カタカナだしね、そのうち書けるようになるだろう。ノートも鉛筆も使い放題だしね。
ま、今日は忙しいから、この辺で。
***
「さて、本日は久々のキッチンスタジアムでーす。今日は、うどんを教えまーす」
「パチパチパチザワザワザワ」
「それでは、薄力粉と強力粉を同量、混ぜ合わせまーす。これは中力粉と呼んじゃいまーす。この中力粉に少しの塩と水を入れまーす。パン生地よりも水はかなり少なめでーす。ギリギリ粉がまとまるくらいの水の量ですが、もしかしたら日によって変わる可能性もありまーす。石臼魔法でざっくりと混ぜ、少し粉気が残る状態になったら、キッチンロイド魔法でグイグイと捏ねていきまーす。かなり硬い生地なので、魔法が追い付かない人は、ビニールに挟んで足で踏んでも構いませーん。生地が滑らかになったら、一時間くらいは寝かせておきまーす。今日は時間が無いので、例によってピッカリンコしまーす。さ、寝かせた生地をパスタマシーン魔法で、厚さ3mm細さも3mmくらいのヒモ状にし、そのままでは長いので、30cmくらいずつにスライサー魔法で裁断しまーす。これが、うどんの麺でーす。くっつかないように少し打ち粉をしておいてくださーい。ここまでは大丈夫でしょうか?」
「はい! ミチイル様!」
「どうぞ、ジョーン」
「はい! 以前教えて頂いたスパゲティと同じような作り方な気がします!」
「いい質問です、ジョーン。スパゲティも麺だと教えましたが、うどんも麺です。このヒモ状のものは麺と言います。ですから、作り方は同じようなものになりますが、材料が少し違うので、出来上がりにも違いが出ます。うどんは、スパゲティよりも太目で白く、あっさりしていますが、スパゲティよりも応用が利きます。それは、この後に説明と実演をしていきます」
「かしこまりました!」
「はい。このうどんの状態は、生うどん、と言います。この状態にしておけば、冷蔵庫で一週間くらい、あるいはそれ以上日持ちしまーす。麺は、うどんに限らず、基本的には茹でなければなりませんが、圧力鍋魔法で茹でると、デロデロになってしまう危険性がありますから、麺を茹でる時には、鍋にたっぷりのお湯を沸かして、そのお湯で茹でるようにしてくださーい。お湯はいちいち取り替えなくても大丈夫でーす。麺を茹でたら鍋からすくって、次の生麺を入れて、どんどん茹でられまーす。お湯が少なくなったら足してくださーい。茹で加減も、お好みなのですが、少し硬めに茹でておいて、水で洗ってから一人前ずつ丸めてドンブリに小分けして冷蔵保存もすることができまーす。なんなら大きい紙コップでも構いませーん。茹でたても美味しいので、鍋から茹でた麺を水で洗わずに直接ドンブリに入れて、麺つゆなどを上から少量かけて食べることも出来まーす。さ、ここに鍋から直接ドンブリに入れたうどんがありまーす。これにアオネギを散らして原液の麺つゆを少々かけ、鰹節をトッピングしたら、釜揚げうどんの、完成です!」
「ささ、次は、水を張った鍋に昆布をたっぷり入れて、昆布だしを取りまーす。そこへ、色が濃くなり過ぎない程度に麺つゆを入れまーす。味醂と塩で薄めの味の昆布スープにしまーす。この昆布スープを、茹でて水で洗ったうどんの上からかけたら、かけうどんの、完成でーす。なお、かけうどんにはアオネギを散らすのがおすすめでーす。そして、このかけうどんに生卵を入れたら、月見うどんの、完成です! そして、かけうどんに好きな天ぷらを乗せたら、天ぷらうどんの、完成です! そして、小鍋で作ったかけうどんに、鶏肉やダイコン、ニンジンや卵などを入れて少し煮たら、煮込みうどんの、完成です! 多めのスープで食べるうどんには、ワカメを入れて食べるのも、出汁がプラスされて、とても美味しいでーす」
「さささ、うどんには、まだバリエーションがありまーす。茹でたてのうどんを水で良く洗って皿に盛りまーす。麺つゆを水で三倍くらいに薄めた、つけつゆを湯呑に入れまーす。ダイコンの端っこの方を、オロシガーネで摩り下ろしまーす。それを湯呑のつけつゆに少々入れて、つけうどん、またはザルうどんの、完成です! うどんを適量つまんで、湯呑のつけつゆを少量つけて、食べてくださーい」
「そして、うどんは汁と一緒に食べるだけではありませーん。前日に茹でて冷蔵しておいたうどんをピッカリンコで用意しまーす。フライパンに油を適量、そこへニンジンとタマネギとピーマンの細切りと、薄切り豚肉を入れて炒めまーす。そこへ、茹で置きのうどんを入れて炒めまーす。全体に油が回ったら、原液の麺つゆを適量入れて炒めまーす。汁気がなくなったら、焼うどんの、完成です! 作り方は同じで、麺つゆの代わりにウスターソースで味付けすれば、ソース焼うどんの、完成です! どちらの焼うどんも、削り節などをトッピングしても良し、目玉焼きを乗せても良し、野菜を変えても良し、牛肉でもソーセージでも良し、なんでもお好みで作れちゃいまーす」
「そして、茹で置きのうどんを3cmくらいに裁断し、ジャガイモのニョッキの代わりにグラタンの具として使う事もできまーす。僕は、ナポリタンをうどんで作るのも好きでーす。うどんを小さめに裁断してナポリタン味にし、上からホワイトソースとチーズをかけて、オーブンでこんがり焼いても、とても美味しいでーす。このように、うどんがあると、大変にバラエティに富んだ食事の世界が広がりまーす」
「はい! ミチイル様!」
「どうぞ、ジョーン」
「はい! スパゲティ同様に麺を作るのに手間がかかると思うのですが、うどんの最大のメリットは何でしょうか」
「大変に良い質問です、ジョーン。うどんは茹で置きの麺さえ用意しておけば、色々な食事が素早く用意できるのです。かけつゆは一度に大量に作っておけますし、天ぷらなども大量に揚げて用意しておけば、後は茹で置きのうどんをお湯で温めてドンブリに入れ、かけつゆをかけて具材を乗せるだけで食事を提供できるのです。準備さえしておけば、一人分でも二人分でも、わずか数分で用意が可能です。焼うどんなどはスパゲティ同様に手間がかかりますが、汁系のうどんなら、速いです。ですから、うどんの麺は工場でいっぺんに大量製造し、茹でて一人前ずつガス袋パックして、冷蔵保存で流通させる方が良いでしょう。そうすれば、キッチンカーなどで調理し販売することも可能になりますし、なにより、忙しいご家庭で、ささっと食事の用意ができるようになります。また、うどんは消化にも良いので、煮込みうどんなどはお年寄りなどにも優しい食事ですし、煮込みうどんを細かくすれば、離乳食などにも使えます。うどんは大変に素晴らしい麵なのです」
「わかりました! 工場で大量生産を手配したいと思います!」
「はい、よろしくおねがいします。では、数々のうどん料理を試食してくださーい」
「いただきまーす」
***
「さて、試食も一段落したようですので、今日の最後に、うどんを使ったお菓子をご紹介したいと思いまーす。まず、茹でていない生うどんを用意しまーす。この生うどんを3cmから5cmくらいの長さにスライサー魔法で裁断しまーす。そうしたら、これを中温の油で揚げまーす。こんがり色が着いて、カリカリした感じになったら、油から引きあげまーす。フライパンに砂糖と少しの水を入れて火にかけ、カラメル一歩手前くらいまで加熱したら火から下ろし、先ほど揚げたうどんを入れて、全体を絡めまーす。冷めてくると、うどんの周りに砂糖が再結晶化してまとわりつきまーす。そうしたら、バットに広げて完全に冷ましまーす。冷めたら、うどんカリントウの、完成です! これは、緑茶や番茶と相性がいいでーす。ポリポリとして、素朴な味わいが癖になりますよ! これは、クッキーの袋に少しずつ小分けしたガス袋がおすすめでーす。生うどんの生地を作る時に重曹を少しいれて生地を仕上げ、同じように揚げると、カリントウが膨らんで揚がりまーす。それを糖衣にすると、うどんカリントウとは違った、よりカリカリサクサクのカリントウができますので、余裕があったら試してみてくださーい! なお、野菜のパウダーを混ぜ込んでカリントウを作るのもおすすめでーす」
「では、試食しましょう!」
「ミチイル様! このカリントウは手が止まりません! しかも、ここまで歯ごたえのあるお菓子は、初めてではないでしょうか!」
「いい所に気がつきましたね、ジョーン。そうです、クッキーとは違った、カリポリとした歯ごたえのお菓子なのです!」
「これも大量生産したいと思います!
「はい、よろしくおねがいします」
「ミチイル様! 本日もありがとうございました!」
「はーい」