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2-2 紙とくれば

さて、紙が作れるようになって、今はホットドッグの包装紙にしか使ってないんだけどさ、僕、紙ができて真っ先にしたかった事があるの。


それはね、トイレットペーパー。


そりゃね、文明がほぼゼロみたいな世界だったから、そんなものは無かった。なにせトイレだって最初は無かったんだからね。平民は青空トイレだったし、大公屋敷でも、部屋の隅でおまる……ああ、原始人じゃん。


それでね、用が済んだ後の処理は、大公家の場合、リネンの小さい布で清める、的な。使用後の布は、どうしてたんだろう……まさか洗ってたりしてたのかな。平民は布とか使えてたんだろうか……ま、今はね、リネンの布くらいなら使い捨てにしてもいいくらいに潤沢だからね、小さいサイズのリネン布で清めた後は、そのままトイレに捨てちゃって、自然分解させてたんだけどさ、ほら、やっぱり文明人としては、トイレットペーパーでチョメチョメしたいでしょ?


なので、早速トイレットペーパーを作ることにしたよ。ま、もともとキッチンペーパー魔法だしね、紙の仕上がりは思いのままだし、キッチンペーパーと同じく、ちゃんとロール巻のトイレットペーパーが完成、平民はどうするかわからないけど、少なくとも僕の別邸では遠慮なく使ってる。シャワーな感じのトイレとかは、諦めてるよ。そもそも風呂にシャワーだってつけて無いしね。シャワーってさ、とっても贅沢な設備だと思うよ。でも、そのうち作るかも知れないけどね。


そして、もう紙が作れるからね、メモ用紙とかノートも作った。材料の竹はサブスク竹だからね、いくらでも使えるし。でもさ、書く物がねえ……そこで色々考えて、竹炭魔法で棒状の竹炭を硬く密度を上げて作ってね、それに紙を巻いて削って使う事にしたよ。ま、竹炭鉛筆だね、見た目はクレヨンだけどさ。消しゴムないけど、殺菌消毒魔法を消したい部分にかけたら綺麗になくなるから、便利~


それで、僕はね、何かを書き留める事が出来るようになって便利なんだけどさ、一般人は文字は数字しか読めないのね。伯父上とかは文字が読めるんだと思うけど、この世界の文字は、文字じゃなくて記号だって、前にアイちゃんが言ってたしさ、そんなの僕、覚えるつもりも無いの。だけど、文字は使える方が便利に決まっているでしょ、レシピだって読めるようになるんだしね。だから、皆に文字を教えようと思ってさ。


うーん、文字はどうしたらいいかな……?


『はい、救い主様』


「ああ、アイちゃん、この世界に文字を導入したいんだけど、何か問題あると思う?」


『救い主様がなさる事に、一切の問題はございません』


「ハハ そうだったね~ じゃさ、色々考えたんだけど、日本語のカタカナを導入しようと思うんだ。この世界の言語は日本語じゃないって聞いているけどさ、カタカナとか導入したとして、この世界でも普通に使えるものなの?」


『はい。表音文字として認識されるでしょうから、何も問題ございません。漢字だった場合は、表意文字とは受け取られず、模様や図形として認識されるでしょう』


「あ、そっか。ま、漢字は教えるのも面倒くさいしね、それに皆が覚えられるとは思えないし……平仮名は曲線ばかりだからね、何かを書くという事をして来ていない人達だから、直線がメインのカタカナの方がいいかな、と思ったんだよね。じゃ、カタカナでいっか~」


『救い主様の、御心のままに』




***




「今日は、お集まりくださいまして、誠にありがとうございます」


「どうしたのかしら、ミチイル。やけに改まっちゃって」


「いや、今日は初めて会う人もいるし」


「そうですね! こちらはシモン・ケルビーン様と、私の息子のシェイマス・セバスです」


「初めまして、ミチイル様。父上からは話を聞いてます。シモンです。よろしくお願いします」


「お初にお目にかかります、シェイマス・セバスと申します。よろしくお見知りおきをお願い致します」


「あらあら、あなたたち、ミチイルは堅苦しいのは好きではないのよ。もっと普通にしてちょうだい」


「はい、叔母上」「はい、マリア様」


「それでは、今日はみんなに文字を教えたいと思いまーす」


「パチパチパチ」


「はい、ここに紙でできたノートというものがありまーす。これは型抜き魔法して大きさを揃えた紙の端っこを、密閉シーラー魔法で接着してひとまとめにしたもので、文字を書いたりするための紙でーす。そして、この紙に文字を書くための道具は、この竹炭鉛筆でーす。この鉛筆の先をナイフで削って尖らせて、紙に文字を書きまーす。文字を消したい場合は、その部分に殺菌消毒魔法をかけると消えまーす」


「あら、ミチイル、この紙はホットドッグを包んでいるものに良く似ている気がするけれど」


「本当です! ツルツルはしていませんし、少々厚みもありますが、同じような感じですね!」


「うん、母上、ジョーン。どっちもキッチンペーパー魔法で作るものだからね。ノートは北部工業団地に製造をしてもらうから、これからはいくらでも使えるから」


「はい! ミチイル様」


「どうぞ、シェイマス」


「はい、このノートと鉛筆を使って文字を学ぶという事ですが、それはどのように役に立つのでしょうか」


「いい質問です、シェイマス。さすがジョーンの息子ですね。紙に文字を書いておくと、後で読み返して確認をすることができます。何か覚えたいことがあるとして、何度も誰かに訊いたりしなくても、紙に書いたものを見れば何度でも確認ができ、覚えることの助けになります。紙に文字を書いた情報は、焼き印魔法でコピーができますから、同じ内容を多くの人に読んでもらう事が可能になります。例えば、料理のレシピなどを書いてコピーしておけば、キッチンで働く人が助かります。覚えたい魔法がある場合、呪文を書いておけば独りでも練習が可能ですし、次の世代への魔法の継承も、非常に効率的に行えるのです。また、商売にも有用です。今、エデンで商売をしていますが、商品の追加が欲しい場合、紙に内容や数を書いて製造に渡して必要な商品を納品してもらう事もできます。今まではすべて、人を介していましたが、これからは紙に情報を書いた文書で、これらを行う事が出来、さらに、それらの文書を残しておくことで、誰でもが後で確認もできるようになります。もはや、紙なくしては社会が成り立たなくなるほど、便利で有用な事なのです」


「ミチイル様! それは、なんと素晴らしい事でしょう! レシピの材料が書いてあるだけでも、調理が効率的になりますし!」


「うん、ジョーン。料飲部だと、とても役に立つね。ただ、皆が文字を読めて書けるようにならないとダメなんだ」


「そうね、確かに皆が文字を使いこなさないと、便利にはならないわねえ」


「うん、だからね、ここに居る人たちにまず文字を覚えてもらって、それを他の人に教えて欲しいの。特に、シモンとシェイマス、二人にはね、後で作ろうと思っている平民用の学校で、皆に文字を教えて欲しい」


「かしこまりました、ミチイル様。全霊をもって誠心誠意、ミチイル様の計画の実現を図りたいと思います」


「うん、僕もがんばるよ、ミチイル様」


「ありがとう、シェイマス、シモン。それでは、ここに文字の一覧がありまーす。これは、カタカナという文字で、文字の中では簡単な部類の文字でーす。表音文字と言って、いま話している言葉の音、そのものを表した文字ですから、話している内容をそのまま、書き留めておくことができまーす。その中でもこの一覧表は、50音表と言いまーす」


「はい! ミチイル様」


「どうぞ、シェイマス」


「はい、50音と言われましたが、この表にある文字?は50個ありませんが、何か深い理由があるのでしょうか」


「はい、いい質問です。表を見ただけで数も数えられるとは、とても優秀ですね。シェイマスが言う通り、この表の中に空欄がいくつかありますが、本来はこの空欄の中にも文字が入ります。ですが、覚える必要も無いので、省略したのです。ですが、面倒なので50音と言い張っています」


「かしこまりました」


「はい。それでは、とりあえず読んで行きたいと思います。ここの部分から、あ、い、う、……」


「あ、い、う……」


「はい。だいたいの感じはつかめたのではないかと思いまーす。それでは書き取りと言って、実際に文字を書く練習をしてみましょう。ノートに鉛筆で、表の文字を真似て書いてみてくださーい」


「ミチイル、この鉛筆は思っていたよりも簡単に書けるのねえ。石や木の板に文字を掘っていたことを思えば、これだと、だれでも文字を使えるわね」


「ほんとうです! それに、どれも単純な文字ですし、子供にも覚えられそうです!」


「うん、そんな感じだね。だから、これから作る平民用の学校はね、子供を相手に教育する予定なの。大人の人も通ってもいいけどさ、大人の人は業務の間に時間を別に取ってもらってね、仕事中に仕事として文字を覚えてもらおうと思うの。その手配は、誰に頼もうかな」


「あら、それならわたしがお兄様に伝えておくわ。そういえば、この文字はお兄様には教えなくてもかまわないのかしら」


「うん、伯父上は自分で勉強できるでしょ? 別に僕が教える必要もないかなと思う」


「あら、それもそうね。いい大人で今や神聖国の国家元首なんですもの、そのくらいはお茶の子でやってもらわないとダメよね」


「ほんとうです! ミハイル様は、とても出世なさいましたね!」


「あら、ジョーンだって神聖国の筆頭執事の夫人じゃないの。それに料飲部を束ねているキャリアウーマンでもあるのよ。とても出世しているじゃないの」


「そうだよね~ いつもジョーンに負担をかけちゃって、ごめんね」


「とんでもありません! ミチイル様に直接!ご指導をいただけるなんて、とても光栄です!」


「私も、ミチイル様に直接ご指導を頂ける日が一日でも早く来るよう、誠心誠意、努力して参ります」


「うん、僕もがんばるよ」


「ハハ ありがとう、シェイマス、シモン、もちろんジョーンも。シェイマスとシモンはカタカナを書けた?」


「はい! 特に問題はございません。帰ってからでも練習を致しまして、明日にでも完璧に仕上げを致します」


「うーん、僕は少し時間がかかるかも知れないな~」


「あらあら、あなたたち、急がなくてもいいのよ。自分でできる範囲で努力してちょうだいね」


「はい!」「はーい」


「それでは、そろそろお茶にしましょうか。ジョーン、手伝ってもらえるかしら?」


「もちろんです!」


「じゃあ、僕もキッチンからお菓子を持ってくるよ」


「さあ、あなたたちは、もう少し書き取りの練習をしててちょうだいね」




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