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2-1 世界が変わった

世界が変わった。


計画通り。


伯父上は、とてもうまく計画を進めて、仕上げてくれたみたい。


伯父上は、エデンとアルビノが対等であるという条約の重要性を、ちゃんと認識してくれてたんだね。やっぱり伯母上の弟だけあると思ったよ。条約を結ぶように頑張ってみて欲しい、とはお願いしたけどさ、まさか本当に成就するとは思ってなかったもん。もう数年くらい先だと考えてたからね……


世界が変わったと言っても、エデン王国では表面上、普段通り。普段通りと思っているのは一部のエデン人だけだけどね。


まず、アタシーノとセルフィン両公国人はエデンから全員引きあげた。引きあげたと言っても、エデンの王国で商売をするから、エデンから居なくなった訳ではないんだけど、もうエデンに縛られることはない。


わずかに残っていた人頭税要員、家具や道具を作ったり、建築や土木工事とかをしていた人たちね、この人たちが公国へ戻り、その穴埋めをエデン人がしている訳だけど、今までは公国が賃金を払っていたでしょ。人頭税の代わりだからね。でも、もう人頭税は貨幣で支払う事になって、それらはまとめて王家に納めてるからね、その関係の仕事を始めていたエデンの平民には、公国から賃金は払わないの。賃金は当然、王家からもらってね、って事。


だから、足軽さんちが公国の代理として各平民や下級貴族に賃金を渡していたけど、それももう無い。


働いていた人たちは、なぜ賃金を貰えなくなったのかと詰め寄って来るよね、そりゃ。でも、雇い主が変わったって事が理解できなかったみたいね。足軽さんは王家から従業員の賃金を受け取ろうと思ったけど、従業員は使用人と同じ感じだから、貴族としては使用人の数が権力のバロメーターでしょ、足軽さんちに任せる訳にはいかない。結局、上級貴族が王家直属の立場で采配を振るう事になって、足軽さんはお役御免。


それでね、足軽さんちと一部の足軽傘下の貴族が、公国に雇われ続けることを希望したの。だから、表面上はパラダイス貴族のままなんだけど、実質はアタシーノ公国の貴族みたいな感じになっちゃった。


足軽さんみたいな男爵家は、エデンの王国では南部で平民と一緒に牛を放牧して、その牛を使って北部公国との間の運送を担っているから、それがそのまま継続されるだけ、っていう建前があるからね、アルビノ人と一緒に仕事もして実質は雇い主は公国だけど、表面上は旧態と同じなのね。王国はおそらく変化に気づかないと思うよ。


それで、家具とか道具とかはエデン人はまともに作れないからね、それらは公国で製造したものを王国に売る。ま、これは適正価格で売るけどさ、買うのは足軽に替わって采配を振るう上級貴族ね。王家から受け取った賃金相当の一部を使って、公国から仕入れる形なのかな。それを、自分たちが作った体で王国で消費者に渡すんだと思うけど、ま、公国はOEMって所だろうね。


その受注と納品を足軽さんちが行う。公国と王国との連絡窓口機能はそのまま継続してもらうよ。アルビノ村に管理のため常駐していた大公家の分家も公都に引きあげたからね、もう窓口は足軽さんちだけ。そしてもちろん、公国の商売も、もっと手広くするしね、従業員とか傘下の下級貴族もまとめてもらうし、足軽さんの仕事は無くならないし、逆に忙しいと思うけど、優遇するからね、これからも頑張って欲しい。


そして、金貨と銀貨も改鋳することにした。


いまは卵ぼうろ状態だからね、それをコインにする。パスタマシーン魔法で一定の厚みの金の板と銀の板を作ってね、後は型抜き魔法で均一な大きさに丸く型抜きすれば完成。とっても簡単で、早いよね。ま、職人さんによって一度に処理できる数は変わるんだけどさ、魔法を使えば簡単な事には変わりない。なので、エデンの王国に納める貨幣を始め、足軽グループに払う賃金も全て、この新コインで行う事にした。銅貨はそのまま。銅は正直いらないし、銅貨はスローンが作っているからね、 僕たちが勝手に変えるのも良くないだろうし、スローンは頑張って好きに作り続けてくれればいいかな。銅貨で買い物するの大変だけどね。


そうすると、旧貨幣から新コインに交換してほしいという希望が殺到した。なぜだ……ま、娯楽が無く暇を持て余しているエデン人だからね、何か珍しいものに飛びつく習性でもあるのかも知れない。もちろん、交換希望にはすべて応じることにしたよ。集まった金貨銀貨を改鋳するだけの簡単なお仕事だからね。おそらくなんだけど、パラダイスに有った旧貨幣の金貨銀貨は、全部新コインに置き換わったんじゃね?ってくらいに両替したらしいよ。そのうち中央エデンでも全部置き換わるだろう。


貨幣とかが新しくなるとさ、タンス預金が表に出てくるからね、国としても把握できるようになるし、なかなか辛辣なシステムだけど、バラバラな大きさの金属の玉を持ち歩くのもイヤでしょ、やっぱり規格に沿ったコインだと見てても持ってても気分がいいよね!


結果として、王国の貨幣総量が把握できちゃった感じだけど、別に他意はなかったよ、うん。


それよりね、もっと大変な事になっちゃった。


なんと、セルフィン公国が、アタシーノ公国と一つになることになったんだよ!


ま、当然と言えば当然なんだけどさ、既に一体で動いて来たからね、一つになった方が都合もいいよね。


それで、国の名前も「アタシーノ神聖国」になった。ぱっと見、セルフィンが併合されちゃった感じだけど、アタシーノは女神の名前だし、星の名前もアタシーノ星だし、事実上は併合だったけど拒否感みたいなものは無かったらしいよ。ま、旧アタシーノ公国だって、ケルビーン公国では無かったしね、ケルビーンに併合された訳じゃないし、女神信仰が隅々まで行き渡っている両公国だったから、特に何も問題は起きなかった。


アタシーノ公国のケルビーン大公家は、大公家のまま元首として、旧セルフィン大公家は、セルフィン公爵家としてセルフィン地方を今まで通り治める、って感じだから、ほんと、実質は今までと何も変わりは無いんだけど、一つの国として一体の運営も出来るし効率も良くなるでしょ。次のエデン会議で報告をするらしいけど、そんなに過剰な反応は無いのでは、との伯父上の話。


ま、公国はもう属国でも何でもないしね、他の王国を出し抜いて云々だって、もう出来なくなったからね。貨幣さえ払えば誰でもどの国でも取引ができるし、逆を言えば、貨幣を払わなければ神聖国からは何も手に入れられないんだから。


そういえば、お祖父さまを始め、オール(じい)ズは全然戻って来ないんだけど、って少しだけ気にしてたらね、セルフィンでの劇的な変化が楽しいらしくてね、しばらく向こうにいるんだってさ。しばらくって、もう結構長い事向こうにいるような気もするんだけど……考えてみれば、アタシーノ地方が10年くらいかけてやってきた事を、セルフィンでは2~3年でやっている訳だもんね、そりゃ変化のスピードは速いと思う。ま、元気らしいし、楽しく頑張って欲しい。


そして、公都の第四区を建設していた職人集団は、セルフィンの旧公都、今は副都セルフィンになったけど、そこで市街地を作っているらしいよ。井戸以外は職人たちでできるからね、とりあえずセルフィン川の水を公営住宅に引いているみたい。ま、僕が暇になったら、そのうち、気が向いたら、行くかも知れないから、その時は井戸を掘らないとね。行くのが非常に面倒くさいけど。


それから、もう何の制限も無くなったから、救い主の存在と、魔法を使える事以外は徐々に解禁していく予定。


魔法はね、どうせエデンではほとんど使えないんだけど、変に勘違いしたエデン人とかスローン人が、神聖国人を誘拐したりするかも知れないからね、これは大っぴらには使わないように、存在も秘匿。ま、いずれバレるとは思うけど。


それと、同じ理由から、救い主の存在も秘匿。ま、これは当然かも知れない。もっともっと世界が自由になって行かないとね。でも、救い主はともかく、僕の存在は特に隠す必要も無い。広める必要も今のところないけどさ、一応条約も結ばれたし、僕が息をひそめて暮らす必要も薄くなったからね、そのうちエデンにも行こうかと思う。当面は行く予定も無いけどね。


僕の見た目の問題も、おそらくは呪いが強固でキモイ、みたいな感じなんだろうと思う。アルビノ人とは感覚が全然違うもん。


牛とか木材、燃料があることや、コーチなんかはもう、隠していない。


コーチは条約を結んだときにエデン会議にも伯父上が乗って行ったからね、既に隠しても居ないんだけど、コーチはエデン人には人気がない、というか、倦厭されているみたいよ。なんでも、下等生物に荷物のように牽かれて人が乗るとか、呪われた民にお似合いなんだってさ。


ま、エデン人が近寄って来ないなら、願ったり叶ったりだしね、最初期タイプとか言わずに、普通に電球無しの最新型のコーチを乗り回してもいいという事にしたよ。


そして、エデン人には作務衣が広まって、王族貴族なんかは高級綿の色つき作務衣が普通になって、クッキーとパウンドケーキはエデン人も、ほとんど食べたことがある状態、ポテチは安いし嗜好品として定着、ホットドッグも食事の一つとして誰もが知っているメジャーな食べ物になった。


ま、エデン人は相変わらずマッツァが主食だけどね。エデン人がマッツァを食べなくてもいい状況には、当分ならないと思う。エデンでは貨幣も思うように手に入らないのは変わりないしね、そもそも、そこまでの物量をエデンに流していない。いくら余裕が出てきたとは言ってもさ、パラダイスのエデン人は神聖国人の5倍も人がいるんだから、物流の問題もあるし、燃料の問題もあるしね、そこまではできないね。


でも、少しずつはやって行かないといけない。エデン人も、時々は料理なんかをするようにならないとね、食文化が広まらないでしょ。


なんにせよ、世界が変わったばかりだし、出来る範囲で進めていく予定だよ。




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