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1-108 第一期黒仕上げ

「それで伯父上、その後の進捗はどんな感じ?」


「はい。商売の方はすべて順調です。貨幣は続々とこの公国へ集まっています」


「そうだよねえ、別邸に届く金貨も、もうどのくらいになったのか、僕もわからないよ。もう大量の金インゴットが貯まっているし」


「でしょうね。銀貨は人件費として使用している分が多いですが、金貨は現状、王家に税として納める分と足軽家に支払っている賃金にしか使っておりませんから」


「うん。パラダイス王家は何か言ってきていないの?」


「もちろん、色々と文句を言ってきております。ですが、文句を言われるたびに、新たな条件をつきつけて認めさせておりますので、今ではパラダイスへの税の支払いは、ほぼ貨幣のみになりました。そして、王都を始め、パラダイス王国内で自由に商売をしても良いと認められてもおります。ですが、防犯の事も考慮した結果、王都内に店を構えることはせず、現状と同じくアルビノ村入口での販売でとどめております」


「ああ、エデン人が勝手に来てくれるなら楽だし、問題もないよね」


「はい。アルビノ村へ続く道には、王都からのエデン人が毎日列をなしております。平民は既に貨幣は持っていませんから、足軽家から仕事を貰って賃金を得ている状態です。下級貴族の多くは足軽傘下となり、足軽家を通じて賃金を受け取っているようです。それ以外の貴族は、なんとかして貨幣を手に入れようとしているようですが、王家が出し渋っているので、思うようにはいかないようです。王家でも、超高額商品などは消耗品ですから、納める税以上に貨幣を使用していると思われます。もう、人頭税も無くなりましたし、工事や作業員などもすべてエデン人が行っておりますから、適当な量の石材と木材を納め、エデン人には難しい家具道具などを制作している以外は、もはや税は存在していません」


「着々と予定通りに進んでいるね。それでセルフィンと中央エデンはどう?」


「はい。そちらの方も順調です。パラダイスの前例がありますので、パラダイスよりも速いペースで貨幣経済が進み、中央エデン王家にも超高額商品を売っているようですから、そう遠くないうちにパラダイスと同じ状況になると思います」


「そうね、セルフィンにも化粧水とか送る量が増えたもの。お姉様が暗躍していると思うわ」


「暗躍どころか、次のエデン会議には姉上も乗り込む予定だとか」


「伯母上だよね。大丈夫なのかな」


「おそらく大丈夫だと思います。今の感じで考えるとエデン人は、文句を言うよりも商談の方を優先させるでしょう。王族貴族や女性相手の商談は全て姉上に任せる予定です。そして次のエデン会議では、中央エデンにアタシーノ公国から出している人頭税要員を貨幣と引き換えに引き上げようと思っています」


「うん、それはいいね。当然セルフィンでも人頭税は減り始めている感じ?」


「はい。順調に減ってきていると思います」


「そう。それでシンエデンの方はどう?」


「はい。作務衣とスイーツを献上した後は、貨幣と引き換えに商品を融通しています。シンエデン王国では、他の二王国よりもかなり出遅れている状態なので、焦りと怒りがあるようですが、貨幣を多く支払う事でシンエデンの公国人も引き上げることは可能だと思います。それも、次のエデン会議で片をつける予定にしています」


「うん、じゃ、もうすぐアタシーノ公国人は全員戻れるかも知れないね」


「はい。工事などの要員も居ますから全員は難しいでしょうが、ほとんど引き上げが可能でしょう。スローン公国にも便宜を計れば、うちの公国分をスローンが肩代わりしてくれる可能性もあります」


「じゃさ、スローンにはリネン草と綿花の種をあげたらどうかな。あれは植えれば特別な事をしなくても収穫できるしね、もともとこの世界にあったものの改良品だから、不自然でもないだろうし、リネン草とかがあれば、布はたくさん作れるだろうから。ま、魔法が使えないのは気の毒だけどね」


「かしこまりました。それで交渉をしてみようと思います」


「それで、商品の方は特に飽きられたりしてはいない感じ?」


「はい。エデン人全員に行きわたった訳ではありませんし、貨幣が無ければそもそも毎日食べられる訳でもありません。賃金として渡している銀貨も、ホットドッグを一つ買えば無くなりますので、嗜好品としての需要にとどまっています。今でもエデン人はマッツァが主食ですので」


「じゃ、ホットドッグもなるべく増やすように手配しておこうかな」


「はい、ですが、問題点を強いてあげるとすれば、ホットドッグを食べた後のゴミが大量ですので、その処理が多少問題になっているようです」


「ん? コンポスト魔法で解決……じゃないのか。王国内では魔法があまり使えないし、そもそもエデン人は魔法が使えないんだった。今はマフィンカップ魔法で作った竹皮の使い捨て皿かなんかで渡しているんだよね?」


「はい。アルビノ村でも一回二回程度は魔法が使えますし、南村へ戻る際にゴミも処分できますが、エデン人が王都へ持ち帰った分のゴミは、その辺りに投げ捨てて星へ還るのを待つ状態ですので、分解されるまではゴミが目に付くのだと思います。王国では火も使わないので焼却処分もしませんし」


「ああ、そうだよね……竹皮か……せめて紙でもあれば、油紙にして包んで持ち帰りとかにできるんだけどね。竹の皮より極薄の紙一枚の方が分解も早いだろうし。はあ、紙か……竹とかの繊維を石臼魔法で細かくする? いや、確か繊維が細かくなりすぎると紙にならないんじゃなかったっけ。繊維を細かくし過ぎないように裁断して、精白魔法で白くして、水と一緒に圧力鍋魔法で煮て……丈夫な極細綿糸で粗目の晒ふきん魔法で……木枠は作れるし……あ、ノリは……接着……ああもう! 紙って作るの大変じゃん! キッチンペーパーを使い捨てにしてた時代が懐かしいよ!」




***




――ピロン キッチンペーパー魔法が使えるようになりました。木材でお好みの紙が作れます




***




「あ、問題は解決したよ。ホットドッグは油紙に包んで販売しよう。竹皮よりも薄いしね、分解も速いと思う。ゴミと言えばビニール袋とかはどうしてるの?」


「はい。王都では洗って再利用をしているようです。丈夫な袋ですしね、切った果物入れたりもできるでしょう。清潔かどうかはわかりません」


「ま、そんなのは知ったことじゃないよね~ あの袋だって生物素材なんだし、いつかは分解されるでしょ。じゃないとしたら、アルビノ村に持ってきてもらって、焼却処分でもしてあげてくれる? 石油製品じゃないから有毒な煙とかも出ないしね」


「かしこまりました」


「あ、燃やすんだったら竹皮のままでもよかったじゃん! ま、紙が作れたら便利だし、いいか~」


「売った後のことなんて、わたしたちには関係ないわ! 向こうの問題ですもの。エデン人だって火くらい起せる人もいると思うわ。燃やしたかったら自分たちで燃やせばいいのじゃないかしら」


「それもそうか。それで伯父上」


「はい」


「エデン会議に行く時にね、今までは無色の作務衣だったと思うんだけど、色つきの作務衣を着て行ってくれる?」


「かしこまりましたが、騒ぎになるかも知れません」


「うん、目の前に見たことも無い作務衣があったら……しかもまだ、どこの王室も手に入れていない作務衣があったらさ、面白い事になると思わない?」


「それは楽しそうね! みんな余所を出し抜いて自分たちが欲しいのだもの。どんな事を言い出すか! 想像しただけでワクワクしちゃうわ!」


「はい。それで批判の矛先を逸らすのですね?」


「さすがは伯父上、わかっているね~ 何か文句を言うつもりだったとしてもさ、欲しいものが目の前にあって、しかもそれが手に入るかもと思うとね、そっちの方に気が取られるでしょ? それを狙うの。色つき作務衣は無色の倍の金額で受注してね」


「どんな視線を受けるのかと思うと、楽しくなってきますね」


「今のところは武力問題とか起こってないみたいだけど、もし、会議の時に向こうが激高して暴力に訴えかけてくるようなことがあったら、すぐに逃げてきて。商品は置いてきても構わないよ。そして、身の安全が保障されなければ、公国人は全員引きあげて、二度とエデンには来ないと言ってね。次のエデン会議はどこでやる予定なの?」


「はい、次は中央エデンです」


「じゃ、念のために随行員もいつもより増やして行ってね。足軽さんに賃金弾んであげて警備とコーチの御者をしてもらって」


「コーチも解禁しても構わないのですか?」


「うん、今回は逃げて帰る可能性もあるからね。もし逃げる場合はセルフィンの方が近いだろうから、伯母上たちとセルフィンの南村に一旦逃げてくれる? そこまでなら足軽さんも入れるでしょ。ちょっと危険だけど、ろくな武力も無い世界だから、大丈夫かなと思ってはいるんだけど」


「かしこまりました。今まで身の危険を感じたことはありませんから、おそらく大丈夫かと思います」


「うん。それで、今回使うコーチは最初期のタイプにしてもらえる? サスペンションもショックアブソーバーも暖房も無いタイプ。木の箱に木のベンチで木の車輪に鉄の輪っかを嵌めただけのやつね。それを、足軽さんちの牛に牽かせてね。道路もまともに無いだろうから、乗り心地は悪いかも知れないけど」


「かしこまりました。もしコーチを売ってくれと言われた場合は、そのタイプを売るという事ですね」


「うん。それくらいならいいかなと思うんだ。でも、もしコーチを売るなら金貨10000枚ね」


「うふふ いいわね! 今まで見たことも無い、人が乗る乗り物なんですもの、それくらいぼったくっても全然かまわないわ!」


「クックック かしこまりました」


「最初期のコーチはスローン人でも作れると思うしね、欲しければスローンに作らせればいいと思うし、積極的に売りたい訳じゃないからね。それに色つき作務衣だって、もうどうでもいいしね。色つき作務衣も、向こうでは絶対に再現もできないから、スローンだって無理でしょ? なにせ魔法がないとできないんだもん。無色作務衣は魔法がなくても作れるけどさ、色は無理」


「そうよ! わたしだって、どれほど辛酸を嘗めたかわからないわ!」


「ハハ だからね伯父上、色つきの作務衣も商品としてある程度の数を持って行ってね。後払いでもいいから、その場で売れるなら売っちゃって。そしてね、ここからが今回で一番肝心なところなんだけどね、次のエデン会議でやって欲しい事があるんだ。それはね……」




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