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1-105 貨幣経済

南村の整備が終わった。


まず、南村からアルビノ村までの街道を再整備。足軽さんがアルビノ村まで石畳を敷いてくれたけどね、おそらくガタガタしていると思うから、僕がそれを滑らかにしたの。一から引くんじゃないから簡単だったよ。そして街道沿いに南村から水道管をアルビノ村まで設置。南村から王都までは20kmくらいだって話だから、王都北のアルビノ村はまでは15kmだとして、そのくらいで水道管を作ったよ。なにせ行ったことがないからね、感覚でしかできないけど、多少ズレても現状よりは改善されるからいいと思う。


そして、南村に大規模調理センターを建てた。


色々考えたけど、この新施設でエデンに出す食べ物を作って、アルビノ村までピストン輸送をすることにしよう。南村なら魔法は問題なく使えるからね、アルビノ村で調理するよりはずっと効率的でしょ。中央工業団地でつくるよりも製品の移動距離が短い方がいいし、追加の発注も近い方がいいしね。道路も再整備したし、南村からならアルビノ村まで1時間もかからないで移動できるからね。


当面は、この調理センターでエデン用のポテトチップスとホットドッグを作ってもらおう。ポテチは物販屋台でいいし、ホットドッグはキッチンカーで温めてから売ればいいと思う。


なので、フランクフルトは北の加工場で作ってもらうけど、コッペパンを焼くのとかは調理センター。そして、今パラダイスで頒布しているスイーツも、今後はこの新施設で作ってもらう。この後、商売する食べ物も増やして行くからね、パン製菓工場とキッチン施設に冷蔵保管施設に福利厚生施設に倉庫、物流センターの機能もつけて大規模なセンターにしたよ。




***




「ところで伯父上、計画は順調に進んでる?」


「はい、セルフィンではエデン会議を待たずに中央エデン王へ作務衣とマドレーヌを献上したようです。どうも、パラダイスでの噂は耳にしていたようで、中央エデン王は大層ご満悦の様子だったとか」


「とりあえず受け入れられたようで良かったよ。それで、貨幣の方はどう?」


「はい。パラダイス王家に献上するものは貨幣と引き換えにする事で了承を取り付けました。とにかく物量が不足していた状態ですので、いくらでも払うから作務衣とスイーツを持ってこい、と催促が頻繁に来ています」


「ハハ それはいい流れだねえ」


「ほんとうよね! パラダイスと中央エデンの王家が策に引っかかったんですものね!」


「母上……で伯父上、王都に建設していた工場、というか交換所は完成したの?」


「はい。既にエデン人が働き始めています。賃金も一日の終わりに銀貨一枚を渡していますが、そのままスイーツなどを購入して帰るエデン人が多いようです。仕事やエデン人の采配は、足軽家に任せています。もちろん足軽家にも賃金を払っていますが、貨幣さえあれば服でもスイーツでも手に入れられるという事で喜んでいますし、他の下級貴族なども足軽家を通じて色々と購入しているようですよ」


「うん、それはまた、びっくりするくらい予定通りだね。それじゃ伯父上、いよいよ王都で商売を始めよう。まず、ポテトチップスを売るよ。これは物販屋台を作ったからね、この屋台にポテトチップスを満載して王都を練り歩くの。もちろん足軽運送に牛を牽かせて御者をやってもらってね。あ、この賃金は銀貨一枚じゃなくて、警備も兼ねているしね、一日当たり金貨一枚にしよう。それで足軽さんに支払いしてほしい。少し前に南村に調理センターを作ったからね、エデンに出すものは全部そこで作って、どんどん売ってもらうようにしよう」


「かしこまりました」


「それでね母上」


「まあ、何かしら?」


「うん。母上が作っている化粧水あるでしょ? それをね、エデンの王家に出そうと思うの」


「ええ……なにかもったいない気分になるのだけれど……」


「うん、でもね、王家にもっと貨幣を使わせたいからね、女の人は化粧水を欲しがる可能性が高いでしょ?」


「そうね。わたしたちみたいに肌は白くないけれど、化粧水を使えばそれなりに効果はあると思うわ。でも、あの人たちはお風呂とかも入っていないでしょう? 劇的な効果は無いかも知れないわね」


「うん、でも化粧水は綺麗なボトルに入っているしね、商品の見た目だけでも需要があると思うんだ」


「まあ、そうね。あんなにキレイなものはないのですもの、確かに欲しがるかも知れないわ」


「じゃ、ボトル入りの化粧水を王家に販売しよう。母上、生産の手配をお願い」


「わかったわ。どのくらいの数が必要かしら?」


「うん、超高級品扱いにするからね、毎月10本くらいでいいかなと思う。値段も高額にするから」


「どのくらいで売るのかしら?」


「化粧水一本金貨100枚」


「ふふ なかなか黒いわね! いいわ! 化粧水で王家から金をしこたま巻き上げましょう!」


「ハハ それでね伯父上」


「はい、ミチイル様」


「いま、手鏡を製造してもらっているの。もうできていると思うんだけどね、その手鏡も王家に超高級品として販売してほしいの。最初はね、サービスで一つくらいは献上してもいいよ。手鏡をみれば、びっくりするから、すぐに欲しくなる。それで、手鏡の在庫は少ないので、欲しければお早めにと言っておいてね。それでね、手鏡が売れたら、みんな自分の顔を見るでしょ? 自分の顔を把握しておかせて、その後に化粧水を販売すれば、美容効果を実感できるからね、鏡を見れば」


「んまあ! 確かに鏡を見ないとお肌の状態もわかりにくいものね!」


「うん。それで伯父上、手鏡と化粧水は王家だけにしておいてくれる? プレミアがある方が後々下々に広がりやすいからね」


「かしこまりました。手鏡はどのくらいの金額で売るのですか?」


「うん、手鏡も、もちろん金貨100枚にするよ。でもね、この鏡は銅鏡だからね、すぐに曇って使えなくなるの。それでね、それを磨いて復活させるクレンザーも同時に販売するの。このクレンザーで鏡を磨けば、また綺麗になるからね。このクレンザーの小袋は金貨1枚に設定するんだけど、だいたい毎月必要になるからね、クレンザーはずっと売れ続ける商品になるよ。そのうち、手鏡も王都中に売れば、ずっとクレンザーも売れ続けるの。長い期間儲かるんだよ」


「それは、想像しただけで楽しくなる話ですね。大公屋敷にある銅鏡も、使用人が磨いてくれていたのでしょうね、鏡が使えなくなるという話は知りませんでしたから」


「大公家にクレンザーも用意しておいたから、多分そうだろうね。銅は錆びちゃうからね。鍋とかも使っていなかったら錆びてくるから」


「あら、そういえばミチイルが作ってくれた新しい鏡は、曇ったりしていないと思うわよ?」


「うん、あれは銅鏡とは違うからね。そんなに手入れは要らないの」


「そうなのね!」


「今度、伯父上の所にもつけるように言っておくね」


「ありがとうございます」


「それじゃあ、作務衣とスイーツに加えてポテチも販売する、王家にだけはプレミア商品として化粧水と手鏡と、消耗品としてクレンザーも売る、ポテチは平民貴族関係なく売る、貴族への販売は足軽さんちに任せよう」


「かしこまりました、ミチイル様」


「うふふ とっても楽しみね!




***




こうしてポテチを販売し始めたんだけど、爆発的に売れた。売れて売れて、商品の補充が追い付かなくなってね、南村から急いでポテチを運んでアルビノ村に着いたとたんに、荷車から売れていくんだって。だから、せっかく作った物販屋台なんだけど、使われなくなっちゃったよ。なので、事実上、王都を練り歩く必要もなくなってアルビノ村入口で青空販売することに。その流れで、他の物もアルビノ村で売ることにした。アルビノ村のすぐ南に作った交換所で働いている平民とかもいるしね、アルビノ村の入り口、すなわち交換所の近くあたりで商売するのが、一番効率がいいしね。


ポテチは、もちろん王家にも大量に納入。一袋銀貨1枚で安いしね、王家としても下げ渡し物にするのに都合がいいみたいよ。作務衣とかマドレーヌとかは高いけど、ポテチをとりあえず渡しておいて、作務衣などはそのうち良き時にいずれ、みたいにしてお茶を濁すのね。


ジャガイモとアブラナ、大増産だよ。ま、簡単に増やせるし一か月で収穫できるからね、問題ない。


南村の調理センターも順調に稼働している。南村は魔法は普通に使えるし、福利厚生施設もあるし、公都から普通に歩けば2時間弱だけど、公都~南村間に乗り合いコーチが運行されるようになったからね、しかも新型のタイプで速く快適なの。それに乗ると公都から南村まで1時間もかからないから、充分に通勤も可能。アルビノ村で働きたくなかった人も、問題なくエデン関係の仕事をしてもらえるから。


それにしても、エデン人って暇なんだね。


考えてみれば、そりゃそうなんだけどさ、メインの仕事はアルビノ人にさせて、上流階級は一切の労働はしないし、平民だって使用人とか荷運び人とか、簡単な工事とかね、そういうことを片手間にやってるだけだもん。エデン人で一番働いている人は、足軽運送さんみたいな男爵家だもんね。


なので、基本的には暇人ばかり。そして何百年も代わり映えしない暮らし。


そこに、見たこともない製品や食べ物が登場したんだもん。王都から一時間くらいかけて歩いてきて、並んで、待ってなんてさ、きっと某ネズミの園で並んでいる地球人と変わらないよね、娯楽なんだもん、アルビノ村へ買い物に来るのが。


ああ、エデン人は歩くのがアルビノ人よりも遅いらしく、王都からアルビノ村までエデン人なら歩いて一時間くらいかかるみたい。よく来るよねえ、往復二時間だよ? 僕なら嫌だけど。


ま、順調順調!




***




――こうしてアタシーノ星で、貨幣経済が始まった




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