表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/237

1-100 ガラス

母上は、毎日楽しそうにバタバタしてる。


そうそう、料理刷毛魔法ができたからね、これで豚毛の歯ブラシを作ったの。刷毛を作る魔法とはいえ、お好みで形とか変えられるからね。そして、歯ブラシの大きさを大きくしてね、服のブラシと髪用のブラシも作ってね、そしてもちろん、料理刷毛も作ったよ。


髪を梳かすってのが無かったからね。まあ、髪が長くなりすぎた時には刃物で切ったりしているけど、髪に油をつけるようになるまで、パッサパサの髪が普通だったし。でも、やっぱりブラシで梳かすとね、全然違う! サラサラになるもん。おしゃれに興味がない僕でも、毎日ブラシで髪を梳かしているよ。


もちろん髪だけじゃなくて、重曹で歯磨きもしてる。いや~、やっぱりブラシで歯を磨くのは気持ちがいいよね! 小さいリネン布を濡らして磨いていたけどさ、比べ物にならないもんね!


それと、母上に少々プレゼントも用意したよ。


さ、サロンへGO!




***




「母上~ お待たせ~」


「ミチイル、待ちかねたぞよ!」


「もう、いつもの事ながら、ほんとにその表現どこから……あそこだった。ま、いいや。今日はね、緑茶にしよう!」


「緑茶? お番茶ではないの?」


「うん。まあ同じものだけどね、ちょっと洗練されているというか」


「お番茶よりも、茶葉が細いわね」


「うん。番茶は葉っぱを適当に集めたものでしょ? そして抹茶はごく小さい芽で、緑茶はね、芽ではないけど、若葉を集めたものなの。この若葉だけを集めて圧力鍋魔法で蒸して、その後は乾燥させるんだけどね、干物魔法をかけるときに、茶葉を揉んだり回したりしながら乾燥させるとね、緑茶になるんだよ」


「そうなのね。同じ椿の木から、お紅茶もお番茶もお抹茶も、そして緑茶もできるなんて、すごいわね!」


「ほんとだよね~ そして、今日のお菓子は、これです!」


「これは、おにぎりみたいだけれど……」


「うん、でもこれは米じゃなくて、小麦粉でできているの。その名も、まんじゅうです!」


「まんじゅう?」


「うん。小麦粉と重曹を水で練ってパン生地みたいにしてね、餡子を包んで蒸したものなんだよ」


「クンクン……ほんのりと温かい感じだわね。見た目は少し、シンプルだけれど」


「うん、手で持って食べてね。じゃあ、いただきまーす」


「はむ……まあ! 中にカボチャが入っているわ!」


「うん、カボチャあんパンの中身を少し水分減らしたものだよ。本当は小豆とかあるといいんだけどね、無いし」


「これはパンとはまた違って、柔らかいし小さいし、なにか上品な感じね。色は生成り色だけれど」


「あ、そういえば食紅で色付きのまんじゅうも作れるね、忘れてたよ」


「もうひとつ、おまんじゅうがあるわね。……はむ。あら、これは味噌ね!」


「うん、味噌のね、水分を減らしてから、同じ量の砂糖を混ぜたの。味噌あん、って言うんだよ。味噌がしょっぱいから、あんの量は少ないけどね」


「これも、とても素朴な味でいいわね。お茶もいただきましょう」


「うん、やっぱりまんじゅうには緑茶だよね」


「色がきれいな緑色ね……ズズ……まあ! これは風味は濃いけれど、とてもさっぱりしているし、香りもいいわね!」


「うん、番茶よりも高級だしね、貴婦人向けかな~」


「んまあ! それは聞き捨てならないわ! さっそく貴女会よ!」


「ハハ まんじゅうとかは和菓子っていうの。何が違うかって言えば、油分が少ない、もしくはゼロで、小麦粉よりもお米の原料の場合が多くてね、材料が少なくてシンプルなの。そして、和菓子には緑茶が合うんだよ」


「そうね、このおまんじゅうだと、お紅茶ではない気がするわ」


「うん。それでね、母上。今日は母上にプレゼントも用意しました!」


「あら? プレゼント?……献上品みたいなものなのかしら」


「ああ、贈り物とかないもんね。うん、献上といえばそうかも知れないけどね、身分とか関係なくものをあげたりするの。ま、その辺は深く考えなくてもいいよ~」


「そう。では、見せてもらえるかしら?」


「ジャーン! これです! これは、化粧水とかを入れるガラス瓶でーす」


「んまあ! とっってもエレガントな雰囲気よ! ステキ!」


「うん。母上が最近作っている化粧水ね、マヨネーズボトルに入っているけどさ、この化粧水ビンの方がおしゃれでしょ」


「ええ! とってもいいわ! この細くて少し高さがあって、コルクの栓も飛び出ていて可愛いわ!」


「うん、いいでしょ~ 母上のアトリエにたくさん用意しておいたから、自由に使ってね。数はたくさんできないかも知れないけど、生産の指示もしてあるから」


「いいわね! でも当面はわたしたちだけで使うだろうから、少量でも大丈夫よ。ガラスの器はまだまだ普及していないもの。それ以外におおっぴらには使わない方がいいものね」


「うん、そうだね。いずれ、温泉の脱衣場につけたようなガラス窓も使えるようになりたいよ。ま、今でも使おうと思えば使えるけどさ、この別邸だけガラス窓とか、権力の塊を誇示しているみたいでいやだもんね。脱衣所は中庭側だから、外からは見えないけど」


「そうね。使用人たちは当然知っているだろうけれど、ガラス窓は当面控えましょう」


「うん、それでね母上。もうひとつプレゼントがありまーす」


「うふふ 今度はなにかしら」


「じゃじゃーん!」


「んまあ! んまあ! こ、これは鏡、よね?」


「うん。いま母上の部屋についている鏡より、とってもキレイでしょ?」


「キレイなんてものじゃないわ! これに比べたら、お部屋の鏡は日没前よ!」


「ハハ うまいこと言うね~ 確かに銅をピカピカに磨いただけの鏡だからね、いままでの鏡は」


「でもこれは、真昼のように光っているわ!」


「うん。ガラス板の裏にね、ピカピカにした薄い銀の板を、密閉シーラー魔法で接着した鏡なの。それを丸く型抜き魔法で切り取って、木材に接着したんだよ。とってもキレイに映るでしょ?」


「ええ、とてもとてもステキよ! これは手で持って使う感じなのね?」


「うん、大きくもできるからね、後で母上の部屋の姿見も、サニタリーとかの鏡も全部、取り換えて置くよ」


「ありがとう! それで、その、この手で持つ鏡?」


「うん、手鏡ね」


「この手鏡を、あと二つ、いただけないかしら……カンナとジョーンにもあげたいの」


「うん、もちろん、もう用意してあるからね、今度の貴女会であげて~」


「まあ! 二人も喜ぶわよ~ 喜ぶ前に、カンナなんてびっくりして腰を抜かしちゃうかも知れないわね!」


「ハハ カンナが慌てるところなんて想像できないけど~」


「この鏡を見れば、さすがのカンナも驚くでしょうね。電球の時だってカンナなりに驚いていたもの」


「楽しみだね。それでね、母上。重曹の美容以外の使い方だけどね、まず、洗剤の……」


「……あら、そんなことも?」


「アハハ」


「うふふ」




***




あれから母上は、毎日鏡を見てうっとりし、化粧水のボトルを眺めては、うふふと笑っている。化粧水も自分で作っているみたいだしね、重曹やリンゴの酸を使った入浴剤・神の泉シリーズも使い出したから、どんどんキレイになっていくのが、毎日楽しいみたいね。


重曹は、問題なく生産が始まったからね、リンゴの酸を使わない重曹だけの入浴剤は、マヨネーズボトルに充填して神の泉シリーズの最下層ランクとして平民用に流通が始まった。公衆浴場では使えないけどね、福利厚生施設の小さな風呂で使っているみたい。そして歯ブラシも大量生産が始まったから、歯磨き剤としても重曹が使われ始めた。実は歯磨き剤は神の泉シリーズの最下層ランクと同じものなんだけどね。ちゃんと用途が分かれているのが、それらしくて、いいみたい。よくわからんね、どっちも同じ重曹なのにさ~


ま、母上も、民も、幸せそうで、僕もうれしいよ。


さて、今日は屋台を作ろう。


とりあえず、物販用の屋台でいいかな。貨幣経済じゃないから、今は売る訳ではないんだけどね。


平らな荷車の上に竹製の大きな茶箱部屋を載せる感じにしよう。


二畳分くらいの広さでいいかな~ 一番後ろ側にドアをつけて出入口にして、箱の片側の側面上部には開口部を設けて、外に少しはみ出した奥行の狭いカウンターを設置。この開口部には板戸を横滑り窓のタイプにして上部につけて、営業時には板戸を上にはね上げて棒でつっかえて開店。閉店時には閉じれば箱に戻る感じ。屋台の中は、左側が開口部のカウンターで、その上下に棚。反対側の右側は一面の棚。一番奥、先頭側には休憩と客待ち用にベンチ椅子と上部は収納スペースにしておこう。


あ、そうだ、この屋台箱の外側は、一面オレンジ色の食紅魔法で色をつけよう!


オレンジ色の屋台とか、目立つし、いい感じじゃない?


しかも、世界初の色付きカー! 話題になるに決まってるよね~


さ、後はこれを、牛が牽く荷車に取り付ければ移動式物販屋台の、完成です!


あ、牛もいいけどさ、人が引っ張れる小さいサイズのもあるといいよね、きっと。これは、四輪の荷台が平らなリアカーを発注しておかないとね。


さてさて、興に乗ってきたから、このままキッチンカーも作ってしまおう。


キッチンカーは、物販屋台のカウンター側に、収納スペースの代わりに魔石コンロを三つ設置。鉄板も作っておこう。うーん、魔石コンロは割と安全だけど、木造のキッチンカーだからなあ、一応、コンロの周りには薄い銅板を全面に貼りつけておこう。これでそうそう燃える心配もないでしょ、たぶん。


後は魔石コンロの下部には冷蔵庫、コンロ上部には収納スペースと、カウンターの反対側の対面壁は全部収納棚ね、そしてベンチ椅子。これらは物販屋台と同じ。


キッチンカーで料理を出すにしてもさ、使い捨ての容器の予定だし、洗い物もしないで戻ってから調理器具とか食洗機すればいいしね。売るものを限定すれば、水は要らないと思うんだ。まあ、まだ売る訳じゃないんだけどね。


ああ、これも小さくしてリアカータイプも作ろうかな。こっちはコンロは一つだけにしよう。


さて、物販屋台の大小と、キッチンカーの大小の、箱部分は完成したから、アイテムボックスへしまって、荷台部分は北部工業団地に発注だ!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ