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1-98 美容は一朝一夕にして成らず

「ミチイル~ サロンでお茶しましょう!」


「うん、いいけど……何か機嫌がいいね、母上」


「そうかしら?」


「うん。スイーツは何を食べる?」


「そうねえ、エデンのやつらが食べられないものがいいわ!」


「うーん、じゃ、アイスクリームにしようかな」


「あら、シャーベットね!」


「ううん、シャーベットじゃなくてね、アイスクリームって言うの。生クリームを使うんだよ」


「全然想像がつかないわ! 楽しみね」


「うん、ちょっと待ってて、っていうか、母上はサロンでお茶の準備しておいて~」


「わかったわ!」


「じゃ、ボウルに生クリームと砂糖とアップルブランデーを少しだけ入れて、とりあえずキッチンロイド魔法で泡立てて~の、冷凍スキルでピッカリンコするでしょ~ そしてアイテムボックスに入れっぱなしの冷凍リンゴも加えて、石臼魔法でピカッと。ああ、いい感じ~ じゃ、これをガラスのデザートボウルに盛り付けて、スプーンと共にサロンへ持って行こう。あ、とけちゃうけどお供えもしとこう」




***




「母上~ お待たせ~」


「あら、全然待ってないわよ。ずいぶんと早くできたのね!」


「うん、僕なら速いかな~ じゃ、お茶しよう~」


「はい、お紅茶でいいかしら?」


「うん、じゃ、いただきまーす」


「ん、ん? ん! まあ! これはシャーベットよりもクリーミーで滑らかで、とっても美味しいわ! 色も白い感じで美しいし、香りもリンゴの濃厚な感じ! これはとてもステキでエレガントで高貴で貴婦人にふさわしいスイーツね!」


「うん、おいし~ 本当はバニラとかあると、もっともっと色々できるんだけどね……」


「あら、それは手に入らないものなのかしら?」


「うん、無かった。ま、この世界じゃ花とかあんまり無さそうだし、難しいかも知れない」


「……バニラ……何か深層心理に強烈な……」


「ああ! そういえばさ、エデンの具合とかはどうなの? 何か進展あった?」


「え? あ、そうそう、お兄様が喜んでいたわよ。人頭税を減らすことも成功してね、そして足軽も石畳の工事をやり始めたらしいわ。平民に関しては、特にこれと言ってなにもないわね。ただ、順調にクッキーは配っているそうよ」


「そっか~ じゃ、もう少しかな~」


「作務衣も、予定していた数はもう揃っているとカンナも言っていたし、後はパラダイスの出方待ちかしらね」


「そっか。じゃ、一応準備もしておこうかな」


「今度は何をするのかしら?」


「フフ まだ秘密~」


「あらあら、今度きちんと教えてちょうだいね」


「うん」


「それと……ミチイル~ あなた何か私に言っていない事とか、なあい?」


「えっ?」


「ほら、世の中がステキになるものとか、あるでしょう?」


「うーん、何のことだかさっぱり……あ、グラタン作る約束してたっけ」


「グラタンはもちろん約束だけれど、そうじゃなくてね、ほら、美魔女を実行推進していくような、そういう何かよ!」


「ああ……美容関係のこと……」


「美容……そう、それ! 美容よ!」


「うーん、僕、あんまり詳しくないから」


「んもう、そんなこと無いでしょう? 椿シリーズだってミチイルが創り出したんじゃない!」


「創り出したって、大げさな……あ、でも、オイルを変えるだけでも色々あるかも知れないね」


「たとえば?」


「うん、今、平民の石鹸は廃油なの?」


「ええ、廃油と行燈油かしら。行燈が使われなくなったから、菜種油をとった後の廃油ね。あら、揚げ物の廃油とアブラナの廃油だから、どっちにしても廃油だったわね」


「それで、母上たちの石鹸は?」


「私たちの石鹸は、グレープシードオイルと椿油と椿の花オイルよ。廃油は使ってないの。だから透明感が高いし、きれいよ」


「ああ、そうか。まずさ、種からオイルが取れるでしょ? だからカボチャの種、パンプキンシードとリンゴの種からもオイルを取って使ったらどうかな。普通は種だけ取るなんて、とんでもなく大変なんだけどさ、この世界には魔法があるしね、抽出魔法で種だけ取り出せるからさ、後は油にすれば……あれ? 油も抽出魔法で出せるじゃん!」


「そうかも知れないわねえ。今まで擂り潰して濾したり絞ったりしていたけれど、油も抽出できるなら、きっと効率がいいわね。油は揚げ物で結構使うようだし」


「うん、やっぱりきちんと考えないとダメだね! できることが増えて行っているのに、以前と同じやり方だけやっていても、発展しないもん。さすが、母上。そういう事もちゃんとわかってて、僕に気づかせるようにしてくれたんだね~」


「え、ええ、もちろんよ! それでパンプキンシードからオイルを取って、どうするのかしら?」


「うん、石鹸の原料油に混ぜてもいいし、お風呂上りに一滴とかを顔に薄く延ばして塗ってもいいし、髪に塗ってもいいかな。リンゴの種も同じだね。あ、リンゴの種と皮をアルコールにしばらく浸けて置いたら、化粧水とかになるかも知れないね」


「化粧水?」


「うん、お肌に塗るとね、プルプルになったり、シワが薄くなったり?」


「なんですって!」


「別に母上には必要がないでしょ? ずっと歳も取ってないし」


「そういう問題じゃないのよ! ミチイル、生活に余裕が出てくるとね、次に求めるのは美容やおしゃれなの。ステキな服を着て、少しでも美しくなりたいものなのよ! それにね、皆が欲しがるものは価値が高くなって、その結果アルビノ人が暮らしやすくなるじゃない!」


「あ、そうか! そうだよね。僕、食べ物と服の事しか考えてなかったよ。確かにそれは使えるかも知れない……ん? でも、当面は使えないでしょ。なにせまだ自由を手に入れていないもん」


「あら? この間、公国は自由を手に入れたって言ってたじゃないの」


「うん、そうしようと思えばそうできるけどね、今そうしちゃったら、変な影響が大きいじゃない。たとえばさ、アタシーノ公国はいいとしても、セルフィンとか、スローンとかもあるでしょ?」


「え、ええ……」


「だからね、できれば表向きだけでもいいからね、大義名分って言うんだけど、そういうルールでも自由が欲しいの。そうすればさ、思い切って色々できるし」


「そうね。そうかも知れないわ。自分たちの事ばかり優先してもダメね」


「うん。だからさ、母上がキレイになっても、あまり状況が変わらなくない?」


「そんな事ないわ! 例えばよ、わたしがエデンの王国に出かけていくとするじゃない? その時に貴族に見せびらかすとか、そういう事もできるでしょう?」


「でも、母上が危険になっちゃったら、僕、いやなんだけど」


「まあ、今は無理かも知れないけれど、ミチイルの計画が進めば、そうなるかも知れないでしょう? その時になって慌てても、美容はついてこないのよ?」


「ま、確かに。美容は一朝一夕には無理だもんね」


「んまあ! とってもいい言葉! 美容は一朝一夕にして成らず! はい復唱!」


「あれ、そこまでは……僕、言ったのかなあ」


「まあ、とにかくよ! とにかく、カボチャの種からオイルをとって、リンゴの種からもオイルが取れて、リンゴの皮と種をアルコールにしばらく浸けて置くのね?」


「うん、アルコール度数の高いやつにね。度数を高くするには蒸留したお酒を、もう一回蒸留とかすればいいかな。魔法が上手な人なら一回で行けるかも。70%くらいアルコールがあれば一番だろうけど、40%くらいでもいいはず。こうやって植物をアルコールに浸けて成分を抽出したものはティンクチャ―って言うんだけど……ん、抽出?」


「あら、あらあら! もしかして抽出できるのかしら?」


「うーん、出来るかも知れないけど、詳しい成分とかわからないと……無理じゃね? 僕もわかんないもん。わかんないものは取り出せないでしょ」


「まあ、そうよね。じゃ、とにかくアルコールに浸けて置くことにするわ!」


「うん、そうして。あ、アルコールに浸けた後はね、そのティンクチャ―からアルコールを再蒸留して、アルコール分を少しだけ残す感じにして、そうしてから使ってね。度数の高いアルコールを肌に直接は良くないから。そして再蒸留して取り出したアルコールは、またティンクチャ―を作るのに使うの。あれ、これとってもリサイクルじゃない?」


「良くわからないけれど、アルコール分がほとんど残っていない水を化粧水として使うのね? ティンクチャ―! なんてステキでエレガントなのかしら!」


「うん。母上が好きそうな言葉にしてみたよ。赤チンとか、カボチャチンキとか、なんかいやでしょ」


「ティンクチャ―……うふふ、世界が度肝を抜くわね!」


「そうかな……ま、後は味醂粕でパックするとか?」


「パック? そう! それよ!」


「ハハ 味醂粕をね、殺菌消毒した水で薄めてペーストにしてね、顔にしばらく塗っておいて、その後、水で洗い流したら肌がプルプルになるかも」


「なんですって! そんな大切な事を!」


「う、うん?」


「そんなステキなものを、今までコンポストして家畜のエサにしていただなんて! これは由々しき事態よ!」


「えっと、そう、かもね」


「まあいいわ! 早速取り入れましょう」


「うん。後は、リンゴから酸を取り出してリンスにする?とか?」


「リンスは酢を使っているけれど」


「うん、リンゴには酸があるからね、その酸っぱい成分を抽出すれば、酸の粉ができるんじゃないかと思うの。その粉とオイルを混ぜてお湯に溶かしてリンスにするとかすれば、酢よりはエレガントかもね~」


「んまあ! 聞いているだけでステキじゃない! 早速やってみるわ!」


「うん、そう考えると、リンゴの皮、種も美容に使うでしょ? そして酸を取り出すのは食べないリンゴの芯の部分でいいから、リンゴは食べるところ以外も全部、有効活用ができるね、うん、いいかも知れない」


「ええ、全く捨てるところが無くなるわね!」


「まあ、必要な時だけつくればいいよ。普段はコンポストで家畜のエサになってるんだから。まあ、熟れちゃったリンゴとかをエサにしてもいいか。ほんと、全然無駄がない!」


「ねえ、ミチイル、もっともっと無いのかしら。もっと欲しいのよ!」


「うーん、あるっちゃあ、ある、かな。石鹸も種類を増やすとか」


「カボチャ石鹸は、いま聞いたじゃない」


「そうじゃなくてね、スクラブっていうか、そういうのを入れるの。例えばね、竹炭が作れるから、その竹炭を石臼魔法でパウダーにしてね、石鹸を作る時に一緒に材料に使うとね、竹炭石鹸というものになって、それを使うと肌の汚れがよく落ちてね、肌の入れ替わりが良くなってね、肌が白くなったり?」


「んまあ! 炭にそんな効果があったのね? それはお姉様みたいな女性が飛びつくわ!」


「まあね、そうかも。粉にしていない竹炭はご飯を炊くときにも入れたりするし、お風呂のお湯に入れても、まろやかになってね、お肌が綺麗になるかも知れない。ただ、うちの温泉だと、お湯がかけ流しだから効果ないけど、元々のサニタリーのお風呂なら、竹炭入れたら効果でるかもね」


「なんですって! お風呂も劇的な改善効果が認められるのね?」


「僕、そこまでは言ってないけ」


「んまあ! 屋敷の普通の風呂が、美容効果にあふれた泉になるなんて! さっそく周知しなくては!」


「うーん、後は、泥パックとか」


「パックは味醂粕以外にもあるのね?」


「うん、あるんだけど、その泥がね、そこら辺にあるのかなあ。モンモルリロラリロナイト、だったか、うーん、なんて言ったかなあ」


「じゃ、探さないとダメね!」


「うん、とりあえずさ、いま言ったのだっていっぺんに出来ないんだし、僕さ、その泥とか探してみたいから、続きはまた明日とかにしようよ」


「わかったわ! 必ずよ! 絶対よ! グラタンもよ!」


「はいはい」




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