1-96 お好み焼き
「さて、今日は久しぶりのキッチンスタジアムでーす」
「パチパチパチザワザワザワ」
「えー、今日は新レシピ、お好み焼きを作りたいと思いまーす」
「はい! ミチイル様!」
「どうぞ、ジョーン」
「はい! お好み焼きとは、どのような料理でしょうか」
「はい。お好み焼きとは、系統としてはマッツァナンとかピザの仲間と言えるでしょう。マッツァナンは生地をそのまま焼き、ピザは生地の上に具をのせて焼き、お好み焼きは生地と具を混ぜて焼くのです。そして、マッツァナンは味付け無し、ピザはケチャップやチーズの味、お好み焼きは、お好みソースというソースの味となります。調理は鉄板で焼くというスタイルです」
「ミチイル様、お好みソースとは、どのようなソースなのでしょうか」
「はい、ジョーン、基本的にはお好み焼きのためにある、お好み焼き専用のソースとなります。他にも多少は使い道がありますが、お好み焼き専用と覚えておいてください」
「はい! ありがとうございました」
「ではまず先に、お好みソースを作りたいと思いまーす。鍋に、ケチャップとウスターソースとリンゴを同量、そしてケチャップの半量の麺つゆと砂糖を入れて、圧力鍋魔法でリンゴがとけるくらいまで加熱しまーす。終わったら、石臼魔法をかけて滑らかにしまーす。これで、お好みソースの、完成です! これは他のソースと違って濃縮はしませーん。簡単ですね!」
「はい! ミチイル様!」
「どうぞ、ジョーン」
「はい! お好みソースは他のソースと同様に常温保存できるのでしょうか?」
「いい質問です、ジョーン。お好みソースも、製造後はマヨネーズボトルに入れて殺菌消毒しますので、そうすれば開封までは常温保存が可能です。しかし、他のソースと違って濃縮をしていないため、塩分濃度が低めなので開封後は常温だと日持ちが長くありません。ですから、開封後は冷蔵保存してください。冷蔵庫に入れておけば、何か月かは日持ちします」
「なぜ、濃縮して塩分濃度を上げないのでしょうか? 常温保存の方が便利だと思うのですが」
「はい、いい質問です、ジョーン、醤油と同じような塩分濃度にしてしまうと、ソースは少ししか使えません。しょっぱいので。しかし、お好み焼きは、ソースをたっぷり使って食べた方がおいしい料理なのです。ですから、ソースをたくさん使ってもしょっぱくならないように、塩分濃度が抑えてあるのです」
「わかりました!」
「では、ソースができたので、お好み焼きにとりかかりまーす。まず、大きなボウルにキャベツをあふれるほど入れてスライサー魔法でみじん切りにしまーす。いつも言う事ですが、みじん切りの時は石臼魔法は使わないでくださーい。野菜ペーストになってしまいまーす。続いて適量の青ネギもスライサー魔法で小口切りにしておきまーす。基本の野菜はこれですが、他にタマネギのみじん切りを入れてもいいですし、畑で硬くなってしまった葉物野菜のみじん切りを入れても構いませーん。諸説ありますが、何でもお好みで具材を増やしたり減らしたりできるのが、お好み焼きなのでーす。はい、それでは切った野菜をすべてボウル一つにまとめたら、そこへ薄力粉を入れまーす。量は、みじん切りの野菜がすべて粉まみれになる程度の薄力粉を入れてくださーい。そうしたら、麺つゆを薄めた水を少しずつ、パン生地を作る程度の量を混ぜまーす。そしたら、そこへ溶き卵を、生地がトロリと流れるくらいになるまで入れて、空気を含ませるイメージの石臼魔法で混ぜて行きまーす。レードルですくってポテポテ垂れる感じの、もったりとした液体になったら、熱くした鉄板に油と薄切りの豚肉を乗せて、すかさずその上に、この生地を掬って流しまーす。だいたい10cmくらいの円形にしてくださーい。鉄板は中火でーす。後は側面が乾いた感じになってきて、焼いている生地の上から蒸気が出てきたら、ひっくり返しまーす。そのまま焼いて全部に火が通ったら、お好み焼きの、完成です! 皿に盛って、お好みソースをお好みの量かけて、さらにマヨネーズも上に足し、とどめに上から削り節をドバっとかけて、召しあがれ!」
「はい! ミチイル様!」
「どうぞ、ジョーン」
「はい! 野菜に直接粉を入れて野菜と混ぜる、という調理法は初めてだと思いますけど、天ぷらの時みたいに、衣を作ってから混ぜるのとは、何が変わるのでしょうか」
「大変いい質問です、ジョーン。本来は、ジョーンの言った通り、小麦粉だけで生地を作って、野菜などの具材と混ぜ合わせるのが基本なのですが、生地と野菜の分量を調節するのが難しいのと、近い将来に小麦粉の代わりに乾燥マッツァの粉で作り、屋台で使おうと思っているので、このような作り方としました。この作り方は、小麦粉も無駄にならないし、水分を後から入れるので生地の硬さも調節しやすいのです。ゆるくなりすぎたら粉を足せばよいし、硬いと思ったら溶き卵を足せば良いのです」
「ありがとうございました!」
「では、お供えもして、試食をしましょう。いただきまーす」
「いただきまーす」
「ミチイル様、これはフォークで食べるのですか、箸で食べるのですか?」
「はい、ジョーン、どちらでも構いませんが、薄めに焼いて使い捨ての箸にクルクルと巻いて端からかぶりつくのもいいものです。屋台で広める際には、そのスタイルにして、使い捨ての竹皿に乗せて配ろうと思います」
「はい! とてもいい匂いです~」
「さ、食べましょう」
「 !!! 」
「お好みソースが、甘くて濃厚で、マヨネーズを削り節との相性が最高です!」
「そうですね、ジョーン。家庭で作るときなどは、お好み焼きを鉄板で加熱したまま、お好みソースをかけるとソースが少し焦げて、もっと匂いが香ばしくなりますよ」
「聞いただけで匂いがするようです!」
「それに、このお好みソースは、目玉焼きにも合いますし、カツサンドのウスターソースの代わりに使うと、とても美味しいものになります。また、豚肉の網焼きなどに塗っても美味しいですよ」
「是非、試してみたいと思います!」
***
「みなさん、試食は終わりましたか? はい、続いてもキャベツの料理をお教えしたいと思いまーす」
「パチパチザワザワ」
「キャベツは新野菜の部類ですが、まだ使い道が少ないのではないかと思います。葉物野菜と同じような形の葉っぱの野菜ですが、葉物野菜とは違って、生はもちろん、漬物、煮料理などにも使えます。用途が広く、使い勝手が良い野菜ですよ」
「そうですね、トンカツには欠かせません!」
「はい、ジョーン、その通りだと思います。ですが今日は、キャベツに新たな可能性を見出して欲しいです。それでは、行きまーす。まず、大きなボウルにキャベツを入れて、粗いみじん切りにしまーす。そして別のボウルでタマネギも同じくらいのみじん切りにしまーす。さらに別のボウルでニンジンも細かいみじん切りにしまーす。最後に、アオネギも適量、小口切りにしまーす。すべてを一つのボウルに合わせて、軽く砂糖をまぶしておきまーす。塩でも構いませんが、砂糖の方がおすすめでーす。しばらく置いておくと水分ができてきますので、それは軽く絞って捨てまーす。本当は野菜の水分にも栄養がありますし、捨てずにできればスープなどに入れて使ってくださーい。砂糖を使って処理したものは、スープがしょっぱくならないし、逆に甘みとコクがスープにプラスされて美味しくなりまーす。その後、そこへマヨネーズを多めに入れ、さらに甘酢も少し入れて良く混ぜまーす。もしあれば、最後に茹でたトウモロコシの実をパラパラ入れて混ぜれば、コールスローサラダの、完成です!」
「ミチイル様、このサラダはとてもきれいな色合いです!」
「そうですね、トウモロコシも入れましたので、とても綺麗です。緑とオレンジと黄色にクリーム色と、これだけで美味しそうですね。このコールスローは、もちろんサラダとしてそのまま食べますが、水分を少なくしてサンドイッチに挟んだり、トンカツや鰹フライの上に乗せて食べても美味しいです。さらに、もっと水分を絞ってオムレツの中に入れて卵を焼いても、とてもおいしいですよ!」
「それはおいしそうです!」
「はい、次のキャベツ料理は、キャベツの葉っぱを大きいまま使いまーす。まず、キャベツの葉っぱは下の芯の固い部分を取っておきまーす。その後、適当な大きさに切ってから、圧力鍋魔法をさっとかけて加熱しておきまーす。そしてハンバーグの種を作って小さくまとめ、先ほどのキャベツの葉っぱの上に置いてキャベツを端からクルクルと巻いていきまーす。途中で両サイドを内側へ折りたたんで最後まで巻きまーす。お好きなだけ作ったら、巻き終わりを下にしてフライパンに隙間なくキッチリ並べまーす。その上に、砂糖とケチャップ、ウスターソースと、あれば鶏ガラや牛骨スープを、なければ水を、肉を包んだキャベツが被るくらい入れまーす。後は、圧力鍋魔法を長めにかければ、ロールキャベツの、完成です! ハンバーグ種を用意するのが面倒な時は、ソーセージを巻いても美味しいでーす」
「ささ、次は、キャベツの漬物二種類でーす。まず、キャベツをスライサー魔法で太めの千切りにしておきまーす。それに塩を多めに振って甕にぴっちり詰め、上に漬物石を置きまーす。その上から甘酢を回しかけ、後は冷蔵庫でしばらく放置したら、ザワークラウトの、完成です! さささ、お次はキャベツを一口大に切っておきまーす。そしてニンジンの千切りを少し用意しまーす。キャベツとニンジンを混ぜて、漬物の味付けで塩をしまーす。さらに、昆布を水でさっと濡らして千切りにしたものを入れて混ぜまーす。ビニール袋に入れて、なるべく空気を抜いて閉じまーす。これで、キャベツの浅漬けの、完成です! ザワークラウトは一日くらい経ってから、キャベツの浅漬けは数時間後から数日間、食べられまーす」
「さ、最後のキャベツレシピは、まず、ニンジンを薄い輪切りにして、フライパンの底へ並べまーす。そしてタマネギをスライスして、ニンジンの上に置きまーす。そしたら、キャベツを1cmくらいの幅に刻んで、そのフライパンにドサッと入れまーす。最後に入れたキャベツの上にソーセージを好きなだけ並べまーす。そうしたら、味醂と塩を薄味な感じで上から加え、山椒の粒を数粒、パラパラと入れたら、蓋をして圧力鍋魔法をキャベツがクタクタになるまでかけまーす。加熱が終わったら、皿に盛り付け、ソーセージのシュークルートの、完成です! バターをプラスしてもいいですし、牛乳で煮込んでもいいでーす。そして、ソーセージの代わりに鶏もも肉や豚肉で作ってもおいしいでーす。さ、お供えもしたら、召し上がれ~」