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1-95 12歳になった

「皆様、この度の会議もお疲れさまでした。では、次のエデン会議はいつものように、銀星が見えたら中央エデン王国で、と言う事でお開きにしたいと思います。各国の方々、お気をつけてお戻りください」


…………


「パラダイス王、少しよろしいでしょうか」


「……なんだ? アタシーノ大公」


「はい。実は、あまり大きな声では言えないのですが……」


「では、小さい声で話せ」


「はい。この度、公国で新しいものを作ることが可能となりましたので、是非、パラダイス王へ献上致したいと思っております」


「何だ? 献上は好きにするがいい。だが、税は通常通りに納めよ」


「かしこまりました。献上したいものは、新しい服と新しいスイーツ、お菓子という食べ物です」


「服などいらぬ。何枚あると思っておるのだ。新しい菓子とな? 北の食い物なぞ、呪われておるのではあるまいな?」


「とんでも無い事でございます。私たちアルビノ人が困窮しているのを憐れんでくださった女神様が、恵みを授けてくださったのです」


「フン、神などと言うものに現を抜かしておるから困窮するのだ。まあ、よかろう。好きにせよ」


「ありがとうございます。では後日にパラダイス王宮へお届けするよう、手配致します。くれぐれも、他の王国にはご内密に」




***




「あ、スタイン男爵、いつもお疲れ様です」


「ああ、金工の親方か。何か用でもあったでゴザルか?」


「急用、という程の事でもありませんが、この度、公国で新しいものが作れるようになりましたので、お世話になっているスタイン男爵にも是非、と思いまして」


「ほほう、貧しい公国で新しいものなど作れるものでゴザルか?」


「はい。私たちを憐れんで下さった女神様が、お恵みを下さいました」


「そうでゴザルか。女神様は慈悲深いでゴザルな」


「ええ、公国中で毎日感謝の祈りを捧げております。それで、こちらなのですが、新しい服と、新しいスイーツ、お菓子という食べ物です」


「これはまた変わった服でゴザルな! それに……この菓子?見たことも無いような袋に入っているでゴザル」


「はい。これも女神様の祝福です。中に入っているのは、こちらはクッキーというもの、そしてこちらはパウンドケーキというものです。大変美味しく、食べたら女神様に感謝を捧げたくなりますよ」


「それは、貴重なものでゴザルな。有難く頂くとするでゴザル」


「どうぞ。ご感想など頂ければ、より女神様のご恩に報いる助けとなりますので、是非、何なりと申しつけください」


「かたじけないでゴザル」




***



「ねえ、私たちもいよいよ布巻以外の服を着て王国を歩くのね……」


「そうよね。公国以外では初めてよね。ま、服と言っても昔の無色作務衣だけど」


「それでも、布一枚だけより快適よ」


「そうよね。エデンじゃ魔法もろくろく使えないものね。せめて服とスイーツくらいは無いとね」


「本当よ。魔法が無いと大変よね」


「そうよね。料理もできないし、食事もマッツァだけだしね、しかも、お風呂も入れないんだもん」


「本当よ! ああ、お風呂に入りたいわ!」


「そうよね、トンカツ食べたいわ!」


「はあ、少しの我慢よ。最近は人頭税の人の入れ替わりのタイミングが短くなっているもん」


「そうよね。それより、クッキーを渡してもいいエデン人とか、いる?」


「ええ、いるわ。以前にお勤めしていた家で一緒に働いていた人よ。もちろんエデン人だから、仲がいい訳じゃないけど、少し話をするくらいの感じね」


「そうよね、エデン人だもんね。わたしも似たような感じだから、このクッキーを渡すわ」


「それに、パラダイスでようやくクッキーが食べられるんだもの、これだけでも嬉しいわ!」


「そうよね、パウンドケーキも食べてもいいらしいわ。マドレーヌは食べてもいいけど、秘密厳守ですって」


「王家に渡すんですものね」


「そうよね。じゃ、私たちも救い主様の治世の実現のために、頑張るわよ!」




***




「おう、荷運びお疲れ。……あんたたち、変わった服を着ているんだね。動きやすそうだけど」


「やあ、そちらこそお疲れ様。これは公国で作られるようになった新しい服なんだよ。女神様の祝福で作れるようになったらしい」


「その、見たこともない袋に入っているのは何?」


「これはね、クッキーというもんでスイーツって言う食べ物なんだ。甘くておいしいんだ」


「園の果物みたいなもん?」


「いいや、サクサクして別物だね。良かったら帰りにあげるよ。家で家族と食べたら?」


「お、おう。……別に呪われているもんじゃ、ないよな?」


「フッ、そんな訳ないよ。クッキー食べても肌が白くなったりしないよ。なにせ、王家にも献上してるんだから」


「お、そうか! じゃ、遠慮なく貰うとするか! 王家の食べ物とくりゃあ、家でカカァが喜ぶぞ」


「じゃ、少しだけ多めに持ってくるよ。家族とかご近所で食べてみてよ」


「おう! 頼むわ!」




***




僕は12歳になった。


エデンのパラダイス王国では、いよいよ計画が開始されて、伯父上たちが頑張ってくれているらしいよ。着々と進行中らしい。


まだまだ少量の頒布だからね、公国の生産体制には何も負荷がかかってない。強いて言えば、乳製品くらいかな。あれは増やすのもちょっと手間がかかるもんね、牛だし。あ、そうだ。もしバターが足りなくなったら、パウンドケーキとクッキーは、精白魔法をかけて不純物を取り除いた牛か豚の脂をバターに混ぜて使ってもらおう。ショートニングみたいに使えばバターが節約できるしね。あ、でもマドレーヌはバターオンリーね。高級スイーツだから~


ま、それはおいておいて、僕は計画進行の仕込みをしないとならないんだ。


という訳で、今日は久しぶりに南村へ来たよ。


しかし、過疎ったとは聞いていたけど、本当に人が居ないね。各部門、せいぜい10人くらいだもん。後は、運輸部の荷運びの人たちだけ。住宅とかも、ほとんど無くなっちゃってるよ。


さ、取り敢えず、南村手前までしか敷いていなかった南北街道を、森林地帯の交換所まで繋げちゃおう。この時間は足軽運送の人は居ないって話だから、ちゃちゃっとピカピカピカ。


そして、森林地帯のすぐ北側、南村のある辺りから、セルフィン方面へ道路も敷くことにした。今はこのルート、使われてないからね、みんな北にできた国境横断道路を通っているから。ま、ここら辺の道は以前でも塩のやり取りとか、大公家が中央エデンに行く時くらいしか使われてなかったみたいだけど。いずれにしても、今は人が居ないから、道路を作っても問題ないだろう。もう薄暗い時間だしね。


ということで、こっちも、ちゃちゃっと完了。途中の宿場、必要かな……ま、必要になるなら後でいいか。今じゃ時速20kmくらいで牛が走っているらしいしね、途中、休憩を入れても朝に出て夕方には着くだろう。あ、牛がお腹を空かせたら可哀そうだから、せめて草くらい植えておこうかな。どうせブッシュ地帯だしね。セルフィンまで100km、草の種まきピカピカ。


水は……どうしよう。国境辺りまで行くか……でも、もうすぐ夜になっちゃうし、やっぱり行くのが面倒くさいから、昔に引いたそうめん水道管をセルフィン国境あたりまで延ばしちゃえ!  川の水だけど、いいよね。昔はみんな普通に飲んでたんだからさ! あとは南村には別に井戸を掘ればいいよね、そうすればトム爺謹製水道管が南村から無くなっても大丈夫大丈夫。んじゃ、そうしよう。ピッカリンコにピカピカピカ……


あ、せっかく南村に井戸も掘ったし、前に作って余っていた残りのバンガローを設置しておこう。三棟あるからね、これで仮眠くらいはできるだろうし。


そして、森林地帯の交換所周辺に、旧公都で発生した廃棄石材を、そのまま地面に置けば石畳に使えるようにトランスフォームさせてから、山のように積んでおく。っていうか、本当に小山がたっくさんできたよ。でも、ここから王都まで15kmとか20kmくらい?石畳を足軽さんに敷いてもらう予定だから、どれだけ石があってもいいよね!


あ、まだアイテムボックスに旧公都の廃材があるから、これを整形して殺菌洗浄魔法をかけて新品同様にしてさ、南村に積んでおこう。何かに使えるでしょ。


ああ、これでアイテムボックスがきれいになったよ! ずっと旧公都のゴミが入りっぱなしだったからね! 廃材のゴミ残りはコンポストして地面にバラまいちゃえ!


ささ、本当に暗くなってきたし、電球つけて、別邸まで戻ってくれる?


じゃ、御者さんと牛、よろしくね~




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