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1-1

「いいかい、ひな。決してこの目隠しを取ってはならぬぞ。大人になり、一人前のヒナドリとして成長するまで、この目隠しをするのじゃ」

「どうしてですか? 長さま」

「それが、我々と人類が共存するのに必要な儀式であるからじゃ」

「わたしたち、ヒナドリと人は、相容れない存在なのですか?」

「そうじゃ。よいな。いかなる時も、二十歳の誕生日を迎えるまでは、目隠しをするのじゃ」

「はい」

 ひなは小さな翼をたたみ、長老から目隠しをするようにと厚手の布きれを渡された。白い色のその布で、目元をぐるぐる巻きはじめる。今まで見えていた世界が一切見えなくなり、光さえも分からなくなってしまった。ひなは、少し心細さを感じた。

(私の光は、どこにあるのでしょう)

「十歳になったひな。お主は、これから二十歳になるにつれ身体が成長する。子どもだったヒナドリは人間にも畏れられないが、十歳から二十歳までの十年間は、人間どもにとって非常に脅威となる頃合いなのじゃ」

 ひなは不思議に思い、首を傾げた。細くて折れてしまいそうな首には、枷が付けられている。

「長さま。成長したヒナドリは、何故脅威ではなくなるのですか?」

「それはな、ヒナドリの寿命は短い。二十歳を超えたヒナドリは、人間には敵わない。そう人間は考えておるのじゃ」

「ヒナドリの寿命は二十年……ということですか?」

「人間と鳥族のハーフの宿命じゃ」

「……もう、外の景色を見られないかもしれないのですね」

「……すまぬな」

「長さま以外に大人がほとんど居ないのは、みんな死んでしまったからなのですか?」

「余命が短いヒナドリは、姿をくらます習性がある。それでこの村も寂しいものだ」

「もっと。青い空を見たかったです」

「……おやすみ、ひな。今日から、闇に慣れるよう努力しておくれ」

「…………はい」

 心細く呟いたひなの声は、泣いているかのように短く、儚い響きをしていた。

「そうじゃ、もうひとつ大切なことがある」

「はい?」

「万一、目隠しが外れ誰かを見てしまうようなことがあったならば……」

 もったいぶって長老は一拍あける。

「その者に、ついていくのじゃ」

「えっ?」

「その者を主とし、死ぬまで仕えるのじゃ。それもまた、ヒナドリの宿命のひとつ」

「主さま?」

「その者がどのような人となりをしていようとも、自身の主となる。それを肝に銘じておくのじゃ。だから、安易に目隠しを取るのではないぞ」

「分かりました」

 本当は、分からないことばかりだった。


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