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「いいかい、ひな。決してこの目隠しを取ってはならぬぞ。大人になり、一人前のヒナドリとして成長するまで、この目隠しをするのじゃ」
「どうしてですか? 長さま」
「それが、我々と人類が共存するのに必要な儀式であるからじゃ」
「わたしたち、ヒナドリと人は、相容れない存在なのですか?」
「そうじゃ。よいな。いかなる時も、二十歳の誕生日を迎えるまでは、目隠しをするのじゃ」
「はい」
ひなは小さな翼をたたみ、長老から目隠しをするようにと厚手の布きれを渡された。白い色のその布で、目元をぐるぐる巻きはじめる。今まで見えていた世界が一切見えなくなり、光さえも分からなくなってしまった。ひなは、少し心細さを感じた。
(私の光は、どこにあるのでしょう)
「十歳になったひな。お主は、これから二十歳になるにつれ身体が成長する。子どもだったヒナドリは人間にも畏れられないが、十歳から二十歳までの十年間は、人間どもにとって非常に脅威となる頃合いなのじゃ」
ひなは不思議に思い、首を傾げた。細くて折れてしまいそうな首には、枷が付けられている。
「長さま。成長したヒナドリは、何故脅威ではなくなるのですか?」
「それはな、ヒナドリの寿命は短い。二十歳を超えたヒナドリは、人間には敵わない。そう人間は考えておるのじゃ」
「ヒナドリの寿命は二十年……ということですか?」
「人間と鳥族のハーフの宿命じゃ」
「……もう、外の景色を見られないかもしれないのですね」
「……すまぬな」
「長さま以外に大人がほとんど居ないのは、みんな死んでしまったからなのですか?」
「余命が短いヒナドリは、姿をくらます習性がある。それでこの村も寂しいものだ」
「もっと。青い空を見たかったです」
「……おやすみ、ひな。今日から、闇に慣れるよう努力しておくれ」
「…………はい」
心細く呟いたひなの声は、泣いているかのように短く、儚い響きをしていた。
「そうじゃ、もうひとつ大切なことがある」
「はい?」
「万一、目隠しが外れ誰かを見てしまうようなことがあったならば……」
もったいぶって長老は一拍あける。
「その者に、ついていくのじゃ」
「えっ?」
「その者を主とし、死ぬまで仕えるのじゃ。それもまた、ヒナドリの宿命のひとつ」
「主さま?」
「その者がどのような人となりをしていようとも、自身の主となる。それを肝に銘じておくのじゃ。だから、安易に目隠しを取るのではないぞ」
「分かりました」
本当は、分からないことばかりだった。




