魔王としての仕事
「2人には用事ないんで、帰してはいただけないですかねぇ」
69の2人と戦っても、多分勝てるだろう。ただ2人とも悪意を感じないし、なんか魔力の流れる感じから、ここhが穏便に済ませてもらえそうな気がした。
昔は感じなかったが、魔族や従魔達が言っていたのはこの感覚だったのだろうと今理解した。
「いいよ!前回負けたし、今回負けたらあたし死んじゃうかもしんないしね。でも、その辺のロボットってやつを通じて、ダイダロが見てるから、タダで返すことはできないんだよね」
爆炎のお姉さんはロボットを指しながら答えた。
続けて筋肉マッチョが答える。
(思えばブリーフマッチョとなんか似てるな)
「先に斬りかかってきたくせに、そんな提案してくるのか。『だが、こいつは大丈夫だ』『本気の一発でチャラにしてあげたら?』キャサリン、それは最高だな!おい、ちびちゃん、判決が下ったぜ。実刑判決、全力一発の刑、即執行だ。」
筋肉と話していた変態マッチョは、気持ち悪い笑みを浮かべながら近づいてくる。
肌感に伝わってくるやばい感じに対応するため、プチの時並みに物理用のバフをかけまくって、クッション用の風魔法を準備しておく。
「死ぬなよ…」
変態マッチョがおれの前に立ち止まった時、爆炎のお姉さんから不謹慎な言葉が聞こえた。
変態マッチョが拳を腰に構えると、雷が全身を覆う。
「ペルクナス」
次の瞬間、おれの小さな体は壁をぶち破って隣の部屋に行くほど飛ばされた。
おれは急いで回復液で傷を治して、よろけながらも立ち上がる。
「次お姉さんも行くよ! 特大のやつやるからしっかりガードしてね」
爆炎のお姉さんが笑顔で魔力を練り始めた。
おれは足元に土壁魔法をばら撒いて、その外側に水と風の壁になりそうな魔法カードを設置した。
「いっくよー! イクスプロオジオン!!」
おれはお姉さんの魔法発動前にカードを解放した。
とてつもない音や地響きが落ち着いて、煙が晴れると土壁の隙間から光が漏れている。
土壁をカードに戻すため触れると、ぼろぼろと崩れ落ちた。
おれの守っていた場所以外は地面や建物ごと吹き飛んでいる。
「いやぁ、さすがだね。あたしはアロンソン覚えてるよね?守るとこも無くなったしどこ行こうか?」
「誰が言ってんだよ!おれはナサニエル。こっちがキャサリンでこっちがテディだ。よろしくな」
筋肉に名前つけてるタイプの変態だった。
「筋肉キャラはもういたと思ったんだけど、かぶりとかあるの?」
ずっと気になっていたので聞いてみた。
「あきおのことだな。あいつとは兄弟なんだ、母親は違うんだがな。おまえがあいつを殺すまでは、おれ達はあナ兄弟と呼ばれて人気者だったんだぞ」
「誤解を生みそうな呼ばれ方してたんだな。あのマッチョなら魔族として魔王城にいるぞ」
アロンソンとナサニエルは驚き顔を見合わせる。
「本当か?? あいつ転生者なのに神器持ってないし、平和のためとか言って69になるためすごい努力してたんだよ…」
ナサニエルはその場に泣き崩れた。
ダイダロが獣人領に向かったらしいので、おれと太牙君はマラビージャスに戻って獣人領に向かうことにする。
なぜかアロンソンとナサニエルもマラビージャスまでついてきた。
街に着くやトラブルが発生しているようで坑道の奥へ進むと、武器を持った骸骨達とドワーフ達が戦っている。
手助けをしようと刀を構えたが、目にもとまらぬ速さで骸骨達がバラバラに飛んでいく。
「ナサニエルに任せておきなよ。楽しそうだからさ」
骸骨が音を立てながら崩れていくのと同時に、ものすごい轟音が坑道内に響き渡る。
豪華な鎧と剣を装備した大きな骸骨。マントや杖を装備して魔法を使う骸骨。様々な種類の骸骨を平等に破壊していく様は圧巻で、ドワーフやエルフ達と口を開けて見ていた。
「なんや終わったとこか」
振り返るとアーゴンがいた。
「ここは大昔処刑場で、魔力の暴走が起きるとゴースト系の魔物が出る可能性を、当時の転移者が言っとったから亜人に住まわせて様子を見とったんやけど。まさかこんなタイミングとはな。な、魔王」
同意を求められて困る。
そんなこと初耳だし、このタイミングっていうほど大きなターニングポイントがあったとも思えなかった。
「魔王様、今までここの若い者たちにアーゴンが外で仕事を与えていました。今後も外の世界を知ってもらうために続けたいのですがよろしいでしょうか。」
ドワーフの長であるバラドが腰を低くして進言してきた。
おれとしては止めたり断ったりする理由がない。もちろん承諾する。
バラドとエルフのハーパティに深々とお辞儀をされた。
おれとしては、むしろアーゴンにお願いしますって言いたいぐらいだ。
「ここが魔族領になったんやったら、治外法権みたいなもんやな。武力さえ整えてくれればこっちもやりやすいわ」
街の防衛や先ほどの骸骨対策などで武力が必要なのは明確だ。
おれのイメージするドワーフの製作技術と、ここの大量の魔石があれば解決しそうな糸口は見えている。
おれはリックを召喚して、念話でイメージを伝え、土魔法で作ってもらう。
それは160㎝ぐらいの人型ロボット、ゴーレムだ。
アーゴンは街で見たことあるものの上位互換ぐらいで見ているが、ドワーフとエルフは驚きすぎて腰を抜かしてしまう者もいた。
「こういった人型の模型を作ってくれ。目の部分をくり抜いておいて、そこに魔石をはめ込む。だから採掘した魔石の加工も同時進行で進めていくぞ!!」
「つかさ様。補足をするならば、その魔石に魔力を流すことをおススメします。魔石をはめ込むだけでも動かすことはできますが、魔力を流すことで特徴付けをしたり、属性を持たせることができます。メリアス様やアイラ様にご相談いただくのがよろしいかと。」
ラパンから丁寧な説明をいただいた。
魔族領に待機しているスーリの分身を電話替わりに使って、2人を呼びつけた。
一応足としてモンシューを使ってもらうが、すぐ来れるわけではないので、ドワーフ達には一旦魔石をはめ込む前の工程までやってもらう。
「つかさはこれからどうするんだ?」
アロンソンから声をかけられた。
実際おれがやることはない。
「ダイダロを倒しに獣人領に行く」
ここの指揮をラパンに任せて、太牙君とスーリとジェミニ、それから69の2人を連れて獣人領に向かうこととなった。69の2人にはシュバルとバインフーに乗ってもらって、ミツモリの祠を目指して移動を開始した。




