ドワーフとエルフと魔王
「おいガキンチョ、わしらは魔王に用はないぞ。お主らが来た目的が調査ならさっさと済ませて帰るんじゃな。あそこに見えるトロッコに乗ればクラカタウには戻れるでな。」
おじいちゃんドワーフは遠くにあるトロッコを指さして説明をしてくれた。
好きに調査していいとのことなので、従魔達を連れて洞窟街の探索を始めようとしたら、ここまで案内してくれたエルフの女性に声をかけられた。
「先ほどは試すようなことをして、失礼いたしました。元々外との交流はほとんどなく、外とのやり取りはトロッコを使っておりまして、直接いらっしゃる方は極力お帰りいただいてるのです。そもそも本来は私達の体の模様を見ると、普通の人なら子供でも逃げ出すはずでして…」
言葉を濁したが、単純に「親から教わらなかったのか?」と馬鹿にされたように感じた。
ドアを開けるときもそんな雰囲気は感じていたが、言葉では誤っていても、見下されているのがすごく伝わってくる。
しかしおれはこう見えても中身は大人。分かりきった煽りには動じない。
「人族の常識を教えてくれる人が周りにいなかったんですよ。覚えておきますね。」
おれは一礼して探索を開始した。
まずは街から繋がる坑道を通って採掘場に向かう。
採掘場にはたくさんの魔石と、それを採掘するドワーフ達がいた。たくさんのドワーフに対して、エルフは3人で、順番に風魔法を使って採掘のサポートをしているようだ。
休憩していたドワーフに声をかけてみる。
「最近変わったことありますか?地震の影響とか」
「ないな」
渋い声で端的に返ってきた返事は何の情報もなかった。
他のドワーフにも聞いてみるが、ゲームのNPCかと思うぐらい同じ3文字しか返ってこない。
なんの成果もないが、仕方なく街に戻る。
「なにもないっで言ったじゃろ?飯の時間じゃ。食べたら帰れ。」
街の中にある大きなかまどで料理が作られていた。
かぼちゃのスープと硬いパン。それと一口骨付き肉だけだった。
それをドワーフとエルフは作業のように食事を取る景色は、さすがにこれは見てられない。
おれは人気のないところに移動して、本から鳥の魔獣を複数取り出し、解体を始める。
街の街灯からできる影を使って、龍神の神器の影分身を発動する。
おれ1人に対して鳥1羽を手早く捌く。手羽、もも、砂肝など筋肉も臓物も食べれるところを部位ごとに分けた。
リックとマチカとビテスを召喚する。
リックには土窯と多種多様な容器。マチカの水と、ビテスの火を使って準備を進める。
リックは楽しそうにやってくれるんだが、マチカとビテスは便利に使われて不服そうだ。
鍋の水を沸かして鳥の骨を入れてダシを作る。むね肉をチャーシューにして、モンシューの卵をゆで卵にする。小麦粉は麺状に伸ばして卵と一緒に本へ片づけておく。
バインフーに風魔法で鍋内の空気圧を調節してもらいながら、時間を短縮してラーメンを完成させた。
ここの街には大きな特徴があり、昼夜の概念がない。正式にはなくはないが、太陽の光が届かないため、気にせず交代制で常に採掘や加工が行われている。
おれは食事が済んだ人や済んでない人、関係なく人を集めて、出来立てラーメンと鬼の村オルレアンで有名なぶどう酒を配った。
エルフやドワーフに関係なく酒が人気で、つまみとしてラーメンも受け入れられて、用意したものがなくなるのに時間はかからなかった。
「おい、ちび魔王。状況が変わった… ついてくるのじゃ。」
ドワーフのちびおじいちゃんは、ぶどう酒を片手におれを建物に案内した。
細長いその建物の入り口に入ると、部屋が上に上がっていく。
部屋が止まると、複数の作業場が一望できるほどの高さだった。
「現在噴火による影響は確認されておらん。それよりも若い衆が反乱を起こしそうなことが問題での。最近魔道具開発のためと言って、ダイダロの小僧からの発注が増えたにも関わらず、対価が見合ってないとのことで、皆不満が溜まっておるのじゃ。見たら分かったじゃろ。まともな飯も出んうえに、わしらの好物の酒も禁止されておる。これじゃあ作業効率が悪くなる一方じゃ」
おじいちゃんドワーフは文句を言いながら、コップのお酒を一気飲みして、街の様子を静かに見ている。
「なあじいさん。ここを魔王の属国みたいな感じで、おれの支配下に入らないか?」
自分でも不思議なくらい、気づけば自然に言葉が出ていた。
ドワーフのおじいさんは怒鳴るかと思ったが意外と黙っている。
「わしらは亜人として差別され、ここに追いやられ奴隷として扱われている。わしらドワーフやエルフには選択肢なんてないんじゃよ。おぬしの下でなら、うまい飯や酒が期待できそうなんじゃがの…」
悲しい雰囲気のまま、おじいちゃんドワーフは部屋を下に戻した。
部屋を出てもさっきの上からの景色を思い出す。
なぜ、おじいちゃんドワーフはあの景色を見せたのか。なぜ、若い衆の反乱の話をしたのか。
やっぱりこのまま何もせずにこの街を出るのは、なんか違う気がしていた。
「ちょっといいですか?」
街を歩いていて声をかけられた。
声の主は、初めておじいちゃんドワーフと会ったときに一緒に出てきたエルフの方だった。
「私はこの街の長であるドワーフの妻、ハーパティでございます。先ほどまでのお話のことなのですが、ドワーフ達の反乱を止めることはできないでしょうか。」
こっちからもか、と正直思ったが、解決してあげたいと思っているので話をしてみる。
「おれは魔王だ。タダでお前たちの願いを聞くと思っているのか?」
遊び心で魔王っぽく悪そうに言ってみたが、ハーパティはくすくす笑って一蹴した。
「ヨツヤのように街を破壊しますか?あなたがそのようなことをしないのは分かってます。ダイダロと現在敵対していることも。あなたがダイダロを倒してくれるだけでも、反乱の火は落ち着くはずです。属国でも支配下でも構いません。魔王様の方が信頼できますから。」
初めて会ったのに信頼できると言われたり、真剣に話をされると、ふざけたおれの演技が恥ずかしくなってしまう。
別に今後の目的が変わるわけではないし、ダイダロを倒すことは利害が一致している。
現在は、ダイダロがこの街を生かしていることになるので、ダイダロを倒すと言いうことは、その後のこの街の管理も考えておかないといけないのは事実である。
「分かった。ダイダロは予定通りやる。その後は魔族領から支援できるように調整をしておく。みんながおいしいごはんとお酒にありつけるように」
おれは熊の獣人商人のエルメスに連絡を取り、相談をしておいた。
しかしその相談中に事件が起きてしまう。




