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異世界と12の召喚獣  作者: ドンサン
魔族領の生活
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新しい武器

ひとり旅3日目

目が覚める。大鬼達は昨日の片付けを、小鬼達は…まだ寝てる。

とりあえず昨日の約束があるから、鬼頭の所へ向かおう。シュバルに乗って。


闘技場に着くと、中心で鬼頭が瞑想している。邪魔にならないよう、シュバルと息を殺しながら近づく


「来たか、これをやる」


ペッシュが伸ばした手には短い刀を握っている。おれはシュバルから降りて受け取りに行った。


「魔族は武器や防具、衣類なども魔力で都度形成し維持している。だが、あれは魔族だからできることで、他の種族にはできない芸当だ。そこで鬼族はみな、武器として刀を所持している。最初おれが渡す刀は全て同じだが、契約をし、育てていく中で、刀が持ち主にあった能力を持つようになる。」


ペッシュの話で、1つ納得がいった。

魔族に育てられてるから、おれは武器なし全裸だったのか。だが彼らからは、おれが好きで裸だと思われているのかもしれない。その場合は訂正しておこう。


刀を鞘から少し抜いてみる。

きれいな銀色に口角の上がった自分の顔が映っている。


(異世界に来て始めての武器らしい武器、そりゃあうれしくもなるよね!)


そんな高ぶった気持ちを、刀と共に静かに鞘へ収めた。


「契約をするぞ。その刀で体の一部に傷を付けろ。深くいくなよ。後が面倒だからな」


怖っ!そんなつもりで来てないよ。

誰が進んで自傷行為なんかするんだよ。


(左手の小指の横に少し傷を入れる程度なら、生活に支障がないだろ。新武器のため。新武器のため。)


ふぅ… 

静かに刃を当てて少しずらす。


丈夫な体のおかげで、そんな簡単には傷が付かなかった。

刀なんて使ったことないし、変なところでデメリットになるなよ。


(あぁもう!どうにでもなれ!)


おれは刃を思いっきり握った。

赤ちゃんでも力一杯握れば、さすがに左手は真っ赤になる。そう思ったのも束の間、急に白い空間に切り替わった。

鬼頭もいない。


この感じ転生の時と似ている。


「おおう、来たか!!待ってたぞ!」


後ろから大きな声が聞こえた。

なんでいつも後ろなんだよ。正面で待ってろよ。


振り返ると鬼頭よりも細マッチョな鬼がいた。


「簡潔に説明するぞ!その刀は【リクドウ】。大陸を導くもの。おまえにはその刀と共にこの大陸だけでなく、4大陸全てを導いてもらいたい!そしてそれをおれからの神器とする。マーノアが魔大陸の南側によくいるから、次はそこが良いと思うぞ!質問はあるか!」


え、何?

急展開過ぎて情報処理が追い付かない。

質問ありまくりだわ!

この状況で質問が無い方が不自然だろ。

その間、数秒経ったぐらいだろうか。


「無いのな!無いなら還すぞ!おれは鬼神マルージュ!最後にいくつかアドバイスをしてやろう!まずその刀、刃こぼれすることがない。思う存分振るうといい。育てていくと能力の解放もあるぞ!そして次にその指輪、壊れてないぞ。戻ったら呼びかけてやれ!じゃあ、また機会があればな!」


まばたきすると、ペッシュがいる。

どうやら戻ってきたのか、夢のようにも思う一瞬の出来事だった。

大きな声で一方的に話されただけなのに、すごい大事なことを言っていた気がする。


「その刀の名前はどうする?」


ペッシュに聞かれた。

どうするも何も、もう決まってるんだけど。


「りくどう。きしんがいってた」


刀の名前を言うと、刀が白く光った。

光が落ち着くと、刀身に模様が描かれている。

刀に見入っていると


「それが鬼神様から神器と認めらている証だ。見放されると模様も消える、励めよ」


神器じゃなくなるとかあるんだ。

鬼神より鬼頭の方がちゃんと説明してくれるじゃん。

しかも刀くれて激励の言葉まで、ええやつやん。


「ありがとう。またくるね」


ペッシュにお礼を伝えシュバルと闘技場を後にしようと振り替えると


ボキッ


景色が変わった。壁に叩きつけられたおれは、右腕が変な方向に曲がっている。

今日は朝から脳の処理速度が限界を超えている。

でも、これだけは分かる。


右腕が痛い。


「つかさ!もう出るんだってな、また遊びに来いよ!」


(アカリのやつ、他人の腕折っておきながら何言ってんだよ!くそいってぇ)


ポンが何かを投げてきた。

水風船のような物が当たって弾けると、腕の痛みが消え、折れた骨も元通りになった。


「アカリお姉ちゃんうれしそう」


「つかさ、強くなってね!」


「これあでる」


(全く意味が分からん)

でもあんぽんたん、意外と気が利くし昨日の宴でも楽しくて気に入った。こいつらに会うためにまた来よう。

ポンがさっきの水風船を籠にいれてたくさんくれた。


そこで思い出した。

「りーば」と唱えると同時に指に痛みが走った。指輪を見てみると形が変わっている。

関節を挟んで指輪が2つあり、それらが鎖で繋がっている。

アカリに切られたからか、本も石のような硬そうな物に見た目が変わっている。


(もらって1週間も経ってなかったから、かなり落ち込んでたんだよな)


ポンから籠を受け取ると水風船はカードに変わった。


回復液 【SR】 ×10

[補足]ほとんどのケガや病気を治す


(めっちゃ良いものくれたじゃん!)


「つかさ、次くる時にはアカリの初太刀ぐらい受け止めれるように、腕と刀を育てておくんだぞ。」


ペッシュにそんなことを言われるが、次来る時は、あんぽんたん以外に会うつもりはない。命がいくつあっても足りないからな。


「また、くる。たくさんありがとう」


社交辞令は大切に。


鬼達が見送ってくれる中、おれ達は鬼の村を出発した。

シュバルが張り切ってかっ飛ばす。

落ちないように必死だが、乗馬スキルが上達する気は全くしない。くくられているだけだし。


常時発動の視覚強化で森の中を見ているが、鹿ぐらいしか目に入らない。

しばらくすると森を抜けた。

すると黄色い植物がたくさん生えていた。


(シュバル、ストップ)


念話に反応したシュバルは急停止、おれはラパンを召喚した。


(ラパンこれって麦じゃない?)


(この辺一帯が小麦畑のようですね。)


ラッキー!

せっかく刀もらったし、たくさん回収して帰ろう。

シュバルから降りて刀を振り回す。刈られた小麦をシュバルとラパンが集めてくれている。


「やっほーー」


超楽しい。スパスパ切れる。慣れてくると遠くの方も切れている。斬撃が飛んでるっぽい。


(ありがとう、お頭。最高だよリクドウ)


たくさん刈れた。パッと見30mぐらいの道にはなってるけど、どうやって回収しようか。

ひとまず本を出して、近くの小麦に触れてみると刈られた小麦全てがカード化された。どうやら100kgで1枚になってるみたいだ。

小麦カードは全部で14枚。やりすぎた。

無くなったらまた補充に来よう。


日が沈み始めた。シュバルに乗り再出発。穀倉地帯を抜けるとまた森。

シュバルは夜闇を駆け抜ける。おれはもちろんご就寝。


シュバルが止まった。

夜中のうちに着いてしまった。大きな塀に囲まれて中の様子は見えないが、この向こうが海の街っぽい。

日が昇るまで森の出口で少し休憩がてら、ミルクを飲んだり刀の素振りをしたりして時間を過ごした。

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