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異世界と12の召喚獣  作者: ドンサン
魔王になった

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スパイ執事

凄まじい殺気を放ちながら剣を振り回すウェンペ。

心配そうに見守るニグラの奥さんアルカラ。

待ちくたびれている従魔達。


「時間かかりそうなら、手伝おうか~?」


太牙君もあくびをしながら聞いてくるほど、この時間に飽きていた。

そんな時、ドアノックが聞こえて部屋の扉が開いた。


「もしかして、お取込み中だったかな?」


急に現れた白衣の男は、首元に『69』という数字が刻まれていた。

アルカラとウェンペは頭を軽く下げ、ポストルンとおれ達は初めましての顔だった。


「やあ魔王くん。元気にしてたかな?思ったよりも時間がかかったみたいじゃない。ミツモリのみんなには伝えてあったから、着いたらすぐに迎えに行くつもりだったんだけどごめんね。ここのニグラ一家に隠されててちょっと時間かかっちゃった。」


アルカラはポストルンを抱え怯えながら「隠してなどいません」と小声で言った。

白衣の男は目の合わないアルカラに近づいて、ゆっくり顔を覗き込むと、次はウェンペの方に足を向けた。

白衣の男がウェンペのもとに近づいたのとほぼ同じタイミングで、ポストルンの泣き声が後ろから聞こえた。

振り返ると、アルカラの腕が片方切り落とされていて、声も出せずに小さくなっていた。


おれはアルカラに駆け寄り、近くに落ちていた腕をくっつけて回復液をかけて、腕は元通りになったがアルカラは気を失ってしまう。


「困るんだよねぇ。魔王が人を助けるのは」


白衣の男が背を向けているおれに何かを投擲したが、確認する間もなく神器によって回避する。

男は一瞬疑問を抱いたようだがすぐに次の攻撃準備をしていた。


「さもん」


おれの後ろにいた小さな子供の小さな声により発生した魔法陣から、まるでボールに手と足だけを生やしたマスコットのような生き物が出てきた。

その生き物は背中?に背負っていた弓を構えて白衣の男に矢を射って投擲物をはじいた。


「いってー!!」


謎のマスコットは何も当たっていないはずだし、むしろ喜んでいるように見えるが「いってー」と確実に聞こえた。

マスコットはおれの後ろにいたポストルンに近づきほっぺをすり寄せた。


「ポストルンが召喚したのか?」


おれの言葉にポストルンよりも先にマスコットが「いってー」と反応した。

さっきから「いってー」とか「いていて」しか言わないので、『いって』と仮名を付けることにする。


「せっかくいろいろ用意してきたのに予定が狂ってしまいましたね。」


白衣の男は胸の内ポケットからカプセルを取り出した。

カプセルを開くとアタッシュケースが現れて、その中にはたくさんのカプセルが整頓されている。

その中の1つを開けると大人の身長よりも大きな箱が出てきて、側面に何かを書き始めた。


「これ準備に時間かかるしコスパ悪いんですよ。 はぁ…。見ててくださいよ。 いでよ、英雄!!」


大げさなわりに何も起きない。

白衣の男が箱を開けると小さな声で「ハズレですか」と呟いたのが聞こえた。

箱からは女の子が出てきた。


「ももか?」


転生前の妻である桃花だった。

魔族領にいたはずだが、と思ったのと同時にハズレと言われたことに腹が立った。


「君では戦えないし、もう一度同じことは難しいですから、今回は一旦帰りましょうか。まさか三分の一を引き当ててしまうとは…仕方ありませんね。あちらの山の火口に入った先にある小屋にいますのでいつでもいらっしゃってください。 それでは」


白衣の男は嵐のように消えていった。


「桃花、今の白衣の人だれ?」


結局アルカラだけがたくさん攻撃された不思議な時間だった。そんな無駄な時間の中心にいたあの白衣の男が結局何者か分からなかった。


「ふん、さすがはよそ者ですね。彼を知らないなんて」


執事長が横から口を挟んだので、それは無視する。


「今のが69の1人、ダイダロ。彼に作れないものは無いと言われていて、人族はみんな彼に欲しいものを作ってもらうために功績をあげる。私たちが乗っていた車もこの世界にはない技術だけど、ダイダロが作れたのは、彼が持つハンマーの神器によるもの。それは戦闘用ではなく、工作用と言われているよ」


おれが桃花から説明を聞いている間も律儀に待ってくれていた執事長のウェンペ。

1つ聞いてみる。


「ダイダロってあんたの上司?」


ウェンペは肩を揺らしながら口元を押さえて笑っている。


「上司…ですか。執事長という立場をいただいてる時点で本来上司など存在しませんが、強いて言うなら、私はこの街の人間ではありませんので、私が仕えているのは別の街の領主様。ということになりますかね」


ダイダロに関係なしと判断したおれは、ゆっくりバインフーに近づき背中に手を置いたまま、獣神の神器に魔力を流した。

バインフーと融合したおれは鋭い爪で素早く斬りかかり、ウェンペの腹部を破壊する。

そして腹部の傷の合間に圧縮した風魔法を直接ぶち込むと、ウェンペは内側から弾け飛んだ。

風魔法を放った後に距離を取っていたが、ちょうどそこにウェンペの頭が転がってくる。


「最後は呆気ないものですね」


「ウェンペ、ニグラはあなたを信頼していました。ですのでとても残念ですが、感謝もしています。あなたのおかげで、他の執事達も立派な従者になれたのですから。 …なので最後は私の手で楽にさせてあげましょう。せめてもの償いです。」


赤毛のゴリラになっているアルカラは力いっぱい拳を握りしめ、ウェンペの頭を殴った。

さっきまでの穏やかな口調からは想像つかない力でウェンペの頭と部屋の床を破壊した。

おれと従魔達は今日イチ驚いて固まってしまう。


「じゃあ屋敷に残っている他の執事達と合流しましょうか。何度も助けてもらってありがとね」


アルカラは人の姿に戻って両手を叩き、空いた床の穴から下に降りる。

おれもバインフーとの融合を解き、いってとポストルンを太牙君に乗せて下へ降りた。

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