神器無き闘い
ギギィという音共に鎧がゆっくり動いたかと思うと、一瞬で間合いを詰めてきた。無意識の中、魔神の神器の付与効果で回避する。
鎧は空を切ったが、すぐに追い討ちをかける。
横から太牙君が、武器を持つ手元を狙って体当たりをして攻撃は外れた。
太牙君とバインフーはおれの前でガルガル言ってる。
クテクとスーリ、ジェミニは沈黙。おれの体から離れない。
バインフーと太牙君の白黒虎コンビが鎧に向かって果敢に攻めるが、牙や爪は通らず攻撃がほぼ無効化される。
「調子はどうだい?苦戦してるみたいだからヒントをあげるね。私は優しいんですよ。 この鎧君、とっても固い鉱物で作ってあるから物理耐性が高い反面、魔法などの間接的攻撃に弱いよ。この魔法やスキルが使えない状況でどのように攻略するのか、楽しみです。 じゃあがんばって~」
うざい。
魔法が使えないのに、魔法でなら倒せるというのは、所謂無理ゲーだ。
もしくはとんち。どっちでもめんどくさい。
なんにせよ、おれに攻撃手段が無いのが問題だ。
(クテク、締めて関節とかの弱い部位を破壊できないかね?」
おれは腰に巻き付いているヘビのクテクに、念話で聞いてみるが返事がない。
(おーーい)
他のみんなも呼び掛けに対して、返事がない。不便だ。
だが、バインフーも太牙君も闘ってくれている。
クテク、スーリ、ジェミニはじっとしているから、できることが無いと捉えておく。
現状おれにも攻撃手段はない。バインフーと太牙君も狙われるように立ち回っているだけで、攻撃が効いてる様子はない。
対応策を考えているおれは集中しすぎて、鎧の姿を見ていなかった。
バフもりもりの魔神の神器が回避行動をとるが、鎧は先程以上の連撃で的確に当ててきた。
胸部に鋭い突きを入れられ、凄まじい勢いで壁に叩きつけられた。全身に激しい痛みが走り、体が痺れて動けなくなる。
意識が朦朧とする中、鎧は目にも止まらぬ速さで間合いを詰め、おれの顎に蹴りを入れた。
天地が逆さになり、目の前が真っ暗になった。
意識が戻ったとき、先程の部屋とは違う空間にいた。
宇宙のように広くてなにもない場所。
所々にキラキラ光る物がある。
その中でも一際輝きの強い物に、気づけば吸い寄せられていた。
「何しにきた。ここはおまえの来る場所じゃないぞ。」
その強く輝く物から、懐かしい声が聞こえる。
「パトラ?」
「つかさ。早く戻れ。ここを受け入れるな」
おれにはパトラの言葉の意味が分からない。
魔王になったこととか、たくさん話したいことがある。
ただパトラがいるというのは、おれが死んだってことだ。
「パトラ…おれね、魔王になったんだ。それでね、」
「早く行け。その話は今じゃない。まだ戻れる」
おれは自分の死よりも、パトラにまた会えてこの場を離れたくないと思った。
ただ、戻らないといけないのも理解はしている。
まだ魔王としてなにもできてないし、別れを伝えれてない仲間達がいる。
「パトラ。必ずまた会おう。あんたはおれにとって大切な親父だから」
おれは涙をこらえ、パトラに背を向け進む。
後ろで小さく何か聞こえた気がしたが、振り返りはしなかった。
この空間からの脱出を試みるが、どこに進めばいいかが皆目検討つかない。
辺りに見えるのは、パトラのようなキラキラ光る物ばかり。
違和感があるとするなら、場違いな刀が1本あるだけだった。
おれは近くまで行き、刀を掴むと白い空間に移動した。
「おいおいおい。こいつを返す前に死ぬとはどういうことだよ!勘弁してくれよ」
「神器に頼りすぎとるけん、こんなことになるんだろ」
鬼神のマルージュと、龍神のドーベンがおり、おれが手に握っているのはリクドウだった。
「そのまま少し待っていろ」
マルージュが見慣れた機械を使って、誰かに連絡をとっている。
しばらくすると、魔神、人神、獣神、精霊王、神王が集まった。
揃って見るのは初めてだ。
「つかさの復活について、反対の者はいるか?」
マルージュが他の神に確認をとるように聞くと、人神がすぐに手を上げた。
「魔王の復活を望む人族はいないよね」
「本当にそうか?魔族領にいる3人の人族。オスロの街のやつら。つかさを必要とする人族もいると思うが?」
オスロの街。久しぶりに聞いたが、舞達は元気だろうか。今度顔を出しに行こ。
「そもそもつかさ君でないと、あの者を排除することはできないと考えています。最近は人族でも問題行動が目立つのではありませんか?」
神王の発言に人神は図星をつかれ、言葉が返せない。
「じゃあ全員の承認を得たということで、つかさを復活させる。リクドウも返しておくから早く終わらしてこい」
神々に見守られながら、おれは例の部屋に戻ってきた。
手元にはリクドウもある。
ボロボロのバインフーと太牙君と一緒にクテクも戦闘に参加していた。
ジェミニとスーリは、肩から下りておれを見ていたが、おれは静かに立ち上がり刀を抜く。
鞘から抜いたリクドウは斧になっていた。
「今回は特別に裏メニューを教えてやる。魔力を込めて武器を振ってみろ」
リクドウに言われたように、斧に魔力を込めて鎧に当てると、鎧は瞬く間に蛙へと姿を変えた。
おれは蛙に斧を振り下ろし、無事勝利した。
「魔力を流すと武器種によって効果が変わるが、斧モードは対象を動物に変える効果がある。これからも頼むよ。もうあんなとこはこりごりだぜ」
虎達を始め、みんな疲労感でその場に伏せた。
「鎧君倒しちゃうなんてマジ~?魔法使えないはずなんだけど。まあ仕方ない。今回は私の負けにしといてあげましょう。その国から出ることは容易ではありませんからね。 ではまた会う日まで」
戦闘が終わり一休みしたつかさ達は部屋を出る。
木造の建物で目の前には廊下。特に変わった様子はない。
「つかさ様大丈夫ですか!?」
部屋を出るとスーリから声をかけられた。
その言葉に反応すると、安堵したように肩の力が抜けたのが見てとれる。
「つかさ様の生命力が尽きた時はすごく焦りました。」
「ごめんね。もうなんともないから」
バインフー達にも心配をかけてしまった。
リクドウも戻ってきたしもう大丈夫だろう。
みんなで建物の出口を探すため、歩みを進める。
つかさ達が、この時魔族領で起こっていた事件に気づけるはずがなかった。




