襲撃
???視点
(大丈夫。ぼくならできる。きっと…いや、絶対。難しいことはない。はず…みんなの期待に応えなくちゃ)
少年は身体を小さく丸めて震えていた。
『聞こえてる?確認しておくけど、用事があるときは必ず念話を使うこと。あなたが今回の作戦の要だから、しっかりするのよ』
先輩が背中を軽く叩いて励ましてくれたが、逆にプレッシャーだ。
ぼく達は今、森の中に隠れている。
今回の目標は目の前に見える街の制圧。条件は生存者全員の降伏。
つまり、抵抗するものに情けは不要との指示だった。
魔族達は本拠地奪還で強者が留守のはず。手薄なうちに、この街を攻めるのが今回の作戦だ。
「本当にぼく達だけで大丈夫なんですか?」
少年と先輩を合わせて4人しかいない上に、相手の戦力が未知数なため、少年は気持ちを強く持てない。
『念話でって、さっき言ったじゃない。この間のこともあるんだから…』
怒られてしまった。
数日前も似たような状況で自分がミスをした時、珍しい魔物に襲われてしまう事件があった。
戦闘時に人族領ではまずあり得ない、種の違う魔物が連携をとっていた。
『すみません。気をつけます』
あの日以来遭遇してないから、魔族領でも特別なことではあると思うけど音や気配に気をつけれないと、ヨツヤの名を汚すことになる。
街を見張っていると、城壁の上から強大な炎魔法が飛んで上空を飛んでいた何かを爆発させた。
『あれって、《戦闘機》ってやつじゃなかったですっけ?』
『そうだね。転移者の意見を元にダイダロが作った無人で空飛ぶ金属の塊。 この街…簡単には攻略できないかも。 危険だと判断したら逃げるように。』
そう話しているときに、馬に乗った少女が話しかけてきた。
「ここまでお疲れ様です。街に入りますか?」
馬に乗った少女は、犬の散歩中に気にかけてくれたようだ。
しかし、ぼく達は今から街を攻撃するわけでそんな優しさは必要ない。
『気持ちはうれしいけど、遠慮しておくよ。』
『念話で言ってどうすんのよ。ここは魔族領。獣人族の可能性の方が高いのに、言葉を理解できると誤解してしまうのも無理はない…か』
さっき念話でって怒られたら、相手を気にせずに念話で答えてしまった。
少女はヘア飾りを触りながら頭をかしげる。
「ラパンさんが作ってくれたこれ、機能してないのかな?ま、いっか。ボンヴォヤージュ!」
少女は機嫌よくあいさつをして街の方へ行った。
一部聞き取れても意味の分からない言葉はあったし、普通に街の中へ入っていくところを見ると、獣人なのだろう。
「撤退するよ」
先輩が喋った。
必ず念話で、ってさっき言ってた本人が普通に喋った。
「さっきの馬と犬を見て何も思わなかったなら、あんた死んだ方がいいよ」
急に喋り出すし、心配そうな表情ですごい怒られた。
ただ馬に乗った少女が犬の散歩をしていただけではないのか。
確かに珍しい光景ではあるけど、あり得ない状況ではなかった。
先輩は魔族領にある祠へ向かって移動を開始した。
「あれは数日前の魔物。さすがに他の69か勇者クラスがいないと、あんたじゃまだ力不足よ」
奇襲して街を奪う作戦は中止となり、ぼく達4人は戦闘を避けながら帰還した。




