帰り道
シュザックとバッコに報告して魔族領に戻ってきた。
おれは荒野にシュバル、バインフー、スーリを召喚して、パトラは黒馬を召喚する。
スーリが手早く分身して3人の肩に乗り、おれ達は出発した。
3人で走っていると少し大きな岩にトカゲがいた。
この荒野で初めて生物を見たおれは、思わず二度見した。
違和感を感じながらも、精霊契約をして見えるようになったのだと思いそのまま進んだ。
「シュバル、バインフー。地面に足をつけるな。それとなにがあっても止まるな。分かったな」
パトラが唐突に指示を出した。
その理由はすぐに分かることになる。
なにも無かったはずの目の前の地面が、急に渦を巻き始めた。
パトラは渦の手前で止まり、シュバルとバインフーは指示通り魔法で宙を走っていたため、おれとアモーラはそのまま砂の渦を超える。
渦の中心に何かいたように見えたが、一瞬すぎて動くものとしか判断できなかった。
おれ達はパトラに言われた通り止まること無く進み続けたが、アモーラはパトラに向かって「魔王様~」と叫んでいた。
(すぐに戻ってきて合流するだろ)
内心そう思っているおれは、ただ前を向いて進んだ。
しばらく走って森に入った所で休憩をとることにした。
アモーラはまだ心配そうにしているのが、おれにはその気持ちが理解できない。
パトラを待っている間に暗くなってきたので、リックの土魔法で簡易的な家を作ってもらい、一眠りすることにした。
ドーーンという大きな音で目が覚めた。
外は暗いが激しく魔法を打つ音が聞こえる。
夜営中はラパン指揮のもと、従魔達に警護をお願いしていた。
その警備をしていたマチカとビテスが敵と応戦中だが、暗くて相手の姿を視認することが難しい。
おれは中から魔神の神器を使って、気配察知能力を高め、相手の人数を確認した。
この戦闘中でも気配を消しているのか、はっきり感じとることができなかった。
おれは外に出て、サージュ以外の従魔を全員召喚した。
すると、一瞬足が止まる音が聞こえて、後退しているのが分かった。
マチカが追おうとしたのを止めた。
「おうひつようはないから、2ひき1くみで、みまもりをおねがい。パトラがきてもおしえてね」
おれはラパンと建物の中に入って、説明をしてもらった。
「マチカの警備中に先程の者達が現れまして、応戦するためにビテスを召喚しました。戦闘を見た感じから、忍と呼ばれる者達でしょう。人族がこの魔族領にいる目的は不明ですが、数日は警戒しておく必要があると思います」
確かに人魔対戦以外で人族を見たのは始めてだ。
おれは再び眠りについた。
朝になったが、パトラはまだ来てないようだ。
仕方がないので、急いでシャティロンまで向かい、メリアスに相談することにした。
アモーラと一緒にシャティロンに戻ってきたおれは、真っ先にメリアスを探した。
シュバルからマチカに乗り換えて、メリアスの所に案内をしてもらう。
「メリアス!パトラがもどらないんだ」
メリアスに状況を説明した。
荒野でパトラと離れたこと、忍らしき者達から夜襲を受けたこと。
「夜襲の方は気になるね。すぐには何もないと思うけど、他のみんなにも伝えておくよ。パトラが相手にしてるのはたぶん守護霊だね。人と契約せずに、決まった場所を守る精霊のことだから、魔王が魔族領で守護霊にやられることはないよ」
やはり心配はいらないようだった。
おれはサージュのいるお店に行き、帰ったことを知らせた。
龍族の配達と、従魔達が交代で店番をしていてくれたらしく、何事もなかったどころか、むしろ大賑わいだったようだ。
「みんな、ありがとう」
おれはたぎつや、従魔達にお礼を伝え旅の疲れを癒すため、城の部屋に帰った。




