いつも宴で大賑わい
鬼の村、オルレアンに到着したおれ達。
入り口の門番である、ポワールに案内してもらって、ペッシュに挨拶をする。
「おう。調子はどうだ?刀は使いこなせてるか?」
「おしえてほしいことがあってきた」
おれは武器に魔力を流すやり方やコツを聞いてみた。
「裏に行くか」
ペッシュはなぜか嬉しそうに立ち上がり、裏の広場へ向かった。
そこではネフルとアカリが刀を振り回して戦っている。
離れたところで、あんぽんたん達が回復液を構えて観戦している。
ネフルとアカリの戦いはとても激しく、おれは遠くから見ることしかできない。
ペッシュは間に入って2人を止めた。
「つかさ、数日ぶりだな。」
「おーー!つかさじゃーん!」
アカリは全力ダッシュでこっちに迫ってくる。
おれは急いで魔神の神器にバフをたくさん盛り込んで、刀を構えた。
こっちに向かっていたアカリがおれの前で止まり、「やっほー」の掛け声と共にわき腹に蹴りを入れてきた。
もちろんバフで回避したので、刀を振って斬撃を飛ばした。
アカリはそれを片腕でガードして、反対の手で宙に浮いているおれを殴った。
吹き飛ばされるおれの体をバインフーの風魔法と、マチカの水魔法で衝撃を和らげて、先回りをしたイルコスが体で受け止めてくれた。
「いてて。よそうできててもこれか。」
おれは濡れた髪をかきあげながら、イルコスのもふもふから地面に降りた。
「相変わらず規格外だな。とても人族の赤ん坊とは思えないぞ」
ネフルが感心しながらこちらに来た。
おれは神器に頼りまくりだけど、ちゃんと人族です!
そんな気持ちが伝わるように堂々とネフルを見上げると、笑顔が帰ってきた。
小馬鹿にされたようで、おれは少しムスッとした。
「明日から鍛えるからな。今日はしっかり備えておけよ」
ペッシュはそう言って部屋に戻っていった。
「飯の支度に行くか。」
「ネフル、てみやげもってきたんだけどいるかな?」
おれは道中倒してきた魔物達のカードとモンシューの卵を見せた。
「今日の宴で使えそうだな」
ネフルが選んだカードを数枚見繕って、アンポンタンと宴会場に持っていった。
宴会場では鬼族達がせっせと支度を進めていた。
おれは食事の準備をしている鬼の所に行って、ネフルが選んだ食材のカード化を解いた。
「おおう!子ども達は向こうで遊んでな。期待してていいぞ」
おれ達チビッ子はドリンクを取って席に座った。
待っている間はアンポンタンと話したり、従魔達の芸を見たりして時間を潰した。
そしていよいよ食事が出来上がった。
本日のメインはドーミアフロッグの唐揚げ。太牙くんを眠らせたカエルだ。
付け合わせには、ローストした鹿肉にワインソースがかかったおしゃれなサラダが出てきた。
大鬼達はワインで、チビッ子達はぶどうジュースで食事を楽しんだ。
(異世界でオシャレすぎるだろ)
そんな心の声は内に秘めておいた。
次の日、朝食前にペッシュと素振りをさせられた。
もちろん100回。
パンパンになった腕をぶら下げて、宴会場で朝食を取った。
この様子だと数日宴会が続くらしい。
初日の日中は、ペッシュに稽古をつけてもらって、対人の戦い方を教えてもらった。
その夕方、夜の食事を待っている時、鬼以外の人を見かけた。
その人には角がなく、大柄ではあるが全身毛だるまだ。
気になって見ていたらこっちに来た。
「例の人族の子か。本当にいるんだな。私は行商人としてここに来ている熊の獣人だ。鬼では無いが少しの間よろしく頼もう。」
そう言うと同じテーブルに座りこの日の夕飯を共にした。
太牙くんの話やシャチの獣人の話をして盛り上がった。
熊の商人さん曰く、獣人は人型と獣型になれるらしく、人語を話せるけど人型になれない太牙くんは後に人型になれるらしい。
その話をしている時は、太牙くんの目が期待に満ち溢れていた。




