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異世界と12の召喚獣  作者: ドンサン
新事業の準備
38/81

でかいやつがうざい

朝が来た。

大きなベッドの上で目が覚めると、立派な角を持った魔王が寝ている。懐かしい思い出を夢で見たおれは、ただぼーっと上を見ている。


(今さら夢オチなわけないよな。)


魔王が寝ている間に少し試したいことがある。

召喚魔法だ。おれはラパンとシュバルを召喚した。


「おはよう。」


「おはようございます」


「…ありがとう」


全身の力が抜けて、天井を見た。

召喚に応えてくれた。それがすごくうれしくて、おれの目からは涙がこぼれた。

異世界に来てからずっと、呼んだら来てくれる存在だったラパン達だが、今回の旅で断ることがあると知った。


そこにいてくれるだけで不安感が和らぎ、どんな時でも頼れる存在。この世界でおれが生活していくには必要不可欠な仲間達だ。


転生前の事が気になるが、今の世界での生きる理由はこの12の召喚獣達が与えてくれる。

がっかりさせてはならないと、毎度考えさせられる。



訓練場で朝の素振りをしていると、プチが来た。

ここでトレーニングをしていると、こいつはほぼ毎回現れる。


「人族はどうだったよ。」


おれは真っ向から無視をした。

返事をすると組手と言う口実で、ボコボコにされるからだ。


「まさか負けたのか?人族ごときに?ガハハハ!さすが人族の子どもだな!自分より大きいやつには勝てないよなぁ?」


挑発に乗らないように、精神鍛練だと思って耐えながら刀を振る。


「がんばれよ、坊っちゃん」


プチはヘラヘラしながらおれの頭を撫でた。

我慢の限界がきてしまったおれは、プチの腕をぶった斬るつもりで刀を振った。


キンッ!


と甲高い音がして、刀が弾かれた。


「よーし、やるか!」


プチが上機嫌に腕を回す。

毎度毎度腹の立つやつだ。


「そのうで、たたききってやる」


おれは魔神の神器に魔力を流し、見た目は無視して変更せず能力だけ付与した。


身体能力向上・自然治癒・自動回避・武器威力上昇・物理耐性・防御力上昇


前回は物理無効になるようにスキルを使っていたはずなのに、とんでもないダメージを受けた。

思っていたようにスキルが発動しなかったのか、それを上回る攻撃だったのか分かるまでは、違うイメージで対応していく。


「リクドウ、ちくしょうモード」


武器は斧に変えて構える。

それを見たプチが、ゆっくり走っておれに殴りかかった。

斧を振り上げて拳をいなすと、反対の手がおれのがら空きになったボディを狙う。

スキルが発動して回避したのを利用して、プチの肩に斧を振り下ろしてカウンターを入れた。


だがさっきと同じように、キン!と甲高い音と共に弾かれてしまう。


「今回は全身に魔力を纏っているから、これまでより固いぞ。武器に魔力を纏わせれば少しは効くかもな」


プチはうれしそうに説明をした。

武器に魔力?やったことないし、考えたこともなかった。

魔神の神器に魔力を流す要領で、鬼神の神器であるリクドウに魔力を流した。


結論から言うと魔力を流すことはできた。

だが、纏わせることはできないし、それを維持することもできない。

ただ魔力を浪費するだけだった。

現状のおれには不可能な方法だ。


おれは本を開いて魔法で攻めることにした。


するとまたプチがゆっくり走っておれに殴りかかってきた。

さっきと同じように、切り上げていなすと、また反対の手で追い討ちをしかけていた。

おれは回避が発動するのを待って、カウンターの準備をしていたが、回避スキルが発動しなかった。

プチが狙っていたのは、おれではなく、宙に浮いている本の方だった。


一発パンチを受けた本をおれはすぐに片付けた。


「それ、壊せるらしいな。魔法は使わせないぞ」


この言い方と本を狙ったことから、魔法は効くのかもしれない。

まあそう簡単には使わせてもらえなさそうだけど。


人神の神器ヘアピンに魔力を流し、クテクの能力でプチの動きを封じた。


(かなり神器頼りだけど…別にいいんだ。こいつの腕をたたっ斬れたら)


おれはゆっくり近づくが、プチは動けない。

おれはプチの目の前に立ち、睨み上げた。

そして斧を大きく振りかぶって、腕に当たる瞬間、斧に魔力を流して振りかぶった。

だが、回避スキルが発動して、おれの体は後ろに跳んだ。


「仕組みは知らんが、よくあの体勢から避けれるな。」


「プチこそ うごけなかったはずなのに、なんでカウンターできた」


クテクのスキルでプチは動けないはずだった。

そう確信していたからおれはゆっくり近づく余裕があって、しっかり振りかぶって攻撃した。

なのに結果は、おれの攻撃が当たるよりも先にプチのパンチがおれに届いていた。


「確かに動けなかったな。だが実際それは、つかさが見ている部分だけみたいだぞ。おれの右腕を見ていた時、他は動かせたから合わせて当てにいったんだがな」


おれは大きな誤解をしていた。

対象の一部でも視認していれば、全身固まるものだと思っていた。

正直プチとの闘いで気づけてよかった。

これが先日のクソ王子と戦ったときだったら、負けていただろう。


「それもずっと使えるわけではなさそうだな。もう動けるし、いくか」


プチがゆっくり走って殴りかかってくる。

今日のプチは何故か走るときいつもゆっくりだ。


おれは走って距離を取りながら、本を展開した。

するとプチが地面を殴り上げて、岩を飛ばしてきた。

急いで土壁を展開して対応するが、岩がぶつかった音がした後、すぐに壁を殴り壊された。


おれはとっさに本に魔力を流した。

すると足元から強い風が吹いて体が空中に飛ばされた。


おれはもう一度本に魔力を流した。

次はプチに向かって火の玉を飛ばすようにイメージすると、ちゃんと発動してプチにヒットした。

プチはの体から煙が上がり、ちゃんと効いてるようだ。


「魔法も使えたのか?」


「プチのおかげでね」


おれはそこからたくさんの魔法を使った。

ゆっくり動いていたプチも、だんだん速く動くいて対応してきた。


岩の玉を飛ばしたり、火の玉を飛ばして楽しくなった頃、問題は起きた。

自分の体が重くなり、本に魔力を流しても反応しなくなった。

もっと言えば立ちくらみもしてきた。


「やっと魔力が切れたか」


ふらふらするおれを見てプチが言った。

そしてゆっくり近づくと、おれの腹部にやさしく拳を当て


「またおれの勝ちだな」


そう言ってこの場を去った。

いつものように大きな声で笑うことなく、静かに立ち去る姿は初めて見た。


またあのでかいのに負けて悔しい。

悔しいが今回は知れた事がたくさんあった。


魔神の神器同様、他の武器も魔力を流すことができる。

そして本を開いて魔力を流すと、素早く魔法が放てる。

クテクのスキルは視界に入る部分のみ。

そして、こっちの世界に来て初めての魔力切れ。


神器に頼りまくってた上に、慢心していた事に気づけた。



たまにはデカブツとの殴り合いも、自分を見直すためには必要なのかもな。

反省しながら、おれはその場で眠った。

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