鬼が厄介払い
マチカ視点
ネフル・マチカ vs 白薊 舞花
つかさ様の指示で気持ちの悪い勇者に制裁を下した後、その仲間も探していた。
最初に見つかった仲間は私達が助けたトラを連れていた。
あんな人間ごときに負けて服従しやがって、腹が立つ。
あの弱っちいトラは、リーダーと呼ばれる女の人達が対応するらしいから問題ない。
私達は他の仲間を探す。
「すみませーん。ゆうしゃのなかまをしりませんか?」
つかさ様が探していた勇者の仲間の女に声をかけた。
「ぼく、どうしたの?私の仲間は勇者さんだよ。街の人達とはぐれたの?みんなと一緒にいないと危ないよ。」
地下牢に街の人間を連れてきた人間の1人だ。
そんな女がつかさ様に手を伸ばす。
(汚れた手で触れると思うな)
ガブッ
「なに!?この犬。教育がなってなさすぎじゃないの?ぶっ殺してあげる。」
私はつかさ様の前に立つ。お前ごときに誰が殺せるのか教えて欲しい。笑いを堪えるのに必死だ。
「私はね、この街を作り直しに来た王子と勇者のメンバーの1人。白薊 舞花よ。美しい私の体に傷を付けたこと許さないんだからー!」
フッ。
さすがに堪えられなかった。
美しい体って(笑)
何が許さないんだ。そもそも自分が悪いんだろ。
相手になってやろう。
「薊?紛い物が調子に乗るなよ。本物を見せてやる。 抜刀秋薊。」
鬼のネフルさんが怒っている。
抜刀までして、私の出番はないかもしれない。
それでもこの女は調子に乗った鼻をへし折って、私の気持ちをスッキリさせてもらおう。
つかさ様に尻尾で合図をして、この場は任せてもらう。
残っている王子はつかさ様が倒してくれると信じて、この女をボコボコにしてやる。
つかさ様が立ち去ると、女が動いた。
「あんた達は絶対許さない。ぶっ殺してやる!!」
女が激昂して武器を構えた。
バトンのような白い杖だが、花柄の主張が激しい。
持つところが花柄な上に、杖の両端にも花が付いている。
女は杖を片手で回しながら、体の周りで振り回すと、女の格好が刺々しいドレス風の鎧になった。
「こっちはいつでもいいぞ?」
女の装備の変化を待った後、ネフルさんが言うと、女はさらに怒り杖を振り回した。
今度は細く鋭い花びらのようなものが私達に向かって飛んできた。
私は水魔法で盾を作って身を守る。
横のネフルさんを見ると、刀で全て弾いている。
弾いた物が当たらないように、盾ごと静かに後ろへ下がった。
凄まじい速さで襲いかかる花びらを、ネフルさんが叩き落とす度に遠くにいる女の叫び声が聞こえる。
鋭利な花びらの舞が落ち着いて、水盾を解除すると女は全身を無数の棘に刺されていた。
「おまえの薊とは、比べるまでもなかったみたいだな」
女は棘まみれになりながらも立っている。いや、立たされているのか。棘が数本地面にも刺さっている。
(私、必要なかった?つかさ様になんて報告しよう‥)
私はなんでこの女と闘いたくなったのか忘れてしまっていた。
今はむしろ女が不憫に思う。
早く楽にしてあげて。
ネフルさんは女の近くまで行き、刀を高く上げ振り下ろしたときだった。
キンッ!
甲高い音が鳴った。
女の杖がネフルさんの刀の軌道を変えたのだ。
だがその音と同時に新しい棘が女の心臓を貫き、女は息絶えた。
「虫の息のくせに、無駄な抵抗を」
ネフルさんは呟きながら刀を納めた。
結局最後までネフルさんの圧勝で、私に出る幕は無かった。
静かにどこかへ向かうネフルさんに私は付いていく。
私が今後ネフルさんと相対することは絶対ない。そう心に誓った。
次週は拳一視点の予定です
飽きずに読んでいただけるとうれしいです




